木蘭さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

木蘭

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ストーリー・オブ・マイ・ワイフ(2021年製作の映画)

4.7

 夫の妻に対する不安や不審、混乱、そして諦めきれない愛情を煮詰めた様な、美しくも切ない物語。
 夫婦を演じるハイス・ナバーとレア・セドゥが素晴らしく、心奪われた。
 特に、レア・セドゥ・・・恐ろしい子
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蜜のしたたり(1973年製作の映画)

3.4

 日活スウェーデン・ポルノ第二弾。
 夫婦の危機を描いた話かと思ったら、途中で脚本を書き換えたのか!?と思う様な明後日の方向に話が飛んでいき度肝を抜かれた。
 北欧を舞台に、日本的な情緒あふれる物語
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地下室のヘンな穴(2022年製作の映画)

3.0

 オフビートの笑いに包まれた不条理なホラーというか怪奇譚。フランス№1ヒットのナンセンス・コメディと思って観ると拍子抜けするかも。

 オフビートな笑いのテンポだとか、電子技術が進んだ日本とか・・・一
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1640日の家族(2021年製作の映画)

4.5

 人は物じゃないから右から左へという訳にはいかないよね・・・という話を、言葉は適切じゃないかも知れないけど、スマートで洒落た描き方で語る。
 とにかく奇をてらう事なく、一つ一つが丁寧でセンス良い表現で
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地獄(2009年製作の映画)

3.3

 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督が、当時26歳のロミー・シュナイダーをヒロインにすえて制作を試みたものの、未完で終わったサスペンス映画『地獄(L'Enfer)』を・・・遺された13時間のフィルムと>>続きを読む

O嬢の物語 第二章(1984年製作の映画)

2.3

 『O嬢の物語』を1975年に映画化した作品の続編なのだが、原作から遊離した完全なオリジナルストーリー。

 前作から年月が流れ、中年期を迎えていつしかロワッシーの館を仕切る様な立場になったOが、依頼
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マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

3.2

 13世紀ボヘミア王国を舞台にしたチェコスロバキアの国民的文学を、芽吹き始めたプラハの春を背景に映画化した前衛的作品。

 古典的な時代劇の様だが、原作自体が戦間期のアバンギャルド小説だった様だし、基
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戦争と女の顔(2019年製作の映画)

4.8

 原題は『のっぽさん』。
 戦争で死ぬ事は悲劇だが、生きているのもずっと辛い・・・という物語。

 タイトルも含めてインスパイアされたアレクシエーヴィッチの著書と関連づけたり、シスターフッド的な話と評
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母へ捧げる僕たちのアリア(2021年製作の映画)

2.9

 原題は『兄貴たちと俺』で、南仏の公営団地に暮らす移民を親に持つ四兄弟の一夏の物語。

 監督自身が演出・出演し、共同制作もした舞台劇をベースにした作品で、四兄弟それぞれの物語を描いた戯曲の(末弟を主
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モガディシュ 脱出までの14日間(2021年製作の映画)

4.7

 フィクションとリアリティが同居した見事な活劇映画。

 ハングル文字がでかでかと表示されつつも、無国籍というか、北アフリカを舞台にした『15ミニッツ・ウォー』や『エンテベ空港の七日間』の様な欧米映画
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ポゼッサー(2020年製作の映画)

2.4

 20分位の短編で描けるワンアイディアのディストピアSFを、2時間弱でみせられる。辛かった。

 人の認知とは何か?みたいな古典的なテーマを、凝った映像や音楽、比較的豪華な出演者で描くのだが、物語や人
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

3.2

 いかにもフランスらしいエログロ・ダークファンタジー。
 肉体表現の秀悦さと同時に、話がとっちらかるのも、いかにも!といった感じ。

 クローネンバーグの『クラッシュ』の様なフェティッシュな話かと思っ
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

2.6

 こんなにエッフェル塔が東京タワーに(時には通天閣にさえ)見える映画は初めて。何処を写してもお洒落に見えるハズの巴里の街が、全くもってケバケバしく煤汚れたダウンタウンに見えるのは前代未聞。
 コレがス
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淫獣の宿(1973年製作の映画)

2.5

 当時の日本人が抱くスウェーデン幻想(フリーSEXとか、金髪青年のBLとか...)を全部盛りして、和風の出し汁で煮込んだ様な作品。

 一見、レイプリベンジ物と思わせて・・・ポンコツ脱獄囚3人組が人里
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帰らない日曜日(2021年製作の映画)

4.9

 身分違いの恋を描いたメロドラマかと思ったら全然違った上に、想像以上に素晴らしい作品だった。

 1924年3月30日の母の日を主軸にして、交差するタイムラインが象徴する様に、ヒロインの人生の記憶とい
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リフレクション(2021年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

 東部ドンバスでの戦争を背景に、主人公の外科医が人生と家族を取り戻す話。

 同時上映の『アトランティス』と比べると明確な劇映画だが、同じ様に移動シーン以外はカメラは動かず、長回しで、多くがワンカット
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アトランティス(2019年製作の映画)

3.2

 2025年の近未来ウクライナを舞台に、戦争の後始末を描いた物語。

 2019年に制作されながら、これから訪れるであろう未来を生々しく予見している。
 つまり、荒廃し汚染され地雷が敷設されて人が生き
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紅い唇/血に濡れた肉唇(1975年製作の映画)

