てつじさんの映画レビュー・感想・評価

てつじ

てつじ

合衆国最後の日(1977年製作の映画)

4.7

9基の核弾頭ミサイルが白煙と共に地上に現れる緊張感。カウントダウンと時計の秒針、突撃命令回避の受話器の怒声。危機的状況下、手に汗握る攻防を4分割スクリーンが同時進行の時系列でスリリングに畳み掛ける。ロ>>続きを読む

シティーハンター(2024年製作の映画)

3.9

もっこり男の冴羽獠を『変態仮面』の鈴木亮平が怪演した。まさにイメージ通りの振り切れた演技、捨て身で役に憑依する鈴木亮平のナリキリ演技が"シティーハンター"の世界観にピタリとハマった。ハードボイルドとエ>>続きを読む

BLEACH(2018年製作の映画)

3.1

美男美女のキャスティング、ド派手な衣装とキメ台詞に漫画原作を実写化する難しさを感じたが展開の速さでサラリと楽しめた。この作品で酷評された佐藤信介監督と長澤まさみだが、翌年『キングダム』楊端和という適役>>続きを読む

青春の門(1975年製作の映画)

3.7

前半の吉永小百合のカラダを張った艶技に息を飲み、後半登場の織江を一途に演じた大竹しのぶの情念の深さに圧倒された。貨物列車が真横を通る連れこみ宿の雨漏り、ポツリポツリと不幸な身の上を語り出す織江の魂の慟>>続きを読む

死の接吻(1947年製作の映画)

3.5

主演のヴィクター・マチュアがぼやけて霞むほど、背筋がゾッとする冷酷非情な殺し屋を演じたリチャード・ウィドマークのインパクトが強烈だった。薄笑いを浮かべながら老婆を階段から突き落とすセンセーショナルなデ>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

3.4

攻撃的で型に嵌まらないレオス・カラックス監督の剥き出しの感性が、斬新で魅力的だったのだが、この作品はミュージカルという型に嵌めていて、その枠からは少しもハミ出てこなかった。アネットをピノキオ化する奇抜>>続きを読む

妖怪大戦争 ガーディアンズ(2021年製作の映画)

3.3

昭和版『妖怪大戦争』はバケモノ屋敷のオドロおしさにコミカルさを加えて土着的だった妖怪達を見事ヒーローに引き上げた快作だった。昭和版をリスペクトする三池崇史監督の様子はこの作品にもよく表れていて、更に傑>>続きを読む

真昼の暴動(1947年製作の映画)

3.8

ジュールス・ダッシン監督が、赤狩りでアメリカを脱出する以前に撮ったフィルムノワールの佳作。囚人たちが自身を回想する過去パートの驚くほど洗練された編集と、スピーディーでよく練り込まれた脚本は、描かれない>>続きを読む

線は、僕を描く(2022年製作の映画)

4.0

名作『ちはやふる…』の小泉徳宏監督作品。水墨画に魅せられ一途に自分の線を探し続けるひたむきな青春が実に清々しかった。大胆で繊細な筆の画力、その真っ直ぐな力強さに惹きつけられ魅了された。探りあてた自分の>>続きを読む

フェイシズ(1968年製作の映画)

4.0

倦怠期夫婦の決定的な溝を階段の高低差で明確に描いたロングシーンが強烈だった、夫婦の距離感が凝縮された素晴らしい名シーンだと思う。退屈な会話、虚飾に満ちた高笑いの裏にある差別的な本音。ジョン・カサヴェテ>>続きを読む

緑色の髪の少年(1948年製作の映画)

3.8

ジョセフ・ロージー監督の長編処女作であり、強烈な反戦メッセージを孕んだ野心作であった。緑色の髪のインパクトの裏に潜む差別の隠喩。寓話のような優しい語り口で描く戦争孤児の孤独と孤立を緑色の色彩で脳裏に刻>>続きを読む

皇帝のいない八月(1978年製作の映画)

