ICHIさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

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愛人(1953年製作の映画)

2.8

小津の墓参りに鎌倉に行き、鎌倉に来たんだからここで映画を観ようと川喜田映画記念館へ。小津がやっていたら最高だったのだけどやっていたのは市川昆のこの作品。市川昆はあまり関心した作品はないのでまぁ、面白か>>続きを読む

晩春(1949年製作の映画)

4.2

小津の墓参りに行こうと思いたち、再見する。原節子の父親への愛情の濃さに狼狽え、親娘のスリリングなやりとりに引き込まれる。笠智衆が「お父さんももう56だから先が短いんだよ。」というセリフにも狼狽える。

ディア・ハンター(1978年製作の映画)

4.6

何度も繰り返し観ている作品だけど前半1時間15分かけて描かれる人々の暮らしや人間関係が繊細で、聖と俗が入り混じって何とも素晴らしい。そこにヘリの音が被さり一気にベトナムの戦場へ持って行く演出の見事さは>>続きを読む

斬る(1962年製作の映画)

3.5

大映作品ならではの重厚さとエログロが混ざった変な時代劇。脚本がバタバタしていて市川雷蔵もニヒルのような軽薄なような、妹役の渚まゆみは唖然とするくらい芝居がド下手で、一つ一つのエピソードは絡み合わず、ラ>>続きを読む

家族の肖像(1974年製作の映画)

3.4

中3の頃淀川長治さんがこの作品を激賞していてテアトル銀座で観たが中学生にわかるはずもなく、我儘な一家に翻弄される老人が気の毒に思ったくらいの記憶しかない。それから40数年ぶりに観て、孤独に逃げようとし>>続きを読む

モガンボ(1953年製作の映画)

4.0

アフリカを舞台にしたタフで女たらしのクラークゲーブルと酒好きで気の強いエヴァガードナーと学者の貞淑な妻のグレースケリーの3人が繰り広げる恋愛ドラマ。ジョンフォードがこんな恋愛劇を撮っていたことに驚きを>>続きを読む

噂の女(1954年製作の映画)

4.0

田中絹代演じる京都の遊廓の女将と、久我美子演じる、その仕事を毛嫌いする娘との諍いを軸に、遊廓を舞台に様々人間の悲喜交々が描かれる。倒れた母に代わって娘が跡を継ぐというポジティブなドラマと、病気の父に仕>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

4.3

濱口竜介ならではのスリリング極まりない恋愛ゴタゴタ。ロメールだったらそんな人間達の右往左往ぶりを生々しくもユーモラスに俯瞰的に見せるだろうが濱口は生死ギリギリのところまで人間を追い詰める。工場の煙のロ>>続きを読む

Helpless(1996年製作の映画)

3.9

オープニングの工場の塔が並ぶショットで一挙に引き込まれる。セリフに頼らずショットの積み重ねで緊張感に満ちた画面を作るこの監督の魅力が堪能できる作品。

周遊する蒸気船(1935年製作の映画)

4.1

おそらく30年ぶりくらいの再見だったけど終盤の気が触れたとしか思えない蒸気船の爆走ぶりに改めて爆笑し感動した。「俺は善人だ」と並ぶジョンフォードの傑作コメディ。水中を引きずり回された直後に狂ったように>>続きを読む

鄙より都会へ(1917年製作の映画)

3.3

プレイボーイの口車に乗せられ婚約者をニューヨークに連れ去られたカウボーイがニューヨークのホテルに乗り込み婚約者を連れ戻す物語。ハリーケリー扮するカウボーイの仲間たちが馬に乗ってニューヨークの大通りを疾>>続きを読む

ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド(2020年製作の映画)

3.2

インドで偶然ビートルズのメンバー達と出会ったカナダの青年のお話で、彼の目から見たビートルズの様子は興味深いけどイラストアニメでやられてもなーという感じ。デビッドリンチの語りは殆ど意味が感じられない。一>>続きを読む

捜索者(1956年製作の映画)

4.3

もはや神話のように語り継がれるオープニングとエンディングのカットを始め、ショットの美しさは筆舌に尽くし難い。その限りなく美しい映像で限りなく陰惨なジョンウェインの復讐ドラマが展開される。こんな嫌な顔を>>続きを読む

コレヒドール戦記(1945年製作の映画)

3.0

家のソファーで観ていたら途中から完全に集中を失って退屈なまま終わってしまった。太平洋戦争初期の米国が撤退する時点の物語でその苦さがドラマの核になるのだろうけどそれが読み取れない、それは渋谷に行かず自宅>>続きを読む

果てなき船路(1940年製作の映画)

4.0

ジョンフォードが海洋物で武器を積んだ貨物船に乗った船乗りたちの苦難を描くが、怪我をして治療も受けられないまま死んでゆく男とか、スパイの疑いをかけられた男の箱の中身が妻からの手紙だったとか、そこでのエピ>>続きを読む

男の敵(1935年製作の映画)

4.0

シネマヴェーラでやっているジョンフォード特集になかなか行けず悶々としていたらAmazonプライムにあったので観た。
主役のヴィクターマクラグレンが素晴らしい。大柄、単純、乱暴者、酒好き、女好きで金に困
>>続きを読む

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

4.0

ゴダールが亡くなったのでひさびさに再見した。映画俳優を夢見る人妻が娼婦に転落して最後は路上で撃ち殺されるストーリーだが、「背徳」だの「傷ましさ」だの「葛藤」だの「愛の飢え」だの、この手の物語にありがち>>続きを読む

新宿泥棒日記(1969年製作の映画)

3.7

大半が60年代後半の新宿街頭ロケだが都電の路面を歩く場面を除いて今の新宿と変わらない感じに驚いた。紀伊國屋書店と花園神社の状況劇場赤テント。政治よりも性欲を軸に人物が行動するところが大島渚的で面白い。>>続きを読む

