冒頭の羅漢堂以外、正面きったバストショットが一つもなく、冷徹に一人の女の数奇な運命を高みから眺めた作品。
常に一定の距離を保ってこの主人公にカメラが寄り添うことは決してない。
ある意味では冷たく突>>続きを読む
新内語りの鶴次郎(演:長谷川一夫)と相方で三味線弾きの鶴八(演:山田五十鈴)による藝道ムービーである。
成瀬巳喜男の藝道物と聞くと後年の作品群のような堅苦しいイメージがまず浮かぶが然に非ず。
実に>>続きを読む
「お前らは俺に殴られたかもしれんが、俺だってどれだけ他人に殴られてきたかしれやしないんだ!!」
今じゃ絶対に理解されない人種・頑固親父の心情がこの言葉に込められている。
時代劇の大スターである阪東>>続きを読む
「四十にもなってまだ一人でブラブラしているような男の人ってあまり信用できないの。」
うーん、そこのところどうなんでしょうか?小津カントク!(公開当時47歳独身)
これも小津安二郎監督の戦後の代表>>続きを読む
シェークスピアの『マクベス』を日本の戦国時代を舞台に置換した『蜘蛛巣城』は、大作時代劇の黒澤作品の中でも屈指のオープンセットの大きさとエキストラの多さを誇る作品。
そして『雨月物語』とはまた別のアプ>>続きを読む
名匠・五所平之助監督の戦後の代表作のひとつ。
かつて足立区千住にあった火力発電所の四本の煙突は、見る場所が違うと一本に見えたり、二本に見えたり、三本に見えたりする通称・お化け煙突。
こち亀の一篇と>>続きを読む
男はつらいよ……この言葉がズシンと胸に来るようなこのシリーズ第二作は、個人的にはベスト・オブ・男はつらいよの一本である。
初めてこの映画を観たとき……中学生ぐらいだったかなぁ、ラストの佐藤オリエの独>>続きを読む
まったく社本(演:吹越満)って奴は最期の最期まで情けねぇ奴だったよなぁ!なぁ?村田(演:でんでん)さん!
自分じゃ何もできなくて家族から愛想つかされて、しまいにゃ村田さんの真似すれば自分にもみんな付>>続きを読む
おそらくこの映画、DVDのジャケット買いした人が多いんではなかろうか。
このポップなジャケットの写真は本作のラストシーンで、1959年の公開から六十年以上経ったとは思えないほど今見ても新鮮な印象を受>>続きを読む
『東京物語』の原節子を見ると、いかにも清楚で控えめな女性という雰囲気。
だが、その他の作品、例えば『わが青春に悔なし』『東京暮色』、そしてこの『めし』とかになると、「あ、この人を怒らせるとヤバそう…>>続きを読む
たとえ屁ばっかり出る映画でも小津の魔法使いの手にかかれば、とても素敵で洒落た作品に大変身してしまう。
ラストシーンが "ヘ" をむりやり出そうとして "ミ" が出てしまった少年のパンツ(勿論洗濯され>>続きを読む
1958年版の『無法松の一生』はヴェネチア国際映画祭に出品され、見事グランプリの金獅子賞を獲得した。
1943年版は検閲でズタボロにされて悔しい思いをした分、悲願達成した稲垣浩監督は本国に「トリマシ>>続きを読む
稲垣浩監督の代表作『無法松の一生』は1943年に阪東妻三郎主演で作られたが、内務省の検閲で重要なシーンがカットされたあげく戦後もGHQにカットされるという不運に見舞われた作品。
あまりの悔しさから稲>>続きを読む
今回でレビュー777本目。七繋がりということで映画もいよいよ『七人の侍』をチョイス。
あと正月みたいにゆっくり時間がないと、こんな長い作品なかなか観れません(笑)
私はまだ観ていないけど4K版がか>>続きを読む
この映画に描かれているのは、まさに地獄である。
去年の八月、NHK Eテレで放映されたデジタルリマスター版を録画したが、あまりにも悲惨な映像に何度も途中で停めてしまい、結局、感想文を書くのがのびのび>>続きを読む
昔、母親と黒澤明監督の『生きる』の志村喬について話したことがあった。その際、母親が「小さい頃に映画館で観たけど、志村喬が火葬場の煙突を見ているシーンが一番印象に残ったわ」と言った。
「はてな、『生>>続きを読む
最初に大事なことだけを言います。三國連太郎が可愛い。以上!
