Automneさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

5.0

ひりひりした温度、不穏、トラウマ、コンプレックス、疑似家族、逃避行、人生はそれでも続くこと、逃れられないこと、救済されないこと。
見終わったいまは、えもいわれぬ感情に包まれている。言葉で語りたくない。
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ブレックファスト・クラブ(1985年製作の映画)

3.3

アメリカのティーンもの、時代の空気感は出ていたが、ワンシチュエーションというのはやはり限界がある。
「自分とは何か」というテーマの作文、それを書かないという選択、自由にやりたいようにふざけて話している
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.5

子どもゆえのまっすぐさと繊細さvs大人のガサツさや俗っぽさの闘いだった。
物語としてシンプルな導線の上に、子どもの視野と大人の視野の違い、それを敏感に察知して黙ったり従ったりする子どもの気まずさが良か
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憂鬱な楽園(1996年製作の映画)

4.0

どうにもうだつが上がらなくてずっと気まずい物語。台湾の昔の田舎のじめじめした感じや、陰鬱な空気が画面から伝わってくる。
繰り返される車の移動や画面の色の変化、暴力や物語に何か強い動きが起きる時、必ず一
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天才マックスの世界(1998年製作の映画)

5.0

ずっと観たかった作品。ずっと観たいが故に逆にずうっと観てなかった作品。
マックスの好奇心旺盛で何でもやりたいことを全力でやる感じ、すごく元気をもらえる。
いろいろやり過ぎて落第寸前だし、それでいて同年
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アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)

4.8

物語は黒人差別と白人至上主義にとどまらず、人間の業の深さをとても感じさせる。単純な対立構造ではなく、すべての動機・誘因が"人間の業"に根ざしている。

デレク→父親の教育環境とその死、そして黒人を殺し
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我等は楽しく地獄へ行く(1932年製作の映画)

4.2

Talentedだけど浮ついてる男と良家のお嬢様、そして男にとって忘れられない女の三角関係ストーリー。
現代的夫婦と名づけてポリアモリーを実践しようとするも、女の方はやっぱりクズ男ムーブに耐えられない
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ほら男爵の冒険(1961年製作の映画)

4.0

物理法則ガン無視でノリとファンタジー全ブリみたいなスタイルとても面白かった。
ずっと良い夢みろよ、みたいな感じで好き。
黒海紅海黄河が水の色で分かるってくだりにクスっとした。実写とアニメーションの混ざ
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

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未亡人の母親と息子の生活が長回しで描かれる。
物語性を持つということは、こういった日々の煩雑なものを省略して、エンターテイメントのある部分を切り取って作品をつくることが多いように思う。その点で超絶激尖
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.5

やっとみました。
村上春樹の映像化の成功例であり、かつ濱口竜介オリジナルの色も出ていてとても良かった。
原作は未読だけれど、出てくるモチーフがやっぱり村上春樹。部分的には、ワークショップやフェリーが出
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そして人生はつづく(1992年製作の映画)

4.7

そのときその瞬間その場所だけの物語。
モキュメンタリー方式を確立したキアロスタミらしいメタファー作品。
彼なりの映画論がまるまるセリフで出てきたりするメタ構造がありながら、山道の荒れ具合や落石、倒壊、
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.5

限界主婦とこどおじのくたびれた逃走劇。
何も起こらない。人間の限界とヨレヨレな怠惰がずうっと続く。

抜け出せない逃れられないという、慣習や癖から生じたホメオスタシスに囚われ続けるリアル。
年老いたら
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

4.8

線路と川、大地、肉体、血がじっとり感じられてすごく良かった。

純粋であり、なんとなく人生にある種の理想を持っている男。器の広さや寛容さがあるものの、受動的であるが故に多くの人生の荒波を経て、"人間"
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ナイトクローラー(2014年製作の映画)

4.2

次の企画の参考になると思って視聴。
なるほど、こういう映画もあるのかという発見があった。
物語としては、フリーランスの記者が過剰なスクープを求めてグレーゾーンで暴走していくという筋書きなのだけど、しっ
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カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)

3.0

亡き妻への憧憬とそこから踏ん切りつけるまでのお話。偏屈な老人と出会う純粋な子どもという構図がしっかりしていて見やすい。
しかし、ところどころご都合主義が多すぎてあまり入り込めず…。
あれ、ピクサーって
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幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)

4.0

死のうとするけどなかなか死ねない老人が、妻の死と喪失感、自分の過ちを受け入れていく。
心の中では筋を通してるのだけど、ぶっきらぼうだから誤解が多くて苦労してきた。それでも最後にはそういう不幸な人々が救
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リメンバー・ミー(2017年製作の映画)

5.0

今更視聴。マジでやっぱり今回もしっかりちゃんとピクサー。
最近非ハリウッドのシネフィル系をよく観てたから、たまにはこういう大衆向けメインストリーム、王道行くものを観るのも一興。
めちゃくちゃ感動したし
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パリ、テキサス(1984年製作の映画)

