鶏糞さんの映画レビュー・感想・評価

鶏糞

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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.3

卑俗な意味での”革命精神”を発揮すれば討論の様子はネットでも観られる状態にあるので、人によっては目新しい内容はなかったと思う。「媒介として言葉が力を持ち得た最後の時代」という芥の言葉にはどこか牧歌的な>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

非常に緻密に構成された脚本は、ミステリーとして上手いどころではなく、公民権運動以降の、現代の進歩的価値観のもとに根付いている黒人差別の構造というものを顕わにしていてすごいというしかない。

ステレオタ
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1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

4.2

言い尽くされていることだが、コントローラーがないという事実は、映画がゲームに限りなく近づいたときの臨界点であり、それゆえに全シーンにおいて緊張感が潜勢することになる。伝令は世界内において〈敵〉という、>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.1

最高のカップルセラピーといった趣で、こういったイベントを各地で開催して健全な人間関係を築くことを目指した方がいい。

アメリカやイギリスという現世でケを貯めに貯めた人々が中間地帯で幻覚になり、祭りの世
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女は女である(1961年製作の映画)

3.6

小難しいことを言おうと思えば言えるのだが、普通にかわいくて楽しい映画として観られる方のゴダール。第四の壁を何回越えられるかのギネスブックに挑戦したわけではないと思う。

ステレオタイプとしての男/女の
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マンハント(2018年製作の映画)

3.0

原作自体がプロットハチャメチャのバイオレンス小説なので、リメイク版(1976年に高倉健主演で映画化されている)をジョン・ウーはどうやっていくのかと思ったら、ハチャメチャさと70-80年代日本の男性原理>>続きを読む

男たちの挽歌(1986年製作の映画)

4.0

映画は短ければ短いほど良い説があるが、スピード感があって素晴らしい。

返還前の香港での偽ドル札作り。最初の方は子供のように無邪気なホーとマイクの関係が、台北での事件を機に本当に厳しいものになる。極道
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フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

4.1

7000rpmを超えた世界は、『ピンポン』ペコvsドラゴン戦でのドラゴンの独白を思い起こさせる。軽くなり、すべてがゆっくりと進み、何かがやってくる。だが現実の速度の中で生きている時には、誰しも現実の重>>続きを読む

ラストムービー(1971年製作の映画)

5.0

映画の力のすべてがある。

映画についての映画であると同時にロケ地で”運命の人”に出会ってしまったスタントマンの人生劇でもある。また、単に「最後の映画」なのではなく、「最初の映画」でもあるのだ。キネマ
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夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)

3.0

京大マジックリアリズムであり、苦手な人はとことん苦手な原作であろう(俺は本当にダメ)。湯浅政明の手により、一年を圧縮した夢(現実でもあるのがややこしいが)から覚めたあと、それまで中村佑介の扉絵に媒介さ>>続きを読む

アイリッシュマン(2019年製作の映画)

3.7

話は良い(特にロバートデニーロが老人ホームに入ってからの話が良い)が、とにかく画面が退屈で、こんなにこのシーンを引き延ばす必要あるか?という無の瞬間が多く、かなり長い映画であるため流石に厳しいものがあ>>続きを読む

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)

4.7

セックス、私的領域に隠されているが故に最も危険な快楽。ダンスはセックスに最も近い芸術であるということができる。雪山の山荘に集められた素性のバラバラなダンサーたちの関係は、LSDがキマる前から既に綻んで>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

2.9

クライマックスであるマレーのショーでのジョーカーの安っぽい演説に説得力を持たせるために、全ての街、人、シーンが構成される中学生の妄想日記のような脚本を、演出でなんとか観れるようにした映画(ピエロの仮面>>続きを読む

ロビンフッドの冒険(1938年製作の映画)

3.7

ジョン王……あまりに歴史上やらかしすぎると創作でも大変な扱いになってしまう。それはそれとして、カラー映画黎明期のセットや衣装作りはできるだけカラフルにして楽しませようという気持ちが感じられて良いですね>>続きを読む

オズの魔法使(1939年製作の映画)

4.1

あまりにも力強い楽天的な画面が全編を支配し、青い鳥のオチに突っ込んでいく。ガンギマリで話を進めていくとどれだけチープに思える価値観も強さを帯びてくるものだ。オーバーザレインボーがあんな序盤で歌われてい>>続きを読む

シェーン(1953年製作の映画)

3.5

男のプライド、女の愛。新しい時代の旗手は理想を貫徹し、時代の敗北者たちは静かに消えていく。南部のおじさんかわいそう。ヴィクターヤングは本当にいい音楽を作る。シェーンは業に絡めとらているが、子供には分か>>続きを読む

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年製作の映画)

3.3

2時間ちょっとの映画なのに4時間くらいある気がしてくる。眠い。絶対に合うはずがない男と女が恋に落ちてしまい、よせばいいのにゴーサインを出してしまう。運の悪さも重なり合ってものすごい勢いで互いの感情が摩>>続きを読む

地球の静止する日(1951年製作の映画)

1.9

冷戦期。地球で地上で争ってはならない。リンカーンの偉大なる思想を持つアメリカの元に世界は一つになるべきだという力強いメッセージ。アメリカ軍がカッコよく何度も映され、ワシントンDCの主要通りが何度も読み>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

4.6

冒頭に現れる半分瓦礫になった羅城門のセットがクソデカすぎて笑ってしまう。早坂文雄の和風ボレロに合わせて盛り上がってくる京マチ子の怨念が凄まじい。というか藪の中のメインを務める三船敏郎、京マチ子、森雅之>>続きを読む

