淀川コーエンさんの映画レビュー・感想・評価 - 14ページ目

淀川コーエン

淀川コーエン

映画(754)
ドラマ(23)
アニメ(0)

ハリーとトント(1974年製作の映画)

4.5

妻を亡くしNYのアパートの強制立ち退きにあう老人ハリー。
愛猫トントとともに子どもたちの家を訪ねあるく『東京物語』的ロードムービー。ちょっと『幸福の黄色いハンカチ』な展開も。
まったく擬人化されていな
>>続きを読む

儀式(1971年製作の映画)

5.0

戦後、自壊していく家父長制を旧家の冠婚葬祭を通して描く。
60〜70年代の混沌とした社会のなかで心の拠り所を失っていく人々の、見るものにやわな感情移入など一切させないストーリーと圧倒的な画力。
この時
>>続きを読む

銀河(1969年製作の映画)

3.0

スペインの聖地へと旅する2人の放浪者が出会うさまざま時代のキリスト教の教義と異端を描く。
無神論者だからサッパリわからないのかと思ったら、そういうことではなかった。その程度のことにも"呪いあれ"と歌っ
>>続きを読む

アントニー・ジマー(2005年製作の映画)

2.0

『ツーリスト』のオリジナルと知らずに見る。ツーリストも見ていないので、種明かしに驚くはずが啞然。
見覚えのあるベテラン刑事は『はなればなれに』『夕なぎ』のサミー・フレイ。渋い。

審判(1963年製作の映画)

4.0

カフカの小説の映画化。理由がわからぬまま逮捕され裁かれることになる男。が、一向に裁判は始まらず、という不条理劇。
冒頭のアニメ寓話「掟の門前」がテーマ。自分にとっての「門」とはなんだろうと考える。
>>続きを読む

東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語(1970年製作の映画)

2.5

大島渚監督ATG作品。
学生運動家が遺した映像と、思想や性意識がなんやかんやの映画。
「自分とは何か」を自問しなければいられなかった時代を感じる。ノンポリとしては難解な作風。モノクロの映像とスタイリッ
>>続きを読む

ノスタルジア(1983年製作の映画)

4.0

ロシアの映画監督アンドレイ・タルコフスキーの晩年の作品。イタリアでこの映画の撮影後、亡命を果たす。

ストーリーが難解であろうとも芸術は人の心を揺さぶる。水や火のゆらぎに反映したのは祖国と一体化できな
>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

3.0

日本のドラマでもリメイクされ、ネタバレしているだけに新鮮味はなし。
スクート・マクネイリーはどこに出てる?ってことで鑑賞。
いました。例のサイコ妻にレイプの濡れ衣を着せられた昔の男として登場。
ベン・
>>続きを読む

デスプルーフ in グラインドハウス(2007年製作の映画)

5.0

グラインドハウスという70年代アメリカのB級映画を模したタランティーノ映画。エロとバイオレンスが炸裂する。
カート・ラッセル演じる殺人鬼と耐死仕様(デス・プルーフ)に仕上げられた車が素足の女性たちを狙
>>続きを読む

サボタージュ(1936年製作の映画)

3.0

俳優にとって見せ場となる殺しのシーンを、あえて台詞による演技をさせず俳優と物のショットの並列によって表現したシーンがあるというので確認のため視聴したヒッチコック作品。なるほど。
幼い弟を死に追いやった
>>続きを読む

ウィークエンド・アウェイ(2022年製作の映画)

3.0

週末を利用してクロアチアに住む親友と再会した主人公が事件に巻き込まれるサスペンス。程よく怪しいヤツらを散りばめた程よいドンデン返し。

が、レイトンにはもうちょっと服着てほしいし、追いかけられてからそ
>>続きを読む

マイケル・コリンズ(1996年製作の映画)

3.5

アイルランド独立の実在の英雄を描く。ニーソン、リックマン、グリーソン父、ダンスら渋いメンツがずらり。

スパイものさながらにスタイリッシュな前半から一転、英との条約をめぐる内紛へ。史実を踏まえておくと
>>続きを読む

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)