5.0

名作すぎて心震えた。良い作品は自由で広がりがあり感動するし感心するし感激する。
物語もさることながら、ナスターシャ・キンスキーのビジュアルが最強すぎてひれ伏す。もはや畏れ多い。
カットの構図や絵作りも
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欲望の翼(1990年製作の映画)

5.0

ずっとスタイリッシュでばちばちにイケてるカットの濁流。雨と薄暗い香港とフィリピンの中国人街で繰り広げられる群像劇。
輪廻的にどこかの誰かがあのときの誰かと関わっていても良いのだけれど、それすらもう主題
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パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

5.0

PTAやっぱり最高すぎた。好きすぎてレビューまともに書けないの悔しい。
主人公が愛すべき不器用過ぎて泣けてくる、仕事も家族も何も上手く行ってなくて、ストレスフルな毎日、周囲が敵だらけだと感じているから
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希望のカタマリ(2020年製作の映画)

4.2

強がって助けを求めないことの苦しさを描いた作品。題材は地味かもしれないけれど、じんわり響いてくる良さがあった。
私の境遇と似ていたからかもしれない。なまじ半端な人間ではありたくないし、毎日きつくて普通
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イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

4.6

見たいけどずっと見てなかったシリーズ。
タランティーノ節全開で飽きさせない。映写室の切ないシーンがとても好き。
言葉の騙し合いは、言葉じゃないところ、表情とかに本心が出るのかも。それもまた受け取り手次
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ケンとカズ(2015年製作の映画)

4.0

車工場のシャブ売人の話、だんだんヤクザとの関係性に足を踏み入れたせいで日常が狂っていくというテーマ、それ自体は普遍的であるが、特筆すべきはカズの母親に対する屈折した愛情でしょう。殺したいけど、底の方で>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

4.0

“音”が一貫して印象的な映画。
夢と現が混ざり合い、長回しで行われる抽象的なやりとり。
ニューエージ思想、宇宙とつながること、戦争、死と生、心象風景が現実に影響を与えたりすること。私たちはいま夢の中に
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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

5.0

“五感をひらいて” “目覚める”
芸術を志向するものへの愛が詰まっていた。
作中内作品としての出来もさながらで、ミュージカル映画としても音楽や歌詞のミーニングが二重三重になっているからこそ新しい。
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.2

思ったより鬱でとても良かった。
PV映画的な感じかなあって観てたんだけど、序盤の車内の回転カメラワークらへんから、画角や構図の面白さが頻出する。
社会が発達し過ぎてるからこそ、重たい話とかあった次の瞬
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Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

4.0

シチュエーションの反復と、比例的な変化。
思ったよりも驚きや感動は少なかった。ずっと観たかったので私の中でちょっとだけハードルが上がってしまっていたのかも。
群像劇のような描き方でそれぞれの人物の生が
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スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

5.0

MCU好きの友人に薦められて。
スパイダーマンほとんど見たことない私でも十分楽しめた。スケールの奥深さとアニメーションならではの表現。しっかり伏線回収して大団円な感じは予定調和的でPixar的、安心し
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Connect(原題)(2010年製作の映画)

3.8

バスの中というワンシチュエーションで音楽を聴きながら女の子がいろんなことを想像したり、それが具現化したり、それでいて何もなかったりする短編映画。音楽が心地よいのと、爽やかな感じがする。いろんな人種が出>>続きを読む

Father and Daughter(原題)(2000年製作の映画)

3.9

父と離れ離れになってしまった娘の一生を描く短編アニメーション。車輪、日差し、影、水、太陽の表現が手書きの繊細さが出ていて好き。音楽がちょっぴりさみしさを感じさせる。
『レッドタートル』のひとなんだとあ
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クラッシュ(1996年製作の映画)

3.0

性的倒錯映画。ひたすらずっとぶっ飛んでるし、車に欲情するなんてずっとわけわかめって感じでした。ある種そこのアイデアひとつをねっとり描いて最後までやりきったのはすごいと思う。
"ドラゴンカー◯ックス"み
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裸のランチ(1991年製作の映画)

3.5

はじめから終わりまでずっと気持ちが悪かった。
麻薬中毒の幻覚で物体がゴキブリやムカデに見えてしまう。昆虫の造形がとにかく嫌悪感をもよおすようなものになっていて気分が良くない。
時空が歪みまくっているの
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ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

4.4

ルイス・ブニュエル作品は初めて。もっと観たかったけど忙しくて最終日に滑り込み。
ずっとちょっと面白いのが続く。カメラワークがぬるっとしているので飽きない。
夢の中の夢、過去の話、それらが縦横無尽に繰り
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ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.2

見知らぬたくさんの白人が優しく笑顔で接してくれる怖さ。表面的には差別はないように見えるのだけれど、得体の知れない気持ち悪さがはじめからずっと漂う。これはホラー映画でありながら非常に大きな倫理的チャレン>>続きを読む

ほとぼりメルトサウンズ(2021年製作の映画)

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登場人物みんな魅力的で、4人の間に流れる空気感がとても好き。ずっとしゃべってて欲しい。
観ていて心の温かくなる映画でした。