れんさんの映画レビュー・感想・評価

れん

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ありふれた教室(2023年製作の映画)

5.0

辛うじて保たれていた秩序が静かに揺らぎ始める。標的へと容赦なく向けられる鋭い眼差しは逃げ場の無い小さくて狭い学校世界の中を乱反射し続ける。正しかろうが正しくなかろうがひとりひとり個人が持つ意見や意思、>>続きを読む

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023年製作の映画)

5.0

この作品を観たからと言って全てを分かったつもりになる気は到底ありませんが、今現状で起こっていることがどういう事なのかを切実に考えたい、切実に広く多くの人々に知って欲しい、観て欲しい、届いて欲しいと思い>>続きを読む

ミッシング(2024年製作の映画)

4.6

おぼろげで不確かな出口の見えない一筋の希望を頼りに疲弊していく心。無造作に晒され攻撃される事実と虚構、その狭間を彷徨いながら自覚的に演じる姿と必死の思いや姿、本気のしるしに抉られる。限定されない登場人>>続きを読む

胸騒ぎ(2022年製作の映画)

4.6

善意の存在を打ち消していくようにいつの間にか心に入り込まれ、暴力的に振りかざされる悪意、悪の存在を証明する邪悪さ。静かに仕掛けられる罠、不快さを感じながらも違和感を受け入れていく。身を守る術として穏便>>続きを読む

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

4.0

語り継がれていくシーザー神話。そのあまりにも大きな歴史の、大きな変奏の中を生きる世代。なぜこの世界で生きているのか生かされているのか、生存本能に従って生み出される強さと歪み。争うこと、手を取り合うこと>>続きを読む

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)

3.9

無敵で素敵で脆くて危うい好きという感情。恋は正しさをも打ちのめしていくかのようにただひたすらに真っ直ぐに走り抜けていく勢いと迷いや怖さ、移ろい易い心の不安定さを不穏にも纏う。時間感覚や記憶は曖昧で不確>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.8

憧れの人生に囚われた孤独。華やかに着飾られていく望んだ姿と蓄積されていく望まない違和感。籠の中の独特な空気感は居場所の無さと空虚さを際立てていく。プリシラの感情の揺らぎを淡々と描いていくことで見えてく>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

5.0

あまりに恐ろしく、ただそこに平然と存在するが故に厄介で雁字搦めに纏わりつく男らしさ、家父長制という身動きの取れない鎖。言語化できない苦しみを強くなることで乗り越えようと鍛え上げられていく肉体、深まって>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.7

勢いよく駆け抜けていく大怪獣たちの疾走感。猫味が増したゴジラの可愛さ、人間味が増したコングの逞しさ。大味に大味を重ねる力技、振り切ったやけくそ具合が最高潮に楽しいという感情を引き出してくれる。ものの見>>続きを読む

キラー・ナマケモノ(2023年製作の映画)

3.5

ノロマなふりをした凶暴な獣。愛らしくほのぼのした素朴な表情から一変、殺人モードへと予測不能な感情起伏で襲いかかる。安定感のあるB級を丁寧かつ粗雑にこだわりを持って突き進む。アニマトロニクスが醸し出すア>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

5.0

彷徨い続けながら惹かれ合う孤独な魂、蘇る記憶、あの頃が迫ってくる。記憶の実体として存在を確かめるかのように心を通い合わせることができる喜び。時代を超えて世代を超えて触れ合い語り合う価値観。複雑に分裂し>>続きを読む

チャイム(2024年製作の映画)

5.0

低体温な内側から外側へ熱を持って噴出する凶暴性。いつの間にか異空間へと誘われ、いつの間にか置き去りにされるバイオレンス。目に見えない何かの力が作用し、目に見える力で突如として表面化する。不気味なまでに>>続きを読む

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)

4.5

自分の声しか聞こえない。忌々しいほどの邪悪さを孕み放出される不吉で不穏な予兆。紐解かれていく過去、ダミアン誕生の歴史へと導かれていく。その最悪な歴史へと近づくにつれ、増幅していく悪魔の笑み、おぞましさ>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.2

暗黒に溶けだすアイデンティティの揺らぎ。悪魔の囁き、悪魔の手引によって誘惑され、解体されていく解放されていく崩壊していく精神。自分の死を客観的に観察する恐怖心と好奇心、そのおぞましさ。設定の面白さに加>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.5

人と人の繋がり、縁を描く。切なさを伴いながらも過去を想い、決して後ろ向きではなく前向きに巡り合う瞬間、あらゆる可能性の先に今があることを受け入れていく。生まれ育った場所、言語が私の歴史を作り、様々な人>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

5.0

生み出してしまった、生み出さなければならなかった恐怖。オッペンハイマーの半生を基軸に様々な視点、時系列が複雑に絡み合いながら人類が犯した大きな罪、愚かさを問う。慧眼にして盲目的に突き進んでいく危うさ、>>続きを読む

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

底知れぬ興味好奇心、フルで回転していく頭脳たち、その複雑な思考回路が生み出すすこぶる面白い攻防戦。少年少女たちの大胆かつ冷静で賢さも備えた堂々たる行動力の強さ、翻弄されゆく物語、展開に目が離せない。役>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

