ピロシキさんの映画レビュー・感想・評価

ピロシキ

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美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.7

邦題は的確かつ率直な訳。

「写真家ナン・ゴールディンvs.サックラー社」をめぐる、beautyとbloodshed。自らのアートを用いて、社がやらかした失態に抗議する。ピルケース投げたり処方箋ばら撒
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ローラ(1981年製作の映画)

3.4

ファスビンダーじゃなかったらそもそも観ようとすら思わないであろう絶妙につまらないお話(なんとリメイク)は、売春宿の便所から幕を開ける。ギラギラのライティングに彩られ煌びやかに着飾った女と、彼女を取り合>>続きを読む

フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

3.8

フォロウィング(尾行)を趣味とする男が、家宅侵入するコッブという名の男と知り合い、行動を共にし、しだいにコッブの言葉にフォロウィング(追従)するようになり、ついにはコッブのフォロウィング(模倣)を始め>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.2

パスト・ライブス(前世)の意味を紐解くような、終盤の横移動は美しい。でもごめんなさい、これはさすがに過大評価だと思う。うがった見方から抜け出すことができなかったのは単に自分の都合。しかし仮にもかつて勉>>続きを読む

ソドムの市(1975年製作の映画)

4.0

ついに観てしまった。ウンコはまだしも、やっぱり最もショックが強いのはラスト5分のシーンだった。罪のない無垢で美しい市民が、権力者から一方的に弄ばれ、虐げられる光景。そしてこのあとパゾリーニ監督が(まる>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

4.2

あとから解説に「全8章で構成される」と書いてあるの見て「どこが!?」と声出た。どこで章変わってたのか自分にはまるでわからなかった。意味を持たせようとすればするほど、わけがわからなくなっていく。あらすじ>>続きを読む

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)

4.4

Amazonで4,0000円超えの廃盤DVDを買うべきか否か、迷った末にようやく再上映の機会を見つける。面白かったとか以前にとにかく「みた…!」って感じである。ご飯食べてから観たら絶対寝るという確信が>>続きを読む

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作の映画)

4.6

邦題。置いてけぼりのホリディ。ちょっと待ってイが小さい…イが小さィ…

中盤からロードムービーになる構成も、音楽も、ところどころ同監督『ネブラスカ』を彷彿させる。ネブラスカ大好きな自分にとっては、無条
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

アラキスのフレメンたちからマフディーだと思われてムアディブだのウスールだのと名付けられたポールが、フェイダキンになったあとゼンデイヤといい感じになったりリサン・アル・ガイーブとして崇められたりする一方>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.2

声出して笑えるシーンの後に、すかさず訪れるシリアスなシーン。喜劇は悲劇と表裏一体、これがブラック・コミュニティの現実だ……ってちょっと待ちなさい。アメリカン・フィクションというタイトルを通して、逆説的>>続きを読む

ニモーナ(2023年製作の映画)

3.4

エキセントリック少女ガール。これといってたいした感想は浮かばないが、主人公の男子にナチュラルに彼氏がいる感じとか、新たなスタンダードを打ち出そうとする姿勢には畏れいる。ただ、ニモーナがやかましくいろん>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.9

より鮮明になった映像のお陰もあり、もはや新作。2000年製作だが時代性は皆無で、むしろ民衆が蜂起して街に火の手が上がるシーンなんて、ついこないだのニュース映像みたいで、もはや現代。〈街の広場に現れるサ>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

よくできた法廷ドラマ。それも、たいした毒味のない、たいした風刺もない、ただのよくできた法廷ドラマ。その範囲を出なかったんだが、あれやこれを差し置いて何がそんなにパルムドールだったのか、あれやこれを差し>>続きを読む

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

3.6

くしくも今朝、"本物かどうか見分けがつかないような" 動画を生成するオープンAIの「SORA」が誕生したというニュースを目にして、この作品にも親和性を覚えることとなった。恐るべきスピードで進化するAI>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.3

体感209分。総じて意味不明。ラストだけ声出そうになったので増星。謎だらけだがもはや解き明かす気もなく、謎は謎のままで結構。個人的な妄想の具現化に莫大な予算が投じられる、アリ・アスターとA24との信頼>>続きを読む

カラーパープル(2023年製作の映画)

2.9

大雨のなか乱暴に家を追い出され、ショットガンまで突きつけられて大ピンチの妹に向かって姉が言い放つ「手紙書いてネェ〜〜!!」に、不謹慎ながら派手に吹いてしまった。たしかに妹が出て行かないと物語は動かない>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.1

一度で覚えられないような苔の名前を完璧に暗記している彼女だが、二度も出会って心を通わせた彼の名前は、知らない。それでもいいのだ。スープの温かさが胃にも心にもやさしい、ある出会いについてのお話。日にち経>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

その気になったら2,3日(つまり2,3晩)で撮れるかもしれない、かなりミニマルな作り。終電乗り過ごしたおかぁちゃんがなんとかして朝方に帰宅するまでの間に、いろんな人と出会い関わって、良くしたり良くされ>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.7

いくらなんでも、良すぎやしないか。個人的にはK点超えの(『ケイコ』を超える)傑作だ。

中盤から我慢できなくなった隣のおねえさんがチラチラスマホを触り始めていたけど、なんならその眩しい光すら、オリオン
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.4

