しゅんさんの映画レビュー・感想・評価 - 43ページ目

冬の光(1962年製作の映画)

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横顔と真正面だと顔の印象が全く違うんだな。神聖さと低俗さが一人の人物の中で行き来する。『裁かるるジャンヌ』に連なる、顔面のドラマ。
世界戦争で剥き出しになった人間の暴虐さを真正面から引き受けてしまい、
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そして光ありき(1989年製作の映画)

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邦題「そして光ありき」
これは戸惑った…セネガル現地の小さな村の群像劇なんだけど、現地語で語られる言葉に字幕は入らない。観客は時々フランス語で差し込まれる状況説明の言葉と映像だけで物語を追うことになる
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月の寵児たち(1985年製作の映画)

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邦題「月の寵児たち」
イオセリアーニのフランス亡命後最初の監督作品。まずタイトルがカッコいいですね。
この人は過激さを日常にとけこまして描くのが本当にうまい。テロリズムや盗賊団がさらっとユーモラスに描
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素敵な歌と舟はゆく(1999年製作の映画)

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『田園詩』も素敵な作品だったけど、この『さらば、雌牛どもの床よ!(原題)』を観て一気にイオセリアーニ好きになった。

金持ちと貧乏人が入り乱れる、中心点のない群像劇。特に金持ち一家の息子はホームレスと
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ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)

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ラストシーンの引き裂かれ具合に持ってかれたなぁ。

伝記映画のようで、実際はかなりフィクショナルな作品。そもそもジェーンは実在の人物じゃないし。

この映画はチェット・ベイカーの内面を物語化していると
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田園詩(1976年製作の映画)

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オタール・イオセリアーニ。今日まで知らなかったジョージア出身の監督だけど、タルコフスキーが最も尊敬してた人らしい。再来週に新作公開されるということで、現在特集上映されています。

白黒の映像と家畜の姿
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めまい(1958年製作の映画)

3.8

車の後ろにちょうど橋が映るシーンが印象的。この映画には橋や塔に代表される建築物のドラマがある。横に長いものが映る時にはスコティは無敵だが、縦に長いものが映ると絶対に勝てない。ギリシア風の建物が何度か映>>続きを読む

PK(2014年製作の映画)

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脅威の多民族・多宗教・多言語(憲法で保障されているだけで22言語!)国家インドの濃厚さをそのまま映像に置き換えたかのような色と音楽の氾濫。特に「神様にみつけてもらえるようタクシーの真似をしてかぶってい>>続きを読む

スイート・スイート・ビレッジ(1985年製作の映画)

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あんまりよろしくないという感想をいくつか目にしてたから期待せずに観たけど、すごく良かったよ!イジー・メンツェルの特集上映あったら絶対全部観るなー。
デブチビの短気なおっさんと「町の馬鹿者」であるノッポ
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夜霧の恋人たち(1968年製作の映画)

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『アントワーヌとコレット』は観てないし、『大人はわかってくれない』観たのは10年以上前で記憶の彼方だからドワネルシリーズのストーリー全く頭に入ってない状態で観たけど、ジャンピエールレオは最高に喜劇役者>>続きを読む

エヴォリューション(2015年製作の映画)

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『エコール』ってもう10年前なのか…。あれも美意識を少しも損なうことなく映像化した気合いバリバリの作品だったけど、今作はそれ以上。色とか光とか構図とか俳優とか、どこをとっても隙がない。海と白い家々とい>>続きを読む

溺れるナイフ(2016年製作の映画)

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少女コミック原作の商業事情が強く絡む映画とは思えない美意識と前衛性の発露にびっくり。そのせいでとっちらかった印象を与えているかもしれないが、ファンの多い原作もので作家性を貫いたのはすごいことだと思う。>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

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「映画は人生を三倍にする」というセリフ通りの大満腹映画。原題『1+2』は、まるで村上春樹の小説の主人公のような中年エンジニアNJ(顔も春樹似)の人生(1)と、娘のティンティンと息子のヤンヤンの人生(+>>続きを読む

歓待(2010年製作の映画)

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深田晃司映画まつりにて。

『淵に立つ』のプロトタイプ作品で、たしかに元は一緒なんだけど観た感触は全然違うのでおもしろい。『歓待』がかなり笑えるのは山内健司さんの存在感によるところが大きいと思う。双眼
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彷徨える河(2015年製作の映画)

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ノーベル賞作家マリオ・バルガス=リョサの名作『緑の家』を実写化したような映画で、二つの時代を一つの川で繋いでく話。南米アマゾンの民とやってきた白人の関係の複雑さが映像を通して迫ってくる。二人の学者の国>>続きを読む

恐怖分子(1986年製作の映画)

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こりゃあとんでもない映画だ…
被写体を真正面から映すショットが絵画を想起させる。この平面感が超サイケデリック、観てると現実を忘れてしまう。白い壁を映すだけでも美しさを覚えるのは一体どういうことなんだ。
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灼熱/灼熱の太陽(2015年製作の映画)

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ひどく暑い夏の日に海で泳ぐ男女たち。カメラは水面の境を執拗に写すが、水の中と外では世界の重さや質感が違う。それは、ユーゴ紛争以前と以後の隔たりを暗示すると同時に、水中に入った男が新しい存在に変身するこ>>続きを読む

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)

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青春映画の最高傑作。そう言い切ってしまいたくなるほど魅力的な映画だった。喧嘩に明け暮れ、くだらないジョークを放ち、女の子の気をそそろうと波に打たれる馬鹿な男達。向こう見ずなくせに将来に怯えていて、家族>>続きを読む

