レクさんの映画レビュー・感想・評価

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帆花(2021年製作の映画)

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脳死に近い状態で生まれた帆花ちゃん。
両親が娘に注ぐ愛情、その外側にあったであろう葛藤と選択の連続。
無表情に思えた彼女が時折見せる表情の変化を見る。
「生かされてる」だとか「彼女の意志」だとか第三者
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僕はイエス様が嫌い(2019年製作の映画)

3.9

宗教も信仰も関係なく、純粋に少年視点から描かれる祈りと請い。
突如、カトリック系の環境に放り込まれて半ば強制的に祈りを捧げることになった少年が、悲劇により神に懐疑的になり文字通り神ごと聖書に拳を叩きつ
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フェート/双生児(2007年製作の映画)

3.3

結合双生児で分離手術後に死亡した双子の姉妹を持つ女性がその片割れの幽霊に脅かされるタイ産ホラー。

オカルト演出とは別にミステリ要素を織り交ぜたJホラーの影響を多大に受けているのは『心霊写真』からも窺
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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

2.5

アクションの強引さは差し置いて、京都を舞台とした『迷宮の十字路』と連なる函館ラブコメミステリ。

好きなところと残念でならない部分が混在し、困惑させる。
ターゲット層を子どもからコアなファンへと完全に
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マッドゴッド(2021年製作の映画)

3.7

レビ記(律法)の引用から始まる本作、神の定めを守らなければ厳しい罰が課せられる。
冒頭の映像から推察するに、地獄と表現される場所は言語のない堕ちてゆく世界で、反逆する者ニムロドのように神の領域に足を踏
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母へ捧げる僕たちのアリア(2021年製作の映画)

3.6

美しい南仏の港町と公営団地、移民問題や格差、植物状態の母と暮らす4人兄弟の末っ子にとっては歌を習うことさえ許されない過酷な環境。

未熟ながら一際輝く少年の歌声に心を掴まれた。
奇跡は起こらない。
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ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)

3.7

原作小説の感想。
ベタなタイトル、役者たちの心理的クローズド・サークル設定を生かしつつ「何故犯人は特定されやすい閉鎖空間で人を殺すのか?」のある種のアンサーを掲げる気概は分かるが、幕切れの弱さに読後感
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.0

称賛或いは反戦でなく栄枯盛衰ひとりの科学者が政治的思想と権力に翻弄される物語としては重厚且つエンタメに仕上がっている。

感情の不確定性原理、まるで妬み嫉みの連鎖反応のような畳み掛けをこの題材で描くに
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天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬(2015年製作の映画)

3.4

尻は割れても口は割らない。
バカボンのパパの本名を狙う悪の組織、怒り狂うネロとパトラッシュ。

言葉遊びとくだらないノリで何回か笑わされた。
「これでいいのだ。」の一言ですべてが解決してしまう『天才バ
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ヨガ学院:死のクンダリニー(2019年製作の映画)

2.5

落ち目のモデルが薦められたヨガ教室。
裸体と蛇でクンダリニー、悟りを開いて四十九手目を見る。

整形大国、韓国でルッキズムに囚われる女性の恐怖を描くアプローチは良いが後半は説明的すぎる。
設定や色彩、
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怪談お岩の亡霊(1961年製作の映画)

3.6

四谷怪談を題材に加藤泰監督が映画化。

周知を前提とした脚色、ローアングルからの構図で観客を楽しませる気概は感じるが、厭な空気感を纏いながらもスロースターターでお岩さんの長回しから復讐モードに入るまで
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操作された都市(2017年製作の映画)

3.8

無実の罪で服役した最強ゲーマーが脱走し、仲間たちと真相を暴いていくサスペンスアクション。

あり得ない設定ながら力業で押し切る娯楽性の高さと物語の推進力、そして社会風刺も織り交ぜてくるてんこ盛り展開で
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ゲット・オン・ザ・バス(1996年製作の映画)

3.3

この旅を終えた者が皆、前より良い人間になること。
ミリオン・マン・マーチに参加するために乗り合わせたバス。

黒人とひと括りにされるがブラザー同士にも貧富、性差や同性愛への差別意識、宗教観、思想がある
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オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主(2013年製作の映画)

3.9

死者の霊が見える青年が街の殺戮を防ごうとまだ起きていない事件を捜査する。

ホラーありサスペンスありアクションありミステリありヒューマンドラマありと良く言えばバランスの取れた 悪く言えば無難な物語。
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恋は光(2022年製作の映画)

3.2

恋を正しく語ろうとするなんてナンセンス。
理論で分解して感覚で再構成していく恋の定義、目に見えるものから見えないものを探っていく面白さはある。

光とは何かが重要なのではなく、その光が照らす方向と光り
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インナースペース(1987年製作の映画)

3.5

ミクロになってウサギの体内に入る実験中、スパイの妨害で人体に入ってしまった男をスリリング且つコミカルに描く。

今観るからこそ80年代SF映画の古き良き味、ワンアイデアと創意工夫が感じられ、懐かしさと
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神回(2023年製作の映画)

2.5

手垢まみれの青春タイムループものから新感覚という謳い文句通りあらぬ方向へ舵を切る怪作ではあるが、台詞回しと情報の出し方が下手くそなのはこの手の題材で致命的な欠点。

冒頭や挿入される映像が既に仕掛けの
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ティル・デス(2021年製作の映画)

3.6

結婚記念日の翌日、レイクハウスで自殺した夫と手錠で繋がれたまま殺し屋に狙われる妻。

パンツ一丁で雪中を引きずられる夫の死体、心身ともに縛られている妻の体力。
その死体の枷と利用、夫婦関係の伏線と回収
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パラレル 多次元世界(2018年製作の映画)

