ーcoyolyーさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

3.3

一応マーチング経験者として言わせていただくと「ヌルい」、ただこの一言に尽きます。

既得権益者である白人男性のお遊戯会にしか見えなくて、どうしてそうなってしまうかというとこれ撮ったのがスパイク・リーだ
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ハスラーズ(2019年製作の映画)

4.0

この映画、ショパンの使い方が面白かったな。ドライになりすぎずウェットになりすぎずニュートラルでありつつ微かに女性たちに寄り添う感じ。男たちには気付かれないようにそっと。

私のNYC生まれの従妹が日本
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陸軍中野学校(1966年製作の映画)

3.9

増村保造、『卍』での女の描き方は酷いもんだったけどここでのクソホモソーシャルの描き方は安定している。つまりはそういうこと。

珈琲時光(2003年製作の映画)

3.9

侯孝賢と撮影監督、よく頑張りました。真っ向勝負で小津安二郎に挑むなんて誰にだってできることじゃない。よく逃げずに頑張りました。最初っから負け戦に決まっている勝負でも真正面から当たっていく勇気は賞賛され>>続きを読む

ザ・ハッスル(2019年製作の映画)

3.5

さらっと見れてあとを引かずに憎みきれない愛嬌があってオチも綺麗に落ちてこういうのはいいよね。アン・ハサウェイの着せ替え人形的なファッションショー含め中期岡崎京子作品にありそうなノリで少し懐かしくなりま>>続きを読む

終戦のエンペラー(2012年製作の映画)

3.5

火野正平。火野正平演じた東條英機が白眉。東條英機にしてもアドルフ・アイヒマンにしても平時だったら優秀な官吏として平穏に生を全うできた人なんだろうなと思う。ただ不器用で運が悪かった。立ち回りが上手くない>>続きを読む

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たち(2015年製作の映画)

3.7

「私たちは口を閉ざしていた でも聞かれる“あなたは誰 何があったのか?” それでありのままを話すと“ウソだ 作り話だ”“そんな事あり得ない” こんな話が作れたらハリウッドに行くわ」「だけど皆は信じてく>>続きを読む

鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)

4.0

バチボコに作り込んで磨き上げてる五社英雄の様式美。

この人こんなにまで容赦なく男の惨めさ情けなさを断罪する撮り方してるのに夏目雅子のおっぱいに喜ぶ当の男どもにそこ気づかれてなくてバランス感覚が物凄い
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死の棘(1990年製作の映画)

3.8

音楽が細川俊夫。流石いい仕事してらっしゃる。

島尾ミホさんってものすごく狂気の人として語り継がれてますけど(語り継がれているのを知っているだけで島尾敏雄の本も島尾ミホの本も読んだことないです)、この
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卍 まんじ(1964年製作の映画)

3.6

ヤベェメンヘラボダ子だぁ……って展開がヒートアップすればするほど頭の芯が醒めてしまってどうしようもなかったです。私がボダに絡まれて酷い目に遭ったことがなければ楽しめたのかも知れないんだけど……

谷崎
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浮草物語(1934年製作の映画)

3.7

トーキーなのかと思いきやサイレント映画で活動弁士が主役だった。びっくりした。活動弁士の語りが主で活動写真が従。こんなに存在感があるものだったのか。『落語THE MOVIE』観てるみたいだった。活弁士っ>>続きを読む

浮草(1959年製作の映画)

3.8

小津安二郎vs宮川一夫。名横綱同士の世紀の一戦。宮川一夫が「お前さんの撮りたいいつものアレってこんな感じだろ?」と鼻で笑ってコスりに行くと小津安二郎がぐぬぬとなりながら相性の悪そうな原色の組み合わせの>>続きを読む

マーラー(1974年製作の映画)

3.5

出オチのように『ベニスに死す』パロディというかオマージュ、「あなた方が大ヒットしたおかげで企画通りましたありがとうございます!」という意味合いの謝辞?献辞?のようなシークエンスが挿入された時に吹いたの>>続きを読む

黒いオルフェ(1959年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

大学生の時に大学の図書館でLD(レーザーディスクを知らない世代ってどの辺から?20世紀生まれは知ってる?)借りて観てラストシーンに痛く感銘を受けた覚えがあったのだけれども、記憶していたラストシーンと実>>続きを読む

ハーフェズ ペルシャの詩(うた)(2007年製作の映画)

3.7

イラン映画だ。まごうことなきイラン映画。そして変態だ。まごうことなき変態。

麻生久美子の撮られ方が大江健三郎文学的な変態の方向性でしたね。
多分この監督は麻生久美子にろくに演技指導をしていない。通訳
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かくも長き不在(1960年製作の映画)

3.8

行間に漂う虚無。

『二十四時間の情事』とどこか通じるような邦題だなと気になっていたら両方ともマルグリット・デュラス脚本だった。

デュラスの描くというか意識的に描こうとせずとも描写されてしまう虚無の
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リンカーン弁護士(2011年製作の映画)

3.7

世界観や醸し出すムードがしっかり決まってて、こういうのはどこかでスベるととそこから全てがスベって盛大に地滑りして居た堪れなくなるんですが、そうなることがない程度に要所要所キメて外すことはなかったので、>>続きを読む

キネマの天地(1986年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ある時代の松竹に対する愛惜で構成されている映画。歌舞伎や新喜劇やSKDを含む松竹文化が総力を結集して最後に打ち上げた松竹オールスターによるお祭り映画。これ、渥美清が生きているうちに撮れて良かったな。今>>続きを読む

