醗酵人間さんの映画レビュー・感想・評価

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.8

オッペンハイマーが世界に解き放った爆弾の連鎖反応は未だ続いている。
彼が成し遂げた事のスケールの大きさに圧倒される一方で、偉業の裏側の等身大の苦悩と人間味がそこにあった。時代に消費される天才の歯痒さと
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ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.6

怖すぎて変な声が出た。
全ての演出が緻密に計算され尽くしていて、本当に悪魔的。めちゃくちゃ怖いが、ただのホラーではない。家族ものであり、バトルものでもある。頑張れって思うし、ハラハラするし、それだけ深
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.0

面白かった。
「個」が消えた「全」で生きるコミュニティの行き着いた思想や文化の恐ろしさを感じた。
皮肉なほど明るい青空の下で、無邪気に残酷な事をする異様さは、気持ち悪いが興味をそそられる。
お化けや怪
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.8

観終わった後も心がひくついている感覚。静寂なエンドロールは次の恐ろしい何かの前触れなのではないか。残酷な展開を恐れる一方で、どこか期待してしまっている事に気がつく。気持ち悪いけど、癖になる感覚。何か恐>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

1.8

私は原作中である(ドン)。
そう言われても仕方ないと思う。正直原作での大事なシーンがあまりにも削ぎ落とされすぎている。変に残そうとして、その行動の意味が本質を見失っている気がした。加えて、プラネタリウ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

表面化する正欲に自分が晒される事で、世界を知っていく主人公。実験のように、様々に評価される経験を通して、成長していく。様々な性癖のセックスシーンはさながら人間の内的解剖実験である。行き着いた先に見出す>>続きを読む

天気の子(2019年製作の映画)

3.9

誰もが感情移入できる「装置」のような王道な設定。断片的にポエミーに語られるキャラクターの心情は、まさしくポツリポツリと降る雨のようで、僕らの心に浸透し、浸透しないは浸透しないで、勝手に浸水させてくる。>>続きを読む

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)

4.6

セックスと殺人は似ていると思う。どっちも生死を決める、いくかいかせるの行為だ。いきた過ぎた女を描いた「ニンフォマニアック」の裏にある、いかせすぎる男が「ハウス・ジャック・ビルド」なんだと勝手に思った。>>続きを読む

ウィーアーリトルゾンビーズ(2019年製作の映画)

4.2

観終わった後の謎の心地よさよ。ゾンビとして生きる元気をくれる。
リトルゾンビーズはクソッタレな現状を8bitにガリッと変換して、空元気みたいに無理矢理鮮やかに、ポップにシュールに生きる。ピコピコ音楽が
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海獣の子供(2018年製作の映画)

3.8

彗星の爆撃とデスストランディングが示すのは誕生祭のはじまりだった。生まれるのは新しい宇宙、宇宙の形。美しい映像によって描かれる物語は世界の見え方を改めさせ、自分に新しい宇宙の形をくれる。これはちょっと>>続きを読む

名探偵ピカチュウ(2019年製作の映画)

3.8

ドットから始まった世界は進化して、今や目の前にいるかのように見える。映画のテーマと同じく、ポケモンとの共存は夢の世界じゃ無くなった。

デジタルの世界に吸収されるのではなく、あくまで人がいて、そこにポ
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アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年製作の映画)

4.8

各国で美味しいとされる名物料理達(マーベル作品)を最高のコース料理に仕上げたものがエンドゲーム。

こんなとんでもないヒーロー映画を作れるとは。感服至極。
まさに、五つ星レストランで美味しい食事に行っ
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スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

4.6

「スパイダーマンは今にも動きそうなカッコいい漫画だ!」
ワクワク漫画を読んでるスパイダーマン大好き少年の頭の中をそのまま覗き込んだみたいな映画だった。

色んなユニバースがあるスパイダーマンが集まり、
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グッドナイト・マミー(2014年製作の映画)

3.6

自分の持ってる相手のイメージを決めつけすぎると大変な事になるって話。

シンプルな構図と計算された流れで、上質な不安感、恐怖を感じられた。

観ている人のキャラクターへのイメージをうまく操作されてる感
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マザー!(2017年製作の映画)

4.6

それぞれの宗教観や、世界観で批判される事を狙いとしてるみたい。実験的な素晴らしい胸糞映画だった。

私は達筆な文字で書かれてる題名から、これは創造主(つまりこの映画の製作者)が書いた是正的な措置の一手
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GO(2001年製作の映画)

3.8

「ライオンは自分がライオンだと思っちゃいねえ」

花の名前が変わっても匂いはそのままというが、実際はかき氷のように名前が変わるだけで、全く別のものに感じれたりする。人はそうゆうものに囚われながら、アイ
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アバウト・タイム 愛おしい時間について(2013年製作の映画)

4.3

能力があるのにあえて使わない、非凡なタイムトラベラーがこんなにもかっこよく見える映画は他にない。何気ないシーンもイメージ(設定)だけで、とてつもなく壮大なシーン観える。

それは人生も一緒だ。一日をも
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日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)

3.8

「恨まずに終わりにして良いのかこの嫌な夢を」。歪んだ手法で正義に生きた一生を綾野剛が熱演する。アニメのサイコパス的な内容。規範を律する上で逸れたものを知ることは一見良い手に見えるが一線を超えた瞬間、リ>>続きを読む

仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判(2018年製作の映画)

