しゅんさんの映画レビュー・感想・評価 - 42ページ目

エメラルド(2007年製作の映画)

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アピチャッポン自選短編集より。

これは素晴らしかった。誰もいない部屋に羽根のような白いものが待っている。若い男二人と中年らしい女(全員がアピチャッポン作品常連の俳優)の声が聞こえるが、姿は一切現れな
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国歌(2006年製作の映画)

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アピチャッポン自選短編集より。

タイでは映画の始まる前に五分間の国王への敬礼の儀があり、怠れば不敬罪に問われる。『光りの墓』にはこの敬礼シーンが含まれる。本作はそうしたタイ王国の現状に対する批判的映
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三つ数えろ(1946年製作の映画)

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登場人物がどんどん出てきて覚えきれなくなる探偵物語。ピンチョン『インヒアレント・ヴァイス』の影響元なんですね。
話の整合性を気にせず、台詞回しと呆気にとられる展開、バイオレンスシーンのスリルを楽しむの
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あなたは、あたしといて幸せですか?(2016年製作の映画)

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演劇のドラマと道端のドラマが重なって乱反射する。退屈なようで全然退屈じゃない。これは衝撃的な体験。

清澄白河のSPACで、飴屋法水とその実の妻と娘が出演した演劇をそのまま収録した映像作品なのだが、実
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

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とにかく最高。
時代劇のフォルムにアメリカ映画の技術を持ち込んでいて、その手法がことごとく成功している。百万両の隠し場所が書かれた壷と孤児になった子どもをめぐるコメディタッチの活劇なんだけど、ジョーク
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父ありき(1942年製作の映画)

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タイトル通りの父子ものだが、笠智衆が若いことにまず驚く。非常にダンディな美青年である。当時32歳と聞いて納得。しかし、もっと驚きなのは作中で十数年の年月がたった後に、笠が完全におじいちゃんになっている>>続きを読む

暗黒街の顔役(1932年製作の映画)

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冒頭の口笛と影にドキドキ。平行移動とズームを駆使したカメラの動きがほんとスリリングでかっこいい。あん時はトニーがあんな阿呆だとは思いませんでした。知性一切なし、力と欲望のみで突き進んでいく男というのは>>続きを読む

ブリスフリー・ユアーズ(2002年製作の映画)

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喧騒やしがらみから抜け出した森でのランデブーの夢見心地と、立小便に中年の青姦、はてはチンポコのどアップに代表される生々しい映像の連続との二つに引き裂かれて、なんとも言えない余韻を残すアピチャッポン長編>>続きを読む

脱出(1944年製作の映画)

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今年の映画納め。
ヘミングウェイ原作でフォークナー脚本ということで文学好きにはたまらない。ホーギー・カーマイケルの演技と演奏が観られるので音楽好きにもありがたい。文学・音楽・映画が同じくらい好きな人間
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コンドル(1939年製作の映画)

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サンテグジュペリ『夜間飛行』『南方郵便機』を彷彿とさせる飛行士物語。ホークスは男の友情を常に描いてるけど、彼らの関係性がほんとかっこいい。バンドやスポーツチームを描いてもすごくいいものが出来そう。
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晩春(1949年製作の映画)

4.3

一瞬映る少年野球のシーンで、カメラはグラウンド外から右中間に向いている。すると右バッターの流し打ちで球は外野の間、画面の真ん中へと見事に吸い込まれていく。ちょうどいいところにすぐ球が飛ぶとは思えないし>>続きを読む

河内山宗俊(1936年製作の映画)

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保存状態の悪さ故かノイズが多く、セリフを聞き取るのに苦労したけど、男二人と若者一人、そこに女関係や上下関係が絡むシナリオを楽しんだ。快活な様子だったけど、実際は結構暗い話なんだな。
主役二人の立ち回り
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はるねこ(2016年製作の映画)

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終演後のライヴで顔観てて若そうだなと思ったけど、監督まだ24歳なのか!やりたいこと、捉えたいテーマをたくさん入れ込みながら統一した作品にまとめる手腕を考えると早熟な人だな。自作自演の歌は少し青臭いとこ>>続きを読む

トロピカル・マラディ(2004年製作の映画)

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アピチャッポンの最高傑作は『光りの墓』だと思ってたのだけど、もしかしたらこっちかもしれない。前半と後半で全く違う映画のようになるのだけど、これが一つの作品として成立していることになんだが無性に感動を覚>>続きを読む

世紀の光(2006年製作の映画)

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映画のちょうど真ん中に位置する祭りでの演奏(ギターが素晴らしい)と、直後の歯医者と若い僧侶の会話が印象に残ってる。歯医者は僧侶に、君は木から落ちて死んだ弟の生まれ変わりかもしれないといい、僧侶はそれを>>続きを読む

永遠の戦場(1936年製作の映画)

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第一次大戦のフランスを舞台にした、前線の兵士たちの終わらない地獄というテーマは『暁の偵察』と全く一緒だし、上層部から自殺行為を命じられるのも男の友情が描かれるのも一緒。しかし、本作には笑いがあり、それ>>続きを読む

暁の偵察(1930年製作の映画)

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第一次大戦中の空軍兵たちの悲愴な物語。役職が人を変えてしまうことを、映像で見せつけてくれる。あぁ、指揮官はつらいよ。

ラストの泣ける展開が見事。兵士たちの酒場が『港々に女あり』の酒場と似ていた気がす
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雨月物語(1953年製作の映画)

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戦国時代が舞台の怪奇幻想譚。ようやく観ることができました。
男二人と女三人の運命の変遷を描いた脚本が単純におもしろいのだが、そこに映像の力も加わってより複雑な味わいが出ている。特筆すべきは光の扱い方で
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話の話(1979年製作の映画)