3.5

政治の闇をドロドロに描く社会派の巨匠山本薩夫監督の力作。極右の自衛隊クーデターをパニック映画さながらのアクションで描いた群像劇。狂気の渡瀬恒彦に対する山本圭の左翼の視点の対立に巻き込まれる吉永小百合の>>続きを読む

大怪獣ガメラ(1965年製作の映画)

3.5

今では当たり前のようにゴジラと並ぶ怪獣王ガメラだが、大映が東宝に対抗した亜流企画だったのだと思う。企画会議の席で大亀が火炎ジェットで回転しながら空を飛ぶなんて荒唐無稽なプレゼンを想像するだけで愉快で面>>続きを読む

こちらあみ子(2022年製作の映画)

3.7

「もしもーし!こちらあみ子、応答せよ!」心の声が聞こえないあみ子の片道トランシーバー。あみ子の直感的に目にする景色や、小動物に目線を落とし、あみ子の瑞々しい世界にフォーカスを合わせ、悪意なき残酷な現実>>続きを読む

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982年製作の映画)

3.6

沢田研二に恋に奥手な無骨者を演じさせ、あろう事か寅が恋の指南役を買って出るというギャップの面白さ。少女のような田中裕子から滲み出るオトナの色気を上品に昇華させる山田洋次監督のカメラアイ。「寅さんに叱ら>>続きを読む

ローラーボール(1975年製作の映画)

3.1

暴力と殺戮に飢えた平和な近未来、未来人の欲求のハケ口となった過激なゲーム"ローラーボール"。封切当時テアトル東京で観たが立体的に拡がる音響とスピード感溢れるゲームの迫力が凄まじかった。あの頃思い描いた>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.0

この作品を否定するには、兎に角観なければその権利もないと思い鑑賞。人類史上最悪の愚行原爆投下の無差別殺人をアメリカ人は、どう捉えているのかを興味深く観た。戦争を終わらせる為の原爆投下は、更なる脅威を生>>続きを読む

天使のはらわた 名美(1979年製作の映画)

3.1

今作の名美は鹿沼えり、村木は地井武男。監督は田中登、脚本は石井隆で「はらわた」ならではの奈落の底がどのような展開を見せるのか大いに期待したがチープなホラーに着地してしまった。はらわたお約束の夜の土砂降>>続きを読む

ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

3.7

スザンナ・ヨークがカンヌ女優賞を獲ったアルトマン監督作でありながら、作品の難解さからか長らく日本未公開だった作品。幻覚に悩まされる女性の精神崩壊をスザンナ・ヨーク狂気の一人芝居で圧倒する。相当に地味な>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.1

待ちに待ったビクトル・エリセ監督の新作。深く真っ黒な影と陽光の鮮やかなコントラストが、長回しを駆使した抒情豊かなカメラワークと渾然一体となった独特の映像詩は健在だった。フィルムとデジタルを対比させ、遠>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.8

世界最高峰の視覚効果と最先端の音響。壮大なスケールの物語はやはり2部では納まらず、複雑に入り組んだ人間関係を頭の中で整理するのもままならない。だが166分の長尺にギッシリ詰め込まれた物語が破綻する事は>>続きを読む

せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.8

第37回高崎映画祭最優秀作品。キネ旬1位の後押しもあり会場は大盛況。江戸時代末期の汚穢や(おわいや)を描くまさに糞尿まみれの作品だった。モノクロ画面で汚物を隠して演者の表情が僅かに確認出来る程の引き画>>続きを読む

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト(2023年製作の映画)

3.6

京アニ作品。先ずは中断されていた『…ユーフォニアム』の再開!それが何よりも嬉しい。吹奏楽部の新部長に指名された黄前久美子の部員を見渡す細やかな視線の高さ。さりげない女子高生の手指の動きや、上履きの足元>>続きを読む

恋は光(2022年製作の映画)

3.9

恋に寄り添う距離感が初々しくて、恋を冷静に分析する会話劇の面白さも実にクール。ラブコメ特有の粘着性もカラッと笑い飛ばすドライさが丁度良い塩梅。とびきりの秀作とは思わないが、宝箱のような暖かさがある青春>>続きを読む