4.5

絶望が溶け込んでいく、何か変わったようで何も変わらない日常。不安や違和感だらけの世界で自らの、そしてお互いの絶対聖域を守りながら青春を走らせる。現代の繊細な感覚を反映させた物語を前にどれだけ我が事とし>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.5

記憶が錯綜し、曖昧を彷徨う。落下と共に解剖されていく夫婦関係、一面的ではない人間の複雑豊かな多面性。更新されていく曖昧な真相、ネガティブに切り取られていく情報、翻弄されゆく落ち着きのなさは現実と地続き>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.9

空白の時間、空白の記憶を巡る。様々な対話を通して得られる過去の断片的な記憶、浮かび上がる輪郭。相手を見て話す、瞳をとじて想う、見るという意味合いが様々な形に姿を変えて表出していく。時が経てば忘れていく>>続きを読む

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

3.9

耳を澄まして見る、感じる。術として、見て見ぬふりをしながら身を守る、生き延びる。暗闇の中で光を見る、希望を見る、真実を見る。恐ろしさがありながらも僅かながらの声を上げていく逞しさ力強さ。さも平然と私欲>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

3.9

闇に覆われた煌びやかな生命の灯火、物悲しく語られていく悲惨な生い立ち、見捨てられた傷だらけの孤独な魂に寄り添う犬たち。身を守るための装い、どれほどの痛みが伴おうとも、死への歩みは止めない、自分を生きる>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

5.0

砂漠の春。実世界と映画世界との境界線が霞むどころかきっぱり打ち消され全てを飲み込んでいく世界観構築力の凄み。前作から引継がれる端正な画作り、荘厳な風格、それらが更に鋭く研ぎ澄まされていく高解像度な洗練>>続きを読む

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

3.6

先の見えないほどに暗い海の中で漂う孤独な声たち。どんなに歌い続けていても届かない、拾うことが出来ない、すくいあげることが出来ない声。かき消され失っていく魂のゆくえ。誰しもが愛しく、愛し愛される存在であ>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.5

無意識で無神経な上から見下げる目線。物語、フィクションを多少なりとも嗜む我がにもコンテンツとして消費するだけになっていないのかと問う。鋭く噛みつく皮肉に毒づかれた視点は耳を傾けるべき時だと言いながらも>>続きを読む

神さま聞いてる?これが私の生きる道?!(2023年製作の映画)

4.0

マーガレットは悩む。家族や友達、恋心、身体の変化、宗教に。人生は豊かであり、目まぐるしい。まだまだ自分というものが分からないまま、定まらないままに様子をうかがいながら様々な考え方、生き方に触れ、知って>>続きを読む

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)

4.0

3つの物語に共通して響き合う、呼応し合う、悲しみ、痛み、罪の意識。三島有紀子監督の実体験からなる物語の重み、伝わってくる力強さ、凄み。思い出すのもおぞましい過去と向き合い対話する、自分自身で再現する、>>続きを読む

夢二 4Kデジタル完全修復版(1991年製作の映画)

4.0

初めて触れる鈴木清順の世界。掴みどころのない浮遊感ある強力で強烈な世界観。その世界観に呑み込まれ囚われる。切り取られていく構図の美しさ斬新さ、置いてけぼりにされながらも引き込まれる物語展開の大胆さ、恐>>続きを読む

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024年製作の映画)

4.3

原作漫画未読、アニメ未見の状態での鑑賞。根底に流れる健やかでピースフルなスポーツマンシップ。世代を超えて紡がれてきた青春、因縁、その決戦の熱量と躍動するアニメーションならではの力強さに引き込まれる。勝>>続きを読む

ネクスト・ゴール・ウィンズ(2023年製作の映画)

4.0

ポジティブに幸せでいるための気づき、認め合い。弱小チーム、負け犬たちが再起する姿、もたらす奇跡、サッカーを楽しむ引いては生きること、人生を楽しむ、その清々しさにじんわり心穏やかになる。おおらかでいて個>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.2

制御不能で邪悪な夢旅路。不安や恐怖、暴力に出くわし怯えながら危険地帯をくぐり抜け、行けども行けども辿り着かない安全地帯。でたらめに構築された夢のようでいて周到に張り巡らされた支配。ボーが巡る痛ましく気>>続きを読む

カラーパープル(2023年製作の映画)

3.9

暗闇の中を明るく彩るように切り開いていく逞しさ力強さ。本来持っている人間の強さ、それを取り戻すように、自分の存在を証明するように踊り表現し高らかに歌い上げる。スピルバーグ版とは異なる大胆なアプローチ、>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

包み込む優しさに包み込まれる温かさに救われていく気持ちたち。ついうっかり見過ごしてしまいそうになる日常の素晴らしさ、ささやかな生活に柔らかな光を照らしながら尊い世界の息づかいを感じることができる。人と>>続きを読む

犬人間(2022年製作の映画)

3.5

どうやら暮らしには不自由のない潤沢な生活を送っている好青年らしき人物の住処に何やら違和感のある犬。その様子はなんともシュールでありながら当たり前のように生活に馴染んでいる。初めからなのか、ある出来事に>>続きを読む

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年製作の映画)

4.5

リバイバル上映にて劇場鑑賞。ジェシーとセリーヌ、この後2人が辿る人生の一部分、行く末を知ってるが故に初々しくも残酷さが増していく輝かしい出会いに悶絶する。束の間の存在である2人がお互いに話が合う気が合>>続きを読む

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