3.5

時間の流れが180倍速いパラレルワールドに繋がる鏡を見つけた男女4人。
ミニマムな話にすることで人間の業がより顕在化される。
精神と時の部屋の用途は面白いが設定を活かしきれてない流れになるのが惜しいし
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トランク ~走る密室~(2024年製作の映画)

2.0

ヒッチハイク中に拉致されトランクに監禁、腎臓を抜かれててポンポンが痛い痛い話。

ほぼ車のトランク内というワンシチュを飽きさせない気概は感じるが要所要所でツッコミどころが満載。
女医学生はタフでメンタ
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しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜(2023年製作の映画)

2.5

「頑張れ」は時に鋭く心を抉る言葉になる。
現代社会を批判した内容は今を生きる子どもたちにどう映るのか。
永遠の5歳児がふざけてたら結果的に世界を救ってしまう本作において、お先真っ暗な未来に頑張れだけの
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

号泣。
テンポ良く進む実直なサクセスストーリーの外側にある現実の厳しさと想像を超える努力の時間。
その結晶と情熱が演奏という数分間で表現される凄み。

輝けるその一瞬に心血を注ぐ彼らが奏でる音を聴いて
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市子(2023年製作の映画)

3.2

前情報通り演技自体は素晴らしいが、あくまでそれは付加価値であってこの映画の評価ではない。

市子という人物に振り回された周りの人間の視点から紐解いていくミステリとしての構成は面白いが、それに伴う物語は
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禁じられた遊び(2023年製作の映画)

3.0

交通事故で人間も死ねば悪霊も退治しちゃうぞって話。

橋本環奈の顔芸と白石晃士になれなかった中田秀夫の怨念が生き霊となって襲ってくる。
初夏を感じさせないファーストサマーウイカの寒そうなビジュアルは良
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悪魔の美しさ(1950年製作の映画)

3.8

ゲーテの戯曲『ファウスト』を基に映画化。

年老いた博士が悪魔に魂を売って若返り、女性と恋に落ちる。
生きていく上で切り離せない現実と欲望の境界線に立った男は何を望むのか。
若さを取り戻し、世界の見え
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呪術召喚/カンディシャ(2020年製作の映画)

3.7

元彼の被害に遭った女性がモロッコの都市伝説アイシャ・カンディシャを召喚したら身近な男たちが次々と死んでいく。

被害対象でない立場がどう物語に絡んでくるのかがミソだが、そこには暴力の連鎖を阻止するフラ
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みぽりん(2019年製作の映画)

2.0

音痴な地下ドルが山奥でボイトレ強化合宿という名の監禁に遭うホラーコメディ。

みぽりん先生よりも恐ろしい市民税、何かに囚われたものからの解放、アイドルとは何か。
シュールな笑いを兼ね備えた上でのメッセ
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.3

事実と真実は異なり、現実と虚構の境界線を事実に基づく小説と法廷劇に置き換えることで"読者(傍聴席)=観客"とする作劇に度肝を抜かれた。
それは視覚だけでなく聴覚によるものまで、そして主題で語られる落下
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13回の新月のある年に(1978年製作の映画)

3.8

性別適合手術をした主人公の最期の5日間。
元恋人を自死で失ったファスビンダー自身の吐露でもある"愛と破滅"は当時の時代背景もあり、男女というジェンダー論の上で語られる男にも女にもなれない苦悩がセンセー
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クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉(1969年製作の映画)

3.8

花嫁ばかりを狙う妄想症の連続殺人鬼が妻を殺して焼却炉で燃やしたらその妻の幽霊に取り憑かれる話。

イタリアンホラーの父マリオ・バーヴァのファンには不評ながら、現実か虚構かや自他での認知の差異など『アメ
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ルチオ・フルチのクロック(1989年製作の映画)

3.5

マスター・オブ・ゴア、ルチオ・フルチの時間逆行ホラー。

クエンティン・タランティーノも大好きで自身のレーベルでリバイバル上映したのは有名な話だけど、タランティーノが影響受けたって公言してる『ビヨンド
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NN4444(2024年製作の映画)

3.7

4人の監督による4つの不条理ホラーショートフィルム。

『犬』
中川奈月監督の24分短編映画。
視線で追うばかりで言葉にできない、将また言葉ではなく目で訴える。
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
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VOID(2023年製作の映画)

3.7

岩崎裕介の24分短編映画。

人は悲しいぐらい忘れてゆく生きもの。
身近な死に対する自身の抱いた感情と周りの反応との齟齬。
"日常から欠けたり抜け落ちた何か"に対する価値観や認識の違いが違和感から不気
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洗浄(2023年製作の映画)

3.9

宮原拓也監督の17分短編映画。

感染るでも憑くでもなく、飲み込まれ溺れる。
不快と奇怪な行動が如何にホラーとの融和性が高いのか分かる。
「よく分からないけど実際あったら怖い」感覚が残るのは起承転結及
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Rat Tat Tat(2023年製作の映画)

3.4

佐久間啓輔監督の16分短編映画。

女性が抱くトラウマと居心地の悪さはやがて形となって示される。
カットバック、"厭な間と音"で煽られる不安。
ごく一般的な催しが彼女のフィルターを通すことで恐怖演出に
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(2023年製作の映画)

3.2

中川奈月監督の24分短編映画。

視線で追うばかりで言葉にできない、将また言葉ではなく目で訴える。
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ「ワンワン!」
無自覚な心の叫びと解放、『#彼女はひとり』同様
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