神経薄弱に追い込まれる主人公の存在はフィルムノワール的とも言えるが、明らかに夫の罠に嵌められていると分かる作りになっている。もしこれをヒッチコックが撮ったら、途中までどちらか分からないつくりにしただろ>>続きを読む
「つらいつらい」と叙情性に叙情性を上塗りするような時間が長すぎてさすがにしんどかった。感情的な演技やクロースアップに頼るのではなく、ちょっとした視線や身振りで示せばもっと短い時間で終わるだろう。一方で>>続きを読む
ケイリー・グラントが警察から逃げるシーン、花を使ったドタバタの逃走、ブレーキ音を響かせながら高スピードで車を運転するグレース・ケリー、『めまい』を準備するかのような抑えた照明と外の花火が室内を照らすグ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
マッド・サイエンティストとその犠牲者の話か、あるいはまた『籠の中の乙女』的な話か(前に見たけどよく覚えてないなあと思ってたけどどうやら見てない)、とか思っていると、あっさり屋敷から出ていく。結局は自由>>続きを読む
ジャンプカットで連続性を欠いた人物たちの物語はひたすらに心理的な裏付けを欠いた表層的で軽薄なものに見えるが、これはマリックの意図したところなのだろうか。よく分からないフェスが繰り返し出てくるが、男たち>>続きを読む
①老いたホームレスの男女が雪の降る川辺でダンスする、ロマンチックなシーンをルノワールが撮ったことに驚く。
②掃除機を窓から捨てる場面が活劇。『やさしい女』のように風にたなびくカーテンが人物のいない空虚>>続きを読む
『めまい』でもそうだが、人間の衣服や髪型を誰かにコントロールされることの暴力性が印象に残る。その髪型を男が解いてやり、女のほどかれた髪に顔を埋める身振りをする場面の官能性がまた素晴らしい。
ルノワールがこれほどヒューマニズムに信頼を置いた映画を撮っていたのに驚いた。ルノワール映画の美しさを保証するはずの水辺も、大雨とともに耕した土地を破壊し家畜をさらっていく暴力性を見せる。
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「いい子」という言葉が3度繰り返されるが、全てが別のように響いてくる演出の繊細さには泣かされた。
木に登る男の子を掴む手、腕相撲、二人三脚などの思い出がモンタージュで示されるのを見て、トットちゃんのコ>>続きを読む
目の見えない弟が姉の肩に顔を寄せているショットは姉弟愛を超えた性愛の官能さがある。気を失う人物の主観ショットとしてのぼけつつ回転する映像は『狂った一頁』を連想する一方、姉の家や遊郭は2階にあるため高低>>続きを読む
目の白さが不気味に浮かび上がる真っ黒に塗られた顔面には無数の汗粒がひしめいている。この圧倒的なイメージだけで傑作たりえている。
オープニングの暴動シーンの悪趣味さは楽しく見たのだが、こんなことあるわけないだろという話がストーリーのベースになっているため、その後の残酷描写の連続がただの悪趣味になってしまった。イーライ・ロスの撮る>>続きを読む
この監督の戦争(戦後)の話なのだからPTSDの話なんだろうと先読みしているとそのような展開になる。このような映画を作らなければという強い思いは感じる一方、「このような映画」に違いない→やっぱりそうだっ>>続きを読む
恋に落ちた人物の顔、その切り返しで両思いに至る幸福。典型的なメロドラマをなぞったような話だからこそ、その無表情と淡々とした口調とそれに裏腹なセリフ(「今すぐ来て」など)に心を打たれる。
繰り返される日常の「反復とそこにある差異」という意味では『パターソン』がどうしても想起されるし実際に結構重なっているように思えるが、役所広司のトイレ掃除の手つきや音楽、カメラ、読書、植木の日常の反復に>>続きを読む
「願い」がテーマでなくても、ただ主人公らが悪役をやっつける話で9割が成立してしまうストーリーが何より問題。願いを持つこと/叶えることの苦しみやそのための努力、為政者が人民の感情を制御するリアリティなど>>続きを読む
複数のストーリーが重なる資料室のシーンなど緊張感が高まるに見えるところも不発な印象だが、ダラダラと見る分には面白く見れる。
クライマックスの幽霊大量発生やオジさん誕生(文字通り)のカオスは面白かった。>>続きを読む
『グランド・ブダペスト・ホテル』でもあった入れ子構造だが、それらが接続されて、真正面の切り返しで男女を捉えるに至る流れが素晴らしかった。アステロイドシティ内でも、簡素な住宅の窓を介して男女が会話するル>>続きを読む