カフカ「変身」(2019年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

なんかデル・トロみたいだったな。というよりデル・トロがカフカの影響下にあるんだろう。デル・トロがカフカみたい、という方が正しい。カフカ作品の映像化って実は結構センスが必要なのだと思うのだけど、この映画>>続きを読む

八月の狂詩曲(ラプソディー)(1991年製作の映画)

4.3

黒澤明晩年の映画、あまり評価良くないのなんでだろうなと思ってたんだけどなんとなく意味が分かった。黒澤映画のチャンバラ的なものやドンパチ的なものだけを楽しんできた人には理解できないんだ。そしてそれが実は>>続きを読む

his(2020年製作の映画)

3.2

主要登場人物全員クソだったなと思う。うっすらとクソなのが本当クソだった。どこから見ても非の打ち所がないクソじゃなくてほんのりうっすらとクソを帯びているクソ。そしてそれは私から見た「普通の人」です。>>続きを読む

陽暉楼(1983年製作の映画)

4.0

ずっと観たいと思いつつも長らく機会のなかった宮尾登美子×五社英雄初体験です。

あまりにもマッチョで嫌気が差したら即時撤退と思って観始めたんだけど意外や意外、男のマッチョな部分を醜く情けなく見窄らしい
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野獣死すべし(1980年製作の映画)

3.8

バッキバキに世界観キメてる。よくぞここまで恥ずかしげもなく開き直って大真面目にやりきったな。これは清々しい。これが角川春樹イズムか。

松田優作がカリスマなのってこういうことか。『探偵物語』や『ブラッ
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ロマンスドール(2019年製作の映画)

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20代の時数年間美術モデルを生業としていた人間として看過できないものがある。

美術モデルの現場というのは「モデルに指一本たりとも触れない・触れさせない」という鉄の掟があります。そういう空気を何よりも
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アビエイター(2004年製作の映画)

3.7

スコセッシは映画作りが上手いなぁ。皆知ってることだけど改めてそう思う。これ長いよ、長いんだけど捨てカットがない。恐らくもっともっと長い5時間くらいのものから泣く泣く切って切ってそれでもこの長さでもっと>>続きを読む

海と毒薬(1986年製作の映画)

4.5

最近やっと『サンダカン八番娼館 望郷』観て、これも観て、私ずっと熊井啓監督の芸風って取り上げるテーマがテーマなのでもっとくだらない御涙頂戴な情緒たっぷりの押し付けがましいウェットなお勉強野郎的なものだ>>続きを読む

ジオラマボーイ・パノラマガール(2020年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

瀬田なつき監督渾身の一作。


この映画の制作情報初めて見た時「え?何で今『ジオラマボーイ・パノラマガール』?」って思ったんですよ。岡崎京子作品の中でも映像化されるような重要作ではないという認識だった
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ラスト・ムービースター(2017年製作の映画)

3.6

いや、多分いい話だったと思うんだ。きっといい話。サンダンスの匂いがするような。途中のホテルのシークエンスはロスト・イン・トランスレーションみあったし。東京のホテルみたい!とか言ってたから完全に意識して>>続きを読む

愛の嵐(1973年製作の映画)

3.8

サイモン・ヴィーゼンタールさんこいつらです!サイモン・ヴィーゼンタールセンターの必要性がよく分かる。と同時に我々はこういうものを観ると自分をナチ側ではなくユダヤ人側に置きがちですが、実際にはナチ側にい>>続きを読む

私はあなたのニグロではない(2016年製作の映画)

3.4

黒人男性の黒人男性による黒人男性のための語り口。ローザ・パークス無き公民権運動の話。イライラした。私たちのナラティヴは無かったことにされている。私はアジア人の女、有色人種の女ですからあえて「私たち」と>>続きを読む

ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

4.5

アルモドバルがもう一度会いたいけど会えない人に会うために作った映画。

彼にとってあまりにも大事すぎて外に出すのが怖いものほど慎重に慎重にメタ構造を重ねて行くので何が大事なのか分かりやすい。

元カレ
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白夫人の妖恋(1956年製作の映画)

3.5

なるほどこれが李香蘭こと山口淑子か。確かにこれは伝説。これは殺せない。殺したら内乱起きる。ヒロヒトと同じ理由で殺せない。

『李香蘭 私の半生』を読んだ時に彼女が死罪を免れた理由がふわっとしていてよく
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サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)

4.5

「みんな、日本に背ば向けて眠っとらすと」これよな。この言葉に収斂させるためのドラマツルギー。

なるほどこれが田中絹代か。確かにこれは伝説。ヴィオラ・デイヴィスやソン・ガンホの先駆者だ。先駆者いたんだ
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渚のシンドバッド(1995年製作の映画)

4.0

1995年に「同情ファシスト」という言葉を浜崎あゆみに吐かせている。「感動ポルノ」にどこか通じるような意味合いで。その感情というか事象に名前を付けるのが早い。そしてその同調圧力を撥ねつける浜崎あゆみ。>>続きを読む

二十才の微熱 A TOUCH OF FEVER(1993年製作の映画)

3.6

なんだこれ。映画としては完全に破綻している。のだけれども、芸術というものが声にならない心の叫びを表現するものなのだとすれば絶対に無視できないし無視してはならない。

大学生の時ぶりに観たのだと思うので
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ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ(2015年製作の映画)

3.3

NYジャクソンハイツ地区にいらっしゃるコロンビア系移民の人々が2014年サッカーW杯ブラジル大会をスポーツバー観戦してる様子で流れている試合の相手が青っぽいユニフォームのチームで、この大会日本もコロン>>続きを読む