イワシさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

イワシ

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ペサックの薔薇の乙女79(1979年製作の映画)

3.5

前作から11年後(78年にも撮影したが技術的ミスで素材が使用不可)、同じ場所での同じ行事、撮影スタッフもほぼ同じ。儀式の進行や撮影機材などの差異もあるが、最も目立つのは高層の集合住宅の存在か。薔薇の乙>>続きを読む

不愉快な話(1977年製作の映画)

4.0

単純な面白さではマイケル・ロンズデールが語り手の第一部が上か。演出も編集もジャン=ノエル・ピックが語り手の第二部に比べると劇映画的。とはいえ、ピックの語りもあくまで撮影が介入した現実=再現であり、フィ>>続きを読む

ぼくの小さな恋人たち 4Kデジタルリマスター版(1974年製作の映画)

4.8

再見。遠征した田舎町での姉妹を追跡する場面が素晴らしい。ヒッチコック的サスペンス。距離を縮めるまでの時間、合流したあとの戸惑い、逆に仲間が追跡してこないかという不安、希望を断念したかのような遅れと意を>>続きを読む

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

4.6

再見。ラジオが嘆く現代の仕事ように座りっぱなしの映画。カフェで座り、車内に座り、マットレスに座る。必然的にバストショットが多様されるが、にもかかわらず生々しい迫力の画面。夜中に押しかけてきたフランソワ>>続きを読む

ナンバー・ゼロ(1971年製作の映画)

4.2

監督の祖母オデット・ロベールは自身の幼少期から青春期、結婚、子育て、戦争を語り継ぐ。その回想が孫ジャンの現在や曾孫ボリスの未来へ思いを馳せる瞬間の言い難い感動と寂しさ。カチンコのアクションつなぎ、ロベ>>続きを読む

(1970年製作の映画)

4.0

再見。喉から迸る血の黒さ、立ち上る蒸気の白さ、降り始めた雪の欠片が印象的だったが、劇場で観ると音響の凄まじさに圧倒される。豚を解体する場面でのナイフを研ぐ音、皮膚に注がれる湯の音、体毛を剃る音は部位と>>続きを読む

ペサックの薔薇の乙女(1968年製作の映画)

3.0

その年に選出された薔薇の乙女が過去に選ばれた乙女たちにいちごを渡していく場面があり、そこに92歳になる1900年時に薔薇の乙女だった老婆が登場するのだが、町長の話や行事の進行を押し留める話の行ったり来>>続きを読む

サンタクロースの眼は青い 4Kデジタルリマスター版(1966年製作の映画)

4.3

再見。『わるい仲間』が接触禁止の映画だったら(身体に触れる代わりにバッグをまさぐり財布を盗む)。こっちは接触解禁の映画。サンタクロースの衣装やダッフルコートなど、身に纏うものについての映画でもある。解>>続きを読む

わるい仲間 4Kデジタルリマスター版(1963年製作の映画)

3.7

再見。ドミニク・ジェールをナンパしたものの、ダンス=接触の機会を奪われ続けたアリスティド・ドメニコとダニエル・パールがついに業を煮やして財布を盗んで疾走する。最低な行いだけど最高の運動。往路は歩行、復>>続きを読む

海を待ちながら(2012年製作の映画)

3.8

ファーストショットの海面の揺めきを模倣するかのように踏み荒れた砂浜がつくる凸凹を映すクレーンショット、海を覆う大砂塵のような嵐、荒野を微々たる速度で進む船、ラストは到達でなく到来。海と大地が対立するの>>続きを読む

タンカー・アタック(2006年製作の映画)

3.5

これ以前のフィルモグラフィにあったフドイナザーロフ的な運動や細部がアクション映画というジャンルにことごとく接収されるというクライマックスのスリリングさ。ジャンル的な楽しさある程度保証されてるし、監督特>>続きを読む

スーツ(2003年製作の映画)

