ジャンさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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オーディション(2000年製作の映画)

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北野武が殴打と銃による暴力なら、三池崇史は身体への過酷な拷問が映画の暴力を構成する。死んだ妻、会社の秘書、謎の女、息子の恋人、少女が、カットの切り替わりごとに入れ替わっていく悪夢的なシークエンスが面白>>続きを読む

アビス(1989年製作の映画)

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『エイリアン2』の宇宙船が潜水艦になったパニック映画から、未知の生命体との接触に至り『2001年宇宙の旅』となる。『アバター』において、潜水機やロボットの操作がナビの操作になり、他の文明との接触がさら>>続きを読む

風雲児(1947年製作の映画)

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男女が別々の鏡で二重化される切り返しショットが面白かった。クライマックスのアクションも、意外とフェアバンクスの身体性に基づいたものになっており、事前にきちんと手順を計画して撮った様子が見てとれた。

噛む女(1988年製作の映画)

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人物は鏡や窓ガラスに反映して捉えられ、テレビやスクリーンはAVや映画を映し出す。そして男は家の窓ガラスを割られ、車の窓に降り注ぐ大雨をワイパーで拭えずに視界不良で事故死する。
鏡やガラスを題材に、そこ
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天城越え(1983年製作の映画)

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警察に連行される田中裕子と少年を顔のクロースアップの切り返しで撮ったり、男を刺しにいく少年をエモーショナルな音楽とともに収めたり、叙情性がたんまり。
そして、少年の足を田中裕子が処置するシーンを長回し
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サリヴァンの旅(1941年製作の映画)

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車の暴走や樽・プールへの落下といった主人公の経験するスラップスティック喜劇を楽しく見ていると、今度はそれを打ち消すように主人公を笑えない受難が襲う、この対比が恐ろしい(水辺のシーンの美しさとそこでの強>>続きを読む

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

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キャバレーの店主が金管楽器の青年を殴る、森田剛がキャバレーの店主を照明か何かで殴る、松尾貴史が森田剛をラジカセで殴る、高橋和也が松尾貴史と森田剛をまたラジカセで殴るなど(他にもあった気がする)、久々に>>続きを読む

クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立(1970年製作の映画)

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病気の身体から分泌される物質を食べる、全く機能を有さない臓器が生成される、水かきが残る足を愛撫する。身体を生/性の機能に還元することなくそれ自体の即物性のもとに如何に愛するか、クローネンバーグ的な主題>>続きを読む

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)

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真っ黒の背景に顔の片側だけがグロテスクに浮かび上がる私刑のシーンが忘れがたい。最後に川(ミスティックリバー)を映して終わるが、その平穏さの底には死体が漂っている。正義が実現されえない世界こそまさにイー>>続きを読む

白鳥(2023年製作の映画)

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真正面のショットだけで厳密に構成されているのに、パン、トラッキング、カメラの高さの変化で、こんなにも自由の感覚が生じるかと心地いい。
出来事を単純に映像化するのではなく、大人になった登場人物が早口かつ
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虚栄のかがり火(1990年製作の映画)

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正義などどこにも存在しない身勝手な人々の表層的な饗宴を延々と見せられる。最後に実現されたかに見える正義も、違法な盗聴に嘘を塗り重ねたメディアにより実現される点で、毀損された正義である。評判が悪い映画だ>>続きを読む

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)

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一人の老人が遊園地で経験する暴虐的な仕打ちを、短いショットによる高速のモンタージュや悪夢的なノイズと音楽などで描写する。あまり意味を成していない円環構造や一つのメッセージに終始する展開から、そこまで興>>続きを読む

拾った女(1953年製作の映画)

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オープニング、クローズアップで顔を捉えた人物たちの視線でスリのサスペンスを構築する手際の良さが光る。(電車内でのスリは後に反復されることになる。)
共産主義者を強烈なミソジニストとして描いており、主人
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目撃(1997年製作の映画)

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神出鬼没に出現するイーストウッドは、警官、医者、運転手にいとも簡単に変装してみせる。殺人の犯人として疑われ身を隠して影として生きるイーストウッドは、父親としても娘を陰から見守る存在であり、絵を模写し、>>続きを読む

ハリーの災難(1955年製作の映画)

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ヒッチコック的サスペンスを自ら距離化・パロディ化している。男女の抱擁は、いつもの緊張感とエロティシズムに満ちたものにはなり得ず、極限まで表層的な振る舞いに見える。死体は登場人物同士をくっつける手段にし>>続きを読む

アバター(2009年製作の映画)

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キャメロンは映画で文明批評をしたいがためにこのシリーズに熱心なのかと思っていたが、見てみるとその部分は薄い。キャメロンとっての映画とは何よりアトラクションなのではないか。そこに3Dの上映形式や3Dグラ>>続きを読む

ドクトル・マブゼ(1922年製作の映画)

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冒頭、列車から協定書を放り投げて、車を運転する仲間がそのまま受け取るシークエンスからかっこいい。催眠をかけて人を操る悪役、銃撃戦で白煙に包まれる都市など、魅力的なモチーフに満ちていた。

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

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中盤までは出来事を簡潔に羅列してるだけに見えたが、後半からは急に登場人物に厚みが出てきて面白くなってきた。基本は主人公とそのコーチ(正確にはチーフエンジニア?)だけの世界であり、最後にコーチが嬉しくて>>続きを読む

