アメリカの文化的な成熟を見た。
もはやポリコレの枠を超え、日常に“多様性”がある。ルッキズムやジェンダーバイアスなどあるはずもなく、誰も他人の見た目を揶揄することはしない。それに近い場面があったと>>続きを読む
虚淵玄の脚本あるあるとして、鑑賞する側が作品を能動的に解釈しなければならない点が挙げられる。本作で言えば、「舞台は首都機能が崩壊し、無法地帯と化した東京なのだから、我々の常識が通用しなくて当たり前。例>>続きを読む
「正しさ」の尺度が多様化した現在にあっても、本作で描かれている気持ち悪さについては容易に感じ取れるはずだ。すなわち、我々の多くは「正しくない」ことは分かるのである。けれどもどういうわけか、適切でない>>続きを読む
ジェーン・カンピオンはマジで「映画」が上手すぎる。こう書くと斜に構えた論評っぽく聞こえてしまうけど、映像・プロット・セリフの構成力は現役の映画監督の中でも随一だと思う。
明確に「それ」と描写も断言>>続きを読む
心の師匠のひとりである小島秀夫が2年ぐらい前に薦めていたので鑑賞。それ以外の予備知識はゼロ。氏が「アクションだけはなく、ハイランダーやアデライン、100年の恋の不死としての苦悩も描くドラマ性もある」>>続きを読む
再開発が進む東京に住んでいるとなかなか実感できないが、街の価値を決めるのは機能性だけではない。かつての街にはWAVEがあったし、本屋もあったし、ニッチ過ぎる雑貨屋もあった。当時の人々にとって、街の魅>>続きを読む
「どっちもどっち」というフレーズは、必ずしもニュートラルな意味を持たない。“音楽と政治は切り離すべき”という立場の考えが多数派のこの国においては、政治や社会に対して極めて消極的な姿勢が推奨される。そ>>続きを読む
邦画の限界を感じた。予算をもっと出してくれ。
同じく伊坂幸太郎の小説を原作とした「ゴールデンスランバー」は、ソウルの街を“仙台”と仮定し、映画を撮った。視覚的なリアリティよりも、建物や人のプレゼン>>続きを読む
「街の距離感」を思い出すために鑑賞。
人と対面で話す機会が激減して、あるいはカジュアルに街を練り歩かなくなって間もなく2年が経つ。この2年間、緊急事態宣言もまん延防止等重点措置もなかった時間のほう>>続きを読む
なんと、本作でルーク扮する役者は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でパトリックを演じていた彼だったのか…。いやはや、素晴らしいアクターになられましたね。素朴なまま大人になった感じだけど、スクリーンの>>続きを読む
整合性の無い細田守作品の中でも図抜けて脚本が破綻している。ほとんど全壊に近い。物語の結末ありきでストーリーは進み、そのためだけに登場人物(主要キャラでさえも)は存在する。もはや、なりふり構わない。カ>>続きを読む
あれぇ…? こんなにロジックが破綻した映画だったかしら。。
初めて本作を観たときも「そうはならんやろ」と随所で感じたが、時間を経るほどその箇所は増えていき、何度目かの今回はもはや10分に1回ぐらい首>>続きを読む
多くの場合“たれらば”は無意味だが、そう考えてしまうのは人間の性である。
ルディが今の世に生きていればどうなっているだろうか…? 彼が生きた70年代においては、映画や音楽を筆頭とした芸術文化は明確>>続きを読む
同性愛者、差別主義者、破天荒な大富豪、頭の切れるスパイ捜査官…。難しい役柄をストイックに演じながら、アカデミー賞では憂き目にあっていたレオナルド・ディカプリオ。そんな彼の悲願が達成された作品であり、>>続きを読む
「夜は短し歩けよ乙女」で検索すると、“つまらない”とか“意味不明”とか、ネガティブなワードがサジェストされる。どうやら本作に対しては、嫌悪感を持つ人が一定数いるらしい。
しかし思えば原作の時点でそ>>続きを読む
腐った世の中にひとことモノ申したい。「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公、ホールデンが心の友だった我々は、常に腹に一物持って生きてきた。そこに行動力が伴っていれば立派な人間然として見えそうなものだ>>続きを読む
キャスリン・ビグロー最新作『デトロイト』に向けて
米国内で議論の嵐を呼んでいた『ゼロ・ダーク・サーティ』。映画や芸術作品はこうあるべきだと思う。「ツール」というと聞こえは悪いかもしれないけれど>>続きを読む
キャスリン・ビグロー最新作『デトロイト』に向けて
