hydrangeaさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって(1975年製作の映画)

3.7

このフィルムを撮ったサミー・フレイがgood job過ぎる…単なる色男俳優じゃなかったんだな…と、一瞬思ったが、記録しておきたくなるほど刺激的な現場だったということなのだろう。
結果としてあの映画の完
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.9

オルガは美しい。うつろな怒りの蓄積を示す眼差しの強さに魅了される。静寂を保ちつつもテンポの良い編集で、構図もキマっていて、スタイリッシュな仕上がり。
ぎこちなく歩く彼女は明らかに発達障害であり、統合失
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.8

主人公は、恋人を失った喪失感と、家族を捨てた悔恨に苛まれている。それを和らげるために、健康維持などお構いなしに食欲を過度に満たすわけだが、こんなにタガが外れたようなような食べっぷりができたら快感だろう>>続きを読む

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)

3.8

老いた母親との会話は、対面でもSkypeでも、親愛な言葉の交わりに終始する。悲壮な思いはむしろ、対話を囲うように長く映し出される茫漠とした風景の映像に込められている。衰えていく最後の様子を記録するのは>>続きを読む

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

4.5

セーヌ川に浮かぶ船のような建造物が精神科のデイケアの場で、水平に開閉する鎧戸に覆われている外観はノアの方舟のようだ。
登場人物は皆、言葉や音楽や絵や身体を用いて、のびのびと自己を表現する術に長けている
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午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

4.1

絶望や悲しみや辛さを払拭するには、淡々と生きていくことだと、『サマーフィーリング』や『アマンダと僕』で示してくれたミカエル・アースは今作も同様、メソメソ泣きつつも新しい出会いの波に乗って生きていく主人>>続きを読む

幻滅(2021年製作の映画)

3.8

人間の精神の愚かさが90%、やるせなさが5%、純真さが5%という配分だが、悲劇というよりはむしろ喜劇で、さすがバルザック先生の原作。主人公の青年の成長物語でもある。配役が適材適所で、それぞれの演技や表>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.5

夏に親しい人を失くすのは辛い。明るい日差しも、気持ちの良い夜風も、胸を締め付けられる辛い記憶を呼び覚ますから。
主人公の男性は、決意したように新しい女性を愛し始める。それでいいんだけど、ちょっと寂しい
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囚われの女(2000年製作の映画)

3.7

少女だった『ビヨンド・サイレンス』から3年後の、ほぼ大人になったシルヴィー・テステューの美しさに見惚れた。独占欲と嫉妬心に苛まれる金持ちメソメソ男は気持ち悪すぎるが、その心情の一端は理解できる。
出て
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.7

ニューヨークの殺伐とした風景に、落ち着きと安定が感じられた。
私も母のもとを離れて海外で暮らし、娘も私のもとを離れて海外で暮らした。しかしこの母娘のような強い結びつきではなかったような…娘を心配して思
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街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

3.5

こちらあみ子のあみ子を凌駕する落ち着きのなさ。うるさくてハチャメチャでグルーヴしていて、意識が釘付けになる。アケルマンにとって台所はサンクチュアリで、靴磨きはパラノイアックな作業らしい。

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.0

共感はするし、良いなと思う場面は幾つかあったが、全体的にぎくしゃくした映画だった。永野芽郁のヤンキー口調にも無理があって、これほどタバコの似合わん役者も珍しい…

シンプルな情熱(2020年製作の映画)

4.0

端的に言えば恋する女性の映画。文学部の先生なのに、スーパーでハーレクイン小説を買ったり、彼以外のあらゆることに上の空だったり、可愛いではないか〜
年齢に関係なく恋愛をするのは良いと思う。主人公の心かき
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

2.8

恋愛が面倒くさいことを思い出した。
よくこんな面倒くさいことを何度もやってきたなって、自らを労いたくなる。
趣味と恋愛は別な方が良いと思う派。
終わりの方、なかなか別れなくてイライラした。
菅田将暉く
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

4.4

過酷な状況下を生きる移民の子供達が、搾取されまくった挙句(ベルギーの悪人だけならともかく、アフリカの母親まで送金を強要するので八方塞がりのロキタ)に悲劇的な最後を迎えるという物語なのに、不思議とカラッ>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.5

じゃがいもの皮を剥くだけの映画じゃない。使っていない部屋の電気はいちいちマメに消すし、食事中は会話のない息子と就寝前に濃い話をするし、几帳面で神経質なのに、息子の靴磨きセットを置くこともある台所のテー>>続きを読む

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

3.7

こういう作戦があったということ、さすがチャーチルだと思う。イギリスの政治家や軍部は実に老獪。

LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

3.8

サルーの子供時代の子がとてもいい。眼差しも敏捷さも賢そうな感じも。大人役になって、イケメンじゃなくて一瞬ガッカリしたが、見慣れたらそれなりにイケメンに見えた。
この物語で一番辛かったのは、お兄さんだろ
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生きる LIVING(2022年製作の映画)