3.5

独裁者いじりのコメディかと思いきや結構ブラックなモキュメンタリー。
蘇ってしまったヒトラーはTVの人気者に。一般人を巻き込んで映し出すのは、無関心と無知と排外主義の現代。「国民が私を選んだ。私は人々の
>>続きを読む

フィフス・エステート 世界から狙われた男(2013年製作の映画)

3.0

内部告発サイトウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジを描く。
ナンバー2のダニエルの著書を基にしたこの映画にアサンジはおかんむりだとか。
比べてナンだけど『スノーデン』ほどのスリルもなく残念。

ハイ・フィデリティ(2000年製作の映画)

4.5

音楽オタクのダメ男が彼女とヨリを戻したい一心でもがきまくる。
キューザックが脚本も手掛けた男の本音が面白い。
女性に幻想を抱かなくなる、大事!

この映画のインタビューでキューザック曰く、「僕が16-
>>続きを読む

セバーグ/セバーグ 素顔の彼女(2019年製作の映画)

4.0

公民権運動に共感し資金提供していたことから政府の監視対象となったジーン・セバーグ。執拗な盗聴とプライバシーの暴露によって心を病んでいく。

政治信条だけではなく、何か大きな"渇望"を抱えていたように思
>>続きを読む

その瞳に映るのは(2021年製作の映画)

4.0

第2次世界大戦、英のカルタゴ作戦のさなか、寄宿学校を誤爆。多くの犠牲者を出した実話をもとにした映画。

戦時下に真っ当な判断や作戦などあるのだろうか。あるのは混乱と狂気だけじゃないか。もうやめようよ、
>>続きを読む

ハンナだけど、生きていく!/ハンナはいつも、アイされたい(2007年製作の映画)

3.5

グレタ・ガーウィグのマンブルコア作品。『フランシス・ハ』につながるガーウィグの自分探し。
脚本家という設定、即興演技、手持ちカメラが映し出すのはガーウィグそのものなのだろう。あっけらかんとしているよう
>>続きを読む

サイの季節(2012年製作の映画)

3.0

イスラム革命で投獄され死んだとされた詩人とその妻、妻に思いを寄せる男の30年に及ぶ愛憎劇。

亡命生活をおくるイラン人監督バフマン・ゴバディ。亀や馬、サイを使って詩の世界を幻想的に描く。
美しい映像が
>>続きを読む

ザ・コールデスト・ゲーム(2019年製作の映画)

3.5

1962年キューバ危機に瀕する米ソの諜報戦に巻き込まれる酔いどれ天才数学者。チェス大会の裏で内通者との接触を命じられるが。
舞台となるポーランドの歴史を反映したスパイサスペンス。ポーランドに今のウクラ
>>続きを読む

アメリカン・ドリーマー 理想の代償(2015年製作の映画)

3.5

石油ビジネスを拡大する主人公(オスカー・アイザック)を何者かが執拗に妨害。真相に迫る一方、どこまでクリーンでいることを貫けるか。理想の代償という普遍的なテーマを現代に映し出す。ジェシカ・チャスティンが>>続きを読む

ファンキーランド(2012年製作の映画)

3.0

薬物中毒の母を更生施設に入れようとする息子。自身のピアニストへの夢との葛藤を描く。
『ゾンビランド』に引っ掛けたい気満々の邦題だけどコメディではなくヒューマンドラマ。アイゼンバーグが安定の息子感。

アイデンティティー(2003年製作の映画)

4.5

大雨で外部と不通となったモーテルでの連続殺人。何から何までベタだなと思ってたら、あらまビックリ。狙ったものとわかったあとも程よく残るB級感と90分という短尺も良。絶対にネタバレ禁で。

フラットライナーズ(2017年製作の映画)

3.5

'90の同名作のリメイク。臨死体験を試す医学生達。体験後、様々な能力が増す一方、封じ込めていた自責の念が幻覚を引き起こしー。

前作の学生キーファー・サザーランドが教授役で登場。「ワシも若い頃…」とい
>>続きを読む

グッド・ヴァイブレーションズ(2012年製作の映画)

5.0

アイルランド、ベルファストを舞台にパンクロックに生きる意味を見出す実在のレコード店主テリー・フーリーを描く。背後にあるアイルランド紛争をおさえておけばなお楽しめる。音楽の力を信じたくなる1本!