ポリス・ストーリー 香港国際警察(1985年製作の映画)

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オープニング、斜面に貧民の住宅が窮屈に並んだ空間での銃撃戦から凄まじい。目まぐるしい編集のリズムで撃ち撃たれる様子が示されるとともに、屋根から敵がバタバタと地上に落ちてくる。せっかくの斜面がロングショ>>続きを読む

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)

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官能的な魅力をたたえつつ愛を求めては、子供のようにアラン・ドロンとじゃれてみたり、表情を失った顔で突然拒絶したりもする。性的欲望を抱きつつも性的主体となることを拒む女性像は思春期的である一方、アントニ>>続きを読む

ヒューマン・ボイス(2020年製作の映画)

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「安心して。メディアに言ったりはしないから。いや、もちろん言うつもりはなかったわよ。ちゃんと言った方が安心だと思って。」のように、主人公の感情がまとまりを欠いたままあっちこっちに揺れ動くのが、リアルタ>>続きを読む

天使の影(1976年製作の映画)

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「私のチャンスは無力であること」と語るように、主人公は豊かになっても終始気の抜けた表情をしている。ブルジョワの男から滔々と話を聞かされるところを遠くから緩慢に動くカメラが迫っていき、振り向くとその表情>>続きを読む

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

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自立した女性であるが故に不幸になっていく先進的なストーリーが、ラジオからしつこく聞こえて来る敗戦から先進国へと進む西ドイツの歩みと重ね合わされている。
刑務所、窓、崩壊した学校など、マリアの顔には格子
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バービー(2023年製作の映画)

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オープニングから底抜けナンセンスなセリフやダンスが楽しかった。シチュエーションは案外限定的ではあるが、バービの世界観を甘ったるいまでに具現化したセットも見るだけで楽しい。マーゴット・ロビーのバービーと>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

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黄色の小型車によるカーアクションやパラシュートで列車に飛び込んだ後のドタバタなど、アクションにスラップスティックをはっきりと組み込んだ演出が新鮮だった。
サイバー攻撃で味方の通信も撹乱されるカオス感も
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ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)

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ローズマリーが真実に気付いてからは脚本にドライブがかかるが、それまでは正直退屈な印象。自分の心情をいちいち口に出す主人公をはじめ、演出としてサスペンスを高める作りにはなっていないように見えた。

秘密指令(恐怖時代)/秘密指令 The Black Book(1949年製作の映画)

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サスペンスの数珠つなぎで一気に見せるのは最近の大作アクション映画の原型を想起した。(まさに追手から逃げるアクションもあり。)
鏡を使った二重化、クロースアップ(時に煽りで撮る)、奥行きのあるショット、
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巨人ゴーレム(1920年製作の映画)

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人物の顔のクロースアップが背景の黒から浮かび上がる場面はあるものの、陰影が活きることが少なく表現主義の作品と言ってよいのか疑問だった(辛うじて言うなら建物のセットか)。かと言って民衆の場面も迫力には欠>>続きを読む

シザーハンズ(1990年製作の映画)

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ゴシック的なお城で異形の者と少女が恋愛する話かと思っていたが、意外にアメリカの郊外でシザーハンズが暮らす、地に足のついた話だった。ウィノナ・ライダーの彼氏は物語を展開させる重要な役回りを担っているが、>>続きを読む

カリガリ博士(1920年製作の映画)

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歪んだセットは社会の不安感の表現に見えるが、最後の夢落ちを受けて主人公の不安感の表象だったと意味付けが変わる。後のフィルムノワールのような回想形式をとりつつ、それをさらに覆う現実世界が付け加わり複雑。

オズの魔法使(1939年製作の映画)

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正直心から楽しんだとは言いがたいが、セピア色からカラーになるシーン、扉を開くと向こうに鮮やかな外部が広がっていて、そこにカメラが寄っていくと後ろからカラーになったジュディ・ガーランドがフレームインして>>続きを読む

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)

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黒の衣装に包まれる死神の造形の喚起力が大きい。体が半透明になっている(二重焼き付け)死者の行列を含め、序盤の印象が強く残った。

チート(1915年製作の映画)

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暗闇の中で人物にだけ強く照明があたり闇に顔が浮かび上がるようになり、襖や牢屋の格子の幾何学模様が影として人物にかかる、明暗のコントラストが美しい。
裁判や民衆の暴動を描いたかなり初期の映画なのではと思
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夜ごとの美女(1952年製作の映画)

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原始時代や旧約聖書の過去にまで遡り、一気に現代まで(文字通り)駆け抜けるデタラメなシーンが印象に残った。
道路を介してアパルトマンが向かい合い、その一方の二階の窓から女が外を眺める構図を見ると、ルネ・
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アンナ・カレニナ(1948年製作の映画)

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やはり展開が早すぎるが、精神を擦り減らしていくヴィヴィアン・リーの姿だけで画面に惹きつけられる。最初の汽車の場面、アンナとヴロンスキーが、雪が降る中汽車のガラス越しに恋に落ちる(恋に落ちてしまったと明>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

『風立ちぬ』で「生きねば」と言っていたあの世界を崩壊させて、戦争の現実へと帰還するストーリーは、『風立ちぬ』の持つある種の欺瞞(これがあの作品の魅力たり得てもいるのだが)に対する自己批判と受け取った。>>続きを読む