3.4

オリジナルの原型はそのままに、カズオ·イシグロが穏やかで上品なシナリオを書いている。イギリス風のウイットも垣間見えて、私はこっちのほうが断然好み。抑えた会話と演技を通じて、受け手の感情が静かに揺さぶら>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

2.0

若いときに見たがまったく刺さらず、年齢故に実感がなかったせいかと再観したが、やはりまったく刺さらず…主人公のおじいさんが気持ち悪いという感想もそのまま。私の精神年齢は10代で止まっとるんだろうか。

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

4.0

映像と言葉と音楽の断片を、シャワーのように浴びた。そのどれもが、とりわけ発言が、星になったボウイからのメッセージのようで、私の心に刻まれたと思う。ゼネラリストで、変化することが通常モードで、歯並びの悪>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.6

75歳は早いけど、85歳なら、今の日本でサクッと法案が通りそうなのが怖い。

少子化対策に頓珍漢な案しか出てこないんだから、高齢化社会対策にこんな案が出ても不思議じゃないような。

人は、自殺や安楽死
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Winny(2023年製作の映画)

3.9

技術を生み出すのも人間であり、それを良く使うのも悪く使うのも人間であり…
エンディングで実際の金子勇さんの姿を見たとき、胸がいっぱいになった
彼と彼の弁護団はよく戦ってくれたと思う
42歳で心筋梗塞と
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.8

鑑賞後感は、テネットに似ている。あちこちに振り回された挙句、最終的に大切なのはヒューマニティーというところ(テネットは友情、エブエブは親子愛&家族愛)。
しかし振り回されがいのある、チャーミングな作品
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パッドマン 5億人の女性を救った男(2018年製作の映画)

3.6

古来の風習や物の見方を覆すのって、本当に難しい…
主人公のように、自分の利益を求めないで、真に人々の幸せを願う人間が革新をもたらすんだなぁと。
国連でのスピーチが、ヒューマニティーにあふれていて、ユー
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ボブという名の猫 幸せのハイタッチ(2016年製作の映画)

3.6

ボブの存在に助けられて、右往左往しつつも主人公が立ち直っていく姿が素晴らしい
わたしも猫が家にやってきたことで、最低のマインドから抜け出すことができたと思うし…
主人公の奏でる音楽もチャーミングだった
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老後の資金がありません!(2020年製作の映画)

3.4

天海祐希と草笛光子の女優合戦が麗しい。
リアルだったらしんどい内容だけど、楽しめるコメディに仕上がっていた。
とはいえ違和感覚える部分は多々あった。
長男だから高級施設に入居している親に毎月9万円の仕
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

3.8

神の声を聞いたとか、それは神の思し召しだとかって、他人にはジャッジできない内容を信じ込ませるために、こっそり聖痕を作るベネデッタ。性に目覚めると、快楽を極めようとするベネデッタ。たいへん人間的なのだが>>続きを読む

失恋からの立ち直り方(2018年製作の映画)

3.7

カラフルで可愛い失恋ムービー。
心情は結構リアル。失恋を経て成長していく主人公はたくましい。登場人物が美男美女じゃないのも良かった。
ペルーという国を少し知ることができたのも収穫。

すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

3.9

この映画におけるソフィ・マルソーの年の取り方が大変良い。最近の出演作はどれも『ラ・ブーム』の中年バージョンだったから。もちろんシャーロット・ランプリングのお婆さんっぷりも素敵。
重い主題ではあるが、本
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きっと、うまくいく(2009年製作の映画)

3.7

カラフルでフレンドリーでラブリーで、本当の知恵や賢さを示唆するグッドムービー。歌とダンスもノリノリでかわいい。物語もよくできてるし、登場人物たちのキャラクターもいい。でも、それだけなんだよな〜

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

冒頭から登場するマリア像に悪い予感しかない。映画にカトリック教会が登場するのは悪夢の象徴である。

インテリとインテリじゃない派の間にある、深い溝かなと。インテリ派は主人公の妹(読書家、本土で司書とい
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スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.0

ほんと、みんないちいちアグレッシブ。景色も心象も荒んでいる。
フランシス・マクドーマンドの顔はいつも苦み走ってるし。火炎瓶を投げるときはうっとりするほどカッコよかったけど。
だからこそ、時折の親切や優
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スープとイデオロギー(2021年製作の映画)

3.8

済州島四・三事件を経て朝鮮総連の熱心な活動家となり、帰国事業で3人の息子を送り出した両親を持つヤン・ヨンヒ監督。慕っていた長兄は精神を病んで彼の地で死に、父親も亡くなった今、記憶を失いつつある母親に、>>続きを読む

キクとイサム(1959年製作の映画)

3.8

キクの身体性の良さは飛び抜けていて、惚れ惚れする。イサムの風貌はヤンチャで粋な男に成長することを予感させる。
祖母は愛情深いし、近隣の若い夫婦や学校の先生たちも理解があって優しい。だが周りの子供達は容
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危険な関係(1959年製作の映画)

3.8

ジャンヌ・モローのエレガントで苦み走った美しさがたまらない。顔の半分が火傷で爛れていても、美しさそのまま。
ジェラール・フィリップは、病の影響か、もはや美男子ではなくなっていた…