てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

秋日和(1960年製作の映画)

4.1

親子の絆をモダンなペーソスで包み込んだ小津監督の優しさ、終始着物姿で登場する母・原節子、着物に似合わない長く伸ばしたマニュキュアの爪。映画に描かれない母の日常の二面性をさりげなく見せる小津監督の匠の演>>続きを読む

ニューオーダー(2020年製作の映画)

4.0

暴徒化した群衆の止まる事のない暴力。抑制のタガが外れ暴走する憎しみの渦。生贄になる民衆の額に書かれた数字とミドリのペンキの不気味な視覚効果。疲れ果てた年末に観るべきではないと躊躇はあったが、久しぶりに>>続きを読む

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(1981年製作の映画)

3.7

松坂慶子、満を持して登場!凛とした気品と神々しいまでの透明感を兼ね備えた極上のマドンナだった。酔い潰れ、寅の膝で泣く松坂慶子の子猫のような可愛らしさには痺れた。女優の旬を見抜く山田洋次監督の慧眼。この>>続きを読む

REBEL MOON ー パート1: 炎の子(2023年製作の映画)

3.3

『七人の侍』にも『スター・ウォーズ』にもなっていない。掘り下げ方が足らず表面的で薄い、似せれば似せる程スケールの小ささが露呈する。PART2を観なければ評価するのは時期尚早だが次々に集う猛者達の個性の>>続きを読む

反逆のメロディー(1970年製作の映画)

4.0

ギラギラとした獣性、ニヒルでタフな原田芳雄会心の演技。その後の原田芳雄のアンチ・ヒーロー像を確立した男臭さ満開の初期代表作だ。ジープを駆り、ジージャン姿で暴力の限りを尽くすニューヤクザ、脚本の粗さをブ>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

3.6

欲とカネが動く黎明期のハリウッド、夜毎繰り広げる退廃のパーティー。狂気と汚辱、野心と野望が入り乱れた狂喜乱舞のおぞましさ。タイトルロールまでの30分その熱量に圧倒されたが、後半物語は急速に失速していく>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

原作だった漫画を読んでいた時に、アニメ化されて実際の音楽が聴けたらどんな印象になるのだろうと胸をワクワクさせていた作品、待望のアニメ化でした。そして劇場で待機していた時に緊急電話が鳴り、未鑑賞のまま自>>続きを読む

シュシュシュの娘(2021年製作の映画)

3.0

ユルユルのアクションのほんわかとした雰囲気。コロナ禍の逆境をせめて笑いで乗り切ろう…みたいな忍者コメディでした。チクワばかり食べている猫背の福田沙紀の暗い表情の可笑しさ、忍者スタイルにスニーカーの馬鹿>>続きを読む

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

4.1

アニエス・ヴァルダ監督が幸福な家族に潜む危うげな脆さを冷徹に突き放し、影を残酷に抉り出す。野花と優しい陽光、ひまわり、花びら模様のサマードレス、部屋に飾られた花束。鮮やかな花が家族の幸福の象徴として描>>続きを読む

天使のたまご(1985年製作の映画)

3.7

闇夜に降る冷たい雨、魚の影とデク人形の兵士、夜伽の焚き火、ガラスのような水面、突風に揺れる幻の街。タルコフスキーを喚起させる自然をモチーフにしたエモーショナルな描写、台詞を極力抑え画力でみせた押井守監>>続きを読む

サイボーグ009 怪獣戦争(1967年製作の映画)

3.9

犠牲的精神の尊さが物語の重心になっていて、その悲劇性が物語に厚みを増している。ブラックゴースト団と00ナンバー(サイボーグ)との戦いに苦悩するヘレナの正義、子供心に感動したヘレナの涙は、半世紀以上経っ>>続きを読む

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

3.6

ロバート・デ・ニーロ独特の粘着質な怪演が、素人コメディアンの現実世界と自意識過剰な妄想世界の境目を曖昧にした何とも言えない狂気の世界観を創造している。ラストの独りよがりな妄想の恐怖は、コメディというよ>>続きを読む

