面白かった。物語としては『許されざる者』っぽいが、コミカルなまでの偏屈爺さんが、異民族の少年に少しずつ心を開いていく過程は単純におもしろい。もちろんそこには、暴力の連鎖をどう断つかという思考が織り込ま>>続きを読む
他者を手段としてのみならず同時に目的として捉えよと言ったのはカントだが、ショービズの世界じゃそんな眠たいことは言っていられない。善意も友情も踏み台にして高みへと昇ろうとする少女の運命は如何に。
本作>>続きを読む
ブルジョアジーの崩壊を寓意的に描く。総じて理屈っぽいというか思想先行感のある映画だが、テレンス・スタンプの魅力は本物。宙に浮いたり地中に埋まったりする女中や、荒地を全裸で徘徊する親父が、面白いと言えば>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
ごく私的な理由により足が遠のいていたミニシアターに、3年ぶりに足を運ぶことになった。物語としては非常に単純で、あのラストシーンも、事前にいろいろな前振りがされているので、理解ができないというものではな>>続きを読む
3枚の看板をめぐる情念の交錯は確かに面白いのだが、着地が今ひとつ納得できなかった。
ヤクザの殺し合いがひたすら続くだけだが、そこにひとかけらの陰惨さもない、むしろ過剰であるほどコミカルな調子になっていく暴力の数々が、面白いと言えば面白い。全員悪人という設定がやはり魅力的で、彼らを絶え>>続きを読む
細部に甘さはあるにせよ、それなりによくまとまった映画だったように思う。それは、原作の出来が(作家の中では相対的に、という但し書きは付けておくが)優れたものだからといっていいだろう。とはいえ、これも原作>>続きを読む
面白くなかった。映像や物語がほとんど何も語れていないので、すべてを言葉で説明していくしかないというタイプの映画であり、演劇という営みの楽しさが画面から伝わってこない以上、それに憑かれた人々のドラマにも>>続きを読む
言いたいことがないわけではないが、傑作というしかない。3時間半を超える長篇だが、物語の運びには無駄がなく、衝撃的な事件に出会した者たちのコミュニケーションの回復という主題を描くにあたり、この長さには必>>続きを読む
面白かった。ハリウッド黄金期のアメリカの政治と映画の様相を点描しながら『市民ケーン』の脚本完成までの経緯を辿っていく。ゲイリー・オールドマンが演じるハーマン・J・マンキウィッツという脚本家が魅力的で、>>続きを読む
一般的な意味で「よくできた映画」なのは確かである、という前提の上で言えば、PMSとパニック障害と介護と自死遺族が出てきて、しかもみんなほっこり系のいい人という教科書的な理想主義は、「マイノリティ観光」>>続きを読む
よくこんな悪趣味なイメージを次から次へ繰り出せるなと思った。3歳で成長を止めた人間という設定をここまで強烈に映像化できたのはすごい。でも実際に演じてる子役がいるわけで、これ問題にならなかったのかなあと>>続きを読む
馬と鞍、男たちの関係。西部劇に内在するエロティシズムに改めて視線を向けた一作。ホモソーシャル集団にいじめられるひ弱な医学生だった彼は、敵を殺して愛する女と家族を守る、誰よりも西部劇的な男になる。その意>>続きを読む
育児放棄された子供たちが少しずつ追い詰められていく様子をセミドキュメンタリー風のタッチで描いた。子供を撮るのが日本でいちばんうまい監督なのは間違いないのだろう。彼らが暮らすアパートの一室の残酷な変容ぶ>>続きを読む
要するに思春期の性衝動とエレクトラ・コンプレックスをファンタジー仕立てで描いた映画なのだが、例のキスシーンを含め、その主題への異様な執念、徹底性にひたすら圧倒される。ここまでやればもう芸術? これまで>>続きを読む
あまりに面白いのでセルジオ・レオーネに勝手にリメイクされた娯楽活劇。全編通して何かと過剰な映画で、道は広すぎるし、風はびゅんびゅん吹きすぎるし、愚かな奴は徹底的に愚かで、三船敏郎演じる侍はいささか格好>>続きを読む
ミリマス未履修のまま鑑賞。主人公たちがいつも同じ私服を着ているなどしょうもないレベルで気になる点は色々あったが、総じて楽しめたと思う。何よりも物語を牽引していく未来が魅力的で、彼女の存在に励まされて静>>続きを読む
百姓と侍とお姫様の珍道中。面白いかつまらないかで言えば文句なく面白い。筋立てにはいくらか不自然に感じられる箇所が散見され、途中から出てくる百姓娘もあまり映画的にうまく活きている感じがなく、不満がないわ>>続きを読む
『マクベス』と能を意識した演出の数々が異様な迫力を生む黒澤明の傑作。本当に矢を放って撮ったというラストシーンは有名だが、ともかく奥方を演じる山田五十鈴の存在感が強烈で、肝心の予言者よりよほど不気味な呪>>続きを読む
洒落たスーツを着て煙草を吸うヤクザと、アイスキャンディーを頬張るアル中の医者。二者の関係を軸として、全体から細部まで丁寧に織り上げられたメロドラマ。それにしても『素晴らしき哉、人生!』といい『ベルリン>>続きを読む