野田陸さんの映画レビュー・感想・評価

野田陸

野田陸

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生れてはみたけれど(1932年製作の映画)

3.7

子どもたちが社会に直面した時にそこにある欺瞞を暴き、しかしその欺瞞こそ我々の社会を構成する重要な要素であるということを映す。
構成が「お早う」に非常に良く似ているが、「欺瞞は大人も承知である」という達
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.7

全編通して逃亡劇なのだが、そこに主題はなく男女の関係性が映される。
ゴダールほど真面目に男女の分かり合えなさを真正面から映している監督っていない?

音やセリフはそのままに同じような風景が細かく移り変
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ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)

3.7

50年前の映画でこのポスターなのでやや構えて観たが、古さを感じない良質なロードムービー。
「可愛くない子供」を可愛く映しているのが超良い。
冒頭、適当な墓標に供えられた花を何食わぬ顔でモーゼが拾う場面
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Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

5.0

完全な映画
100分にこれ以上に世界が映せるだろうか
全てのシーンが完全に美しい
ラストシーンの奥行で、映画全体がとても長いようにも一瞬のようにも感じられる。
ずっと画面が静かで、映画ってそういう物だ
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イエスタデイ(2019年製作の映画)

2.5

「エド・シーランを本人役で出す」という世界を広げるためのサプライズが、逆にこの映画の世界を小さく見せてしまっている。

用心棒(1961年製作の映画)

4.5

魅力的なカットが多過ぎる。娯楽作品として観る者をハラハラさせながら、抗争の中央に三船を配する事で俯瞰で全体を映す構成が見事。

正しく"飛び道具"である銃が出た瞬間の緊張感、三十郎が櫓から見下ろす抗争
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スカーフェイス(1983年製作の映画)

4.0

「成り上がる」エネルギーしか無い男が成り上がってもその先に何も無い虚無感が映される。
全体的にゆったりと余裕を感じる演出ながら前半のエネルギッシュさと後半の虚脱感、最後の最後に火花が散るようにトニー・
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レザボア・ドッグス デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

-

パーフェクトな冒頭10分を映画館で観れてうれしい。
改めて観ると、ティム・ロスの演技ほんとに素晴らしいなとかブロンドよく見たらビルの弟だなとか色々発見ある。
字幕が左右に移動するの、イマドキのありがた
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お早よう(1959年製作の映画)

3.8

それまでの小津と一線を画す群像劇で晩年の意欲作
子役達の演技が良く勇ちゃんがほぼ主役。
佐田啓二いい役者だなあ
最後に「大人の無駄な会話」を焦れったい恋愛模様の中に映すの素晴らしい余韻

秋刀魚の味(1962年製作の映画)

4.1

「晩春」と同じテーマをカラーで毒をもったユーモアとともに映す遺作。
娘を嫁にやらなかった瓢箪と、戦時中の栄光を思うマーチが娘を嫁にやる孤独な父親の敗戦を思わせる。
でも敗けてよかったのだろう。

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

3.2

全体的な演出やリズム感が悪く乗り切れない。
恐らく公開当時は新鮮だったものがクリシェになっておりチープに感じる場面が多い。
ストーリーもビジュアルも作画も当然良いので殆どは細かい演出の積み重ねの問題だ
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.8

常に画面には陰鬱な空気が漂う。
ご褒美的なシーンも殆どないが画の圧倒的な力に3時間半魅入る。音楽が地味だが出色のクオリティ。
インディアンとその歴史に奉仕する映画。

デニーロのピュアな悪人の重厚感が
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ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

3.5

面白いが内容に対してやや長く空気が弛緩する。
「これから惨劇が起きる」と全員が分かっている状況での平和な会話が何より緊張感を高める"その日の朝早く"のシーンが1番面白い。

これもイングロリアス〜と同
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激突!(1971年製作の映画)

3.4

殺人トレーラーに追われるだけの映画。
運転手は本当に居なくて、トラックが意志を持ってるんじゃないかと思わされる。カーズみたいな。
あの後どうやって家に帰るんだ……とか関係の無いことをぼんやり考えてしま
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グッドフェローズ(1990年製作の映画)

4.3

空虚なホモソーシャルの理想郷と崩壊(実話)が常に最高のカメラワークと演出で映され続ける。
デニーロの華に周りの空気が引き込まれていく感じがすごい、後半にかけて超良い映画。

「いとしのレイラ」の長く退
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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作の映画)

3.7

観てて気持ちの良い映画
レオ様の淋しい小動物みたいな美貌無しでこの詐欺が実際成立してたのか?
クリストファー・ウォーケンの演技が素晴らしく、父親が映画全体をグッと引き締める。

何も知らずに観たら超ク
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キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

4.7

冒頭からずっと、映画演出の魔法に満ちている。
ズレ続けて上滑りしていたパプキンが致命的に社会から外れた時にうっかりウケちゃうのが可笑しい

自分の中の真実を追う時に、俺もこうなってるんじゃないかとちょ
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フォロウィング(1998年製作の映画)