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)

4.0

勧善懲悪のマカロニウエスタンの定義を根底から覆す斬新な西部劇。ジャン=ルイ・トランティニアンの視点のまま、あの結末に至るとはあまりにも衝撃的だった。爬虫類のようなクラウス・キンスキーのアクの強さを活か>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.9

キューブリック監督の宿願、果たせなかった夢『ナポレオン』がリドリー・スコット監督によって現実になった。地平線を意識したワーテルローの戦いの圧倒的で壮大なスケール、宮廷内でのロウソクの灯りだけで撮影した>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(1980年製作の映画)

3.6

松村達雄の「トイレ掃除」の詩の朗読の素晴らしさ、生徒と教師が一体となった定時制高校の心に沁みる暖かい授業だった。マドンナすみれを真っ直ぐに演じた伊藤蘭の純粋さを、見護る寅次郎で鮮やかに引き出す山田洋次>>続きを読む

獣兵衛忍風帖(1993年製作の映画)

3.8

川尻善昭監督のエロティシズムとハードボイルドを兼ね備えた秀作『妖獣都市』を彷彿とさせる上出来なアダルト忍者アクションだった。敵対する鬼門八人衆の忍術を超えた強烈な能力は妖獣のグロさそのものであり、甲賀>>続きを読む

リオの男(1964年製作の映画)

3.7

ベルモンドのキレ味鋭い命懸けアクションとドタバタコメディのテンポの良さが全編に貫かれた快作。リオの街をエネルギッシュに疾走するベルモンドの快男児振りを懐かしく観た。ドルレアックの清楚さと勇気を併せ持っ>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.4

意味不明な絶交宣言、疑心暗鬼に心が揺れ動き憎悪に変わる宣戦布告。イニシェリン島の平和で穏やかな美しい風景に潜む仲違いの亀裂。同じ民族どうしで争う内戦の不条理を小島の中の争いとしての暗喩が見え隠れする。>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.4

ゴロゴロと首が落ちる、覇権争いの殺伐とした謀略の渦。デフォルメされた信長の狂気を血管が浮きでる迄熱演した加瀬亮が強烈だが、次々と死んでいく武将の命の軽さが短絡的で物語に厚みが出ていない。男色の痴話喧嘩>>続きを読む

サムソンとデリラ(1949年製作の映画)

3.9

昔子供の頃、TV洋画劇場で何度も放映していて、この映画が好きだった父に連られて何度も観ている。お目当ては当然あの石像崩壊シーンで、セシル・B・デミル監督らしいド派手なスペクタクルシーンは今回も堪能出来>>続きを読む

空飛ぶゆうれい船(1969年製作の映画)

3.8

子供の頃からずっと心に響いている「ゴックリごっくりこんとボワジュース」の強烈なインパクト。巨大ロボットゴーレムの市街戦シーンに若き宮崎駿が参加、戦車の重量感のドッシリとした質感に研ぎ澄まされた感性を感>>続きを読む

ヴィレッジ(2023年製作の映画)

2.8

山頂にそびえ立つ巨大ゴミ処理場が村を見下す異様な風景。村八分の洗礼と不法投棄の闇、能面で心を隠し絶望の未来を歩む村人。物語に救いが無く、ひたすらに逃れられない村の閉塞感を描くが、殺人事件が絡みだし何を>>続きを読む

ハロウィン THE END(2022年製作の映画)

2.8

新ハロウィン三部作、①で劇的な急浮上を見せて大いに期待したが、②で失速、③で墜落したような印象。マイケルは最恐のまま、ローリーが最強になっていって欲しかった。まさか2人とも老いるとは残念。

前科者(2022年製作の映画)

3.6

感情を押し殺し前科者を寡黙に演じた森田剛の演技力。関連はないが、森田剛が怪演した『ヒメアノ〜ル』で見せた確かな演技力をこの作品でも堪能しました。有村架純の優しさと癒しに救われながら今を生きる前科者たち>>続きを読む

