TaTさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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ビフォア・ザ・レイン(1994年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

3部構成でマケドニアとアルバニアの民族紛争を描いています。

言葉、顔、写真。それぞれの章が死で終わりながら、意図的にずらされた循環と変化、憎しみの中に物語が置かれている。
「時は死なず、巡ることなし
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去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.3

広大なバロック調のホテルで、1年前の愛の記憶を語る男とその記憶のない女、現実を教える女の夫という関係性を哲学的に描いた話。
記憶によりなぞられるストーリーの不確実性、入り乱れる時系列が現実と虚構の境界
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アルファヴィル(1965年製作の映画)

4.6

異国から来た人間がシステムにより統合され自己を失った社会と葛藤する話。

「なぜとは何か?」
 疑問を持つことをやめた人間たちの社会への服従が本質に迫るには疑問が必要だと教えてくれる。物事を捉える力の
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ヴァンダの部屋(2000年製作の映画)

4.0

リスボンのスラム街が舞台のドキュメンタリー。

汚れた部屋、戸口に立つ人、通り過ぎる人などカメラが何かを追うわけでなく、ただ荒んだ日常の陰影を切り取るスタイルが中々印象的(多少の演出はありそうですが)
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リリーのすべて(2015年製作の映画)

4.3

トランスジェンダーなんて言葉もない時代に、女性(女性としての名前はリリー)に目覚めていった画家のアイナーが理解のない現実を突きつけられる姿は不条理そのもの。 
夫婦間の摩擦など、性同一性障害を描いたド
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ラ・ピラート(1984年製作の映画)

4.4

望む愛と望まれる愛、裏切りと咎。男と女の愛の形の違いに揺れ、良心と悪徳のような少女と男に惑わされる。たどり着いた結末は凡庸だけれど、それ以外には考えられないよなと思った。

薄汚れたトイレでナイフを振
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他人のそら似(1994年製作の映画)

4.0

自分のそっくりさんに振り回される災難を描いた話。登場人物はみんな実名でドキュメンタリー風なインタビューまで交えて現実と虚構(映画)をこねくり回してる。

偶像的な扱いをされる俳優、スターとしての生活や
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マラノーチェ(1985年製作の映画)

3.5

メキシコ人の青年に恋する男の話。自由になりたい青年と自由でいたい青年、生活の中の男。閉塞感ある日常と間違え続ける男たち。同性愛に感情移入はできないけれど、この日常の感触は嫌いじゃない。

さよなら子供たち(1987年製作の映画)

4.0

少しずつ打ち解け始めた純粋な少年たちの心をぶった切るような社会の非情さがやるせない。まだあどけない分感情が逆にくっきりと浮かび上がってくるラストに言葉が出なかった。

カラマリ・ユニオン(1985年製作の映画)

4.7

アウトローがカッコいいわけではなく、既製の世の中に疑問を投げ続ける姿勢とスタイルの提示に惹かれるのだろう。

人は死んでいくけれど、それによって生を撫で付ける。

世の中の軽薄さを暴いてくれる画も音楽
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小さな悪の華(1970年製作の映画)

4.1

15歳の少女二人が好奇心と悪徳への情熱を燃やす話。
キリスト教への当てつけのような掟やぶりの数々と大人をからかう姿に苦笑い。でも、清々しいほどの世の中への復讐はとても鮮烈。

テス(1979年製作の映画)

3.4

ナスターシャ キンスキーは可愛いけれど、どうにも長く、悲劇というにはあまりに稚拙。貞淑とは程遠い気がした。品を感じる美術と衣装は良かった。

太陽に灼かれて(1994年製作の映画)

4.3

娘役のナージャのなんと可愛きことか!その可憐さとコトフ大佐とのやりとりが微笑ましい。

あと、ドミトリがガスマスクを嵌めながら狂ったように弾く「天国と地獄」がね。その後の粛清を予期させる不穏さを帯びて
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

4.6

浜辺に置き去りにされたピアノから始まる端正な美しさと感情の話。異国と原住民に慣れ親しむことができない女とその隙間に入り込んだ男は、美しきピアノの旋律と共に抑えることのできない衝動に駆られる。

森、海
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ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

4.5

廻り合わせとか運命とか好きなのかこの監督。幻惑的な光とガラス玉越しの映像とベロニカが歌う歌曲。ああもう全部が美しい。お互いが感じる予感と二人のすれ違いも現実を軽く通り越したロマンに溢れてて引き込まれた>>続きを読む

モスクワは涙を信じない(1979年製作の映画)

4.0

3人の女性が辿った運命の話。ハッピーエンドなロシア映画は初めて見たかもしれない。もちろんそこまでの苦節と虚しさと時代の歪みがあればこそなのだけれど、思わず泣いてしまった。

愛は死より冷酷(1969年製作の映画)

3.8

白を基調とした世界に映える黒と長回しの多用による洗練された世界は長編処女作とは思えない。
ああ主演のこの人がファスビンダーなんだ。どうりで。悪くはなかったのだけれどもうちょっとスタイル良い俳優使った方
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

3.6

スピリチュアルな世界、自然への回帰、因果の表現にしても猿の惑星みたいな赤目の猿人間にはリアリティ削がれたな。
観念的世界は難しく、最後のパラレルワールドの意味も読み解けなかった。でも、森とか滝とか洞窟
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忘れられた人々(1950年製作の映画)

