「人生に一度 地下に水が流れていく」
映画にストーリーは必要か。
答えはこの映画にある。
映し出される運動までもが音楽となり、我々の中に物語を形作る。
水が流れていく。
心の赴くままに整理された部屋の置物のように、
カウリスマキ作品にはいつだって、
適切な位置にワンコがいる。
「You?」
ラストシーンが抜群に良い。
面白さはもちろん、チャップリンの人間臭いやさしさに、我々の目も治される。
「さまざまな物語を乗せて駅馬車は行く!」
移動する映画が好きだ。
映し出される馬の運動によって、
高揚感と緊張感、その他あらゆる感情が揺さぶられる。
「今度は今度、今は今」
ニーナ・シモンの歌声とともに、この人生を自ら選択してきた男が見せる虹色の表情が映る。