備忘録さんの映画レビュー・感想・評価

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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

5.0

美しい。あまりに美しい。「瞬間は永遠のアトムにして時間の断片に非ず」というキルケゴールのテーゼを想起せしめる見事な叙事詩だ。
この作品はさながら旧約聖書「伝道之書」のようである。明滅する刹那の心象模様
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旅するローマ教皇(2022年製作の映画)

5.0

世界は暴虐と殺戮とに絶えず曝され、流血と叫喚が地に満ちている。我々はいつまでカインの罪の内に留まるのか、「弟など知るものか」と、いつまで自己愛の桎梏に繋がれて生きて行くのか。主よ、哀れなカインを赦し給>>続きを読む

野いちご(1957年製作の映画)

5.0

ベルイマンは偉大です!
本作は繰り返し繰り返し味わいたい名作であります。

夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)

5.0

愛と苦悩の作家ベルイマン。
夏の夜は三たび微笑む、悲惨なる人生の重荷を負うものに、愛は沈黙の痛苦を照らす神の光に似ている。

HAZE ヘイズ(2005年製作の映画)

5.0

最高に狂っている。塚本晋也の恐るべき才能。日常自明性から剥離されたような輪郭なき恐怖と戦慄。

怪物(2023年製作の映画)

5.0

素晴らしい!! 言外の世界(『永遠の汝』が満つる世界)に漂う微かなエロティシズム、目眩と囁き。『誰も知らない』に匹敵する傑作。
勧善懲悪によって「世界」を捉えることは不可能だ、我々が見ているのは一部分
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独裁者たちのとき(2022年製作の映画)

5.0

「我地を見るに形なく虚しくして、天を仰ぐにそこに光なし」(エレミヤ記4章23節)
ニヒリズムの化身たる独裁者たち、重力の亡霊たる民衆。我々は死者の国に生きている。形なく虚しき諸力の偶像に引きずられて緩
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ある結婚の風景(1974年製作の映画)

5.0

無限に死を死ぬるがごとき人生において、ほんの束の間、浄福なる生の静けさを感ずる瞬間がある。人々は沈黙の痛苦に震え、無の不安に戦いている。愛は不確かな観念に過ぎず、最早死の恐怖から、永遠の滅びから逃れる>>続きを読む

園子温という生きもの(2016年製作の映画)

5.0

園子温監督は天才的アーティストだ。これは、彼の実存をかけた闘争の記録。尽きなく生きんとする彼の魂の軌跡だ。過去からも、未来からも自由でる人間、自己自身の一点に永遠に停止し、かつ自己自身の一点より永遠に>>続きを読む

夏の遊び(1951年製作の映画)

5.0

我々は時の中で死へと向かう存在。やがて一切は永遠のごとくに静止し、「叫びもささやきも沈黙に帰す」すべては、空、空の空、我々は純然たる幸福に歓喜する最も輝かしい日にあっても、刻一刻と過ぎ行く時の中で沈黙>>続きを読む

パプリカ(2006年製作の映画)

5.0

今敏監督作品。エンターテイメントとしても楽しめる。人間は鏡の中にある如く、虚構と現実は互いに侵食し、沈黙の痛苦の中で夢見ている。曰く、無。しかし、今敏監督はそのような惰性には決して甘んずることなく、「>>続きを読む

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)

5.0

死の恐怖と倦怠、神の沈黙(白)は舞台装置の刹那の愉楽(赤)を飲み込む。少年は現実の崩壊を目の当たりにし、白き沈黙の痛苦に慄然とした。赤と白、少年は舞台装置を解体し、想像力の翼によって次の行へと、美しい>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

5.0

ギリシア悲劇の再襲だ! 正に「力の叙事詩」です。摂理は人智を超越しデュオニッソス的悲劇のうちに一切は融解する。親和力によって引き合わされた二人、斥力によって分かたれた二人。人間はただ「力」の器にすぎな>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

5.0

完璧な作品。「力」の流れを記述する叙事詩的試み。「言語」は必要ない。ケイコの眼差し、垂直化する時間、風と光と影の世界。美しい。「意味」の世界を生きる私たちは何と不自由なのだろうか、水平化する時間の中で>>続きを読む

鏡の中の女(1975年製作の映画)

5.0

「いつか実在できますように」存在の鎧戸の向こうはいつだって不在、世界は不在。存在はすべて追憶、現在に至らぬままに時定めなき生の放浪を、そして幾度も終焉を繰り返すのだ。こんな人生に何の望みがあろうか? >>続きを読む

(1961年製作の映画)

5.0

倦怠と憂愁、沈黙の痛苦。存在はすべて追憶に過ぎず、無から無を移し変えるような徒労に、見慣れたフィギュアールの輪郭に漂う嘔吐感に、耐え難い屈辱を覚える。

私のように美しい娘(1972年製作の映画)

5.0

トリュフォーの作品においていつも痛感することですが、女は自由への翼、露悪的マニュフェスト、垂直的詩人でありますが、男は隠微なマイホーム主義者、永遠の夫に過ぎません。露悪的マニュフェスト、犯罪的実存の転>>続きを読む

突然炎のごとく(1961年製作の映画)

5.0

所有と独善、結婚と契約、ゲーテ的男性の隠微なマイホーム主義。一所不在の思想に魅せられた女の不誠実にして誠実、不真実にして真実なる愛。自由と放蕩に解放された女の優しい肉欲が隠微なマイホーム主義を爆砕する>>続きを読む

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)

5.0

素晴らしい! 「愛は私の宗教」古い世界を捨てて、自由の港から旅立つ女。しかし、自由になることは不自由を愛することであり、彼女の揚力は彼女の重力でもあった。アデルの愛は罪深く、狂気的で暴力的だ、だがそこ>>続きを読む

ビリーバーズ(2022年製作の映画)

5.0

「必要なのは自由ではなく不自由、出発ではなく留まること。」この台詞にすべてがある。
抗いがたい親和力は刹那の煌めき、輪郭線のない黄昏のごとき表象へと誘う。絶対的他者の内に限りなく映像される自己の素描、
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天草四郎時貞(1962年製作の映画)

5.0

信仰のために命を捨てる覚悟があるか。真空の夜を行くイエスにならい、何の見返りもない痛苦の中で沸騰せる瀑布の如くに煌めき、死に至る道を、美的闘争の道を行くことができるか。神は沈黙している、世は悪霊に支配>>続きを読む

(1974年製作の映画)

5.0

過去現在未来の持続性を止揚し、永遠を映し出す、映像の詩人タルコフスキーの傑作。ラストの復活と始まりはドストエフスキー『罪と罰』の終章に匹敵する感動と永遠の啓示に富む。

白昼の通り魔(1966年製作の映画)

5.0

人は罪深くしかあれず、故に愛は殺意を、慈しみは憎悪を含む。それは近く見れば醜く、遠く見れば美しい。大島渚監督のパワーが炸裂していました。

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