嗚呼。31年間映画製作から離れていたビクトル・エリセ。主人公はまさしく監督の分身。それにしても、デブュー作「ミツバチ」からちょうど半世紀を経て、アナ・トレントが放つあの一言。正直、あの一言のためだけに>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.7

グラシネ池袋IMAX、上映後自然に起こる拍手。我慢して大人しく座っていられた自分を褒めたい、脳内絶叫上映。クリアな映像と音像いや、バカでかい画面とバカでかい音に圧かけられまくって、終始幸福。なんか途中>>続きを読む

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

3.8

相変わらずの入れ子構造、今回は"劇中劇中劇中劇"にまで層が分かれ、最初から最後まで途切れぬフラッシュ暗算並みの爆速字幕スーパー。不親切にも程があるし、しかも肝心のお話自体も別に魅力的ではない。でもやっ>>続きを読む

彼方に(2023年製作の映画)

3.3

18分はあっという間。楽しかった思い出も、悲劇も、あっという間。でも愛する家族を失ってからも続く人生は、長い。なぜ自分だけいつまでも生きているのかと、「生き残ってしまった」ではなく「死に後れてしまった>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

ウェス・アンダーソンとテリー・ギリアムを掛け合わせた、みたいな海外評を目にしたけど、何をおっしゃる結局超ランティモスだった、話題の新作。やっぱり出てくる奇天烈なダンスシーンあたりからズボッと吸い寄せら>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.5

家族以外の誰かから注がれる愛によって、少女が成長を遂げていく。キム・ボラ監督の大傑作『はちどり』を思い出す。

この子が黙っているのは、必要なことしか話さないから。みんなもこの子みたいだったらいいのに
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テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR(2023年製作の映画)

4.0

コロナ禍にアルバム2作、その後にもう1作。アルバムごとのツアー最近やれてないか、じゃあ今までのアルバム全部まとめて3時間超えのライブやるか で誕生したとかいうThe Eras Tour。同時期公開のビ>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.7

男性の腰抜けっぷりは意図的に強調され、圧倒的に芯の強い女性像が際立つ。これは、2023年にAppleスタジオから生まれた、巨匠による2つの大作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、そしてこの『ナポレ>>続きを読む

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(2011年製作の映画)

3.6

最終作の、しかも終盤で、一作目からずっと張られ続けてもはやとっくにビヨンビヨンにたわんでいた、スネイプに関する「伏線」がようやく成仏する。ハリーもハリーで、まだ背も伸びきらないうちからあんなに「スネイ>>続きを読む

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(2010年製作の映画)

3.6

ここまで物語に華を添えてきた主要人物にもかかわらず、最期のシーンすら与えられず、「実はさっき死んだ」の事後報告で右から左へ受け流される、ムーディの死の悲報。ところどころアッサリしすぎてコケそうになるぐ>>続きを読む

ハリー・ポッターと謎のプリンス(2008年製作の映画)

3.6

暗いのは物語だけで結構。画面まで暗くなってしまったせいで、全情報の3割程度は暗闇に紛れて見逃している気がする。マジで「嫌がらせか」ってぐらい暗い。よく見えない。

さて、ロンがクィディッチでモリモリ頑
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彼方のうた(2023年製作の映画)

3.7

オムレツ作ってるキッチンを延々捉えつづけるシーンには、ほんのり「ジャンヌ・ディエルマン」感すら漂う。日々の営みにフォーカスが当たるのは、その営みの中にドラマがあるから。過去を演じて再現して撮るワークシ>>続きを読む

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(2007年製作の映画)

3.5

そして、これ以降のシリーズから「あの人死んだのどれだっけ」のオンパレードで脳内がクッチャクチャになっていくのだ。悪く言えば、ここから最終巻まで大して差がなくただただ「全部暗い」。さほど感傷もないままに>>続きを読む

ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005年製作の映画)

3.2

比較的平和だった前3作を受けて、壮絶な戦闘の火蓋を切って落として後3作へ渡す、分岐点として重要な機能を果たすのがこの「ゴブレット」。しかし物語としては、これがいちばんパッとしない。正直なところ前作の「>>続きを読む

ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002年製作の映画)

4.0

爆裂大ヒットした前作を経て2作目製作しますとなった時点で、まともな監督なら「世界中のファンの期待を裏切らないこと」を命題にしてそれに終始するのは当然である(あるいは大人の事情で「当然にされる」)こと。>>続きを読む

ハリー・ポッターと賢者の石(2001年製作の映画)

4.2

最近10代の方と話す機会があって「ハリー・ポッターの映画が好きです!」と言うものだから嬉しくなって「懐かしい!映画館にも観に行ったなあ。原作の本の発売日に本屋さんに長ーい列ができるのがニュースで流れて>>続きを読む

マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

3.5

ブラッドリー・クーパーは「この役が自分に務まるか、不安で仕方なかった」と、インタビューで先に読んじまってなあ。スピルバーグから監督を譲り受け、脚本の共同執筆にもかかわり、徹底的に指揮を研究し…バーンス>>続きを読む

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