そして誰もいなくなった(1945年製作の映画)

3.7

小学生ぶりくらいにアガサ・クリスティに触れたけど映画にしても面白いですね……人数が10人と多い上にテンポよく人が死んでいくので飽きずに画面を観ていられる。全体的に演劇的な演技で、メソッド演技法の登場は>>続きを読む

第三の男(1949年製作の映画)

3.4

四つの国が支配する戦後ウィーン。皆がよそよそしく、名前の発音を間違える度に距離が浮き彫りとなる。探偵役が鮮やかに事件を解決してスカッとするタイプのサスペンス映画ではないので、好みが分かれるだろう。クラ>>続きを読む

雨に唄えば(1952年製作の映画)

4.1

Youtube版金曜ロードショーをやるシネマトゥデイは最高。それはそれとしてドナルド・オコナーが若い頃のカラヤンにしか見えなくて笑ってしまった。

明るさに満ちた映画なのだが、個人的には悪声の大スター
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男性・女性(1966年製作の映画)

3.7

身構えていたけど思ったよりわかりやすくてよかった。視線を丁寧に合わさないようにとるという一貫した気持ち。人間が集まる場所での音声の取り方は恣意的で脈絡がなく、単調な映画と最初に提示される通り、そこには>>続きを読む

駅馬車(1939年製作の映画)

4.1

ハリウッド黄金期と言われるが、本当にやりすぎで、アパッチ族との戦闘シーンは危なすぎる。爆走する馬車を斜めの角度から並走してトラックショット撮るのなんですか?馬から馬へ飛び移るの、普通に俳優が死ぬのでは>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.3

主役2人がビッグネームだがとても落ち着いた画面が続くので逆によかった。60年代後半の映画的総括なのだけど、落ち目の西部劇俳優と仕事の少ないスタントマンが迎える前途はどこか気楽で明るい。現代の構造的閉塞>>続きを読む

アンタッチャブル(1987年製作の映画)

4.6

冒頭から子供を生贄に捧げていく演出でこれから行われる戦いのシリアスさを否応なく見せつけてくる。POVショットが効果的に使いわけられる。それに限らずマフィアと対峙するシーンはほとんど全編にわたり緊張に満>>続きを読む

ビートルズ/イエロー・サブマリン(1968年製作の映画)

4.0

空飛ぶモンティパイソンっぽい絵してますねと思ったけどこちらの方が一年早かった。愛は世界を救うし、リンゴは弄られる。この時のジョンレノンの雰囲気が町山智浩にそっくりだしなんなんだろうか。何でも屋で自我が>>続きを読む

天使と悪魔(2009年製作の映画)

3.7

完全に陰謀論者に堕ちてしまったラングドン教授のほとんど思い込み・妄想に近い推理が次から次へと的中しまくるので笑ってしまうが、シリーズ中最もサスペンス的な出来がいいと思う。前作ほどカトリックを殴ってない>>続きを読む

ダ・ヴィンチ・コード(2006年製作の映画)

3.6

改めて見るとやはりこれがシリーズ中最も風呂敷の広げ方がヤバくて面白い。原作における作劇の仕方の誠実さに関する批判はウンベルト・エーコなどに任せるとして、この映画ではシリーズ中唯一陰謀論的歴史と科学的(>>続きを読む

インフェルノ(2016年製作の映画)

3.3

流行りの陰謀論と観光地が学べるシリーズ、今回は人口調節を中心にイタリアとイスタンブールが楽しめる。トムハンクスは口調の調節とかちょっとしたところが本当にすごいですね。ダンテの神曲に詳しくなくても丁寧に>>続きを読む

アメリ(2001年製作の映画)

3.3

ある種の人間にすげえ刺さるのだろうという感じ。セピア色を基調としつつ豊かな色彩を使い分けられていて、特にアメリの服の色が単色で場面ごとの空気に反映されていたと思う。現実と空想の二択で恋愛を梃子に現実を>>続きを読む

ロスト・チルドレン(1995年製作の映画)

4.4

こんなん観たらロリコンになっちゃいますよヤバいヤバい。ダークでコントラストの効いた色彩と絵本のような舞台背景。暗視装置のようなやつだけ現代的な画面になるのが対比が効いていて良い。効果的なエフェクトも相>>続きを読む

天気の子(2019年製作の映画)

4.0

工学的なストーリー設計とあからさまなフェティッシュの表出という二点において、新海誠は庵野秀明の系譜に連なるのだろうが、間を分かつのはオカルトへの向き合い方だろう。『君の名は。』では超常現象の依代として>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年製作の映画)

3.7

真希波というアニメっぽいキャラが突っ込まれたおかげで箸休めが発生している(バリバリ戦闘しているので絵面的には全然箸休めではないが……)。設定集とかあまり見たくない性質なのでゲンドウやゼーレの人達が中二>>続きを読む

エル・トポ(1970年製作の映画)

4.5

2時間くらいしかないのに3時間の映画を観ていたようなぐったり感がある。メキシコの強烈な青空と鮮烈な血の赤。一時は「神」を名乗ったエル・トポは深い黒の衣装を纏う。前半は色彩と造形のコントラストに優れた画>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年製作の映画)

3.7

中学生を命の危険がある業務に契約書を結ぶこともなく強制的に従事させる異常な組織、NERV。シンジ君、労基に行こう!
葛城ミサトや赤木リツコはまだ大人の役割をしているが、碇ゲンドウは既にかなり怪しい(シ
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