シュローダーさんの映画レビュー・感想・評価

シュローダー

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マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

5.0

何度も観た映画ではあるが、やはり凄すぎて映画の歴史が一度この映画に収束されてしまったと言っても過言ではない。映像、音楽、アクション、脚本、全ての要素が完璧に作用して映画全体がドライブしている。何度観て>>続きを読む

マッドマックス/サンダードーム(1985年製作の映画)

3.8

美術と撮影は満点。アクションと話は…ヌルい。世紀末物の世界観の構築度合いとしては2よりもゲームや漫画の世界に与えた影響は大きいと思う。神話的世界観というより聖書の世界観に寄ってしまっているのは個人的に>>続きを読む

マッドマックス2(1981年製作の映画)

4.5

中学の時に観た初見の時はあまり面白く感じなかったが、メンタルが絶不調の時に観たらめちゃくちゃ面白かった。感心したのは、81年に作られた映画なのに、怒りのデスロードと一切変わらないスタイルが通底されてい>>続きを読む

マッドマックス(1979年製作の映画)

4.8

シリーズで1番カッコ良いと思うのは圧倒的にこの1作目。"馬の代わりに車を使った西部劇"というこのシリーズの命題に最も沿ったプリミティブな疾走がまざまざと描かれるのみという潔さに惚れる。自主制作映画故の>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

4.5

アウシュヴィッツ収容所で起きたホロコーストを描いた映画は多くあるが、この映画はその中でも異彩を放っている。アウシュヴィッツの所長である主人公のルドルフヘスは家族と共にアウシュヴィッツの隣に建てられた豪>>続きを読む

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)

4.3

ともすれば非常に漫画的で非現実的な物語として大失敗してしまいそうなものを、この映画は限りなく純粋に、限りなく本気で映画にしている。それが可能になっているのは何よりも主演2人の間に起きたかけがえのないマ>>続きを読む

永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

3.5

あまり冴えない濱口竜介だった。結婚とはゴールではなく茨の道の始まりに過ぎないという意味での「not the end」オチなど、言いたいことはよくわかるのだが、撮影や台詞回しの切れ味がどうしても足りない>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

濱口竜介作品を観る時には、いつも言いようのない緊張感が漂うものであるが、その緊張に違わないだけの作品が毎回お出しされる。今作もその前例通り、度肝を抜く映画体験であった。元々この作品は映画ではなく、石橋>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

5.0

クリストファーノーランという映画作家を好きでいて本当に良かったと心の底から思えた。「フォロウィング」以降だと圧倒的に今作が1番好きである。その理由としては、ノーランという映画作家の作家性が衒いなく発揮>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

3.0

原作未読で浅野いにお初体験という完全アウェー状態で観たが、全然面白くなかった。SFとしての面白さはアーサーCクラークの一連のファーストコンタクト物や、「第9地区」などの過去のいろんなSF作品のツギハギ>>続きを読む

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

2.0

俺はこの映画の事が大嫌いであると声を大にして言える最悪の作品であった。10年もの大恋愛を描くのは結構だが、ハッキリ言って脚本が酷すぎるので何の情緒もない。回想シーンの中で回想シーンをやる。みたいな、脚>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ヴィルヌーヴ作品の中でも、ようやっと「ボーダーライン」に並んで、いやそれ以上のベスト級作品と呼べるものに出会ってしまい、しかもそれがDUNEになるとは自分でもビックリである。前作は鳥白湯から鳥の出汁を>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

5.0

オールタイムベスト。「この映画はどうして僕の気持ちがこんなにわかるんだろう」と不思議に思う映画に出会う事が稀にある。この「暗殺の森」はまさにそういう類の、「七人の侍」の三船の如く「これは俺だ!!」と叫>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

5.0

「アメリカ人…a.k.a"白人" が求める黒人の物語」をのっぴきならない事情からでっち上げてしまう気難しいインテリ作家の受難を描く笑うに笑えないコメディ。消費者と作品の相互関係を描いた物語としてはかな>>続きを読む

アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

2.8

この話、「スカイクロラ」で良くね? という疑問を差し置いたとしても、この作品が提示するフィクションと現実の関係性には不義理さえ感じてしまうほど、全くもって肌に合わない作品だった。この作品が「リアル」で>>続きを読む

ポップスが最高に輝いた夜(2024年製作の映画)

4.8

レコーディング10日前から急ピッチで作った曲、深夜に始めて朝8時に終わったデスマーチと言わざるを得ないレコーディングの中生み出される名曲の裏側に迫る。スワヒリ語を入れようとか土壇場で抜かしてきていっぺ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.5

徹底して観客の方を向かずに「ほとんどビョーキ」な映画を貫徹して作れるアリアスターのメンタルの図太さを不遜さと取る人間も居るだろうが、この蛮勇をなんやかんやで楽しんだので良しとしたい。ユダヤ人という呪い>>続きを読む

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)

4.8

「機動戦士ガンダムSEED」シリーズに対しては、リアタイ世代をギリギリ外していたり、内容の粘度の高さや脚本の締まらなさなどが肌に合わず、正直なところ全く好きな作品ではなかった。しかし、およそ20年ぶり>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