すっかり社会派映画監督としての地位を確立した感のあるキャスリン・ビグローだけれど、実はSFやホラーなんかも範疇の幅の広い作家だったりする。作品が>>続きを読む
2015年にリリースされた、ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』はエンターテイメントだろうか?答えはイエスだ。フランク・オーシャンによる『Blonde』はどうだろう?も>>続きを読む
アントニーナ(ジェシカ・チャスティン)の普通の人っぷりがつらかった。たとえそれがノンフィクションであろうとも、この凡人性までスクリーンに映した映画は稀だと思う。しかしだからこそ、その凡人性を徹底し>>続きを読む
『レザボア・ドッグス』と『パルプ・フィクション』が殴り合ってできたような映画である。この手の映画を撮るときのタランティーノは快楽物質をドバドバ出しながらメガホンを取っているに違いない。
まず脚>>続きを読む
鑑賞に耐えられないほど、観ているのがつらい映画が存在する。イスラム文化の男尊女卑を描いた作品はそのひとつで、今作はその中でも抜群にヘビーであった。
監獄のような家(おおよそ"家庭"とは言い難い)>>続きを読む
レフン、映像への執着が半端じゃないけど、実は音楽へのこだわりも尋常じゃないほど強いんじゃないかと思う。
今作では『ドライブ』以降全てのレフン作品で音楽を担当しているクリフ・マルティネスに加え、>>続きを読む
実は邦題と原題で大きく違う。原題は『LIFE』。ロバート・パティンソン演じるデニスが写真を提供する雑誌社の名前だ。デイン・デハーン演じるジェームス・ディーンの名を冠している邦題と対照的である。>>続きを読む
現在公開中の『グッド・タイム』が素晴らしすぎたので、その周辺も観ておく。というか、観直す。
本作『神様なんかくそくらえ』は、『グッド・タイム』の監督であるジョシュア&ベニー・サフディ兄弟が20>>続きを読む
フランソワ・オゾンの作品て怖いよなー。ホラーよりよほど恐ろしい。静かに、そして確かに聞こえる破綻の足音。性描写と共に同氏の特筆すべき作家性だと思う。
本作は、プロットが過去に向かって綴られてい>>続きを読む
イランの映画監督、アスガー・ファルハディの出世作。今作でベルリン映画祭の監督賞に当たる銀熊賞を獲得した。
すごくざっくり言うと、ファルハディ流の厭世論ですね。自分以外の人間(家族も含まれる)と>>続きを読む
とあるプロジェクトがスタートするってことで、参考資料として本作を見直している。
タイトル通り、12年間も同じ男の子を主人公に据えた本作は、さながらドキュメンタリーのような質感をはらんでいる。そ>>続きを読む
何度もフランシスをぶん殴りたい衝動に駆られた。27歳とか全然若くねぇよ。現実見ろよ。理想ばっか追ってんじゃねぇよ。
だがしかし僕はこの怒りの正体を理解している。「同族嫌悪」だ。要領が悪かろうが>>続きを読む
こんな映画、嫌いになりようがない。「アスペルガー症候群」という大変デリケートかつ複雑なテーマを、軽快なタッチと嫌みのない脚本で紐解いてゆく。「人とはどこか違う人」を描いた作品は過去にも多くあるけれ>>続きを読む
「ダサさ」が良かった。
ブルース調の旋律がサントラの大半を占めており、正直「狙い過ぎ」な感も否めなかったが、それでも本作の「ダサかっこよさ」を演出する上では大変効果的だったように思う。邦楽特有>>続きを読む
実際にその時が来なければ分からないけれど、私は多分ドッジ(スティーブ・カレル)タイプの人間だと思う。地球が破滅するというのに、悶々と何かを考え込んでしまう。周りが乱交パーティーに精を出す中、自分は>>続きを読む
今年の年間ベストムービー筆頭ではないでしょうかね。
ドキュメンタリーやノンフィクションもので最も大事なのは「並べ方」だという。そこに行き過ぎた誇張や脚色があってはいけないし、ましてや捏造なんて以>>続きを読む
李相日監督の作品は、いつも多面的な示唆に富んでいる。『悪人』では「悪人の概念」というある種絶対的なものに多面性を与え、『許されざる者』ではオリジナル同様に勧善懲悪の何たるかに挑んだ。
今作はそれ>>続きを読む
Arca(アルカ)というベネズエラ人のトラックメイカーをご存知だろうか?カニエ・ウエストやビョークに楽曲を提供したことでも知られているが、自身の名を冠したアルバムも何枚か出ている(いずれも音楽フリー>>続きを読む
日本アニメの金字塔。新海誠監督はこれから出てくるクリエイターたちに高過ぎるハードルを設定してしまった。
観客に能動的解釈を強要しない大衆性、かつ、決して脆弱ではないSFロジック。そして、「セカイ>>続きを読む