4.0

3人の少年がGUCCIのスーツを着て、それぞれ会いに行く相手との別れの場面がどれも素晴らしい。アレクサンドル・ヤツェンコと父アンドレイ・パニンとの岸と船とのカットバックと横移動撮影、列車を見送るアルト>>続きを読む

ルナ・パパ 4Kレストア版(1999年製作の映画)

5.0

町中を駆け抜ける馬の群れの疾走、何度も頭上を通過するセスナ機、慌しい自動車の走行(過激なロードムービー)、行手を遮る装甲車、ゆったりとした舟の渡航、制御の効かない長男、上演中の舞台からの役者拉致、暴動>>続きを読む

コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

4.8

帰還を懇願されるダレル・マジダフとやたらと追放の憂き目に遭うパウリーナ・ガルヴェスのゴンドラ内での愛撫を捉えた俯瞰ショットが素晴らしい。強制移動を拒み続けた男女が真に通じ合った瞬間、ゴンドラは動き出し>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.8

首無し死体に始まり、首に終わる。斬首描写でそれなりに満足したのは荒川良々のそれくらいか(この場面も首の落下より家臣の落水に笑った感はあるが)。代わりにビートたけしの草履放擲の速度に大爆笑。影武者を使っ>>続きを読む

ドリアン・グレイの肖像(1945年製作の映画)

4.5

大傑作。パートカラーで映される肖像画の美しさ、悍ましさ。殺人場面の吊りランプが作り出す光と影のゆらめきのおそろしさ。ハード・ハットフィールドがローウェル・ギルモアを絵画のある部屋へ促す際の縦構図のトラ>>続きを読む

少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

5.0

西部劇的記憶が刺激される列車という装置だがそれを被写体にするというより、線路が通る村や駅の女性や子ども、遥かな山並みの稜線などを列車の視点から捉え、活劇とは異なる運動の瑞々しさが画面を満たす。走行中の>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.5

水平的な動線で描かれる逃避の行動がゴジラ誘導と駆除を目的とした旋回運動(逃げて戻るの繰り返し)を挟みながら最終的に生存を目的とした脱出装置の発射とパラシュート降下という垂直軸の運動へと変奏される。逃げ>>続きを読む

くるりのえいが(2023年製作の映画)

3.5

拾徳でのライブ場面、「尼崎の魚」「California coconuts」「東京」をフルで聴けて超サイコー!って感じだけど、そのあとの「In Your Life」レコーディング風景がもっと良い。各パー>>続きを読む

死霊館のシスター 呪いの秘密(2023年製作の映画)

3.3

終盤、とてもフィジカルに攻めてくる悪魔と豪快に吹き飛ばされるシスターたちに笑ってしまった。タイッサ・ファーミガの覚醒は少年マンガチック。大量に流れるワインが悪魔に対して有効になる理屈が良かった。

ザ・レイド GOKUDO(2013年製作の映画)

3.5

イコ・ウワイスとアリフィン・プトラを結び、そして分つナイフの存在感。運動場での救出劇では決してナイフを持つことのなかったウワイスがセセプ・アリフ・ラーマンとの戦闘後は狂ったようにナイフを振るう。累々と>>続きを読む

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)

3.7

カールハインツ・ベームがガラスを割ってアパートに殺到する警察に殺人カメラを向ける場面に泣ける。あきらかにギャング映画を模した編集とアクションが滑稽なまでに相対化してしまうカメラという装置。マキシン・オ>>続きを読む

城市特警(1988年製作の映画)

4.5

製作ツイ・ハークの特徴が余りに色濃い人体発火、首胴体切断、銃の暴発損壊描写には笑うが、ジョニー・トーらしさが画面に満ちる瞬間には涙を誘われる。賄賂の札束を目の前で風に散らす場面の少年時代の遊びのような>>続きを読む

幸福の谷(1919年製作の映画)