3.2

心地よく退屈でミニマル
時系列の操作によるトリックはこの時からだがそれがテーマの核心にそこまで触れていない感じがする。
とは言え長編処女作とは思えないが
特典映像に時系列順のフルムービーが付いており親
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.5

繊細な演出、アニメーション、音楽が映す生活と
その細やかな歓びを塗り潰す戦争
ピカドンのシーンって、年々分からなくなっていくんだろうか。23歳の自分の世代でぎりぎりな気がする。ずっと分かるものであれと
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火垂るの墓(1988年製作の映画)

4.6

青空の中で街に火が広がる冒頭のシーンが印象的。
14歳がドツボに嵌った時に誰もそこから助けてやれない戦争というものが哀しい。
高畑作品の中でも演出のキレが傑出している。

イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

3.7

冒頭、第一章と終わり方が抜群。
おっと目を見張るシーンは多いが中盤ちょっと怠い。
二つの作戦が特に絡まないのは脚本の破綻では。
ランダ大佐はEP4(ローグワン)のヴェイダーみたいなキャラだな。

映画
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デスペラード(1995年製作の映画)

3.4

爽快ガンアクション長寿シリーズみたいな雰囲気。
笑える。

タランティーノが出てくるところだけタランティーノみたいな台詞回しになる。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)

4.4

圧倒的なビジュアルと世界観。
人間の本質はどこに見出せるのか、というAIが「人間らしい」事が当たり前になってきた現在に突きつけられるテーマは切実。
自身の問題をどんどんネットに外付けする人類が実際にこ
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千年女優(2001年製作の映画)

3.4

語り手の振り返りで進むので序盤中盤はやや退屈
しかしオーバーラップの演出をデジャブ的に重ねる演出には見入る。
女性の年齢を重ねた微細な変化をここまで描けているアニメはジブリ含め殆ど無いのでは。
それが
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インソムニア(2002年製作の映画)

3.3

自分にとっての「映画らしい画」というのはノーランなんだなと再認識。それが観れるだけで嬉しい。
人物の行動が短絡でバカっぽい感じもノーラン。

白夜の中、虚実の境目でチカチカする感覚はインセプションに通
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平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)

4.0

「ぽんぽこ31年」の掴みで笑う。
たぬきは人間臭くて可笑しく哀しい。開発に憤りながらマックを貪るたぬき(我々)を描くシニカルさ
最後に移る緑がゴルフ場って泣いちゃうよ。

キル・ビル Vol.2(2004年製作の映画)

3.4

1より断然良い!
舞台がアメリカなこと、ストーリーが明快なこと、バトルが短いこと等が理由。
タランティーノの瞬間の暴力(前の緊張)が自分は好きなんだな。

満身創痍とは言えベニヤくらい一発で貫かないと
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.5

よくある夢を追う青春モノ映画。
ろう者の俳優陣による演技が素晴らしく、
手話が口語と同じ言語であること、それにも当然ニュアンスが多大に含まれていることが観るだけで実感される。
「よくある映画」なのだが
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ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年製作の映画)

4.6

ジョーダンはこんなに良い奴でちょっとクスリが好きなだけで何も悪いことしていないのに……という気持ちになる。クズをそう思わせてくれる最高の映画

ラストに「そういう締めね」と観客が思った後
カメラがフォ
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8 Mile(2002年製作の映画)

3.5

エミネムが主演なので当然エムネムのラップに抜群の説得力がある
良くあるストーリーだが、これがプロトタイプだと思わせる勢いがある。

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

3.7

これまでキューブリックの作品に思ったことが無かったのだが、音楽の使い方に少し違和感を感じる。
命を軽く扱いながら、いざひとつの命に直面すると途端に重いという当たり前の事がまざまざと映る。

前半の密室
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

4.5

クライマックスの演技、演出、美術、撮影、どこをとってもここだけでお釣りが来る。
それまで娯楽映画しか知らなかった自分が初めて「映画は芸術なんだ」と身体で理解した作品。

人の狂気を写す映画は数多いが、
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女は女である(1961年製作の映画)

3.3

わりと普遍的な男女の話だなと思う
映像と女優が美しいので小難しい話やカット割りもスっと観れる。
小難しさも「女ってわかんねー!」みたいな方に感情移入して楽しめた記憶。

軽蔑(1963年製作の映画)

3.5

どんどん心の距離が離れ関係が冷めていく様が芸術的写し方でありながらリアルに感じられる。
舞台となるマラパルテ邸も二人の心情に沿うように二つの床が交差する場で秀逸なロケーション。
物語の結末があまりに虚
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羅生門(1950年製作の映画)

4.5

皆が皆自分の語りたいように嘘を言うこの世のやるせなさ・不信を映しながら最後には人間を肯定してくれる。安いヒューマニズムとも言えるが、最後に小さな光を見れたひとりの観客としては嬉しい。

「藪の中方式」
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七人の侍(1954年製作の映画)

4.3

百姓の苦しみに手を貸す侍を描きながら、
その身分の差から生まれる断絶には一切の欺瞞を持ち込まない描写がすさまじい。

百姓は無辜の民で無く、侍も高潔な存在では無いことをその間の存在である三船の演技が暴
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