4.0

稚拙な反抗の裏にある時代の乏しさが生々しい。盲目の老人と足のない男への仕打ちはね...。
スカしたクズはやっぱり最低だ。そこに思想も反抗もなくあるのは欲望と浅はかさだけだったな。

ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ(1975年製作の映画)

3.6

ジェーン バーキン初見。なるほど、あまり好みではなかったなー。
ゲイの男とのセックスもそうなるよな。可愛らしくもエロい世界と二人のズレた微妙な空気が魅力的。何度も宿追い出される姿には笑った。
男のゴミ
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悲しみのミルク(2008年製作の映画)

4.3

ペルー映画と侮っていたけれど、画の作り方と写し方がとても美しい。 

話はレイプされた過去を持つ母親に育てられたことによって、レイプされないよう膣にじゃがいもを埋め込んでしまった娘の話。少し馬鹿げては
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ライブ・フレッシュ(1997年製作の映画)

3.8

暴発した1発の銃弾をきっかけに男女5人の間で欲望がグルグルと回る話。 

男の奪い合いはない分ストレートな女性の感情と姑息な男たちの執着が際立つ。主人公と憧れていた女とのセックスシーンが綺麗だった。 
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アレックス(2002年製作の映画)

4.0

序盤ブレながら回る映像と唸るような低音に酔いそうになったけれど、視点が定まってからの陰惨さに度肝抜かれた。なんて悪趣味な。赤く暗い世界がもはや何のメッセージ性もないくらいに醜悪に突っ走る。この感覚的世>>続きを読む

ムースの隠遁(2009年製作の映画)

3.4

ヘロイン中毒のカップルの男が死に残された女が妊娠していたという話。 

葬式に豹柄のコート着て参列、妊娠中にクラブ行って産んだらすぐ逃避行っていうとんでもない主人公。世の中とのズレゆえの隠遁なんだろう
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ある子供(2005年製作の映画)

3.8

自分の子供を初めて抱き抱えた時がその子供を売って金に変えようとした時なんて皮肉過ぎる。タイトルの「ある子供」は主人公のことなんだろう。
子供のような大人の無責任さと空の乳母車を押して歩く痛々しさ。切羽
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ガーデン(1995年製作の映画)

4.3

思想、哲学、宗教を交えながら描く世界の程よいユルさと美しさ。

主人公の名前がヤクブだから宗教っぽいと思ったけど聖書に出てくるのはヤコブだった笑 関係ないのかな。羊とか聖人とかエデンの果実とか宗教的メ
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ネクロマンティック1[完全版](1987年製作の映画)

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久しぶりにギブアップ。美的完成度のない悪趣味さはキツイ。

ひとりで生きる(1991年製作の映画)

4.4

胎児手術、裂かれる豚、焼かれる鼠、石を投げつけられる狂人とか繰り返される負の連続。ただでさえ荒廃したように見えるロシアなのにその世界感もどこまでも冷たい。でも、その冷たさと重苦しさに浸ってると貧しさと>>続きを読む

ツバル(1999年製作の映画)

4.4

とりあえず舞台のプールの退廃的美しさにすごく惹かれた。作り込まれた世界はウェス アンダーソンに似たものを感じたけれど、会話なかった分だけ映像にのめり込める。 
そのプールが作り出す幻想的で非現実な世界
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狂気のクロニクル(1964年製作の映画)

4.1

アニメーションと実写を混ぜた世界がシュール。でも、ヤンシュバンクマイエルみたいに毒々しい感じでなく、ファンタジー寄り。 

風向きでコロコロ変わる戦況と周囲の態度だったり戦いよりパンとスープを選んじゃ
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動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)

4.5

「動くな、死ね、甦れ!」何て無茶ぶりなタイトルだ!と思っていたけれど、子供にとっては戦時中の貧しい世の中、与えられた環境なんて無茶ぶりに等しい。貧しいから自分でお茶売って金稼ごうとかすごい健気。イタズ>>続きを読む

プラハ!(2001年製作の映画)

4.0

パステルカラー、バイカラーで彩られた世界がポップで可愛らしい。主演の子も美人だし、奔放だけど愛のある父親との関係性も良い。

ただのガールズムービーで終わらず、時代の波に呑まれ悲嘆に暮れる恋ともの悲し
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はなしかわって(2011年製作の映画)

4.2

やさくれてて自分のことには無頓着だけれど、器用で他人に対しては誠実な男の話。どこかジムジャームッシュに似てるような空気を感じたけれど、それよりは現実寄り。

何てことない日常は曖昧で殺伐としていたけれ
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私が、生きる肌(2011年製作の映画)

4.1

過去の幻影への固執から憎しみを愛に変えてしまった男の悲しい末路...。その過程も監禁して観察という中々の異常さを見せてくれます。 

姿形を変えたところで実体は掴めないし、切って貼って作った人間が相手
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アンチクライスト(2009年製作の映画)

5.0

美しく狂ってる。おぞましいほどの負に目を背けたくなるシーンもあったけれど、同時にやってくる高揚感のほうが圧倒。 

夫の足に穴空けて重り付けちゃうとかなかなかできることじゃない。地獄の蓋でも開けたよう
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カルネ(1994年製作の映画)

4.1

馬肉はその色と安さから軽蔑的な意味も込めて「カルネ」と呼ばれるそう。物語的には「カノン」の序章になってます。 

馬肉の浅黒い赤が象徴するような父親が持つ血の繋がりへの執着と周囲への冷めた憎悪。娘が体
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