4.1

ロバート・ハロンの鋤を持つ手が少しずつ下がってゆき、ついに同じ鋤を持つリリアン・ギッシュの手に触れるその瞬間が素晴らしい。帽子のつばが触れ合いそうな距離での手の触れ合いはそれ以上の進展を見せず、ぎこち>>続きを読む

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.0

カタストロフを前にしながら互いだけを見つめるような男女といえばもはやギャレス・エドワーズお馴染みの演出だけど、個人的にはポール・W・S・アンダーソン『ポンペイ』のそれが圧倒的だったなと再確認するクライ>>続きを読む

大虐殺(1912年製作の映画)

5.0

グリフィス、1912年の短編。傑作。俯瞰のロングショットの多用と俯瞰視点の主の度重なる変更。レッドマンズ・ビューが最も感情移入できるか。騎兵隊には見透せなかったインディアンの赤ちゃんと白人が発見できた>>続きを読む

春画先生(2023年製作の映画)

4.0

冒頭に起こる地震で唯一不動のまま椅子に腰掛ける内野聖陽は如何にして春画の如く身体を横たわらせ揺れ動くのか。扉、襖、階段、スマホなど縦長のフレーム内フレームあるいは縦構図は人物を直立させるが、北香那のみ>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.3

タクシー/エレベーターが表象する水平/垂直方向に拡大する近代的都市空間。狭い空間で二人きりで口論を繰り返す男女はその時々で入れ替わり、一方が相手を狭い密室に押し込む形で決裂し決別する。だからこそ最後の>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.1

ブリギット・ミラとエル・ヘディ・ベン・サレムが夫婦になった直後の場面、花束と花柄の傘というよく似た細部を分かち合うように寄り添う二人が素晴らしい。横溢するフレーム内フレームからも他者の視線からも解放さ>>続きを読む

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

4.3

再見。爆撃によって看板が外れた瞬間に吹き飛んだ結婚証明書に飛びつくハンナ・シグラへマッチカット。勢い良すぎて笑った。米兵が捨てた吸殻に群がる独兵など飛びつく運動が蔓延る戦後ドイツにおいて、飛びつかれる>>続きを読む

天使の影(1976年製作の映画)

4.1

再見。それまでは舞台上での立ち位置が見えるような演劇的演出だったのに、クラウス・レーヴィッチュ扮する金持ちユダヤ人が登場した直後、アクションつなぎという映画的編集が炸裂する(ほぼ活劇!)。ダニエル・シ>>続きを読む

アラフォー女子のベイビー・プラン(2010年製作の映画)

2.8

妊娠だけでなくプロポーズもハイジャックするジェイソン・ベイトマン。シラミ駆除モンタージュや写真立ての活かし方は非常に良いのだけど、イイ感じのボイスオーヴァーで丸く収めるにはやらかしたことがデカすぎない>>続きを読む

ラブコメ処方箋 甘い恋のつくり方(2014年製作の映画)

2.5

馬鹿馬鹿しいくらいロマコメのパロディばかり。プロポーズが成功する場面の背景でマイケル・シャノンが警官に顔面を撃たれてて意表を突かれた。

バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

3.8

父娘という捜索者は『パリ、テキサス』を彷彿。ラストのペンギン夫婦についての台詞を踏まえるとハリー・ディーン・スタントンが異なる選択をしたら、とつい考える。「懺悔室」への侵入/脱出が映画の構造をさらりと>>続きを読む

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

3.5

ビルとビルの狭い隙間に投げ込まれる死体の垂直落下する光景を捉えた俯瞰ショットが吃驚するほど素晴らしかった。南博の回想録だが、池松壮亮ら別時間の人間が同空間に収まる変化球。脚本に濱口『ハッピーアワー』、>>続きを読む

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

3.6

療養場面での階段と杖にペキンパー『キラー・エリート』を連想。ショットガンのコツコツと杖のコツコツのリフレインは死に際の這いつくばる人間に歌いかける「I know it was the blood」の歌>>続きを読む