社長さんの映画レビュー・感想・評価

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悪は存在しない(2023年製作の映画)

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渋谷采郁がテラスに立つロングショットにゆっくりと立ちこめる煙、そこに届く夕日の光線と、車内を覆っていく影の中の大美賀均はどこか近しく、ただそうである自然として存在しているよう。

ただそうである役者に
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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物語を担保するのがほぼほぼ台詞で切り返しの多くはただ流れていく、という感じではあったのだけど、全体としては面白く見ていた。
音響が遅れて届くトリニティ実験の爆発シーンが、体感的なスペクタクルだった。
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コロッサル・ユース(2006年製作の映画)

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椅子が窓から落とされるファーストショットから一貫して、フレームに切り取られる空間の緊密さや深い暗闇に、底知れない存在感が漂う。
ところどころ意識が飛び家族関係とかちゃんと追えてないけど、塞ぎ込み腰を下
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GIFT(2023年製作の映画)

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石橋英子の演奏のボルテージと、画面の人々や自然の推移が、異物同士のまま呼応していた。とりわけ開発の説明会シーンでのアグレッシブなパーカッションが凄かった。『ハッピーアワー』の小説の朗読会とも通じる趣き>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

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手のひらの中で輝く初めて撮影した映画、その暴力的なアクションと煙の生々しさに初期衝動がほとばしっている。
前のめりな創作意欲でドライブする前半がめちゃ面白いから、後半ももう少しタイトだったらと感じてし
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

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冒頭、野外でのバンド演奏を収めるカメラがゆっくりとパンし、遠くにみとめられるベンチに寝そべる人が軽い体操をしている。
絶えずフレームの外側に存在する世界が、慈しまれるほど熱を帯びるわけでもなく、ただ「
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レネットとミラベル/四つの冒険(1986年製作の映画)

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第一話、木の下にしつらえたティーテーブルや、夜の納屋を捉えたロングショットの少し唐突な編集のリズムからセンスオブワンダーが漂う。
農家を訪れた後2人が歩く道中、風に煽られた草むらのざわめきにも、不穏さ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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モノクロの生家から冒険に出たカラーの外界の、ビビッドかつ鈍い光沢をたたえたルックが、ベラを誘う蠱惑的な刺激を体現していた。今作では美術とデザインにいちばん魅力を感じる。
あらゆる身振りが暴力性を帯びる
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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坂道のロケーションが、序盤の上白石萌音と遅れて下から来る松村北斗との距離感を際立てるところですでに良いのだけど、後半で彼が乗る自転車が下り坂をスムースに滑走していく、他の力を借りることによる身軽な運動>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

奥行きの平坦さ、カット割ったら既に座ってるアナ・トレントの出し方の素っ気なさなど、禁欲的な画面が続き、老監督の吐露も相まって、途中まで余計な作品撮ったのではと感じずにはいられなかったが、失踪するホセ・>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

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スタンダードで切り取られた豊かな奥行きを移ろう時間が、簡素な充実に満たされていた。ロングショットが冴える。
小川に腰まで浸かった魚取りシーンの後、新しいブーツを履くカットに繋ぐなど、風通しよくラフな印
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あるじ(1925年製作の映画)

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意外にライトな家庭劇に、萎縮する妻を正面からやや小さく捉えた象徴的なショットがのぞいたり、だんだん夫も底深い存在感が漂うドライヤー的顔を見せていく。
最後にテーブルを囲む家族を収めたアングルが、前半と
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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編集のテンポで東京の街を行くアクションを追うのは楽しかった。
木々の日陰の移ろいのように優しくざわめく人々。ただ彼らの格言みたいな台詞にカットが収束していく感じがなんだかな…
役所広司は全く喋らない方
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ミカエル(1924年製作の映画)

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侯爵夫人の瞳をミカエルが肖像画に描出するとき、短い間の切り返しに、絵画の一歩先へと、人の視線の表象ににじり寄っていく映画の姿を垣間見た。
やがてミカエルを失ったゾレが遺作の前で佇むショットの最後、深ま
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吸血鬼(1932年製作の映画)

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多重露光やフレーム内フレーム、影絵的な表現が多用され、不条理な空間に迷い込むよう。部屋の中を動くカメラが、人物を不穏に浮き立たせる。
棺桶に入って運ばれる主人公の顔にかかる木影の移ろうさまが異様に美し
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枯れ葉(2023年製作の映画)

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アルマ・ポウスティの口角が一瞬ピクッと上がる微笑みがチャーミング。頬へのキスもぎこちない福音のように、ほんの束の間に訪れる。
彼女の最後のアクションもまた、一瞬のうちに現れて消える。そのささやかで、し
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市子(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

冒頭のプロポーズを受けた杉咲花に引き込まれるが、この紙が持つ意味をのちに思うといたたまれない。
揺れるカーテンやトンネルづかい、レコーダーを利用した省略など、心理的になりすぎずにミステリーを語り進めつ
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満月の夜(1984年製作の映画)

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ラストのアンサンブルの呼吸が今作の中だと突出していた。
やっぱり男女を椅子にどう座らせるかが作劇において大きい。
序盤での模様替え中のパリの部屋で仮設的に設けられる椅子が、やがてここも窮屈な愛の空間に
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オアシス(2002年製作の映画)

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想像上で造作なく動くムン・ソリの軽やかさが眩しい。それをすんなりとソル・ギョングが受け入れる虚実のあわいのようなカット、その瞬間のみ存在するオアシス。
高速道路でのシーン、二人を思いがけずロングで捉え
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シークレット・サンシャイン 4K レストア(2007年製作の映画)

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チョン・ドヨンが一瞬いなくなった息子を見つけて追いかける一回性漲るカットをはじめ、序盤に持続して不穏さが漂う。
狼狽し孤立していく様を捉えるカメラが生々しく、電話を受ける背後でゆっくりと揺れる庭の草に
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