はぐれさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

はぐれ

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貸間あり(1959年製作の映画)

3.2

ずっと観たかった川島雄三監督作品。BS松竹東急さんに大感謝🙏

よろず引き受け屋を演じるフランキー堺を主人公とした浪速の長屋ドタバタコメディ。替え玉受験を強要する小沢昭一や貸間ありの看板を掲げることに
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.4

父と娘のひと夏の記録。懐かしさと瑞々しさが同居したまるで宝石箱のようにキラキラとした幼少期の記憶たち。寝息や吐息がこんなにも効果的に機能している映画なんて他にはない。父娘2人の親密な関係、近い距離感が>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

3.1

12人(?)の怒れる女たちが村を出て行くか残って男達と闘うかを議論する基本ワンシチュエーションの会話劇。今作のリー・J・コップ役を果たすキャラクターも大変に癖が強くて、まあ大人数のディベートものだとこ>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.4

孤独になれてしまって群れることを忘れてしまった人間には激しく刺さる作品だった…。

冒頭から価値観や倫理観の基準が目まぐるしく入れ代わり何を頼りにして見ればいいのか次第にわからなくなってる。小さな違和
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アメリカ、家族のいる風景(2005年製作の映画)

2.9

ストーリーは何百回とこすられ倒されてきた仕事ばかりに時間を割き家庭をぞんざいに扱ってきた父親が人生の終盤に入り掌を返したかのように家族に懺悔を行う例のやつ。それがヴェンダースの語り口だと退屈することな>>続きを読む

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

3.4

見も心も裸になって自らの恥部をスクリーンにさらけ出すアケルマン。その赤裸々な告白は見ているこっちが目を背けたくなるほどこっ恥ずかしくて清々しい。部屋に籠もって外の世界のことなんかどうでもよくなって、食>>続きを読む

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)

3.8

ゲイの男子とBL好きの女子の恋物語。理想と現実と言うかファンタジーとリアリティーの濃淡が目まぐるしく移り変わる愛くるしい作品だった。受けのイケメンとか小動物系ハツラツ女子とかキャラクターは極めて桃源郷>>続きを読む

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

2.5

主人公の誕生日だけを遡っていくルビッチの『天国は待ってくれる』スタイルの話法。こっちには閻魔様は出てこないけど閻魔様のように公園で待ち受けている永瀬さんが出てくる(笑)

しかし恋愛映画って難しい。イ
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天命の城(2017年製作の映画)

3.1

教授の音楽が聴きたくて鑑賞。計算され尽くされた音の引き算で構成された極上のスコア。もうこのスコアを全身に浴びるだけで鑑賞する価値がある。

イカゲームを撮られた監督とのことで画作りは圧倒的。厳しい雪山
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.2

鳴っているか鳴っていないか耳をそばだてていないとわからないくらいのドローンサウンドが劇中のあちこちで鳴り続けている。地鳴りとも耳鳴りともとれる音の響き。それは他の音楽が鳴り響いている時にも聴こえてきて>>続きを読む

イン・ザ・ベッドルーム(2001年製作の映画)

3.6

映画『TAR』の公開を前にトッド・フィールド監督の代表作を再見。

原作はアンドレ・デビュースの短編小説『Killings』。その殺しに至るまでの過程をじっくり時間をかけて描ききる監督の執拗で冷徹な眼
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EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

人生を諦めて達観したようなつぶらな瞳のEO。その瞳に映る利己的な人間たちの醜い所業の数々。そしてそんな人間たちに翻弄される孤独なロバを俯瞰で捉える神の眼差し。VRでも味わったことのないくらいの途轍もな>>続きを読む

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

3.3

精神疾患の患者を受け入れる川に浮かぶデイケアセンターの日常を追ったドキュメンタリー。

患者とも職員とも区別がつかない船員たちがそれぞれの時間を有意義に使い人生を謳歌している。それくらい自然な形で受け
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バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

3.0

スコリモフスキの『EO』公開を前に復習。ロバの無垢な瞳に映る人間の醜悪な姿。名作と誉れ高い本作だが、今見返すとそれほどバルタザールの視点で描かれているようには見えず、没入感も低い。かと言って、肝心の人>>続きを読む

都市とモードのビデオノート(1989年製作の映画)

3.3

世界的デザイナーの山本耀司を追ったドキュメンタリー。風合いや生地、フォルムにこだわり黒以外の色を排除した作風の山本耀司に対抗して、35ミリフイルムとビデオテープの異なる質感を用いて被写体に迫るヴェンダ>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.7

イランで起きた娼婦連続殺人事件から着想を得て完成した本作。犯人探しと言うよりはイスラム社会のいびつな女性差別の現状を切々と訴えかけてくる演出。それが遠い中東の話ではなく、極東の人間が見てもどこか既視感>>続きを読む

囚われの女(2000年製作の映画)

4.2

足音の使い方がとっても上手いシャンタル・アケルマン。軋む床の音にハラハラドキドキしながら前のめりにさせられる冒頭の尾行劇の見事さ。

主人公はイケメン御曹司のシモン。「来てほしい?」と相手から言葉にし
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説得(2022年製作の映画)