何者(2016年製作の映画)

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小説家の保坂和志がインタビューでこのようなことを語っていた。「人生や世界を外から観て、俯瞰的思考ができるようになることで社会に翻弄されないメンタリティができる。社会のシステムも同様の精神性を要請してく>>続きを読む

柔らかい肌(1963年製作の映画)

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ロメール『クレールの膝』にも連なる気持ち悪い中年男シリーズ。トリュフォーの方がもっとクラシカルで、靴だったりネクタイだったりに性的ニュアンスを含ませながら、エレベーターの降下で不倫に堕ちていく男を表現>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

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タイトルテロップが青から少しずつ紅色に変わるところで内容との関連を連想しちゃうけど、それ以上に色彩の豊かな捉え方に心を動かされる。空襲中の空に赤や黄が弾ける様を見て「絵の具があればなぁ」とすずがこぼす>>続きを読む

エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(2015年製作の映画)

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すごい。こんなに主人公が困難に巡りあわない話の映画が成り立つんだ。名門野球部に入部してすぐにチームメイトと仲良くなれる。ディスコでみつけた女の子といきなりセックスできる。かわいい女の子と出会って三日で>>続きを読む

木靴の樹(1978年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

大きな困難もなくまったりと進むのに最後で急転直下して救いもなく終わるのには驚いた、そしてタイトルにもオチにもなっている木靴の樹のエピソードが100分くらい経った後でやっと出てくるのも驚いた。

19世
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アデュー・フィリピーヌ(1962年製作の映画)

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リリアーヌとジュリエット途中区別つかなくなって混乱したぞ。パリでいちゃこらしてる時はだいぶのんびりしてるけど、コルシカにヴァカンス行った後から切迫感でる。普通はヴァカンスで気が安らぐのを考えると不思議>>続きを読む

七人の侍(1954年製作の映画)

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三船敏郎の体の動きってすごい変だよな。左右が別々に暴れ回っている感じがする。
もっとシンプルで快活なストーリーを想像してたけど、武士と農民の関係の複雑さが終わりまで尾を引いていて、なんともいえない陰影
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鳥類学者(2016年製作の映画)

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現地人も入り込めないポルトガル北部の深い自然の中で鳥類学者が体験する地獄巡り。敬虔な(異端的な?)カトリック信徒の中国娘二人を筆頭に、非常に複雑な性格を有するキャラクターが次々と登場し彼を試す。ポルト>>続きを読む

映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.0

思わず二日連続で観に行ってしまった。
初回は比喩でも何でもなく物理的に泣きまくった。石田に自分を投影する要素が多過ぎるし(加害者意識と被害者意識の混合、羞恥心、中高時代の孤独感)、硝子、結弦、植野、永
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メーヌ・オセアン(1985年製作の映画)

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一緒に観てたお客さんと同じタイミングで笑うのがなんだかとても楽しくて、やっぱ映画館て最高だなと思いました。
主要人物が全員鉢合わせてからのドタバタ喜劇感素晴らしいし、市民会館でのどんちゃん騒ぎのときに
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聖アントニオの朝(2011年製作の映画)

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ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督のトークショー付き上映。

毎年6月13日にポルトガルで行われる聖アントニオ祭の翌日の朝を描いたもの、とのこと。ほとんどの映像が聖アントニオの像と同じ高い視点から映され
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オーバー・フェンス(2016年製作の映画)

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ぼんやりとした空の色が印象に残る。
「おれが悪かったんだろうけどさぁ・・・」「あんたが悪いに決まってるでしょ」の会話が満点。オダギリジョー演じる白岩がどうダメなのかは曖昧にしか描かれてないのだけど(こ
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トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)

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普段家で映画観ないのだけど、ル・シネマのキェシロフスキ特集で青と白観て赤だけ観てないのが気持ち悪かった(のをダニーくんのレビューで思い出した)のでNetflixで。

キェシロフスキの映画はなんとも言
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桜桃の味(1997年製作の映画)

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誰にも開かれているドアのような、誰にとっても宝物になり得る奇跡の映画。大げさな言い方だけど、ほんとそんな感じ。
テヘランの砂にまみれた山と乾いた空を背景に、レンジローバーの白い車を運転する中年の男は自
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

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意地悪なカメラ!友だちのうちをさがすアハマドくんの道すじを先回りして待ち伏せするカメラは何もしてくれない。ただ美しさを映して、観客をドギマギさせるばかりだ。しかし、そうした苦難を示しながら助けないで主>>続きを読む

厳重に監視された列車(1966年製作の映画)

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笑え!とこの映画は叫ぶ。意味が破壊された果てにあるものを見て笑え、と。
チェコの国民的作家フラバルの原作を直前に読んで、映画がどういう風に変わっているかを考えながら観た。まず、時間の扱いが違う。小説は
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アイム・ノット・ゼア(2007年製作の映画)

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これは伝記映画ではない。観客がディランを生きる映画だ。ディランを生きること、それは六人分の人生を生きること。混乱を生きること。罪にも神にも手を伸ばすこと。女を愛し女を憎むこと。黒人になり女になること。>>続きを読む

少しの愛だけでも(1975年製作の映画)

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正統派な人間崩壊ドラマで、「あぁ、、もう、ばか!」と主人公を叱りたくなっちゃうやつ。女が裸になるところで鏡に写った男も服を脱いでくシーン好きでした。最後の明るい音楽はアイロニー。