てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 33ページ目

私が棄てた女(1969年製作の映画)

3.7

集団就職者の純真無垢な一途な純愛を見事に体現した小林トシエの魅力に尽きるだろう。私が棄てた私、浦山監督の社会格差を鋭く描く的確な手腕は流石。ただ、カラーパートはこの作品に必要だったのだろうか?

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)

4.0

海の沖合いの遠雷の音を聴き分け、蜜蜂のように軽やかに指先で表現する繊細な闘い。神に愛され、世界に祝福される天才達の人間模様。国際ピアノコンクール、孤高の天才達の闘いの場所。迷える天才松岡茉優に外れナシ>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.1

ジョーカーになる必然。狂気の闇に取り憑かれた一人の男の転落を描く。ホアキン・フェニックスは神格化されたヴィランであるジョーカーを、ひたすら人間臭く演じている。アメコミの世界観など微塵もない、それが素晴>>続きを読む

巴里祭(1932年製作の映画)

5.0

1932年の作品が、瑞々しく最高の状態で蘇りました。花束を抱えたアンナ(アナベラ)、雨宿りの喧嘩とキス、酔いどれ紳士と拳銃、巴里祭前夜のダンス。流れるような名シーンの連続です。名曲 "巴里祭〜巴里恋し>>続きを読む

リラの門(1957年製作の映画)

4.1

お人好しジュジュの底抜けの優しさ、リラの街角の住人達の人情の厚さに触れさせながら、凶悪犯罪者バルビエをその街に投げ込み人々の行動と反応を見極める。ルネ・クレールの俯瞰の視線が冴え渡った文句なしの名作。

亜人(2017年製作の映画)

2.1

不死身の掘り下げ方が足らなかった。亜人を描くのであれば、もっと綾野剛側に重心を置いた方が良かったのでは…。

アイネクライネナハトムジーク(2019年製作の映画)

4.0

伊坂幸太郎の6編の短編、それぞれの主人公たちの人生が、交差しながらひとつの物語として繋がる。これぞ群像劇の醍醐味、今泉力哉監督らしくない作風かもしれないが、引き出しの多さ、実力をまざまざと見せつけた。

宮本から君へ(2019年製作の映画)

4.6

圧倒的な暴力に貫かれた真利子監督らしい攻撃的な作品でした。強烈なエネルギーで描くパワフルな熱気溢れる映像は必見です。バイオレンスでありながら、究極のラブストーリーにまで昇華した力業に驚嘆しました。池松>>続きを読む

HELLO WORLD(2019年製作の映画)

4.0

多重構造のデジタル世界の世界観が見事に構築されている。ほんとうにラストで世界がひっくり返った。この作品を、素通りするのは勿体ない、時間が経つ程じわじわきます。

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

3.9

音楽とダンスの熱量を、猛スピードの速度でパワフルに積み重ねていく。物語の希薄さなど微塵も感じさせる隙など与えず、力業でラストシーンまで突っ走る。それは少しずるいかな?とは思うが、力みなぎる音楽とダンス>>続きを読む

大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン(1966年製作の映画)

4.0

昭和ガメラの最高峰。横長の画面に広がるガメラとバルゴンの効果的な四つ這いの構図。人間の良心と邪心の温度差を明確に描いた。虹の谷の村娘カレンを演じた江波杏子が素晴らしい。子供のころ、この作品で断末魔とい>>続きを読む

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)

1.9

エンディングテーマ MISIA〜君のそばにいるよ。素晴らしい名曲です、PVは必見、必聴ですね。

小さな恋のメロディ(1971年製作の映画)

5.0

水飲み場に金魚を泳がせるメロディ、世界で一番美しいスローモーションのバレエシーン、墓場のデートの逆光線、雨の暖かさ、真っ直ぐな線路をトロッコでどこまでも走る夢と希望のお伽話。二人は私の中では今でも未来>>続きを読む

助太刀屋助六(2001年製作の映画)

3.6

飄々として軽妙洒脱、捉えどころのないダンディズムに貫かれた、岡本喜八監督らしい軽やかな遺作でした。大まじめに遊んでいるような、子供っぽい魅力がある作品でした。岡本喜八監督は、粋でしたね。

彩り河(1984年製作の映画)

2.2

怪優三國連太郎が、下卑た黒幕の首領を嬉々として怪演している。その存在感の大きさが大き過ぎたせいなのか、他の俳優たちの演技の印象がまったく記憶に残らない。

肌の隙間(2004年製作の映画)

4.0

隔離された世界からの脱出は、解放された日常との出会いと、未知の恐怖の逃避行であった。行き着く先は絶望しか待っていない袋小路の終着点、自閉症の叔母が守る甥の人生。自分の頭を叩きながら、知恵を振り絞る叔母>>続きを読む

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年製作の映画)

1.9

単調な同じ目線の高さで、何度時間を巻き戻してみても同じ後悔の繰り返しになってしまう。視点は変化させないと…、物語の入り口でうろちょろとして作品が終わってしまった。海の中を走る電車は良かった。

座頭市喧嘩太鼓(1968年製作の映画)

2.7

アメリカンニューシネマ台頭時期の影響があったのだろうか?この作品において座頭市は、シンボリックなヒーロー像とはかけ離れたイカサマ博打を打つ小悪党の一面まで見せる。そのせいか、市の善悪がブレて一番の悪党>>続きを読む

いなくなれ、群青(2019年製作の映画)

4.3

旬の役者たちの最高の今を切り取った望遠レンズ撮影の美しさ、斜めに抜けるフレームアウトの詩的な時間。トンネル橋の下の雨宿り、飯豊まりえ初登場シーンの神秘性。網膜に焼き付いた名シーンの連続でした。2019>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.0

