蒸本整次郎さんの映画レビュー・感想・評価

蒸本整次郎

蒸本整次郎

正欲(2023年製作の映画)

4.8

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多様性。

社会に浸透してきてはいるが、
その実、当事者たちにしかわからない抑圧やストレスが当然根深くあるわけで。

そのしんどさに最大限の想像力を持ってまなざしを送り、
エンタメに仕上げたのがこの原
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花腐し(2023年製作の映画)

3.3

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強く印象に残ったのは
「ロケ地が抜群にいい」というところ。

注意書きやノボリ、
標識… よくある日本の雑然とした街並みが
映ることが皆無で、
静けさと寂しさを同居さけたような
さびれた景色が連続する
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春画先生(2023年製作の映画)

3.4

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コメディということになるのであろうか。
ここは笑っていいのか、笑う箇所なのか…
そう迷っている間に終わりを迎えた…
そんな印象であった。

前半の春画鑑賞の奥深さ、
その多面的な味わいを知れるところ
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

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プリシラ初登場シーンの圧倒的説得力に
心が捕まれる。

ロスト・イン・トランスレーションの

スカヨハもそうだったように
魅力的な人が魅力的に撮られ、
その最強のかけ合わせが
チカラを持ったワンショッ
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シティーハンター(2024年製作の映画)

4.0

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原作・アニメともにど真ん中からちょい外れた世代ゆえ、
ほぼほぼ未履修で鑑賞。

小気味よいテンポとリョウの魅力的なキャラクター。
パブリックイメージをそのまま具現化した手腕はさすがという印象。

小気
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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

5.0

原作未読、
予備知識ほぼゼロで鑑賞。

アニメーションだから成立する————。

これを120%詰め込んだ
完膚なきまでの傑作であった。

おんたんの突飛でキャッチーな言葉のチョイスも
あのビジュアル
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

3.7

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今更ながらに初見である。

全体の印象としては
日本人だからゆえか
主人公にイマイチ感情移入できず、
最後まで散文的な
どこかショートエッセイの段積みのような
そんな印象のまま終わってしまった。

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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

5.0

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監督の手のひらの上で
転がされる心地よさ————。

鑑賞後の印象はまさにそれだった。

例えば、
ラストの別れのシーン。

UBERとの待ち合わせ場所までの
家からのストローク。

あの歩きのフ
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

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本作の軸は「公聴会」である。

ともすると、
座って自分の主張を力説している連中を
ただ見ているだけになりかねないワケだが
さすがはノーラン監督である。

インセプション、
インターステラー、
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

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ゼンデイヤがデカ目の
ランチャーをぶっ放して
敵機を撃ち落とすあの場面。

映画をスクリーンでみ観る喜びと意味が
凝縮されているようで
思わず胸が高まった。

さらに、
ドラゴン・タトゥーの女でもそ
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.3

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前フリを丁寧にして
ラスト前のピークとなる場面を盛り上げる。

その基本が改めて大事だと気付かされる構成。

わかっていても胸が熱くなる、
シャラメとゼンデイヤの邂逅。

ハイスピード多用が
尺を伸
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.8

「面白さ」

一言で言ってもその種類は
いろいろあって、
単純に笑えるも面白いし
興味深いも面白いし
驚きや発見があるのもまた面白い。

で、今作も面白かったのだが、
その種類は味わったことのない種類
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

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映画体験で大きなウェイトを占めるのはというのは、
「約2時間、日常ではないどこかへ連れて行ってもらえる」
という事だとは思うだが、
こと、この作品においてはその要素が強い。

ベラの旅を見守り、笑い、
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

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説明的でなく、
観客に気づきの余白があることが
いかに素晴らしいことか。

それを改めて体感させられた。

カメラは美しい構図でとどまりつづけ、
クローズアップは必要最低限。

ここが盛り上がりどころ
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パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

4.2

公開から26年。
なのにこの緊張感とエンタメ性には舌を巻く。

虚実を行き来するストーリーテリングと
巧妙なミスリード。

過激なシーンが注目されがちだが、
その構成とストーリーのドライブこそ目をみは
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(2023年製作の映画)

3.9

これまで見たこともない時代劇。

北野武監督から見ると
歴史物は笑いの宝庫であったか。

人とは異なるその視点に
感銘を受けた。

わかりやすい起承転結のポイントが
あるわけではないのに
2時間越えの
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ムーンライト(2016年製作の映画)

