ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価

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続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 4K復元版(1966年製作の映画)

3.9

 民家の出入口にシルエットとして登場するエンジェル。ドル箱3部作において、リー・ヴァン・クリーフの魅力は大きい。一言も発さずに嫌らしい笑みを浮かべながら、人の家の食事を平然と食べる余裕たっぷりの彼は、>>続きを読む

フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

3.7

 複雑な物語を時系列シャッフルによって更に複雑にするノーランの手癖が、長編第一作にして既に存分に発揮されていることが確認できた。映画に相応しい複雑さの種類、程度からの逸脱という意味ではノーランの悪癖で>>続きを読む

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.3

 『ミッドサマー』『ボーはおそれている』もそうだったが、アリ・アスターは肉親の死を物語の起爆スイッチとして使わざるを得ない人なんだな。ずっとスクリーンで見る機会を待っていたが、これも期待に違わぬ歪な傑>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.7

 多すぎる情報量を溢れさせながら時空間を次々に切り替え、アングルやショットサイズをせわしなく変更し、ひっきりなしに曖昧な宇宙イメージを混入させる語り口は、画面連鎖によって運動を構築しようとする映画のお>>続きを読む

夕陽のガンマン 4K復元版(1965年製作の映画)

3.8

 ファーストショットである超ロングショットに銃声が鳴り響き、馬に乗った人物が地に倒れ込むと、馬は、少々逡巡するようにその辺りをうろついた後、一直線に走り出しフレーム外へと出る。いいセンスだな。『荒野の>>続きを読む

荒野の用心棒 4K復元版(1964年製作の映画)

3.9

 初っ端から、泣き叫ぶ子供の足元を狙って銃を乱射する敵役。本作が、古き良きハリウッド西部劇では倫理的にアウトであろう描写で幕を開けるのは、本作がマカロニ・ウエスタンの鏑矢であることを象徴しているように>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.3

 退屈極まりない前作の体たらくのせいでほとんど期待していなかったのだが、あまりにIMDBのスコア等が高いのでしぶしぶ鑑賞したところ、驚くほどにクオリティが上がった続編だった。これだけ飛躍的に面白くなる>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.8

 冒頭、小気味良い環境音の連続がリズムを生み出し、小洒落た画がテキパキとしたテンポで寸断され連鎖していく。81分という上映時間については、物語が成立するギリギリまで切り詰めたエピソード数だけではなく、>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.7

 冒頭、3人のおじさんを月、太陽、地球に仕立て上げ、くるくると回転するおじさんを必死に連動させようとする主人公。アホみたいな面白みがあるのだが、これ笑わせようとしてるんだよね?タル・ベーラは重々しい真>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.8

 観客が皆死体の導入を予期している中でどのようにそれを提示するか。大音量の音楽に観客の気を逸らしつつ、全く死の匂いがしないショットの中で、盲導犬の動きに合わせてさりげなくカメラが動くと、死体が画面に侵>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.7

 しかしよくこんなにも神経に障る音、映像、シチュエーションを延々と連ねられるものだ。こちらの体調が芳しくなかったのもあってか、特に序盤はゴリゴリと生理的に削られる感覚があった。深夜、何度も何度も、流し>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.2

 トーキング・ヘッズは“Remain in Light”を聞いたことがある程度でほとんど知らないも同然だったのだが、これは楽しませてもらった。IMAXシアターの最後方端に席を取ったのは大正解で、周囲を>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.8

 まずは同時代人としてエリセの新作を劇場で拝めたことを喜びたい。賛否両論の声も僅かに聞こえてきており、期待しすぎてはいけないと自分に言い聞かせて映画館を訪れた。やはりというべきか、『ミツバチのささやき>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.7

 超広角レンズを乱用するランティモスの強烈なスタイルは胸焼けするような代物なのだが、設定がこれまた強烈なので均衡は取れているようにも思う。新生児の脳を埋め込まれれば世界もああ見えるかもしれない。どぎつ>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.7

 青い光が差し込む質素な部屋で、男は独身男性とは思えない丁寧さで布団を畳む。前進や創造ではなく、現状を維持することに向けられた些細な生活の動作を、細部に向かう視線が丹念に切り取っていくスタイルは、都市>>続きを読む

ターミナル(2004年製作の映画)

3.9

 派手なバトルなどない題材であってもあくまでアクションで、映像で物語ろうとするスピルバーグのスタイルが貫かれている。空港内のだだっ広い空間を極端に誇張するように引いていく超ロングショットの中で、遂には>>続きを読む

レザボア・ドッグス デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

3.8

 無内容の極みのダラダラとした会話劇が連続するのだが、やはり随所にタランティーノのセンスが迸る瞬間がある。オープニングの、クソみたいな会話を映し出しながらくるくると回転するカメラを見ながら、あータラン>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.7

 冒頭、ゴジラの登場シーン。パッとサーチライトを向けられたと思えば既に殺意を充満させているゴジラ。無駄な前振りがないこの登場は、ゴジラの理不尽さと凶悪さを存分に引き立てており、カメラ目線での咆哮にはに>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.7

 固定ショット主体の端正な画の積み重ね、劇伴の使用を限定し繊細な自然音に語らせる音響、暗い夜を暗いものとして提示する照明、物語を駆動する上では不必要な生活の細部を省かない姿勢。これらの総合によって高い>>続きを読む

ヘル・レイザー 4Kデジタルリマスター版(1987年製作の映画)

