ジャンさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

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メイド・イン・USA(1967年製作の映画)

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前半は、歌唱、アンナ・カリーナのクロースアップ、数字を巡る無意味な会話などが真相を追うメインストーリーを度々脱臼させるが、後半は意外なほど素直にストーリーが展開する。最終的に警察を殺害するに至る一連の>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

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序盤の段階で語り口や編集が苦手なことに気付いて気が遠くなる思いをしたが、途中から底抜けにナンセンスな展開が始まって少し持ち直した。ただ、結局は予定調和なエンディングに着地するし、そうするには身勝手な展>>続きを読む

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

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寝不足で最初の方の記憶がないのだが、ドラマが排除されたつくりは物語というよりお伽話である。室内で話をする二人の変わりばえしないシーンも逆に心地よかった。

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

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光源の光を確実に捉えつつ闇をも確実に捉えるロジャー・ディーキンスの撮影が冴え渡っている。オリヴィア・コールマンの実在感も見事に収まっている。
花火を見る二人を捉えるロングショットの幸福感も忘れがたい。
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あの頃。(2021年製作の映画)

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アイドルオタ特有なのか、この人たちだけなのか分からないけど、常識的な倫理のラインも踏み越えた特異な友情の関係だなあと思った。

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

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人間同士のコミュニケーションだけで構成されているのに、これだけ興味を惹き続けられるのは、見ているだけで幸福な人間たちの存在が映っているから。幸福な映画だ。

殺人者(1946年製作の映画)

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物語的にも重大な転機となる中盤の強盗シーンの長回しが出色。『黒い罠』も想起してしまうほどの完成度。回想形式の構造、悪女(ファムファタル)など、フィルムノワールのお約束がありながら、エヴァ・ガードナーの>>続きを読む

明日はない(1939年製作の映画)

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フイエールの顔を捉える陰影はフィルムノワールとしか言いようがない。嘘によって追い込まれていく主人公も、犯罪に手を染めて追い込まれるフィルムノワールの主人公とも重なる。最後に静物のショットが2つ挟まれる>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

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鏡やモニターによる二重化や映像のピンぼけが、虚実の転倒する不条理を表象しているわけだが、たびたび主人公に目薬を点眼させるのも含めて、計算が前面に見えてしまった気がしなくもない。
『めまい』や『裏窓』、
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かがみの孤城(2022年製作の映画)

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大人になってしまったので子供目線では観れないのだけれど、子供のことを子供の視点に立って理解できる、子供のことを子供として尊重できる作り手(原作者含め)の誠実さに胸を打たれた。

らせん階段(1946年製作の映画)

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クライマックスが出色。螺旋階段を撮るため(だけ)の映画であることはタイトルが宣言しているわけだが、螺旋形+高低差の舞台を活かしたカメラワークがサスペンスに直結している。拳銃を持った老婆がフレームインし>>続きを読む

マリヤのお雪(1935年製作の映画)

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官軍の侵入を受けた家の床下へとパンすると隠れている人物が映るという高低の構図は、『イングロリアス・バスターズ』のあの素晴らしいオープニングを想起せざるを得ない。そうなると、ブルジョワ一家と娼婦が馬車で>>続きを読む

貝殻と僧侶(1927年製作の映画)

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メリエスで見るようなトリック撮影が終始使われていて、それがこの作品のシュルレアリスムを支えている。窃視、部分対象、フェティシズムなど精神分析的なモチーフが中心になっているのも、シュルレアリスムの基礎に>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

黄金期ハリウッドをミハイル・バフチンのいうメニッペア的に表象するオープニングのパーティシーンが素晴らしい。フェリーニの『サテリコン』などにも通じてくるわけだが、主人公の男はスペイン系、ハリウッドの映画>>続きを読む

沈黙のパレード(2022年製作の映画)

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『真夏の方程式』を観てしまっているので、このくらいであればテレビドラマにしか見えない。北村一輝のやつれた演技が唯一印象に残る。

幕間(1924年製作の映画)

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アヴァンギャルド時代のクレール。YouTubeでそれらしいものを見つけて見たのでちゃんとしたものを見ているのか分からないが、円から線へ、そして円の回帰へとモチーフが展開される。銃を打つ男と浮かんだ風船>>続きを読む

忠次旅日記 御用篇(1927年製作の映画)

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パーツごとの連鎖でお話が進んでいくが、各パーツがそれぞれ生き生きとした技法に溢れていて観ていてずっと高揚感が続く。勘太郎に杖を渡すときの忠次の手のクロースアップに満ちた情動、お品が子分のうちの裏切り者>>続きを読む

忘れじの面影(1948年製作の映画)

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現在からの回想形式で語られる物語はフィルムノワールの定石であり、主人公2人のシーンは夜の暗闇など黒で占められている。背景の黒に浮かび上がる白色のジョーン・フォンテーンが忘れがたい印象を残す。聴覚(男)>>続きを読む

