法廷劇としてのストーリー展開がやや凡庸でジョンフォードのベストフィルムとは思わないが、死刑になりそうな2人の男の強く愛情深い母親と誠実なリンカーンのやりとりが心に残る。序盤、控えめに想いを打ち明けた美>>続きを読む
砂漠の飛行場なのに雨と雪と霧に晒されて、飛行機が何回も墜落する。各エピソードが散発的な感じが途中まであったが、ラストの救出劇へ持って行く手腕はさすがフォードで航空映画の醍醐味を味わうことができる。登場>>続きを読む
「周遊する蒸気船」とか「俺は善人だ」とかフォードのコメディーはとにかく可笑しいのだけどこの作品も素晴らしく可笑しい。善行勲章とかウイスキーといった繰り返しのギャグの可笑しさ、不幸になるに連れて階級が上>>続きを読む
善良な人々から愛されながら不幸にまみれた人生を送る一頭の馬。満足に餌も与えられず重い荷車を引いていた路上で偶然昔の主人に会うが主人は気づいてくれないその切なさ、何かこういうの観たよなぁーと考えていたら>>続きを読む
バグパイプ隊が室内に入り込んで行進するシーンとか水晶に映る兵士の移動ショットとかマシンガンの煙の感じなど随所にハッとするシーンはあるのだけど物語のテンポが鈍くちょっと物足りない。早くも飲んだくれ親父の>>続きを読む
キリスト教の伝導施設の女性と宗教を否定する女医師の対立を軸に、コレラ、困難な出産、蛮族の襲撃などでグイグイ物語が展開される。ジョンフォードの遺作が女たちを巡るドラマであることに驚かされるが門の出入りと>>続きを読む
映画の序盤、悪党に襲われて保安官事務所に担ぎ込まれた男のもとに美しい女性が来て「私は看護婦だったのでお役に立てるかも」と言う。ジョンフォードだったらこの女性がヒロインとなって保安官と恋に落ち最後は悪党>>続きを読む
アイルランド移民の貧しい一家の息子がボクシングのチャンピオンになる物語だが主人公の息子ジムを筆頭に一家の狂いっぷりが何とも素晴らしい。最後に対戦する元チャンピオンも本能だけで猛進するお馬鹿爆発男だし、>>続きを読む
低迷していたNIKEがマイケルジョーダンと契約を取り付け大ヒット商品を生み出すビジネスサクセスストーリーだが、キング牧師とかBone in the USAの使い方とか、負の要素を抱えながらもアメリカと>>続きを読む
実話だから結末は分かっているわけで、再現記録ドキュメンタリー的な映画になってしまうんじゃないかと懸念しつつ、でも予告編がいい感じだったので観たら期待を上回る作品だった。随時に見せ場を配しながら作られた>>続きを読む
イランの売春婦を狙った連続殺人犯を追う女性ジャーナリストを描いたサスペンスだが、宗教を背景とした正義感とか女性蔑視とかが不穏な空気感を醸し出す。犠牲者となる娼婦にも女性ジャーナリストにも犯人やその家族>>続きを読む
ルノワールらしいいかがわしさと皮肉に満ちた作品。フレンチカンカンもそうだったがフランスの愛憎劇の過剰さには戸惑うばかりでロメールの作品はギリギリのところで受け入れられるのだけど、ルノワールはあまりに過>>続きを読む
この映画のラスト10分には映画そのものの幸福感が詰まっている。伏線でも無く、トラウマでも無く、思想でもメッセージでも無く、顔と目線と動くことの凄まじさ美しさ楽しさに涙が出そうになりながらひたすら画面を>>続きを読む
セット感満載の街角でカメラが変幻自在に動き出所したフランクシナトラを追いかけるオープニング、ジャズのナンバーが鳴り映画の世界に心地よく引き込まれる。出てくる人物が皆翳りがあって如何わしい感じもいい。フ>>続きを読む
砂漠のオアシスで姿が見えない敵のアラブ兵に一人また一人と殺されるという「フルメタルジャケット」を彷彿とさせる展開。ジョンフォードの映画によく見られる、すべてを包み込むような母親の白いエプロンとか、命を>>続きを読む
こんなに狂った愛の映画が50年代のアメリカで平然と作られ、今日平日の昼下がりにテレビで平然と放映されていることにめまいを覚える。完璧に死者を再現した姿でキムノヴァクが現れた瞬間のジェームズスチュワート>>続きを読む
吉田宏明が「西部劇論」で述べているように、アメリカ的な正義を疑ってかかる「歴史修正西部劇」の先駆的作品。70分ほどの作品だが終始嫌な感じが漂う。「12人の怒れる男」でアメリカ的な正義をサディスティック>>続きを読む
土地のためなら邪魔なやつは縛り首にし、自分の名をつけた通貨を発行し、破産したらワインで乾杯、荒くれ牛を素手で倒す千葉真一と三船敏郎を足して2で割ったような牧場主を演じるウォルターヒューストンのバイタリ>>続きを読む
