繰り返される日常のなかで、少しずつ生まれる変化。反復を信じることで、閉ざされた少女や大人たちの心が開いていくことが、丁寧に感じ取られる。喪失の哀しみと、ただその存在がそこにいることによって起きる変化。>>続きを読む
傑作と呼んでしかるべき映画。フィックスと、限られた人物フォローで構成される抑制が、自転車で放たれる瞬間、突如として現れる躍動。惜しげもなく重ねられるショットの密度。ロングショットも、トンネルも、人物に>>続きを読む
2000年代の空気を象徴するような作品。古びない痛快さと、もう絶対無理だろと思われるメリル・ストリープの鬼っぷり。実際には、現在もそういう世界があるのかもしれないが、現在の観客には受け入れ難い気がする>>続きを読む
スーパースターたちが集結した一夜にフォーカスしたことの勝利。いかに手づくりでものがつくられていたのか、よくわかる。アフリカンアメリカンによるアフリカへの慈善という大いなる意味合いがあったことは学びにな>>続きを読む
反復と差異。的確に見えてくる孤独で静かな男の日常と、ほんの少し浮かび上がる過去。役所広司のピークとでもいうべき姿や所作を、十分に堪能できる。ある男の(おそらく)12日間を描くことで、想像させる人生の広>>続きを読む
一夜限りのボーイミーツガール。ひたすら会話する二人の時間を、カメラはしっかりと見せる。長回しと、切返しの使い分け。二人の役者の輝きの記録は、ドキュメンタリーであり、いつまでも色褪せない。
列車で出会>>続きを読む
長回しかと思いきや、見るもの/見られるものを丁寧に見せるクラシカルなカット割り。静かな場面の連鎖が詩情を高め、同じスクリーンを眺めていた姉妹は、少しずつまったく別の人間であることが、あらわになる。不意>>続きを読む
わけのわからない映画だ。しかし、そこにフォードのわざがつまっていることが、解説によって、明瞭にわかる。フォードの家父長制への抵抗。ドキュメンタリー的なアフリカの撮影。根幹にある、人間や時代への眼差し。>>続きを読む
スクリーンに、新鮮な喜びが溢れている。キートンの躍動が素晴らしいと言ってしまうのは容易いが、シンプルに奇跡的な運動なのだ。
探偵見習いの映写技師は、愛する人のために、詐欺師による濡れ衣を晴らそうとす>>続きを読む
シネマトゥデイに掲載されていた原作者のインタビューがひどくて(アイヌの人は工芸が得意だから「適材適所」で協力してもらった、「一歩深い考えで判断していただきたい」)、でもそれは宣伝担当や編集者の責任でも>>続きを読む
初見ではないが、着陸までの時間を逆算すると、ちょうどよかった。よかった。あまりにも鮮やかな手際。一瞬の無駄もない。トニスコは偉大だ。
危険物を積んだ列車が無人のまま暴走する。解雇通告されたベテラン運>>続きを読む
飛行機で鑑賞。物語はテンプレ感もあるけど、役者の力か、長回しの撮影のスタイルゆえか、没頭。ありえたはずなのに、そうならなかった人生を思い浮かべたことのある人は、きっと共感できる。アジアからの移民モノが>>続きを読む
今は亡き加藤幹郎が、この映画における切り返しショット(のあまりの少なさと、ひとつのシーンへの集中)、船のシーンの仰角ショットについて示したことをよく覚えている。が、これほど感動的だったことは覚えていな>>続きを読む
大傑作。観ながら、震えた。香川京子、最高。
冷酷な夫との生活に嫌気がさし、偶然をきっかけに家を出た若妻は、同じく家を出た奉公人と不義密通を疑われながら逃げる。死を覚悟したとき告白され、本当の愛に気づ>>続きを読む
シンプルきわまりない構成、それで滅法面白い。いま見ると、肝心の場面でサメが、いかにも作りモノなのだが、そんなことを言ってもしょうがない。
巨大な人喰いザメが出現。警察署長は、海洋学者、ベテラン漁師と>>続きを読む