シャロン・テート事件への鉄槌は、爽快な安堵感すら覚えるのだが、同時にタランティーノの奇人振りと、その心根の闇の深さが表層に現れた作品になっていて、少し怖ろしくもなった。

それいけ!アンパンマン とべ!とべ!ちびごん(1991年製作の映画)

3.0

雨の守り神ドラゴンのちびごんとホラーマン初登場。しょくぱんまんの写真集を見ているドキンちゃんに一目惚れのホラーマンの図。覚えておこう!この作品からなのだな。28年振りかな。

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

4.8

優しい旋律を奏でながら物語の深淵に引き込む音楽と、独創的な映像をオリジナルなリズムで描いた、映像美溢れるファンタジーの傑作。描かれた世界は、残酷なホラーであり、屋敷の生贄に指名された美少女たちのいまわ>>続きを読む

無限ファンデーション(2018年製作の映画)

4.0

即興性を重視する為、視点がブレる可能性があったリスキーな演出方法なのだが、アドリブの台詞を多用する事により、女子高生の生の感情の起伏を見事にあぶり出した秀作。南沙良の好演と西山小雨の素晴らしい歌で充分>>続きを読む

バーディ(1984年製作の映画)

4.0

ベトナムの傷病兵二人。顔と心に大きな傷を負うアルと、心を閉ざし籠の鳥として生きるバーディ。現世と妄想、隔離された別世界で生きる親友の人生が、ふたたび交叉する。アラン・パーカーの優しい視線、ピーター・ガ>>続きを読む

ペレ(1987年製作の映画)

3.7

スタンダードなオールドスタイルで貫かれた演出は、不条理な物語を穏やかに淡々と語る。氷に閉ざされた閉塞感漂う海岸線の農場を表情豊かに映し撮っています。ペレが、海上の流氷を逃げ走るシーンは、緊張感があった>>続きを読む

「エロ事師たち」より 人類学入門(1966年製作の映画)

3.7

男の憐れさと女の図太さを、世の中の夫婦全ての普遍的な人類学として滑稽に描く。今村昌平の斜に構えた視線の奥深さ。純情な亭主を、蜘蛛の巣に絡め取るように縛りつける、したたかな女房を快演した坂本スミ子に尽き>>続きを読む

イージー★ライダー(1969年製作の映画)

4.1

製作から50年経った今でも、その瑞々しさが失われる事のない奇跡的な名作です。反体制で貫かれたプロットの単純明解さ、編集の素晴らしさが際立っています。自由の国アメリカの、自由の為の強制排除が描かれていま>>続きを読む

シング・ストリート 未来へのうた(2016年製作の映画)

3.8

上達していくバンドから生み出された曲の数々が物語を雄弁に語る。費やされた時間と友情を語り、未来を掴み取る、ど根性を軽やかに演奏で語って見せた。音楽の力の無限の可能性が未来であった。兄貴の作詞は最高だ。

潮騒(1972年製作の映画)

3.1

公開当時、白い波打ち際に翔ぶカモメと、スカイブルーで統一された海岸の脱衣場の青白い色彩の美しさに魅了されました。キャサリン・ロスのファンなので、たまに観直しますが、今観ると偶然の暴力で奪われた悲劇が突>>続きを読む

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(1973年製作の映画)

4.2

西部劇の終焉を、ペキンパー流の哀愁で謳いあげた鎮魂歌。川辺で死を待つ老保安官スリム・ピゲンズを、無言で寄り添い、悼む妻カティ・フラド。見守るジェームズ・コバーン、BGMはボブ・ディラン "天国への扉">>続きを読む

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)

3.2

外国人も観光客もいないパラレルな京都の夜。鴨川の淵に座るカップル達の眺める対岸の景色が、まさに鴨川の距離感で描かれていて、京都独特の雰囲気が凄く良く出ていました。偽電気ブランを探してみたくなりました。

卒業(1967年製作の映画)

5.0

10代エレーンに恋した青春映画の金字塔。20代ミセスロビンソンに雌トラの匂いを感じ、30代でベンが羨ましく思え、40代でこの世の地獄であると気付き、50代でニガ笑いしている自分がいた。各年代で、視点も>>続きを読む

曽根崎心中(1978年製作の映画)

5.0

嬉しい…悲しい…有り難い。慙愧の念を道連れに極楽浄土の道行華。迷うまい…離れまい…お初と徳兵衛手に手をとって道行く先は曽根崎森の三途の川か、南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…。情念の女郎お初を演じた梶芽衣子>>続きを読む

ブラック・サンデー(1977年製作の映画)

4.2

静かにスーパーボウルのスタジアムに接近する飛行船の不気味さ。手に汗握る空中と地上のスリリングな攻防戦は、強烈なダイナミズムと緊張感をはらんだ一級品のサスペンス作品であった。1977年に映画館でみたかっ>>続きを読む

真・女立喰師列伝(2007年製作の映画)

2.4

6編のオムニバス。中でも外界から隔離されたトウモロコシ畑の妖気が漂う耽美的な世界が魅惑的だった"草間のささやき 氷苺の玖実"と、3R5D3S政策を語る"歌謡の天使 クレープのマミ"を興味深く観た。

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.2

一冊のノートだけで、一本の芳醇なロードムービーを創造する豊穣なイマジネーション。少年の視線で見えた大人の世界、子供と大人と老人の間で流れている時間の差異を瑞々しく描く。なんとも素敵なエンディング。