映画漬廃人伊波興一さんの映画レビュー・感想・評価 - 29ページ目

映画漬廃人伊波興一

映画漬廃人伊波興一

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お早よう(1959年製作の映画)

4.6

観ている私たちどうあがこうが掌のうえから逃げられませぬ 小津安二郎「お早よう」

タイトルを打ち込み変換を押すと「お早よう」は出ません。どうしても「お早う」になります。だからあくまで「お早う」に(よ)
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山羊座のもとに(1949年製作の映画)

3.4

バーグマン系譜の中紐解けばこの頃彼女の頭はロッセリーニで一杯だったかも・・・ヒッチコック「山羊座のもとで」

バーグマンはこのとき34歳くらいの女ざかり。
でもこの後のバーグマン主演映画最大のミスキャ
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荒野の決闘(1946年製作の映画)

5.0

改めて観直すと21世紀に映画製作者になった者の中にはフォード作品を一本も観た事がない、という者が案外多いんではないか?という気さえしました 「愛しのクレメンタイン~荒野の決闘」

30年以上ぶりに再見
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スパルタの海(1983年製作の映画)

3.9

完全なる表現主義者 西河克己「スパルタの海」

こんな映画を観ると日本の職業映画人って本当にレベル高いなあと思います。

扱われる題材ゆえ世論から悲喜こもごもの論争を喚起し、ついには封印され、数年前か
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ノーカントリー(2007年製作の映画)

4.5


そこにあるのは右か左か?裏か表か?

この二者択一が実は一番恐ろしい

コーエン兄弟「ノーカントリー」

原題はno country for old men なかなか意味深なタイトルです。
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黒い眼のオペラ(2006年製作の映画)

4.2

煙にむせぶ純愛 蔡明亮「黒い眼のオペラ」

蔡明亮作品ではいささか画(え)ヂカラが弱いか?というのが率直な印象でしたがまさか「ライムライト」の旋律と共に水に浮かんだマットレスにいつもの3人が乗ってゆっ
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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956年製作の映画)

5.0

畏れから解き放たれる為に、この作品を静かに「面白い」と呟いてみようではないか ロベール・ブレッソン「抵抗(レジスタンス)ある死刑囚の手記」

主人公フォンテーヌ(フランソア・ルテリエ)が独房でジョスト
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ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年(2015年製作の映画)

-

辰吉丈一郎と阪本順治の間に連帯するものは「孤立無援」だと誰しもが思います  阪本順治「ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年」

辰吉丈一郎という同世代のボクサーに特別な連帯感を抱いていたわけではありま
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鬼婆(1964年製作の映画)

3.3

意外と観る機会が少ないその作家の代表作 新藤兼人「鬼婆」 
 
あしかけ30年近く前、東京高田馬場にて一年間シナリオを学んでました。当時13期生。その中からお一人名前を出せば誰もが知っている超有名にな
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映画に愛をこめて アメリカの夜(1973年製作の映画)

-

改めて「変わらぬ」という事がいかに偉大かが思い知らされる トリュフォー「映画に愛をこめて アメリカの夜」

52歳で夭折したトリュフォーの42歳の時の作品。

初めて観たのが高校生の頃。多分トリュフォ
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舞台恐怖症(1950年製作の映画)

3.9

愛妻アルマの最後の脚本担当作品。 ヒッチコック「舞台恐怖症」

出演者のスター性、演出、カメラアングル、編集、照明、音響効果からヒッチ登場や悪戯仕掛けのサプライズに至るまで様々な角度から解析、検証を試
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アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)

5.0

世界最大の大往生 オリヴェイラ「アンジェリカの微笑み」

夭折が特権的であるのを示したのがわが国の誉れ 山中貞夫なら長寿もまた特権的だと言うのが日本から一番遠い国の映画作家マノエル・ド・オリヴェイラだ
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西瓜(2005年製作の映画)

5.0

「西瓜、また人は如何にして性交を成功させるか?」 ツァイ・ミンリャン「西瓜」

90年代後半に日本に蔡明亮と書いてツァイ・ミンリャンと呼ぶ台湾映画の監督作品が2本一度に公開されました。「青春神話」と「
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大菩薩峠(1966年製作の映画)

-

昭和生まれの日本人ならだれもが知っている中里介山の長編小説「大菩薩峠」をきちんと知っている日本人は案外少ないかもしれません。岡本喜八「大菩薩峠」

原作は作者の死によって未完成。

過去に稲垣浩、渡辺
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ある結婚の風景(1974年製作の映画)

2.7

2倍速でご覧ください。それで充分です。 ベルイマン「ある結婚の風景」

一回目に観たのは大学一年生の頃。

この3時間をよく観たもんだと思いました。

リブ・ウルマンという女優。このときベルイマンとの
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夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)

3.0

このあたりはまだベルイマン作品は映画貫禄たっぷり 「夏の夜は三たび微笑む」

後にウディ・アレン「サマー・ナイト」という形でリメイク(?)された本編。

公開当時は大ヒットだったそうです。
この作品が
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野いちご(1957年製作の映画)

-

針のない時計を本気で見せてくれてもイイんじゃないの? ベルイマン「野いちご」

蓮實重彦先生は「いくら幻想シーンとはいえの針のない時計なぞ本気で見せて欲しくなかった」と辛辣なお言葉を投げかけております
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暗殺者のメロディ(1972年製作の映画)

-

政治映画ではございません。ジョセフ・ロージ―という異様な監督の高純度クライムサスペンスです。「暗殺者のメロディー」


実生活でもドロンと恋仲であった夭折の女優ロミーー・シュナイダーの存在が暗殺者の苦
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西部戦線異状なし(1930年製作の映画)