三宅唱作品にまたしても「参りました」という言葉を言わざるを得ない事態になる事を、非常に嬉しく思う。やはり日本映画界の最重要人物の1人であることは疑いようがなくなった。瀬尾まいこによる同名小説の映画化で>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

5.0

フランスの文芸評論家ミシェルカルージュは、自著の評論集「独身者の機械」の中でこう述べている「二元論とスキャンダルが始まるのは、独身者の象徴である将校が、神の戒律を忘れ、それを一顧だにせず穴に投げ棄てた>>続きを読む

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

4.3

「この原作の始まりから映画1本でキリが良い所までに収めようとするとだいぶ尻切れトンボになるんじゃ…」という不安に関しては完全にその通りになってしまっているのでそこの部分に関して仕方ないと割り切れる心持>>続きを読む

サンクスギビング(2023年製作の映画)

4.5

これを観てしまうと、「テリファー」がポストモダンな映画に思えるほど、80'sホラーのエッセンスをイーライロスが生真面目に現代に蘇らせた楽しい映画であった。本題に行く前の冒頭のブラックフライデーの大暴動>>続きを読む

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

新進気鋭のホラー映画として最高だったのは勿論、単純に映画としてしっかりと作られている事が伺えてとても良かった。"悪霊の手とは繋がれるのに隣にいる生身の人間とは繋がれない"という描写を繰り返したり、長回>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

5.0

恐ろしいほど起伏がなく、何も起こらない話なのに無類に面白いというのがヴィムヴェンダースの才能であり、彼の慎ましい随筆家ぶりが染み渡る傑作であった。公共トイレの清掃員が毎日を決まったルーティンで過ごす様>>続きを読む

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り(2023年製作の映画)

4.8

(展開が)早い、安い、美味いの三拍子揃った牛丼みたいな映画。だから良い。カメラも殺陣もギャグも忙しなく、ひたすらに止まらないファスト映画みたいな作劇。それでも長回しで動きをキッチリ見せるカメラワークは>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

5.0

後期高齢化社会という「現代」に於いて恐らく最もリアリティのある地獄をこの世に現出させた鬼才、ギャスパーノエの胆力に改めて恐れ慄く映画だった。前作「ルクス・エテルナ」で取り入れられたスプリットスクリーン>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

3.5

ルカグァダニーノ監督作は苦手ではない筈なのだが、今作は何ともハマらない映画だった。風景ショット…特にネブラスカの真っ平な風景の力強さは特筆に値するし、カニバリズムを描く上でのゴア描写も最低限きちんとや>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

やはり基本的に俺はたけし映画とは相性が悪い事を悟る映画だった。残虐、下賤、男色という3つの観点を時代劇映画史上最も突き詰めてみせながらも全体としては完全にコメディというバランス感覚はたけし映画ならでは>>続きを読む

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

5.0

基本的に僕と言う人間は北野武映画にさしたる情熱を持ってない人間である。しかし、彼の一連の映画の中でも、これだけは手放しで褒められるしなんならオールタイムベストに入れても良い。カミソリみたいに鮮烈でカッ>>続きを読む

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

4.8

最高。広告代理店業の社畜ぶりとタイムループを絡める発想の時点でまず巧いし、そうなってもしゃあないわなと納得させてしまう日本社会の土壌が悪い意味で出来上がってしまっているので過剰な説明抜きで本題にスッと>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

東京国際映画祭クロージング上映にて。観終わった後「いい加減にしろ」という感想しか暫く出てこなかったくらい、全くノレなかった。かろうじて良かった点を挙げると、ゴジラ本体の造形とCGの質は予算を鑑みても出>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

5.0

2023年ベストは流石にこの映画かなぁと思っている。それ程までにデヴィッドフィンチャー監督作として観たいものが全て詰め込まれていた…イコール「僕が映画の中で起きて欲しいこと」しか起こらないまさしく夢が>>続きを読む

こいびとのみつけかた(2023年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

"予想通りに"予想以上の作品を送り出してくれる前田弘二監督×高田亮脚本の黄金タッグにまたしてもしてやられてしまった。「まともじゃないのは君も一緒」も素晴らしかったが、今作はそれに輪をかけて素晴らしい。>>続きを読む

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

4.5

町中華でラーメンとチャーハンのセットを食べる様な間違いないなさに満ちたよく出来た映画です。この映画、予算が8000万ドルという、ハリウッド大作の基準からすると破格の低予算で製作され、カメラはSONYの>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.8

「流されるままで自己判断が出来ないバカな男がヤクザな世界の論理に絡め取られて決定的な破局を引き起こす」という物語の大筋だけ切り取ればTHE スコセッシ映画という感じ。しかし、本当にこの基本プロットのま>>続きを読む

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

4.5

4重の入れ子構造、シンメトリーな画面構成というウェスアンダーソンの特徴は健在だが、横の移動よりも縦の移動に重きが置かれ、人物を移動させる事なく全てがセットとカメラの移動、或いはリアプロジェクションで完>>続きを読む

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