2.9

ジェーン・オースティンで一番好きな小説の『説得』。その原作を読んでいた時に描いていたイメージより主人公のアンが大分若いし美しすぎた。しかも謎のこっち見んなの演出。ストーリーも大幅に改変されていて大佐の>>続きを読む

愛のコリーダ(1976年製作の映画)

3.9

あらゆるフェティズムをぶち込んだ問題作。ほぼほぼまぐわっているシーンしかなくてただただ衝撃的w。けど男女の恋愛においてかなりの比重を占めているフィジカルな問題をそれまでの恋愛映画が描かなすぎたのよね。>>続きを読む

戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

4.1

坂本龍一の美男子ぶりに圧倒された。あのデビット・ボウイを向こうに回しても全然引けを取らない画力。よく言われている舌足らずな発音は正直気になるけどそれを打ち消すくらいの存在感と造形美。大島監督が準主役に>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.0

aloneではなくsolitudeな女のひとり旅を描いたロードムービー。まるでウェス・アンダーソンのような徹底した左右対称の構図。決して感覚ではなく幾何学的な論理で映像を紡いでいくアケルマン。もう大好>>続きを読む

カランコエの花(2016年製作の映画)

3.6

同性愛が異性愛と同じ様に当たり前のものとして描かれているティーンムービーの『ブックスマート』を最近観たばかりだから今作のストーリーはめちゃくちゃ辛い…。

唐突に開かれるLGBTに関する啓蒙の授業から
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ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行(2021年製作の映画)

3.5

映画ヲタクのマーク・カズンズ監督が映画言語の拡張をテーマに2010年代以降の名作映画を紹介してくれるドキュメンタリー作品。

前作のテレビシリーズではリュミエール兄弟から2000年代までの名画を紹介し
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トムボーイ(2011年製作の映画)

3.8

LGBTものの根源みたいなテーマを扱った作品。まだ精神的にも肉体的にもどっちつかずの幼い時期に男の子らしさ、女の子らしさを無理矢理に強要してくる大人たち。それが子供の視点から見ると恐怖でしかないし異常>>続きを読む

ブギーナイツ(1997年製作の映画)

3.9

一般社会から爪弾きにされポルノ業界に居場所を見出した人間たちの群像劇。まだキャリアの浅い時期なのに全編らしさが爆発していてやっぱPTAってすげーってなるやつ🤦しかも今見るととんでもなく豪華なオールキャ>>続きを読む

ナワリヌイ(2022年製作の映画)

4.2

日本ではコロナ禍報道一色で全然報じられなかった印象のあるナワリヌイ氏毒殺事件のその後。ドキュメンタリーの鉄則である我々観客の知りたいと思う情報を的確に出してくれる誠実なストーリーテリング。隣国なのに知>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

2.9

ミステリーの核となるはずの論理の積み立てを感情が破壊してしまう物語。今作のヒールであったIT企業のいけ好かない白人野郎へジャネール・モネイ扮するヒロインが正義の鉄拳を食らわす際に流れるBGMがナット・>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.4

シングルマザーの日常のスケッチを淡々と見せられているだけなのになぜこんなにもスリリングに感じてしまうのだろうか。カメラも寄ることもパンすることもなく固定のショットのみ。それなのになぜ全く退屈することも>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.4

アジア系おばさんの確定申告武勇伝。

東京電力、招き猫、炊飯器という間違ったアジア像を見せつけられてからスタートする本作。

鑑賞前は変に長ったらしいタイトルだなぁーって思ってたけど、鑑賞後はいや、こ
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.6

巨匠の日記を覗き見しているようないけない心持ちになって終始ドキドキ。アルフォンソ・キュアロンから始まった巨匠のルーツ語りブームの真打ち。映画は光と影を映す芸術。奇しくもサム・メンデスの新作『エンパイア>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.5

冒頭から思わずため息が漏れるほどの映像美。前作の1917のような大迫力のアクションシーン満載の大作ではなく、日常風景を淡々と映していくスケッチ的な作品の方がロジャー・ディーキンスのカメラマンとしての妙>>続きを読む

アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ(2021年製作の映画)

2.0

好き嫌いが非常に別れる作品。私は文句なしに大嫌い(笑)

第一部はコロナ禍の街のスケッチ。コロナ禍後の世界を描いた作品を初めて観たかも。歩道をただ歩いている歩行者をひき殺そうとする車カスのドライバーや
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.5

オストルンド版『男性と女性』。オリジナルのセシル・B・デミル版では無人島で召使いの男性が腕力に物を言わせてヒエラルキーの上位に君臨するんだけど、今作では生きていく術を心得ているとある人物が王になってし>>続きを読む

少女は卒業しない(2023年製作の映画)

4.3

廃校が決まった高校の卒業式までの2日間を描いた青春群像劇。全てのシーンが愛おしくてギュッと抱きしめたくなった🥺

4組の男女のストーリーが同時並行に進む。同じクラスなんだけど属しているグループが違うの
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ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(2019年製作の映画)

3.8

同性愛や人種を越えた愛の物語などを制作して常にタブーと戦ってきたトッド・ヘインズ監督。その新たな相手は大企業だった。

水俣病のような工業被害が現代のアメリカにも存在しているなんて知らなかったので衝撃
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