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特集上映ラスト。
子どもが見られる映画が続いて安心してたら、最後にとんでもないものをぶっこんできやがった。とにかく難解。オオカミを狂言回しにしながら、戦争に主人や子どもを奪われる女たちの話と子どもか林
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霧の中のハリネズミ/霧につつまれたハリネズミ(1975年製作の映画)

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この作品で一つのスタイルの完成に至ったのだな、という印象。霧の表現や動物の造形から感じる美しさ・懐かしさ・薄気味悪さ。ノリュシュテインにしか描き得ない芸術、アニメーションの極北。とんでもないレベルの作>>続きを読む

アオサギとツル(1974年製作の映画)

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今回一番気に入ったのはこれ。浮世絵に影響を受けたという、水色や薄ピンクの淡い質感や幻想的な筆のタッチがとてもいい。ストーリーも恋愛の寓話として秀逸。舞台となる廃墟のデザインも心象風景の見事な表現だった>>続きを読む

キツネとウサギ(1973年製作の映画)

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特集上映3作目にしてやっと安心して子どもに見せられる作品でてきた!
「宮殿のような氷の家に住んでいるキツネは、樹皮の家に家に住んでいるウサギを貧乏臭いと完全に馬鹿にしてる。しかし冬が終わり、キツネの家
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ケルジェネツの戦い(1971年製作の映画)

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西洋と東洋が混じりあった美意識がロシア的。パラジャーノフに通ずるところも。ひび割れやザラッとした質感に惹かれる。これも子どもが見ていいのか心配した。顔怖いし、夢に出てきちゃうだろ。
西暦988年のロシ
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25日・最初の日(1968年製作の映画)

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ショスタコーヴィッチの交響曲がインパクト大な処女作。ロシア革命の様子がかなり肯定的に描かれているのだけど、制作された1968年の時点で革命に高い評価を与えることができたのだろうか。全体を通した不穏な様>>続きを読む

真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)

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アピチャッポン・ウィーラセタクンの処女長編。
白黒の映像の中、魚売りの女性に「何か話をして、嘘でもいいから」と監督が語りかける。その女性が作ったストーリーの続きを別の素人に語らせ、またその続きを別の人
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赤い河(1948年製作の映画)

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「牛の大群がすごい!」と「擬似親子の葛藤が泣ける!」の二つの脊髄反射のような感想に終始してしまいそうになるのだけど、中心人物だけでなく周辺人物にもしっかりした造形が掘られていたり、敵・味方の振り分けが>>続きを読む

港々に女あり(1928年製作の映画)

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10代のときに『3つ数えろ』のビデオを借りて結局観なかったのが呪いになったか、ずっと観ず仕舞いだったハワード・ホークス。なんでもっと早く観なかったのか。画の力も脚本の力も段違いに強くて魅せられっぱなし>>続きを読む

皆さま、ごきげんよう(2015年製作の映画)

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ファニーでアナーキーな快作!重苦しい現実から目を逸らすわけでもなく、「今起きていることを直視せよ」と暑苦しく喧伝するわけでもない。「現実」と呼ばれるものの多面性を価値判断なしで描いて、あらゆる技を使っ>>続きを読む

シークレット・オブ・モンスター(2015年製作の映画)

4.2

第一次大戦の後処理が"怪物"ヒトラーを誕生させたということを、家族劇の中で寓話的に表現した映画。積極的にドイツを孤立させた父たるアメリカだけでなく、母が担うクリスチャニズムとコスモポリタン思想(つまり>>続きを読む

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

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ブリッジしながら登場する薬師丸ひろ子の衝撃。ちょっと否定するそぶりを見せつつあっさりヤクザの組長を引き受けるところからはじまって、終始めちゃくちゃなストーリー。ですが、踏切のシーンや、ビル屋上の墓場を>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

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明確に線引きされてるはずの境界が曖昧になる。例えば死者と生者。精霊と人間。殺人者と被殺人者。その舞台となるのが「森」であり、垂直にそびえる大木を越えていけば別の世界とつながる。
政府主導の共産党員殺し
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アイアン・プッシーの大冒険(2003年製作の映画)

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「東南アジアのゴダール」なんて言われちゃうこともあるほど難解なイメージがつきまとうアピチャッポンとはとても思えない、超B級活劇エンターテイメント。普段はメガネで坊主のセブンイレブン店員だが女装すれば最>>続きを読む

裸のキッス(1964年製作の映画)

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早稲田松竹のサミュエル・フラー特集三作を観て思ったのは、三作とも必ず異国の風景が現れること。アメリカの片田舎が舞台の『裸のキッス』にも、物語進行上不必要にも関わらずヴェニスの川の映像が流れる。50年代>>続きを読む

チャイナ・ゲイト(1957年製作の映画)

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『ヒッチコック=トリュフォー』で「サスペンスの持続が大事」って話が出てくるけど、これぞまさにサスペンスの持続がものをいってる映画。次に何がくるのかと期待を持たせたまま最後まで疾走する。
アンジー・ディ
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ヒッチコック/トリュフォー(2015年製作の映画)

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ヒッチコックは『めまい』しか観たことないし『映画術』も読んでない、という不勉強な人間なのでヒッチコック入門編として楽しんだ。やはりミスターヒッチコックとムッシュートリュフォーの肉声が聞けるところが嬉し>>続きを読む

ショック集団(1963年製作の映画)

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大事なのは結果ではなく過程!最初から結末なんてわかってるのにこんなにドキドキさせてくれるなんて!
露骨なアメリカ批判がたくさん盛り込まれてるんだけど、それが善人の神経を逆撫でするようなやり方だったりす
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