家庭(1970年製作の映画)

3.4

足好きトリフオー全開のオープニングややたらと言いよって来る近所の女とか叩き割られるドアとか遊び心に溢れたコメディーとして楽しい場面は沢山あるのだけど、全体的には物語が弾まずトリフォーの作品にしては物足>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.8

サスペンスとしては中途半端というかよくわからないのだけど、そのよくわからなさが逆に魅力的で、未知との遭遇とETとジョーズに目配せをしつつ宇宙人来襲ものを強引に西部劇に持って行くバカバカしさ加減と撮影に>>続きを読む

ヘカテ(1982年製作の映画)

3.8

一つ一つのショットの的確さと美しさに圧倒される。アフリカ東部の壁の切れ目から見える海岸の波飛沫にサミュエルフラーの「最前線物語」を思い出し感動する。ビスコンティ的な没落するヨーロッパの物語としても魅力>>続きを読む

太平洋ひとりぼっち(1963年製作の映画)

3.3

若者が単独で太平洋を横断する冒険物語だが音楽が武満徹で何やら不穏な神話的な感じで、そこに石原裕次郎の少年的なモノローグが重なり不思議な味わいの作品となっている。でも昭和40年前後の日本映画って高度経済>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

3.2

昔見た「トップガン」が全然面白くなかったのでこの作品を見るつもりはなかったのだが、脚本家の荒井晴彦が「映画芸術」で典型的なアメリカ映画の面白さに満ちているというようなことを書いているのを目にして見るこ>>続きを読む

リオ・ロボ(1970年製作の映画)

3.8

「リオブラボー3部作」の第三作。リオブラボーと比べると人物の造形が物足りなかったりするけど、戦力的に圧倒的に不利なジョンウェイン率いる集団が敵のボスを人質に刑務所に立て篭もる展開はワクワクする。どんな>>続きを読む

アイアン・ホース(1924年製作の映画)

3.5

鉄道が敷かれるとともに街が移動し人が移動し家畜が移動する。その物量感が凄い。そこに父を殺された青年の復讐と父の夢の実現、それを邪魔しようとする実業家との対立、その実業家の婚約者となっている幼馴染の女性>>続きを読む

恋のエチュード(1971年製作の映画)

4.3

オープニングのタイトルバックで書物の活字が映りあまりに美しいテーマ曲が流れトリュフォーの名前が浮かび上がるだけで泣きそうになる。階段を登り、手紙や日記を書き、自転車に乗る、そんな場面を観るだけで幸せに>>続きを読む

黄色いリボン(1949年製作の映画)

3.7

ジョンフォードの騎兵隊物。モニュメントバレーを背景に隊列を組んで移動するショットの美しさ、詩情は何度見てもうっとりする。ただ、「アパッチ砦」でも思ったのだけど物語的にはややかったるい。

モホークの太鼓(1939年製作の映画)

3.8

ジョンフォード初のカラー作品で青と赤の使い方が鮮烈。結婚式の場面から始まり、開拓、戦い、誕生、死がこの監督ならではの叙情感で描かれる。悲惨な状況が延々と描かれるなだけど常にユーモアがただようところが真>>続きを読む

誉の名手(1917年製作の映画)

3.3

オープニングの高低差のある丘陵で馬の群れを捉えたショットが素晴らしい。お尋ね者のハリーケリーが木の祠から出てくるのも楽しい。でも後半がなんか盛り上がらない。一つ一つの場面があっさりしすぎて物足りない。

二重結婚者(1953年製作の映画)

3.4

タイトル通りの作品。ドラマを盛り上げようと奇を衒った展開にすることなく、地味ではあるけどしっかりとした演出で物語を進行させるアイダルピノの手腕。ジョーンフォンティーンに比べルックスで引けをとる女を自ら>>続きを読む

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

3.1

東欧、モノクロ、キリスト教、殺戮、救われない魂、野生の獣と人間。タルベーラの「ニーチェの馬」みたいな傑作かもと思って見たけど、ストーリーがよくわからず、一つ一つの画面は重厚でそれなりに魅力的なんだけど>>続きを読む

モガディシュ 脱出までの14日間(2021年製作の映画)

3.4

朝鮮南北問題は政治的、人道的には憂鬱な問題だが、映画の題材としては極上の舞台装置になる。実話に基づくというこの作品も反目し合う南北の外交官が内戦が起こったソマリアから脱出するために協力し合わざるを得な>>続きを読む

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)

3.4

意外な事実とか知られざる舞台裏とかがあるわけではなく、まぁこんなオリンピックだったよなぁという感じなのだけど、そこに関わった人の感情のうねりがとてつもなく大きいので最後まで引っ張られる。NHKスペシャ>>続きを読む

陽のあたる場所(1951年製作の映画)

3.4

貧しい家庭に育った青年が上流階級の娘に見染められ、邪魔になった婚約者を殺害しようとする。昨今流行りの格差社会を扱った映画ともいえるけど、考えてみたらどの映画もなんらかの格差を描いている。差がなかったら>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

3.2

70年代初めの頃のロサンゼルスの空気感が伝わって来てそれぞれのエピソードはそれなりに面白いのだけど主人公の2人の関係性がそれほどスリリングでもドラマチックでもなくラストもフーンという感じ。2人の走るシ>>続きを読む

鶴八鶴次郎(1938年製作の映画)

4.5

長谷川一夫と山田五十鈴の喧嘩ばかりしている芸人コンビ、その設定、絶妙かつ微妙な距離感が何とも素晴らしい。脚本がいいし役者がいい。鶴八は2人を贔屓にしてくれていた資産家の嫁となりコンビは解消、鶴次郎は1>>続きを読む