井伏鱒二の同名小説が原作だが他にもいくつかの短編も取り入れられているという。下町の開業医を主人公に病院の人間模様をユーモラスかつシニカルに>>続きを読む
かつて由紀さおりが言っていたけど、日本のように子供たちの歌がこんなに多い国は他にないそうな。
わらべ歌からはじまり、明治の頃の文部省唱歌、そして大正期における雑誌『赤い鳥』によって多くの童謡が誕生し>>続きを読む
見えぇぬ片目ぇに出るぅ涙 森の石松 森のい~しま~つぅ よいぃおぉとぉこぉ~♪
本編では『旅姿三人男』は流れないけれども、とはいえ見終わったあと自然とあの歌のフレーズが脳裏に浮かんでくる。
マキノ>>続きを読む
登場人物の名前に海産物が入ってるところは『サザエさん』っぽいなあと思ったが、冷静に考えればこっちの方がずっと古いんだよね。
正しくは『サザエさん』が『赤西蠣太』っぽいということか。
現存している数>>続きを読む
どうでもいい会話だけであれだけ間を持たせるなんて、やはり小津安二郎監督はとんでもない監督である。
小津安二郎のターニングポイントとなったと言われる『晩春』。いわゆる小津調を確立した作品でもある。>>続きを読む
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします🙇⤵️
新年一発目はあまり視聴する機会が少ない作品をチョイス
『裸の大将』といえば何と言っても芦屋雁之助の印象が強いが、元祖・山下清を演じ>>続きを読む
特撮と時代劇が見事に融合している!
抜群の絵作りとブルーバック合成技術で、本家・円谷東宝特撮も顔負けのハイ・クオリティだと思う。
大映が東宝以外の会社で唯一特撮ジャンルで成功したのも本作を観れば一>>続きを読む
大学時代にやたらこの『野良犬』の“刑事がスリにやられる”というシチュエーションが大好きで、同級生と自主映画を作った思い出がある。
撮影中は言い出しっぺの私がへまばかりやってしまい、他人様に見せるのが>>続きを読む
デ・ニーロもアル・パチーノもジョー・ペシも、そしてハーヴェイ・カイテルもみんな年取った。
でも、みんないい年の取り方だ。お爺ちゃんたちによる実録戦後マフィア史だ。
それにしても三時間半は動画配信な>>続きを読む
上田秋成が綴った怪奇文学の古典を巨匠・溝口健二監督が映画化した戦国ホラー・ファンタジー。
冒頭、「雨月物語の奇異幻怪は現代人の心にふれる時更に様々な幻想をよび起こす」とあるが、確かに金や出世をする>>続きを読む
今年もクリスマスが終わったので、それに因んで、クリスマすみ子の映画をチョイス(゜o゜(☆○=(-_- )゙
前年の林芙美子原作『浮雲』を大成功させた成瀬巳喜男監督が次に手掛けたのは幸田文の代表作『流>>続きを読む
『フランケンシュタイン対地底怪獣《バラゴン》』は小っちゃい頃に観たときはそんなに感じなかったが(ちなみにその時観たのはタコ登場版ですね)、ハードなストーリーでこりゃ完全に大人を対象にして作られたドラマ>>続きを読む
世人無頼漢と称する者、必ずしも無頼漢に非ず。善良高潔なる人格者と称せられる者、必ずしも真の善人に非ず……。
冒頭、字幕で本作のテーマである上記の言葉が出る。
当時まだ23歳だった阪東妻三郎が自身の>>続きを読む
「誰にでもやさしいということは誰にもやさしくないということよ」
鋭いこと言いますねぇ。お富士さん!
市川崑監督の前衛的な演出が冴え渡るカルト映画『黒い十人の女』。
自分が映画を観始めた頃には既に>>続きを読む
ウォルト・ディズニーが世界初の長編アニメ映画を作ると発表したのが1934年。つまり今の自分と同じ33歳の時。反共主義者とか人種差別的だとか批判もある人だけど、改めて凄い人だったんだなぁと思う。
初の>>続きを読む
生理的に……いやDNAレベルで馬鹿馬鹿しい映画が観たくなったので本作をチョイス(笑)
時々無性に三木のり平の「四郎はこれに~四郎はこれに~シロウハコレニ~シロウハコレニ~」のシーンが観たくなってしま>>続きを読む
『にっぽん泥棒物語』はサラッとであるが警察の自白強要が描かれているが、本作はその辺りもっと過激に描かれている。
老夫婦二人が惨殺された八海事件をベースに、冤罪事件の恐ろしさを描いた社会派映画『真昼の>>続きを読む
「おらたちを取っ捕まえる警察のお偉方がですねぇ、おらたちより嘘つきだというのはどういう訳でしょう。いや、嘘つきは泥棒の始まりって言うんべか?」
ラストの証言台に立つ三國のすっとぼけた台詞回しに巧いな>>続きを読む
清水宏監督・上原謙主演のロードムービー『有りがたうさん』。
日本が貧しかった時代、日本が長閑だった時代、そして悲しいことの多かった時代を、天城街道を走る長距離バスを通して見事にスケッチした作品だった>>続きを読む
痛快戦争アクション映画の傑作。そしてその奥底にはやはり軍部に対する岡本喜八の批判精神が貫かれている。
この映画が好きなのは全体のトーンが明るいからだ。途中、何人か重要人物が命を落とすが、それでも見終>>続きを読む