3.3

変身音や撮影場所等、色々と言いたい事が多いが、ネタバレは避けたい(4DX意識しすぎだし、山で戦いすぎ)。後半からいつもの感じに戻るが、前半までの展開やテンポはグダグダすぎた。

沢山の突っ込みどころを
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犬ヶ島(2018年製作の映画)

4.6

ウェスアンダーソンの左右対称構図が炸裂していた。「心」が描かれるのは常に画面の「真ん中」で、犬を象徴とした「何に忠を尽くすか?」というテーマがベストマッチしていた。
主人公の名前は小林あたり(アタリを
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レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

4.8

スピルバーグが「俺は不死身だぁ!」と言ってるよう。百体怪獣ベリュドラのように、様々な作品への愛が集まり、巨大なモンスターとして蘇る、まさに復活祭の映画だった。
売れる事が保証された、70年代の思い出し
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シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.6

水の形。形を変えながら、世界に満ちて、我々を支えている水。人によって扱いは違えども、形式的なコップ一杯の水で満足する必要はないんだ。この映画を観れば、雨だって優しいと感じれるはず。水の形の優しさよ。愛>>続きを読む

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

3.8

露骨で、ありがちで、今風な描き方だが、ダンスは迫力があり、テンションをぶち上げるには良い薬。ヒュー・ジャックマンの笑顔と、もみあげが尊い。ザック・エフロンとの絡みは、内なる腐女子を楽しませた。掛け合い>>続きを読む

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.5

広告とは「どのように人を動かすか」まで考えて作られるものだという。我々の心は見事に等速直線運動をさせられ、違和感だらけの物語をすんなりと通過させられる(計算されたビリヤードの玉突きのような、予測できな>>続きを読む

デトロイト(2017年製作の映画)

4.5

ブラックコーヒーのように苦く、トライアスロンのように苦しい映画。
苦いブラックコーヒーを飲んで真実を語ろう。甘ったるい砂糖は抜きで。
舞台が整うラン、急転回のバイク。スイムで息のできない苦しさを味わお
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手紙は憶えている(2015年製作の映画)

3.9

主人公は90歳の老人。認知症だから起きるたびに妻を失した事を思い出す。手紙に宿る復讐心だけが彼のリアリティだ。

何も思い出せなくても、手紙を読めば復讐心が湧き上がる。たとえ仮初めの現実だとしても、そ
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ザ・セル(2000年製作の映画)

3.5

ターセムワールドと石岡瑛子さんの衣装を楽しむ映画。退屈な現実パートで我々は眠りに落ち、センスキレキレの夢パートで覚醒する。もしこれを狙っていたのならすごいと思う。色々と突っ込みどころもあるが、神がかり>>続きを読む

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)

3.9

ニホンの弦(DNA)の響きは先祖の響き。その奏でる音が伝統であり僕らの響きだ(物語)。

ストップモーションという技術で、紡がれる時間の流れとそこに宿る命をメタ的に描いていたし、物語のキャラクターが「
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アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)

4.8

90年代の終わり、世界にひとつだけの花はアメリカでも咲いていた。
花瓶の花の自己犠牲によってもたらされた平和こそが美しい虚構。
その裏に隠された欲望によって崩壊していく家族模様こそが醜い現実。
イッツ
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

4.8

世はジャパリパーク、時代は混沌を極める。生き残っていくのは一種では不可能。絶滅から逃れる唯一の方法は「自分の種を偽る事なく、他の種を認める事」なのだ。

物語は人に合わせる事ができないマイノリティのた
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キングスマン:ゴールデン・サークル(2017年製作の映画)

3.7

良い意味でも悪い意味でもアメリカンなキングスマン。最もな事を言ってる規範破りの蛮行を、規範を重んじるキングスマンが華麗に倒すのが面白いのだが、「麻薬」ってテーマではいまいち盛り上がりに欠けていた。>>続きを読む

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017年製作の映画)

3.8

作品と自らのスターウォーズ像が乖離していく中で、内に感じるエネルギー(モヤモヤ)がフォースならば、私たちこそが最期のジェダイなのだろうか。

伝説的SF超大作が産んだ闇と光の物語。続編へのプレッシャー
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20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)

4.1

流れる時代の中で、もがき続けた、ワンダーウーマン達はずっと昔からそこにいた。女声賛歌からの人間賛歌、言葉にできない心の機微(アクション)映画。

計算された無駄のない脚本と美しい映像は、そこにあったで
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GODZILLA 怪獣惑星(2017年製作の映画)

4.6

ただただゴジラ。物語はロマンスもなく、死にゆく人々と主人公の復讐心だけがドラマを作る(さすが虚淵さん)。だがそれでいい!(逆境無敗ゴジラ怪獣黙示録)。

荒ぶる神ではなく、放漫な文明に対する理だからこ
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TOKYO FIST 東京フィスト(1995年製作の映画)

4.8

最高だ!最高すぎるぞ、海獣シアター!大好きな映画の1つ。「誰かを殴り殺したい」、無機物の世界に押し殺されたその衝動は、剥き出しの命の叫びグゥアアアアアアアアア!肉体が壊れながらも叫ばれる命は、儚く、美>>続きを読む

ダンケルク(2017年製作の映画)

4.7

映画が終わり、順番に劇場を出るまでがダンケルク。カチカチと音が聞こえるのは気のせいか。

ノンフィクションを超えたフィクションは圧倒的なリアリティで、奇跡の脱出劇を運命に変えた。それぞれの運命は秒針の
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