緑雨さんの映画レビュー・感想・評価

緑雨

緑雨

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ラストマイル(2024年製作の映画)

4.0

こんなAmazonに喧嘩売るような映画、TBSがよく作ったなあ。

どんなにデジタル化が進んでも、モノを物理的に移動させて受け渡すところだけはデジタル情報には置き換わらない。一方で、究極まで生産性と効
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バッファロー’66(1998年製作の映画)

3.5

20数年ぶりに再鑑賞。

ダメ男による妄想ファンタジー。まさにミニシアター的な他愛ない小品。今や通用しそうにないジェンダー観を含めもはや絶滅危惧種だが。

何と言っても、全てを包み込むミューズとしての
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インサイド・ヘッド2(2024年製作の映画)

3.5

思春期アラームが鳴るや、司令部の操作パネルが作り替えられて高度化し、新たに複雑な感情キャラが登場する。自我の芽生えとともに生じる変化。

「今このとき」の喜怒哀楽に生きてきた子供時代は終わり、まだ起こ
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アルマゲドン(1998年製作の映画)

3.5

作劇は黒澤の『七人の侍』形式、父と娘(とその恋人)の関係性は(無理矢理こじつけるなら)後期小津作品とも通底し、骨格としては劇映画のツボを押さえている。

そこに、アメリカ映画らしい石油掘りという職業の
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大いなる不在(2023年製作の映画)

4.0

もともとクセのある人物が認知症を患った際の態様をリアルに演じる藤竜也の名演(怪演)には恐れ入る。

認知症発症を契機に、それまでギリギリ保たれていたバランスが崩れていく様というのは題材としてはけっして
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ルックバック(2024年製作の映画)

4.0

「中学生が漫画を一本仕上げるだけでもすごいんだよ」

「描いても描いても完成しない」

作品を生み出すこと、表現すること、創作のために費やされるエネルギーの壮絶なまでの大きさ。そしてだからこそ作品が支
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ドリームプラン(2021年製作の映画)

3.5

ウィリアムズ姉妹が長期にわたりトップクラスで活躍し続けられたのは、父の立てたプラン(教育指針)があってのものだった。子供を潰す毒親たちやバーンアウトしてしまったカプリアティとの比較で、そこを一貫して描>>続きを読む

ポリス・ストーリー3(1992年製作の映画)

3.5

前2作とは全く別の映画になってしまった印象。舞台は香港を飛び出し、アクションのスケールもハリウッド級。『ミッション:インポッシブル』よりも先にこれをやったというのは結構驚き。

ジャッキーの縄梯子宙吊
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違国日記(2023年製作の映画)

3.8

けっして完璧な映画ではなく欠落もたくさんあるように思えるが、それでも愛おしい。人と人との繋がりの深いところを丁寧に描こうとしているし、新垣結衣も誠実に演じていることが伝わる。

原作は読んでいないので
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ポリスストーリー2/九龍の眼 クーロンズ・アイ(1988年製作の映画)

3.0

幹線道路沿いのレストラン、遊具のある公園、クライマックスの廃工場と、ロケーションを活かしたアクションは相変わらず楽しいのだが、前作のこれでもかと言わんばかりのボリューム感と比べると物足りなく感じてしま>>続きを読む

ミッシング(2024年製作の映画)

3.5

現代社会の負の部分を余すところなく反映しているが、全体の作劇としては想像を超えるものは無かったというのが正直な印象。

石原さとみは気合十分で、少なくともアイドル女優からの脱皮という意味ではもちろん及
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

3.8

終盤まで極上の語り口に心酔していたのだが。まるでチョークスリーパーの達人に絞め落とされたかのような後味…

序盤から清らかな自然とともに暮らす高原の集落の在りようが美しく映し出されるが、どこか不穏な空
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お早よう(1959年製作の映画)

4.0

放屁で始まり、風にはためくパンツで終わるという、何ともしょうもない話だが、楽しくって多幸感溢れる。

当時、実際にあんな長屋に毛が生えたような新興住宅が作られていたのかは寡聞にして知らないが、路地の向
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シャレード(1963年製作の映画)

4.0

先日「プロフェッショナル 仕事の流儀」で青山剛昌が、「ミステリとラブコメって、とことん相性が悪い」と言っていたのを見たばかりなのだが、この作品は両者の見事な融合としてお手本といってもよいのではないか。>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.5

世界中至る所でキナ臭さが増している今の時代における作品の意義は認めるものの、戦後80年近くこの葛藤に苛まれてきた日本人からすると、今さら何言ってんのよと言いたくもなってくる。

正直、前半は説明的な場
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ラストコンサート(1976年製作の映画)

3.0

タイトルと冒頭の医者のセリフだけでどんな話かほぼわかってしまう。全体としては難病もののフォーマットそのものだが、強引にロマンスを成立させる前半部の力業には独特の扇情力がある。一部の映画ファンの間で語り>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

デビッド・フォン・エリックが来日中にホテルで急死したのは1984年2月、追悼試合でケリーがリック・フレアーからNWAのチャンピオンベルトを奪ったのが5月。
当時小学校5〜6年生だった自分が最もプロレス
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

3.8

オープニングシーンを観て、コメディタッチの映画なのかと思ったら大間違い、予期せぬ方向へと物語は展開していく。

観ていて苦しくなってくるようなシーンも多いが、一果役・服部樹咲のダイヤの原石たる圧倒的存
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生きる LIVING(2022年製作の映画)