野のユリ(1963年製作の映画)

4.4

言葉も通じない異国の地に教会を建てたい五人の修道女の願いと、流れ者だが心優しいホーマー・スミスとの交流がほのぼのと実に暖かい。浮世離れした厳格な修道女の身勝手な要求に、翻弄されながらも教会建設に力を貸>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.1

夫の転落死により殺人容疑者になった妻。様々な視点で、赤裸々に夫婦のプライベートを晒される法廷(解剖)。証拠と憶測が入り乱れる修羅場の裁判で、誰よりも冷静だった息子のジャッジ。視覚障害のハンデによる臭覚>>続きを読む

OUT(2023年製作の映画)

3.3

伝説ヤンキーのカリスマ性、小柄で華奢なゾクの総長あっちゃんの笑顔と残酷性のギャップ。目新しさは乏しいが、喧嘩アクションのキレの良さと緩やかな焼肉店のほんわかシーンの温度差が程よいアクセントになっていて>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.2

待望のアリ・アスター監督新作。妄想と現実の境目がなく、ボーの行動にイチイチ不可思議で意味不明な事件と事故がまとわりついてくる、母親の家に帰りたいのに帰れない。この内容で3時間はさすがに長過ぎだと思うの>>続きを読む

用心棒(1961年製作の映画)

5.0

ウサギの皮を被った山犬…卯之助が、からっ風舞う宿場町に颯爽と登場するシーン。早射ちで鐘楼を撃ち抜くキザな冷酷さを凛とした背中でみせる仲代達也。めし屋の格子戸をフレームに見立て、そこから見える景色を独立>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

闇夜のような孤独と絶望、夜明けを待つ苦しみの悲痛な悲鳴。病に侵され、鬱鬱とした閉塞感に傷ついた心に寄り添うもう一つの心、暖かな愛がじんわりと溢れ出た素晴らしい作品だった。2人を囲む周囲の人々の理解と優>>続きを読む

黒いチューリップ(1963年製作の映画)

3.1

『アラン・ドロンのゾロ』の原型。フランス革命前の義賊"黒いチューリップ"を若々しく嬉々として演じたドロンの楽しそうな事。画面狭しと鮮やかな剣捌きで暴れまくる爽快な大活劇だった。夜間撮影のレンズフィルタ>>続きを読む

椿三十郎(1962年製作の映画)

4.6

堅苦しい武家社会に異分子である三十郎を投げ込み、その化学反応で武士の縦社会をバッサリと斬る!次の一手を読む心理戦のスリリングな展開、極上の密室劇に練り上げた脚本の面白さ。ギラギラとした三十郎を諌める奥>>続きを読む

劇場版 君と世界が終わる日に FINAL(2024年製作の映画)

3.9

ご都合主義の茶番と切り捨てるのは簡単だ、だけども批評する脳よりずっと奥にある感情がこの作品を肯定しています。season1から4まで、ずっと付き合ってきた間宮響の生き様の完結編。竹内涼真が素晴らしくて>>続きを読む

いとみち(2020年製作の映画)

4.3

全編津軽弁でほぼ何をいっているのかわからないのだが、メイドカフェと標準語を少しだけ話す豊川悦司の存在で物語は迷子にならず理解できる。鮮やかに駆け抜けた青春は、ノスタルジックな情景と未来へと羽ばたいて行>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.3

こわれゆく妻を演じるジーナ・ローランズの物凄い演技力、タバコを使った一人芝居と取り憑かれたような揺れ動く瞳孔の演技には圧倒された。一見バラバラに見える家族だが、根本の絆が確固としていて、粗暴に見える夫>>続きを読む

Gメン(2023年製作の映画)

3.0

吉岡里帆のブチ切れ演技は必見!振り切れた捨て身のハイテンションが抜群だった。畳み掛けるセリフの速さが勢いを生み、誰も高校生に見えないカオスの世界観をエネルギッシュな熱量で突破している。

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