祇園囃子(1953年製作の映画)

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クロースアップでもないのに木暮実千代の苦悶の表情が圧倒的に迫ってくる。挨拶に回る2人を横移動で撮る瑞々しさや日本家屋をハッとするカット割りで撮る見事さは言うまでもない。飄々とした前半の若尾文子も素晴ら>>続きを読む

巴里祭(1932年製作の映画)

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オープニングの大胆かつ繊細な空間演出が素晴らしい。向かい合うアパートの部屋から睦まじい視線を交わす男女にうっとりしていると(ぐるりと大胆に一周するカメラワークも心地いい)、隣の部屋の祭り飾りが風に煽ら>>続きを読む

シコふんじゃった。(1991年製作の映画)

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描かれる登場人物の努力量と結果が対応していない気がするが、そんなことはさておいて主要な登場人物を皆好きになってしまうような細部に満ちていた。

ブラック・フォン(2022年製作の映画)

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Twitterでバズってた、お祈りメールをもらった数々の企業の思いを背負って面接に臨む就活生を見てる気分になった。

はい、泳げません(2022年製作の映画)

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主人公は哲学研究者という設定だが、まさに精神分析的なプロセスを通して主人公がトラウマを克服していく。人間の肺を満たし人の生命を奪うという水の自然的性質と、水中(=無意識)に潜ることでトラウマに向き合わ>>続きを読む

ニューオーダー(2020年製作の映画)

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露悪的な映画を撮るのは別にいいのだが、背景にある政治的認識も映画としてのショットの面白さも底の浅さしか見えてこない。前から合わないと思っていたけど、ミシェル・フランコはもう観ないかなあ。

ジョニー・ハンサム(1989年製作の映画)

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醜い顔の主人公が整形してハンサムな顔貌を得るという特殊な設定はあるものの、裏切られた主人公が復讐を試みるストーリーに主人公に心を寄せる女性が絡んでくるという王道設定。しかし二度の強盗シーンと最後の決戦>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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生きる目的のない主人公がボクシングと出会い、成長して、クライマックスには(勝つにしろ負けるにしろ)感動的な試合が待ち受けているような定型的な話を、まさか三宅唱が撮るわけないと思いつつ疑心暗鬼で観に行っ>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

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人は生きていれば思いがけず破壊的な出来事を経験することがあるが、その悲惨さを真正面で捉えつつ(何よりこの点が素晴らしい)、さらにその先へ進もうとする新海誠の姿勢に感動した。前作も前前作も評価していない>>続きを読む

ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

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黒沢清が何かのインタビューで、学生時代には「これは制度的じゃないか」とか言い合いながら映画を撮っていたと言っていたが、そうした知的環境の中で映画を実践的に撮っていた事実が色濃く出ている。
冒頭、勝手に
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愛のまなざしを(2020年製作の映画)

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精神分析的でありながら、人物同士の立ち位置がコミュニケーションを規定するという法則が人物を支配している(女が男の後ろに立つか、向かい合うか、横並びになるか)。そういう意味では『エル』や『めまい』を持ち>>続きを読む

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

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書店勤務をさぼった僕が店長と佐知子に鉢合わせた後、佐知子が僕の肘の辺りをつねって去っていくが、その後に彼らのそばの建物の中から外にいる柄本佑をやや距離をとって捉える長めのショットになる。このカメラ位置>>続きを読む

風の電話(2020年製作の映画)

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主人公のハルを演じるモトーラ世理奈に圧倒された。誰かを演じることでしか到達できない人間のリアルが画面にはっきりと写っていた。

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

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タル・ベーラらしい時間の流れ方が疲れた心に心地よかった。動物と化す主人公のシーンは露骨な印象を受けたけどまあよし。

逃げ去る愛(2018年製作の映画)

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たった7分間で水平・垂直の大胆な運動が展開され、それに伴い人物ももつれ合っては離れる運動を展開する。抽象空間に行き着いた三人による固定化された三角形もまた、一時的な均衡点に過ぎないのだろう。

三度目の、正直(2021年製作の映画)

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2時間弱でこれだけの人物のパーソナリティの深い部分や機微な部分まで表現するのは脚本、俳優、演出の素晴らしさだと思ったが、いっそ3時間超えの映画にしてもらってよかった。

ニューヨーカーの青い鳥(1986年製作の映画)

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関係の中でしか存在できない人間によるナンセンスな振舞いのエネルギーが極に達するスローモーションが見事。

死刑にいたる病(2022年製作の映画)

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人間の深淵を覗く怖さも超越的な殺人鬼を目にする怖さもなく、面会室のシーンの撮り方も作為が前面に出るばかりで退屈。詳しく書くのは控えるが、中山美穂の使い方は素晴らしかった。