3.8

観客を信じて託すかのような
行間と余白の設け方。

大きなドラマはないにせよ
心情に寄り添い、想像力を働かせ
結末まで見守る感覚は、豊かな鑑賞体験と感じた。

どうしようもなさと
やるせなさと
抗えな
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あげまん(1990年製作の映画)

4.0

随所に仕掛けられた
赤の差し色の効果に唸る。

鳥居、絨毯、着物、橋。

芸者の派手ながら狭い世界と
銀行を繋ぐのは、共通する赤い色。

狭い世界の描写になりがちなところを
絵の力で巧妙に繋ぎ合わせ
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

5.0

90分という理想的な尺に
見事に詰め込み、畳んだ構成力。

あの頃、コントローラを握って
熱中した経験が
ストーリーに乗って気持ちを熱くする。

スーパーマリオという題材だからこその
自分の経験を重ね
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終わらない週末(2023年製作の映画)

4.5

驚異のバランスだ。

訳わからなさと面白さの塩梅が
絶妙なのだ。

謎めいた出来事が乱立していくが
それ自体が訳わからなすぎて
置いていかれるわけではなく
しっかり謎として機能し
展開していく。

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ディアボロス 悪魔の扉(1997年製作の映画)

3.0

なんだこれは…と思いながら
結局観てしまえる2時間半。

はっきりビジュアルで出てくる
恐怖シーンまで結構尺があるのだが
ずっとなんとなく不気味なので
気づけば乗せられている。

その辺の匙加減は絶妙
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BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)

4.0

閉ざされた世界への
興味•関心は
観る者を前のめりにさせる。

このことは普遍的ではなかろうか。

それが世間を賑わす
黒い犯罪なら
なおさらであることは明白。

隠されたものは観たい。

その点で特
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.1

これぞ映画体験!
そう思える迫力満点の大作であった。

これまでのゴジラ映画からさらに一歩踏み込んだ恐怖演出が顕著で見応えあり。

IMAX鑑賞ということも相まって、
実際にあの喧騒の中に自分がいるよ
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

4.2

ルックが洗練されていることなどは
フィンチャー作品として当然として、

今回強く感じたのは
「無駄のない編集」の妙である。

主人公の行動の理由を
一瞬のワンカットで分からせる
あとからの短いカットで
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べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

3.8

言わずもがなの見どころは
アクション。

かっこいい格闘と
銃さばきは
ずっと観ていたい気持ちにさせられる。

一方でのゆるめのコメディパート。
アクションとのバランスも程よく
散りばめられていたが
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コカイン・ベア(2023年製作の映画)

3.9

行ききってるとはこのことか。

残酷表現も妥協しない
エリザベス・バンクス監督の
ブレのなさに拍手。

一方で悪趣味一辺倒ではない
親子の普遍的な絆に光を当てるなど
そのバランス感覚は出色。

ある種
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ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994年製作の映画)

3.7

高校生時分以来の鑑賞。

こんなに遊び心と
ブラックユーモアに溢れていたのか!
という印象だった。

特にトミー・リー・ジョーンズのハジけっぷりは出色。

120分ハイテンションで
強引に突き抜けるパ
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バレリーナ(2023年製作の映画)

4.0

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ストーリーに複雑なところはひとつもない。
謎解きもなければ、
これ言った伏線回収もない。

ただ無茶苦茶に面白い。
魅力的なルックとアクションと
驚きに満ちたアングルと
リズミカルなエディットで
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Winny(2023年製作の映画)

4.2

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実際の事件に基づく話は
結末が観客に明らかな状態で始まるので
いささか予測不能という麺では不利に思える。

しかし、今作は
結末に至るまでの過程と心情を丁寧に紡ぎ
技術者・金子勇のストイックな面と
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竜二(1983年製作の映画)

4.5




決して派手さはない
渋く静かな物語ではあるが
その抑えた演出が功を奏し
全編に渡って寂しさと悲しみを感じ
ラストシーンにいざなわれていく。

単純な捉え方をすると
勝手な元ヤクザの男の話だが
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ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)

4.0

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観客を飽きさせない
起承転転転結を感じる展開。

4つの蔵を順に消化していく
単純な構成ではなく
(原作未読なのでアレンジなのかは不明)
少しづつキーポイントを明らかにしてゆく展開は
前のめりに
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バービー(2023年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

キラキラでポップな世界を
最初から最後まで通底させる
コメディムービー。

しかし、
その上に重ねるレイヤーは
コメディの枠を超え
今という時代を想像させる社会描写だ。

バービーランドと人間社会の
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