3.8

思っていた以上に、オリジナルに対して誠実なリメイクだった。

オリジナル黒澤版の肝となる精神性はリスペクトされ、役所のたらい回し、ゆきずりで出会った男との放蕩、葬式での回想、雪の中のブランコなど、鍵と
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カラーパープル(2023年製作の映画)

3.5

前半部の状況の過酷さ非情さは、観ていて鬱々とした気分になってくる。そんな中でも微かな喜びや希望の表現としてミュージカルシーンが置かれているのだろうけど、状況の暗澹さの方が勝ってしまいあまり入ってこない>>続きを読む

おとなの事情(2016年製作の映画)

3.0

幼馴染の親友とそのパートナーという近しい間柄が、ギスギスした空気に一変する微妙な関係性は巧く描かれているものの、ゲスな展開は想定を超えず、しかも下半身ネタに偏っていて単調。コメディというほど笑えなかっ>>続きを読む

はじまりのうた(2013年製作の映画)

4.5

「音楽の魔法だよ。平凡な風景が意味のあるものに変わる。美しく光り輝く真珠になる…」劇中のマーク・ラファロのセリフだが、即席バンドが野外セッションの撮影を重ねていく幸福なシーンが重ねられる後半はまさに魔>>続きを読む

ミナリ(2020年製作の映画)

4.0

愛憎を抱えて苦闘しながら懸命に生きる移民家族の物語を通して感じられるのは、大地、陽光、そして水が与えてくれる生命の豊穣。

教会、十字架を担ぐ男、エクソシズム、ダウジングなど宗教性やスピリチュアルな色
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

3.0

ジャン=ピエール・レオ、家事も宿題も彼なりに真摯に取り組もうとしているのに何故か周囲に認められない。要領よく生きられない苦しさ。ボヤの後、急に家族3人仲良く映画を観に行った帰りの車内での楽しげな表情。>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.8

切った爪を植木鉢に捨てる、片付けたロッカーに手を合わせる、オペレーターを「先生」と呼ぶ、出前の寿司桶を丁寧に洗う。倍賞千恵子の所作の一つ一つが丁寧に印象深く演出されている。

或いは、磯村勇斗の叔父た
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.5

何がパーフェクト・デイズなのだろうか。ルーティンで固めた安らかだが単調な日々を送ること、そして密かな○✖️ゲームのやり取りのように日常を乱さない程度のささやかな楽しみが紛れ込んでくることだろうか。しか>>続きを読む

チャンプ(1979年製作の映画)

3.0

如何にも「泣かせ」の教科書に忠実に作った作品という感じがして、自分のような観客は逆にシラけてしまうのだ。人間ってもう少し複雑な生き物ではないだろうか。

と言いつつも、好いところもけっこうある。まず競
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最前線物語(1980年製作の映画)

3.5

戦車の中での出産シーンが素晴らしすぎる。諦念の充満する過酷な最前線に、ふいに訪れる和みとユーモアの匙加減。

オープニングの暴れ馬、二つの大戦を結びつけるキリストの磔刑像、花で飾られた鉄兜…印象的な画
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いまを生きる(1989年製作の映画)

3.5

おそらく15〜20年ずつ間を空けての三度目の鑑賞。前回30歳くらいの頃に観た際には登場人物の意気地のなさに腹を立てたものだが、この歳になると弱者なりのプロテストの在り方を一周回って理解できるようにはな>>続きを読む

アマデウス(1984年製作の映画)

4.0

「上を見たらキリがない」とか言って簡単にあきらめてしまうのが凡人の凡人たる所以。彼(サリエリ)はけっして凡人などではない。

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.0

映画がこれまで真正面から向き合ってこなかった対象に踏み込みながら、オーソドックスな家族の物語を暖かく描いている。前者の要素がなければオスカー受賞もなかったかもしれないが、愛すべき小品と言える。

ヤン
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.5

「わだつみ作戦」がついに実行に至るまさにその瞬間、伊福部昭のテーマ曲が流れ始め、背中がゾクっとする。ここから急に別の映画になったかのように空気が一変。茶番にも思えるその後の展開に不覚にも感動してしまう>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.5

原作は読んでいないけど、朝井リョウらしく今どきのネタをうまく掬い上げているものの、掘り下げがイマイチ浅いのもまた朝井リョウらしさ。全体的に腫れ物に触っている感が拭えず、終盤の展開も想定を超えなかった。>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.5

「勝手に産んで勝手に捨てて」
「産んで捨てるより産まずに殺した方が罪が軽いの?」

「一人じゃ何もできなかった」
「一人で全部やろうとしなくていいよ」

「お前を見ていたら自分の母親のことが理解できる
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ラジオ・デイズ(1987年製作の映画)

3.8

ラジオ・デイズ、娯楽の選択肢が限られていた時代。限られていたからこそ、非日常なキラキラした世界が、豊穣さを湛えた夢の世界として立ち現れる。

オープニング、ラジオ番組の生電話で繋がる暗闇の空き巣とオー
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マトリックス(1999年製作の映画)

3.5

20数年ぶりに再鑑賞してみたら、印象よりもだいぶこぢんまりした作品に感じられた。おそらく、その後に作られた『マトリックス』的な大作映画をたくさん観てしまったからというのもあるのだろう。

一方でこの映
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