-

「名作」だって偏見で観逃していたら損失を被ります。ルイス・マイルストン「西部戦線異状なし」

先に述べたワイダの「地下水道」を観た直後からいきなり観直したくなりました。

反戦映画の名作ですがワタシは
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居酒屋(1956年製作の映画)

2.4

自然主義の名のもとに映画を沈黙させたルネ・クレマン「居酒屋」

救いようのないフランス自然主義文学です。

一番救いようのないのは映画が完全に沈黙していることです。

主演のマリア・シェルがなぜか「麻
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地下水道(1956年製作の映画)

3.3

最後のズドン!は「西部戦線異状なし」と並ぶ得体のしれぬカタルシス
ワイダ「地下水道」

始めに申しますがアンジェイ・ワイダはどちらかと言えば好きになれぬ監督です。「大理石の男」も「鉄の男」も「ダントン
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鉄道員(1956年製作の映画)

3.2

いつの時代も矛盾の人間像というのは父というものの中に在ります。 ジェルミ「鉄道員」

崔洋一の「血と骨」で原作者梁石日の父親を演じたビートたけしさんは「オイラの親父や近所の親父だって俊平さん(演じた役
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利休(1989年製作の映画)

2.2

美は揺るがない、筈ですが・・?勅使河原宏「利休」

公開当時は観ておりません。数年後に観ましたが最後まで観たかどうかさえ覚えておりませんでした。

今観て「こんな人が出ている?」とこちらの目が揺るぎま
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アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)

4.2

絶対に観るもんか!という誓いを本日破りました ルーカス「アメリカン・グラフィティ」

80年代の我々にとってこの映画はやや兄貴世代。

高校生のころ赴任してきた新米教師がいて、そいつがバリバリ体育会バ
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優雅な世界(2007年製作の映画)

2.5

粗いなあ ハン・ジェリム「優雅な生活」

技巧に走りすぎたら気持ちに届かない見本です。
監督さんの名は初めて知りますがどんな人柄か?120パーセント思い描けます。恐らく業界のエライさんでエリートでカッ
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ディボース・ショウ(2003年製作の映画)

3.1

ルノワールとホークスを比較に出すのはあまりの酷な話でしょうか・・・コーエン兄弟「ディボース・ショウ」

重なるときは重なるものでホークス「赤ちゃん教育」やルノワール「黄金の馬車」といった濃密喜劇のあと
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黄金の馬車(1953年製作の映画)

5.0

ついに観れた。これで年上の某友人から冷やかされずにすむw ルノワール「黄金の馬車」

「全ては喜劇に帰属する」
誰の言葉でもありません。
他ならぬ私自身からこの「黄金の馬車」という頓狂映画を観た直後に
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赤ちゃん教育(1938年製作の映画)

5.0

何故、大富豪ハワード・ヒューズがキャサリンに惹かれたのか?この作品を観れば明白です ホークス「赤ちゃん教育」

昭和のポストモダンの旗手たちに大絶賛されている本作ですがいつか観ようと熟成させていた一本
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秋刀魚の味(1962年製作の映画)

5.0

最後の小津マジックと言うなかれ。その魔法の遺伝子は未だ途絶える事なく全世界に継承されております。 小津安二郎「秋刀魚の味」

「いやあやっぱり男の子だよ。女の子は出したらそれまでだ。つまらんよ」
笠智
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Virginia/ヴァージニア(2011年製作の映画)

3.9

コッポラ若いなあ 「Virginia/ヴァージニア」

ブルース・ダーンの保安官とトム・ウェイツのナレーション。

前作「胡蝶の夢」からまたしても年齢に逆行するコッポラ。

もしかしたら遺作が処女作の
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クリミナルズ(2011年製作の映画)

4.3

凡庸な映画人たちが底力を示した敗れざる映画 ガブリエル・ベルティエ『クリミナルズ』

F・W・クロフツというイギリス人作家に『樽』という小説があります。
またわが日本にも鮎川哲也が創り上げた鬼貫刑
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ウイークエンド(1967年製作の映画)

5.0

ゴダールを畏れるな 「ウィークエンド」

私は全くツイております。
50の齢、男性更年期もいよいよ自覚的になりつつあるこの頃にゴダールの「ウィークエンド」と遭遇できたのですから。
私の知る中では一番破
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狂恋の女師匠(1926年製作の映画)

5.0

この地上からきれいサッパリ消滅している筈なのに、どうしても消えない恐るべし(存在感)❗️

それはやはり世界のどこかに存在しているから、ではないでしょうか?

溝口健二
「狂恋の女師匠」

当時17歳
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アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)

5.0

最終章の公開を待ちすぎて首が長くなったじゃねえかよ、コノヤロー!『アウトレイジ ビョンド』

塩見さんの演技を観たらスコセッシのギャング映画が茶番劇に見えて困ったじゃねえかよ、バカヤロー!
勿体ぶっ
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アウトレイジ(2010年製作の映画)

5.0

早く最終章が観てえじゃねえかよ、コノヤロー! 北野武『アウトレイジ』

どんなに大物役者になっても情け無い死に様を見事に見せてくれる石橋蓮司さんと國村隼さんを改めて尊敬しちまったじゃねえかよ、コノヤ
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団地(2015年製作の映画)

5.0

本当の「無知がもたらす予期せぬ奇跡」 阪本順治「団地」

仕事で大変お世話になっているお客様が「けしからん!」と怒ってましたので「これはただ事ではないぞ」と今まで熟成させておりました。

阪本順治とい
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