篠村友輝哉さんの映画レビュー・感想・評価

篠村友輝哉

篠村友輝哉

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DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)

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『幻の光』同様、最も親しかったはずの人のわからなさ、死者というもう絶対に直接の声を聴けない他者との対話が追求されるが、映像的、手法的には洗練はされないものの、その他者が、生前からすでに新興宗教への入信>>続きを読む

幻の光(1995年製作の映画)

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原作があり、脚本も本人ではないが、その後の諸作品で描かれ続けることとなる、もう二度と絶対に直接声を聴けない他者である死者との対話、最も親しかったはずの人のわからなさという主題。偶然だろうが、深掘りはさ>>続きを読む

冬の旅(1985年製作の映画)

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自由に生きるということは、何なのか? 質感はまったく別だが、数年前にオンラインで観た、自由への希求が自己目的になると、それ自体が檻になって自分を閉じ込めるということを示したアレックス・オリエ演出の《カ>>続きを読む

サイン(2002年製作の映画)

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ムードは良かったけど、やっぱり良くも悪くもシャマラン。。。すべての出来事には意味がある=神の啓示である、だから信仰心を捨ててはならない、という話なのなら、そもそもなぜ宇宙人が襲ってきたのか、それは神の>>続きを読む

星の子(2020年製作の映画)

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原作未読。『マザー』より断然よかったけど、「他所の者に内のことは理解し得ない」という主題は一貫していた。教師に親を異常者だと言われてしまう場面は胸が詰まった。

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

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前作を含め、一貫して「出生」と「運命」という主題を描き続けているヴィルヌーヴだが、「Part2」ではそれらを引き継ぎつつ、さらにそこに今日における信仰の位置付けや侵略という問題が盛り込まれた。
ポール
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

5.0

緊迫感と不安が持続する、重苦しく、濃密な三時間だった。劇中を貫く音楽の五度下降が印象的なモチーフが耳を離れない。
映画の外観の揺るぎない構成美のなかで、たとえば『インセプション』では「夢(虚構)と現実
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エレファント(2003年製作の映画)

4.3

映画的な構成美とドキュメンタリー的なリアリズムという一見相容れない手法同士が結び合い、あの学校の空間とそこに生きる学生たちの姿が立体的な手触りをもって立ち上る。人物の内面を安易に掘り下げず、「物語」を>>続きを読む

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

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あまりにも直球の転落劇。ゆえに結末はなんとなく途中から読めてしまったが、俳優陣が良いので安心して楽しめた。

家族ゲーム(1983年製作の映画)

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並列の食卓に象徴される、一見平穏な日々の隙間から滲み出る家族の歪さ。得体の知れない家庭教師が、ついに平穏や「普通」の象徴であり、歪さの象徴でもある食卓を嵐のように滅茶苦茶に荒らし、家庭をぶち壊す。しか>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.5

小説や映画といった、現実ではない虚構の世界=物語を生み出し、享受することは、人間の尊い営みのひとつだが、その能力のために、私たちはいつも、真相や真実を知り得ないあらゆる物事を、自分にとって最も都合よく>>続きを読む

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

4.5

「正しく生きる」ことがいかに難しいかが、ドライなタッチによるリアリズムで描かれる。多くの人が「正しさ」や「強さ」を保てるのは、所詮はそれが問われる状況に追い込まれない立場にあるときまでであり、当事者に>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

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主題は小出しにされながらも、何についての物語なのか、それがどこへ向かっているのかは最後までわからない。それだけに、最後にすべてが明かされる瞬間に戦慄する。汗ばんだ肌の質感と、寄生し、一切を残らず吸い尽>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.5

これから夏が来るたびに、苛烈な日光に射たれ汗を滴らせながらどこかで生き続けている彼女の姿を、私は思い返すことになるだろう。
市子が生のために犯さざるを得なかった行為の数々は、制度や社会の歪みに由来する
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儀式(1971年製作の映画)

4.3

ここに示される儀式のくだらなさ、馬鹿馬鹿しさは、当時の日本社会、政治を映すものだったのだろうが、それが今日観てもアクチュアルに感じられることの凄さと落胆。それは大島の眼差しの怒気を孕んだ冷徹さのゆえか>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

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より分かりやすいからということもあるが、長さを感じさせず、『ザ・スクエア』より楽しめた。冒頭のファッションへの風刺や、驕りたかぶった者たちが船酔いのための嘔吐に悶絶するシーンなどは痛快だったが、結末を>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

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しばらく遠ざかっていた黒沢清作品。久しぶりに観ると、やはり空間造型からカメラワークから演出に至るまで、いちいちの要素がとにかく非凡。表面的には窮地から脱した夫妻が、しかし決定的に何かが壊れてしまったよ>>続きを読む

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

4.3

尺は短いが、まさかのテレンス・マリック作品を思わせるような存在についての壮大な物語で驚いた。存在の痕跡を残そうともがこうとも、それは宇宙的な視点から見れば、ひとつの粒子に過ぎない。この世界への心残りが>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

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国勢調査の車が流す「デイ・ドリーム・ビリーバー」が、なんと異様に響いたことだろう。あのシーンがあるだけでも非凡。実話とは思えない現代のある場所の状況と描写のリアリティ、さらに語り手の設定や構成、さまざ>>続きを読む

あしたの少女(2022年製作の映画)

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辛い作品だった。なぜ、ペ・ドゥナ扮する主人公が向ける視線から目を逸らすシーンに象徴されるように、彼女以外の大人の誰もが、これほど「向き合う」ことから逃げられるのか。自らの内なる良心は、自身の逃げを咎め>>続きを読む

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

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ポール・トーマス・アンダーソン作品のなかでは『ザ・マスター』と同じくらい好きだった。幾層にも重なりあった思惑に、主人公と共に巻き込まれ混乱させられ、徐々にそれをほどいていく快感。しかし結局のところ何が>>続きを読む

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