Jam Films (ジャム フィルムズ)(2002年製作の映画)

2.8

7人の監督によるショートムービーオムニバス。岩井俊二監督、広末涼子主演パラパラ漫画風の「ARITA」はほのぼのと暖かかく、望月六郎監督の「Pandra」は吉本多香美のエロティシズム、行定勲監督「JUS>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

5.0

ゴジラ映画の金字塔にして、すべての怪獣映画の最高峰。怒涛のように浴びせかける機関銃のような言葉のスピードと、神技の速さで心臓を直撃するカット割。岡本喜八イズムを踏襲した庵野秀明総監督の大胆な演出はもう>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.5

圧倒的な原色に彩られたイマジネーション、衛星パンドラの大自然の美しさ。先住民を弾圧し、侵略を続ける騎兵隊のような地球人の横暴はアメリカ建国の黒歴史を自虐的に描いているように感じました。クラシックな西部>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.3

人類の叡智と自己犠牲の尊さ、時代錯誤のナショナリズムと言われれば仕方ないが、敗戦国日本の、日本人のプライドが清冽に描かれた傑作だった。怪獣映画の弱点である人間ドラマを作品の核としてドシッと据えた山崎貴>>続きを読む

愛にイナズマ(2023年製作の映画)

4.1

バラバラだった家族が集結してからの一体感、一致団結の愛の泣き笑いにイナズマが走った!石井裕也監督が描く家族に欠かせない池松壮亮の静かな感情の爆発。佐藤浩市の隠された秘密と漢気に家族のハグ。赤く照らされ>>続きを読む

現代やくざ 与太者仁義(1969年製作の映画)

2.9

『現代ヤクザ』シリーズ第2弾、前作との繋がりはなく、ヤクザの世界に虫ケラのように埋没していく3兄弟を描く。汚れた埋立地のバラックの匂い立つ臭さ、貧民街から這い上がるヤクザのへドロ臭さが哀れだった。埋め>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.5

権力者のハラスメント問題、観客にターを非難する目と擁護する目、両極2つの視点が生まれるように製作された映画だった。グレイゾーンが排除され、世の中が黒と白で分断される今の時代の常識を象徴する作品であり、>>続きを読む

バタアシ金魚(1990年製作の映画)

4.4

ソノコに一直線のカオル、押して押して押しまくる好きな気持ちが映画から溢れ出る。カオルのあたりかまわずソノコを口説きまくる真っ直ぐでパワフルな猛アタックが最高に清々しい。セーラー服でプールに飛び込む高岡>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.7

『地上最大のショウ』列車脱線シーンで脳裏に刻まれた映画の魔法。スピルバーグ監督の少年時代自伝、8㎜カメラの魅力に取り憑かれ天才的な撮影方法を具現化するフェイブルマン少年の映画に没頭する姿をスピルバーグ>>続きを読む

にっぽん昆虫記(1963年製作の映画)

4.2

地面を這いずり回る昆虫の生殖本能、雄を食い殺す雌の強欲でしたたかな性。今村昌平監督の真髄である土着性、大地に根差した貧村の因習が、あっけらかんと性を売るトメの人間性を極めて冷静に俯瞰してみせる。左幸子>>続きを読む

8日で死んだ怪獣の12日の物語(2020年製作の映画)

3.0

街から人間が消えたコロナ禍の日本。不要不急の外出を控え生活基盤がテレワークに急激に移行する激動の時代。架空の怪獣映画を基軸にしながら、描かれているのはコロナという怪獣に翻弄された地球のリアルなドキュメ>>続きを読む

毛ぼうし(1997年製作の映画)

3.3

ムーンライダース「ニットキャップマン」PV、小津安二郎風のローアングルを楽しむ岩井俊二(郎)監督の遊び心。樋口可南子と伊藤歩の玄関寸劇のオマケ付き。岩井作品に欠かせない重鎮、ムーンライダース鈴木慶一(>>続きを読む