父さんはオジロジカ・ハンター(2018年製作の映画)

3.0

ハンターの父が離婚後離れて暮らす12歳の息子を連れて狩りへ。
今どき"狩り"を通して命の尊さを、でもないな、と思ったら、なるほど自分の存在価値の不安というテーマが見えてくる。親が子に、大人が子供に教え
>>続きを読む

ビルド・ア・ガール(2019年製作の映画)

3.0

文才を武器に辛口ロック批評でのし上がっていくティーン。
成長ものとしては充分面白いけれど、バカウケしたという酷評はチラッとしか出てこないし、ラストでエマ・ワトソンが惚れ込んたコラムってのもお披露目なし
>>続きを読む

ドリアン・グレイ/美しき肖像(1970年製作の映画)

3.5

若さを保ってやることはアレしかない、と言わんばかりの多彩なプレイがヘルムート・バーガーの美しさを超えて笑いを誘う。馬小屋で……。
一方、順当に老けていくヘンリーもゲスい。老いってそんなに罪なのか。
>>続きを読む

ヒッチャー(1986年製作の映画)

5.0

ルトガー・ハウアーが殺人ヒッチハイカーを演じる不条理スリラーの名作。

C・トーマス・ハウエルが好きだった当時、ルトガー・ハウアーの恐ろしさに震えたトラウマ映画。久々に見直しても怖かった。

物理的に
>>続きを読む

マーサ、あるいはマーシー・メイ(2011年製作の映画)

4.0

カルト集団から自力で逃げ出し姉夫婦と共に暮らし始めるが、マインドコントロールが解けず―。
なぜカルトに入ったのかも抜けたのかもあえて描かれていない。精神的な繋がりが持てなくなった人に対するどうすりゃい
>>続きを読む

ミルク(2008年製作の映画)

4.0

同性愛者であることを公表しアメリカで初の公職についた政治家ハーヴェイ・ミルクの最後の8年を描く。実写部分も多く映画的脚色は少ない。ゆえに淡白な仕上がりながら、そこがミルク本人の誠実さを彷彿させる。>>続きを読む

ハーヴェイ・ミルク(1984年製作の映画)

3.5

映画『ミルク』(2008年)の基となったドキュメンタリー。
ダン・ホワイトによる殺害の動機は妬みと私怨。が、相容れない価値観を持つ者を排除しようとする社会とその中で行われた裁判にみる問題は根深い。この
>>続きを読む

テスラ エジソンが恐れた天才(2020年製作の映画)

3.0

天才発明家ニコラ・テスラの半生をキテレツな演出で描く。

イーサン・ホークが天才、というのがピンとこなかったけれど、終盤、天才がゆえに孤立していく姿が見事にハマりだす。エジソンが俗物すぎて(笑)

>>続きを読む

エジソンズ・ゲーム(2019年製作の映画)

3.5

原題の通りウェスティングハウスとの電流戦争がテーマ。 "どう売るか"に長けた実業家エジソン。

やがてハリウッド映画の誕生につながるエジソンの"黒さ"をもっと見せてほしかった。テスラが普通にイケメンす
>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

4.0

トクシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)が描かれてるんじゃないだろうか、と解釈するもののそれだけじゃないような、とにかく奇怪。
終盤のたたみかける展開には主人公と同じように引いてしまう。

前後
>>続きを読む

ペイド・バック(2010年製作の映画)

4.0

ナチス戦犯の医師(モデルはメンゲレ)の捕獲任務の末、射殺したイスラエルモサドの3人。が、30年が過ぎ真実が暴かれようとしー。

作戦もさることながら3人の関係性がスリリング。
『女神の見えざる手』のジ
>>続きを読む