不幸な生い立ちで喧嘩っ早い車引きの松五郎の、余りに純粋で不器用な人生。車寅次郎や高倉健の演じる任侠者にも繋がる、ある意味日本人の琴線に触れるようなこの人物、坂東妻三郎版良かったが、野獣のような肉体と繊>>続きを読む
生真面目なイギリス人が西部の無法の町で保安官になるというコメディー。荒くれ者どもを非力で純粋で真面目男が、本人が意図してないのに打ち負かすという展開は目新しくはないけどやっぱり面白いし、タクシードライ>>続きを読む
田舎のお互いに殺意を抱く夫婦がラジオを掛けながら延々とワインを煽る、その行き詰まった感じがいい。妻は夫のワインに殺鼠剤を入れるが夫は妻を包丁で刺し殺す。その夫が裁判で自己弁護を朗々と語り無妻になってジ>>続きを読む
宝くじに当たった年の離れた男女が女性の婚約者が兵役から帰る2週間の間旅行して最後は結ばれるというスクリューボールコメディー的な展開で、自由で遊び心に満ちたショットも随所に見られて楽しめるのだけど、物語>>続きを読む
カールドライヤーの「裁かるるジャンヌ」のエログロ版みたいな映画で、性快楽にふける修道女とか尼さんとか、まぁある意味定番の題材だけどクローネンバーグばりの拷問器具とかパンデミックネタとかを交えてクライマ>>続きを読む
ドラッグ、ベトナム戦争、ヒッピー、ラジオ、人種差別、車、同性愛、ロックミュージック、アメリカの田舎、砂漠、安っぽい叙情、突然の死。アメリカンニューシネマの教科書みたいな作品で、上手く作られた作品ではな>>続きを読む
スピルバーグの映画への思いがとってもストレートに描かれている。でも大林宣彦的な照れ臭い映画讃美ではなく、映画に対する肯定と否定がない混ぜになっていて、ラストに自転車が浮くわけでもサメが木っ端微塵になる>>続きを読む
新婚旅行で伊東へ行く列車から妻が突然消えるヒッチコックの「バルカン超特急」的な導入にワクワクする。失踪した妻を探すうちに「壺」というバーで泥酔して自宅に戻ると妻の死体。これまたヒッチコック的巻き込まれ>>続きを読む
ボクシングと八百長とギャングという鉄板で魅力的な題材でストップモーションを使ったタイトルバックは「ハスラー」みたいで胸が高鳴るが、脚本が杜撰というか安直でもったいない。南田洋子の家の壁の赤さとか川地民>>続きを読む
冬のハルピンが舞台なので外はひっきりなしに雪が降っているのだけどその雪の質感が素晴らしい。列車の客室での乱闘シーンも割れた窓から吹き込む雪が部屋を舞う。そして雪が降っているので必然的に人々は帽子を被る>>続きを読む
戦後直後、病気の子供の薬代のために身を売る田中絹代といえば小津の「風の中の牝鶏」を思い出すのだが、あの作品の田中絹代は一度だけの過ちを復員してきた夫に打ち明け泣いて悔いるのに対し、この作品の田中絹代は>>続きを読む
物語についての作品で設定とか着眼点とかとてもいいのだけど、今ひとつ盛り上がらない。前半は魔神の回想でひたすら説明なので眠くなる。後半舞台がロンドンになり現代文明の中で衰弱する魔神と孤独なヒロインのラブ>>続きを読む
藤純子引退記念作品で錚々たる役者が勢揃いし、脚本は笠原和夫で監督はマキノ雅弘、これで面白くない訳がない、のだけど、期待したほど面白くない。仇役の親分に捻りがないというか、途中で身投げしようとする親子を>>続きを読む
襲名の盃を俯瞰で撮るオープニングのショットから、ラストで鶴田浩二が汽車の屋根から仇の潜む座敷に飛び込み長ドス振り回して追い回し、藤純子の目の前でトドメを刺す寸前で血まみれになりながら藤純子と抱擁するシ>>続きを読む
ブレッソンは最初に観た「バルタザールどこへ行く」と「少女ムシェット」の痛々しくも禁欲的で透明感のある感じがなんとも素晴らしかったのだが、その後観た「田舎司祭の日記」「やさしい女」「湖のランスロ」「たぶ>>続きを読む
ヘンリーフォンダとアンソニーパーキンスという昆虫眼の2人が現職の保安官と元保安官を演じる。今は賞金稼ぎとなり町の人から毛嫌いされるヘンリーフォンダが気負いがちなアンソニーパーキンスを教育して行く展開が>>続きを読む
暴力と罪にこだわるこの監督らしい内容だが寓話性がかなり強い。対岸の本土で行われている内戦から隔絶された島、という設定はとても魅力的で展開が大いに期待されるのだが何故かさほど盛り上がらない。展開は破滅に>>続きを読む
落ち目になったかつてのスターが苦しみもがく作品で見せ場も展開も予想は出来るわけだけど、期待以上にいい作品だった。「オズの魔法使」のセットの中で普通の生活を送るのか女優になるのかの決断を迫られる場面から>>続きを読む