端役まで愛情をもって描ききるジェームズ・ガンの力量というより誠実さであり切実さにはいつも胸を打たれる。
脳筋の敵にグルート(ドラックス)が言う「やり直せる」という言葉は、高みからの説教ではなく、色々と>>続きを読む
『X』の家屋が『オズの魔法使い』を模していたことが明かされるオープニングでまず驚いた。友人を殺す一連のシーンも、友人が家を出る、少ししたら主人公がドアから出てくる、主人公が手斧をとる、友人が叫びながら>>続きを読む
『パール』を見てようやく、よくある『悪魔のいけにえ』のフォロワー映画(なだけ)ではないことが分かった。とはいえ単体で見ると、死に方/殺し方のバリエーションの面白さくらいしか印象に残らなかった。
親の望むようにではなく自分らしく生きよう、というお行儀のいい話に結局はなるのだが、超巨大化する母親をはじめバカバカしい絵面や展開があるのでまあ楽しめた。
この手の話は『アナ雪』しかり『マイ・エレメント>>続きを読む
フィルムノワールとは主観のジャンルだが、主観ショットでほぼ徹底して構成しているのは珍しい。とはいえ一番にある動機は、探偵と同じ情報で真実に辿り着けるかというミステリー的趣向にある様子。役者によってレン>>続きを読む
ダンテ『神曲』を導きにしてミューズなるものを独善的に論じる研究者と、それに歯向かいながらもそうするうちにミューズ論圏内に引き込まれている女たち。こんなものは見ているうちにぼーっとしてくるのだが、気づい>>続きを読む
悪魔に憑かれたり疑心暗鬼に駆られたり、出演者たちの狂気の演技合戦といった様子。見てて面白くはなかった。
犬が捨てられている手前の水辺の向こうに、少女たちが立つ弓形に公園の道が伸びており、その外縁を野球部の青年たちが走っている、この空間の使い方というか立ち上げ方が素晴らしい。
話は茶番としか言いようがない>>続きを読む
主人公、教師、映画監督、映画プロデューサーの4人の、2〜3人の組合せの会話だけで物語が進む。ただし、会話する人物の位置や向く方向はヴァリエーションを持っており、誰の顔が見えるか・見えないか、誰の身体の>>続きを読む
脚本というか多分原作が面白くて基本的には楽しくみれた。ただ、サイコパスを亀梨和也で描くのであれば、何かひと工夫した殺し方かなんかで映画史上の愛すべきサイコパスをつくるくらいの気概がほしかった。(『十三>>続きを読む
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武士の権力争いに男色が加わるとどうなるのかと思ってみていたが、結局は西島秀俊が遠藤憲一を見捨ててしまい、ただの権力争いに回帰してしまった。(西島が加瀬亮に惚れているのではという遠藤の懸念もあまり効いて>>続きを読む
崖にしがみつくスタローンに傍を飛ぶヘリからしつこく銃撃してくる構図が新鮮だった。この辺り、超絶ロングショットも映えていた。
中盤のジャングルではどこにもいないが故に遍在する存在であったが、終盤には屋上>>続きを読む
オープニングが普通の映画のクライマックス並みのバリエーション(屋内、地上、水上)と物量。そのせいで見る側の感度も鈍くなり途中のアクションが物足りなく見える気もするが、目の前の1人を殺すのに4〜5人が銃>>続きを読む
水泡の中に入ったエンバー(火)がウェイド(水)と水中を航行するシーンが良かった。その後、どちらかが消えてしまう恐れを乗り越えて、互いに触れ合う流れもロマンチック。
親の望む進路とは異なる道を望む葛藤は>>続きを読む
何回にも分けて見てしまったので全体が見通せなくなってしまったが、帯に短したすきに長しといった印象。
刑事による偽の証拠のでっち上げというと『黒い罠』が想起されるが、こちらで水底に沈むのは殺人犯の方であり、最後の最後に真実の露呈を望んだアル・パチーノは死にはするものの水死を回避する。(途中で海に落ちて>>続きを読む
二階建ての建物、海にせり出した高台とボートが浮かぶ海面、日本人の密使が潜む木(忍者のよう)と中国人が歩く道など、高低差の演出がうまい。霧、蝋燭の火(が照らす提灯)、風を撮る心意気も好ましかった。
売春>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
何となくの粗筋しか知らない状態で見たので、『シャッターアイランド』のリベンジでもするのかと期待していたが、いつものスコセッシのギャング映画の延長線上にあった。
殺人シーンが多いにもかかわらず印象的なシ>>続きを読む