3.4

 エロと美少女吸血鬼を描き続けたユーロトラッシュ映画界の雄ジャン・ローランの最高傑作にして、アニー・ベルのデビュー作・・・とされる本作、話の筋も分かるし眠くならくて観やすい!
 まぁ、ローラン作品を見
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わたしの可愛い人 シェリ(2009年製作の映画)

3.4

 ベルエポックのフランスを舞台にしたコレット原作『シェリ』を、豪華なセットとキャストで映像化したメロドラマ。

 英語劇で主要キャストにフランス人俳優が居ないという事を差し引いても・・・あれだけ当時の
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ドンバス(2018年製作の映画)

3.9

 ドキュメンタリー系映画で著名なロズニツァ監督が、その手法を遺憾なく発揮した悪意在るグロテスクな寓話。
 ある種の東欧的なパワー溢れ、ダレる事無く突っ走るタイプの佳作・・・なのだが、今観て評価するのは
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

 金を掛けたマニアの自主制作映画を見せられている感じ。

 全体的にCGがチャチで、テレビで観る分には良いんだけど、劇場の大画面で観ると一寸辛い。
 『シン・ゴジラ』を横滑りさせた様な話だけど、巨大生
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.0

 お帰りマーヴェリック!お帰り、僕らのハリウッド!!

 話はムチャクチャだし、展開はベタだし、リアリティはマッハの速度で置いてきぼりにする・・・けど、なんでこんなに手に汗握って感動しているんだ?
 
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オフィサー・アンド・スパイ(2019年製作の映画)

4.7

 ベルエポックのフランスを揺るがしたドレフェス事件を描いた重厚な社会派歴史ドラマ。
 余り日本では注目されいない様だが、物凄く良質な作品で、売られているパンフレットもデザインが素晴らしい。

 巨額の
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ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)

4.2

 虚栄に満ちた家庭が徐々に狂気に染まって崩壊していく話かと思ったら、初っ端からもうイカレていてビビった。
 最近流行の内証的でイヤァな感じの不幸譚かと思ったら、女の子の心理を描いた、わりかし正統的なホ
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パリ13区(2021年製作の映画)

4.2

 モノクロの画像で映し出すパリのアラサー男女の群像劇。

 米国の作家エイドリアン・トミネのコミックを下敷きにした"ひねたストーリー"ながら、映像も音楽もお洒落に描き出されたアラサー男女の甘酸っぱい青
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チェルノブイリ1986(2020年製作の映画)

4.4

 エンドロールの詩の朗読も含めて、極めてロシア的な情緒に充ち満ちたディザスター映画。
 安易な愛国映画や英雄譚なのでは?と不安だったが、そこはちゃんと踏みとどまった、堂々たるエンタメ作品だった。

 
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恍惚(2003年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

 豪華メンバーで描かれるパリのフランス女はお洒落で面倒臭くも気高いというサスペンス・・・と観た直後は思ったのだが、よく考えたら・・・プロの娼婦が良い仕事をした・・・というビターな話だと思い直した。>>続きを読む

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)

4.5

 1962年にソ連・ノヴォチェルカッスクで起きた大規模なストライキとデモ、その鎮圧を描いた物語。

 淡々とした描き方や1960年代のレトロな情景、スッキリとしたモノクロの画像から、古いノワール映画を
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インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)

4.8

 主人公ペトロフと周囲の人々の群像劇を、時間や空間、現実と夢を縫う様に、ロシア映画でしかあり得ないエネルギーと猥雑さで描いていく怪作!

 群像の一つ一つのエピソードはバカバカしくもあるのだが、それが
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悦楽の貴婦人(1977年製作の映画)

4.6

 ラウラ・アントネッリやマリー・ベルの名前から単なる艶映画だと思ったら大間違い。堂々たるメロドラマ。

 不仲な夫に依存し、狭い世界に閉じこもって何も出来ない金持ちの奥方が、姿を消した夫の仕事を図らず
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

 豪州で起きた無差別発砲事件の犯人というセンセーショナルな題材を丁寧に描いた凡庸な映画。

 実際の事件を題材にしている為、詳細にリサーチして制作はしているらしいが、犯行動機も含めて分からない事が多い
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潜水艦クルスクの生存者たち(2018年製作の映画)

4.0

 事件当事国が関わらない欧米製の英語劇にろくな物は無く、全く期待していなかったのだが、堂々たる作品だった。

 ロシアの海軍士官が全くロシア人に見えないとか、ロシア海軍で「The Sailor's B
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

2.7

 ヒロインの頭の中で鳴り響く不思議な音が導く驚愕の真実・・・みたいな謳い文句に乗せられたら、他人の夢を延々と見せられる様なアート映画だった。

 不思議な音が通底音の様に流れて物語を支配するのかな?と
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金の糸(2019年製作の映画)

4.5

 トビリシの旧市街を舞台に、美しく柔らかな光と色彩で描かれる老いの喜びと悲しみの物語。
 
 ゆったりとしたテンポで、大きな展開があるわけでは無い物語を描き出すのだが、一枚の絵を見ているかの様な画面と
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シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)

3.8

 『トワイライトゾーン』の様な話かと思ったら、二の腕たくましいクロエちゃんが零戦とグレムリンをフルボッコにする話だった。

 往年のホラー・・・というかカーペンター映画やゴブリン風のスコアで幕開けする
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GAGARINE/ガガーリン(2020年製作の映画)

4.3

 パリ郊外に存在したガガーリン団地と少年たちを描いたフランスの美しいジュブナイル団地映画。

 人の作り出した最も美しい物は建造物、殊に住宅と、それを繋ぐ移動システムだと思うんだが、老朽化して解体直前
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