昔見たときは、もっと面白く感じた印象があるが、ちょっとつまらなかった。ひとつの部屋のなかだけで映画を作れるアイディア以上のものではないような。様々なレンズのカメラの使い方と、グレース・ケリーの優雅さを>>続きを読む
傑作。ヒッチコックで一番好き。蓮實重彦や北村匡平の分析を読み直して、なおさら面白い。
諜報員の男に恋した女は、その命によってスパイとなりナチスの一員と結婚し、秘密を入手するが、スパイであると気付かれ>>続きを読む
結婚式、ひとことも発さない三船。怪しい招待客。だが、観客に背景を教えてくれるために存在する記者たち。以降、退屈はしないが、大きなピークがなく、何かが残るかというと、そうでもない。私腹を肥やすのはダメだ>>続きを読む
ただただ痛快のひとこと。冷静に見るとマフィアのボスが大馬鹿なのだが、つべこべ言わずに。
マフィアからカネをすった若い詐欺師は、復讐で仲間を殺され、自らも追われるが、腕利きのベテランと組み、逆にマフィ>>続きを読む
水平を傾けたダッチアングルショットの多用にはやや辟易したが、オーソン・ウェルズの登場シーンには痺れる。途中やや退屈するのと(動機は完全に明らかにならなくていいが、脇役がいまいち)、最後の追跡劇のハラハ>>続きを読む
有名な話なので(この映画ゆえだが)、筋書きを知っていたこともあるが、仰々しさに全くノレなかった。とはいえ、大感動作らしいので、事前情報がなければ違っていたのかもしれない。中盤で結が出て大転換する脚本は>>続きを読む
最初の遊園地のシーン。場所を変えながら視線の交錯だけで、2人の精神的な距離を近づける巧みさ。ヒッチコックなら、これくらいは当然なのだろうか。
テニス選手が、見知らぬ男に、交換殺人を持ちかけられる。合>>続きを読む
雨月物語なので、霊的なものが登場するとわかるが、あらすじは知らずとも、森雅之がはまっていく運命がたちどころに予感される。京マチ子は艶かしく、屋敷のゾクゾクするような恐怖に身の毛もよだつ。美術の贅沢さは>>続きを読む
事前情報をシャットアウトして観た。最初はこの感じでいくの?と不安になるくらい、静か。トカゲをそっと元に戻し、突き飛ばされても反撃しない男、サンフランシスコを夢見る男。興味を覚えはじめたら、急激にドキド>>続きを読む
不思議だ。結末は時流に棹さすようで保守的だし、画面を縦横無尽にかけまわる運動や、感情の爆発があるわけでもない。妻の家出があるだけのストーリー。だが、人間がいきいきと生きているのだ。成瀬、おそるべし。
失敗→代償→報復。とくに逸脱もなければ、転じることもない物語。だが面白い。ひたすら繰り返される独白が、殺人者の流儀をこれでもかと印象づける。フィンチャーの若々しさが、開き直りの寸前で、とどまっている。
まだ少し若々しい黒澤と、若すぎる三船。序盤の街歩きに、「生きる」と同じ冗長さを感じてしまいはするのだが、後半の演出の冴えは、高揚感と哀しみをもたらしてくれる。盗まれた自分のピストルを、同じ経験を持つ彼>>続きを読む
相米慎二という映画監督の凄味を、昔はわからなかった。こんなに素晴らしいショットを撮ることの途轍もなさ。花火を背にした喧嘩などの大胆な演出を、ここぞというときに発揮する。しかし、これだけの負荷を背負って>>続きを読む
企画と脚本の勝利。すさまじいエネルギーを、ひとつの宿場町に集中して発露させる。ユニバースなど描きようもないのだから、適切な舞台がたったひとつあれば映画にとっては十分なのだ。風と雨と枯葉。残虐さをものと>>続きを読む
前半が冗長、ひとつひとつのシーンが濃くて暑苦しい。世界的名作もこんなものだな、と思っていたが、亡くなってからの力は確かに凄まじかった。亡くなっているからこそ、美しすぎる話が、嫌味なく入ってくる。
クラクションが祝福にも感じられるような高速道路の踊りからの、オアシスの抱擁とキス。素晴らしいシーンだった。この映像を撮るために、全てがあってもいいと錯覚させてくれるほどの幸福が映っている。ムンソリの変>>続きを読む