とむさんの映画レビュー・感想・評価

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人類遺産(2016年製作の映画)

4.0

字幕、ナレーション、音楽といった演出を排し、固定したカメラで終始廃墟や荒野の風景を映し続けるという展開は、一見とても単調なもののように感じられる。でも次々と映し出される荒涼とした眺め、そこに吹きつける>>続きを読む

真白の恋(2015年製作の映画)

4.2

それぞれの登場人物が身近な家族の存在を大切に思いながら、穏やかな心持ちで何気ない毎日を送っている。
そんな中で軽い知的障害をもつ主人公の真白がフリーカメラマンの油井と出会うことで、狭かった世界が少しず
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上意討ち 拝領妻始末(1967年製作の映画)

3.9

封建社会の不条理さや人間の傲岸さを悲劇的に描いている点では、『切腹』と同じ構図ではある。
けれどもこちらはより悲痛かつ救いのない物語で、見た後の気分も相当に重苦しいものだった。悲劇であっても「見事な映
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TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)(2016年製作の映画)

3.8

数十年にわたって日本の食文化を支えてきた築地市場。市場で働く人々や食に関わる識者などに取材し、スローモーションや空撮を駆使した映像を織り交ぜて、脈動し続ける築地の姿を丁寧に映し出したドキュメンタリー映>>続きを読む

無垢の祈り(2015年製作の映画)

3.1

映画を見終わった直後の満足感は低かった。虐待を受け、ほとんど言葉を発することなくひたすら彷徨する主役の少女の気持ちが分からなかったから。いったいどれほどの苦しみをその心に抱えているというのだろう。それ>>続きを読む

愛を乞うひと(1998年製作の映画)

4.2

子供のころに母親から壮絶な虐待を受けながら生きてきた、原田美枝子演ずる主人公の女性。容赦のない折檻の描写や、日本と台湾という国の間で翻弄されるその半生も劇的なものではある。
しかしこの映画で最も胸を打
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切腹(1962年製作の映画)

4.9

今まで自分にとってのベスト1映画は岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』だと考えていた。しかし今回映画館で『切腹』を鑑賞したことでそれが更新された。

全編に流れる静けさと緊張感、格調の漂う切れ味鋭い
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校庭に東風吹いて(2016年製作の映画)

3.1

場面緘黙症の子供や貧困の母子家庭の問題を観客に訴えようという真摯な姿勢は称揚できるのだけれど、問題の解決のために奮闘する小学校教諭の沢口靖子があまりに品行方正かつ模範的すぎて、ロールモデル的な作為感を>>続きを読む

怒り(2016年製作の映画)

4.1

生きることの根幹にかかわる重々しい問いを投げかけられた映画だった。

自分自身や他の誰か、何かを信じて生きていくということ。この映画の登場人物たちと状況は違っていても、どんな人の人生にだって何を信じて
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日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)

3.6

当然映像の美しさは岡本喜八版とは比較にならないし、天皇の人徳と風格を漂わせる本木雅弘や抑制された中にもたぎる熱を感じさせる松坂桃李などの演技も素晴らしい。
森師団長殺害の場面に象徴されるように、現実も
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ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(2014年製作の映画)

4.0

人の手業の温もりや柔らかで絵画のようにみずみずしい質感が伝わってくる映像がとても美しくて、描かれている世界の中に終始心地良く身を委ねることができた。

独特の癖のあるキャラクターの造形や風景描写が魅力
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火 Hee(2016年製作の映画)

2.0

自分には物語の筋道も終着点も一見しただけではよく分からなくて、エンドロールに入ったときには狐につままれたような気分になっていた。
原作を読んでいる人や頭の冴えた観客なら、この映画を楽しんで見ることがで
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日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)

4.8

今のところ、自分がこれまで鑑賞してきた全映画の中で最も好きな作品。数え切れないくらい見てきたし、今後も何度となく見返していきたいと考えている。

何よりも魅せられるのが、ベテランから若手までずらりと並
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野火(2014年製作の映画)

3.5

酸鼻を極める「戦場」という名の地獄。腐って黒ずんだ死体が累々と折り重なり、猛烈な異臭が辺りに漂う。命をつなぐために必要な食料も枯渇する中で、さまよい歩きそれぞれの本性をむき出しにする兵士たち。
これほ
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もののけ姫(1997年製作の映画)

4.0

森林を破壊し、動物たちの命を奪いながら社会生活を営み生きている人間たち。その行いに怒り狂い、化け物となって人間に襲いかかり戦いを繰り広げる神の化身としての動物たち。それと同時に人間同士の争いも勃発する>>続きを読む

いちご同盟(1997年製作の映画)

3.5

ピアノの演奏を得意としながらも高校受験に悩み、飛び降り自殺した同年代の少年に感化されて死への思いを巡らせている良一。将来のプロ入りを期待されるほどの野球の技量を持ち、女子からの人気も高い四番のエース、>>続きを読む

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)

3.7

カリスマ的な独裁者としてドイツに君臨し、悪政を振るって国内外の無数の人々を苦しめ死に追いやったアドルフ・ヒトラー。戦局の悪化により追い詰められ、ヒステリックに激昂し日に日に疲弊していくヒトラーに往時の>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

4.1

第1作目の『ゴジラ』を見て、暴虐の限りを尽くすゴジラに苦しめられ死を覚悟する人々の痛ましく悲壮な姿に胸を揺さぶられた。公開された予告編を目にして、そんなシリアスさや重みのあるメッセージ性を感じさせてほ>>続きを読む

ゴジラ(1954年製作の映画)

4.3

水爆実験によって長い沈黙から目覚めさせられたゴジラが、東京の街を舞台に暴虐の限りを尽くすという怪獣映画の範疇を超えて、日本人の原水爆に対する恐怖、強大な破壊力を持つ兵器を生み出しそれを使用することの愚>>続きを読む

シリア・モナムール(2014年製作の映画)

3.3

内戦により殺戮や暴力・凌辱、破壊がはびこり多数の人々が過酷な日々を強いられているシリア。市民が現地の惨状を携帯のカメラなどで捉えた、報道では決して流されることのない生々しい映像がつなぎ合わされ、パリに>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

3.9

友人、夫婦、恋人、親子、兄妹、上司と部下、名前も知らない他人。人間関係にはそれぞれの状況に応じたいろいろな形がある。
穏やかさと均衡を保っていたそのつながりも、ふとしたきっかけから糸が絡み合うようにた
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