4.0

 謎の箱を購入するファーストシーンを手短にすませると、次のカットでは即座に開封の儀に入っている。続けざまに、人肉部品が引っ掛けられた謎の柱が回転し、大量の揺れる鎖がぶら下がっている謎の空間が登場する。>>続きを読む

呪詛(2022年製作の映画)

3.7

 目新しいイメージこそ提示されないものの、全体としてしっかり怖がらせようという意思が感じられて好感触。山奥の小さな呪術共同体の不気味なビジュアルが素敵で、最後の仕掛けも凶悪。見応えがあった。ちょっと家>>続きを読む

オペラ座 血の喝采 完全版(1988年製作の映画)

4.0

 冒頭、カラスの目に映る劇場の風景と、オペラのリハーサルに合いの手を入れ続けるカラスの鳴き声。プリマの女優がカラスにキレて劇場を去っていく様子を、大仰に、延々と主観ショット・ロングテイクで映し出した後>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.7

 どの役者を見ても濃い味付けの演技合戦が楽しい。荒木村重役の遠藤憲一の、素朴な、どもりがちの台詞回しが見事。彼が刀に刺さった饅頭に喰らいつくシーンは『アウトレイジ』の歯医者を思い起こさせる。そんな村重>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

3.7

 母からの電話を受けるペトラ・フォン・カント(マルギット・カルステンセン)が振り向く瞬間にカメラ目線のクローズアップとなり、「起きていたわ、本当よ」などと述べながら悪戯な笑みを浮かべる様を捉えると、彼>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.9

 モノローグ中心の語りの選択によって、濃密な闇に彩られた高品質な画は、主として主人公の所作の淡々とした積み重ねに徹することができる。これは殺し屋の物語に最適なスタイルで、メルヴィル的だというと褒めすぎ>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.7

 ヒロインを演じたリリー・グラッドストーンの、流し目と落ち着いたトーンの発話が生み出す妖艶さが観客を惹きつけるのだが、その後の壮絶な展開で彼女の顔が病んだ無表情で塗りつぶされていく様が痛々しい。
 ヘ
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白石晃士の決して送ってこないで下さい(2023年製作の映画)

3.8

 冒頭、圭介の「ビビってる女の子は映える」旨のセリフに、ホラー映画を彩ってきたスクリーム・クイーンという存在は、観客および作り手の暗い、加害的な欲望の視線の反映なのではないかという反省意識が感じられる>>続きを読む

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

3.6

 夫婦喧嘩の最中、ニコール・キッドマンが体を折り曲げ、苦しそうにしながら迫真の笑い声を響かせた後、ふと、その横顔に恐るべき不敵な表情を浮かべながら、内心における裏切りについて語り始める。ゾッとするクロ>>続きを読む

台風クラブ 4Kレストア版(1985年製作の映画)

3.8

 物語はとりとめのないエピソードの連なりなのだが、夜には深い闇に包まれる日本の田舎町を美しく切り取るロングショット長回しを、疾走し踊り狂うジュブナイルの衝動で満たした画面を見ているだけで楽しい。ファー>>続きを読む

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!(2023年製作の映画)

4.4

 冒頭、素人配信者特有の痛々しさが中々リアルに出ていていいなと思っていたのだが、遥の演技だけは、どこか異質な、プロ的な演技で異物感をもたらしている。この違和感の正体は後に明らかになる。光が十分に差し込>>続きを読む

エクソシスト/ディレクターズ・カット版(2000年製作の映画)

4.3

 発掘現場にふと静寂が訪れた後、不気味な石像とメリン(マックス・フォン・シドー)が切り立った岩の上で対峙する様を側面から捉える特撮怪獣映画のようなカットによって、何かが起動したことをド派手に示す。あま>>続きを読む

(1943年製作の映画)

4.0

 時折複雑な影によって画面を彩りながら、奥行きを存分に活用(画面奥を通行する人物)しつつ、(複数の)人物を丁寧に額縁に収めていくような端正なカットが連続し、それらがアクション繋ぎによって流麗に結び付け>>続きを読む

幸福(1934年製作の映画)

3.9

 スターリン政権下でこの異形のコメディが作られたという事実自体に驚きがあるな。冒頭から、口を開くと自動的に食べ物が浮かび上がって口内に入るチープな合成によって富める者を表現し、饅頭泥棒を試みた老人は煙>>続きを読む

想い出の夏休み(1975年製作の映画)

3.8

 双眼鏡越しの主観ショットの中で、カメラと主要人物の間をピンボケの人物に横切らせながらの人物紹介がお洒落。とりとめのない日常がひたすら続いていく映画ではあるのだが、緑豊かなロシアの夏を舞台としたジュブ>>続きを読む

国境の町(1933年製作の映画)

3.7

 『帽子箱を持った少女』『青い青い海』は比較的政治性の希薄なメロドラマという印象だったが、本作はソヴィエト映画らしくしっかりストライキからスタートする。工員たちが一人一人ストライキに同調していき、次第>>続きを読む

これがロシヤだ/カメラを持った男(1929年製作の映画)

3.8

 冒頭、ひとりでに開く椅子が不気味な映画館。サイレント映画期の、伴奏音楽の演奏者たちがいる映画館の風景を見せてもらえるのが嬉しい。この時代のソヴィエトの光景が記録されている映像を見ているだけで感慨深い>>続きを読む

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