うえびんさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

うえびん

うえびん

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ブリキの太鼓(1979年製作の映画)

4.2

アジール

1979年 西ドイツ/ポーランド作品

原作はノーベル賞作家ギュンター・グラス。

物語の語り手・オスカルは3歳で自らの成長を止める。成長をやめたオスカルは、家族や地域や社会の傍観者として
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魚影の群れ(1983年製作の映画)

3.7

海と共に生きる

1983年 相米慎二監督作品

年明け、豊洲市場の初競りで、238kgの青森県大間産のクロマグロが1億1424万円もの高値で競り落とされたそう。その金額の大きさにもびっくりしたけれど
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ヘアスプレー(2007年製作の映画)

4.0

デュアリティ

2007年 アメリカ作品

1960年代のボルチモア。ハイスクールに通うトレーシー(ニッキー・ブロンスキー)は、憧れの人気番組『コーニー・コリンズ・ショー』に出演して踊ることを夢見て奮
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スワロウテイル(1996年製作の映画)

4.1

違和感が調和する

1996年 岩井俊二監督作品

YEN TOWN BANDの『スワロウテイルバタフライ~あいのうた~』は、空で歌えるほどよく聴いたけれど、その曲がテーマの映画を観たいと思うことはな
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.4

馬心と秋の空

2022年 ポーランド作品

赤と黒の2色を基調にした映像は、アート的で美しい。ロバのEOが主馬公なので、馬の視覚に合わせた色調かも?と思って調べてみると、人間が赤・青・緑の三原色で色
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.3

ここではない 何処かへ

2021年 ロシア/フィンランド作品

時は1990年代

モスクワ
→サンクトペテルブルク
→ペテロザボーツク
→ムルマンスク
総移動距離約2000kmのロードムービー
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バベットの晩餐会(1987年製作の映画)

4.0

生命をつなぐ信仰と食

1989年 デンマーク作品

静かで、穏やかで、暖かい

デンマーク(ユトランド半島)の
小さな漁村

村民たちの慎ましやかな暮らし

村民が集う教会
皆で歌う賛美歌

神の教
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1秒先の彼女(2020年製作の映画)

4.0

時の速さで

2021年 台湾作品

人よりテンポが早いことで何かを逃し続けてきたシャオチー。彼女は、消えてしまった一日を取り戻す旅に出る。

反対に、人よりテンポが遅いことで何かを逃し続けてきたグア
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.1

地平線の彼方へ

2010年 アメリカ作品

西部劇の概念が覆される作品

空と大地
ただただ黙々と歩く人たち
幌馬車を引く水牛と馬…

一場面一場面が絵画のように美しい

激しい戦いが無い
誰も死な
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(2023年製作の映画)

4.0

おかしみ

2023年 北野武監督作品

“首”というより“顔”。映画やテレビでよく見知ったインパクトの強い顔たちが、歴史上の有名な人物を楽しそうに演じている。一流の役者ばかりなので、どのシーンも強く
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オフィサー・アンド・スパイ(2019年製作の映画)

3.4

ヒゲと軍服

2022年 イタリア/フランス作品

19世紀末のフランスでユダヤ系軍人が冤罪で投獄された「ドレフュス事件」が、丁寧な時代考証や映像で描かれている。

【ドレフュス事件】
1894年、フ
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The Witch/魔女(2018年製作の映画)

3.6

血まみれ
血みどろ
血だらけ

2018年 韓国作品

冒頭の静かながらに激しいシーン。そこからの平穏な生活のシーンに、何かが起きそうな気配がヒシヒシと感じられる。そして中盤から後半にかけての畳みかけ
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Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

4.3

ボディブローのように

1996年 北野武監督作品

引き算の美学

セリフの少なさは
俳句の切れ字効果のよう
画が多くを語り出す

シンセサイザーを基調にした独特の音楽が
登場人物の心情を繊細に映し
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イカとクジラ(2005年製作の映画)

3.4

子の心、親知らず

2005年 アメリカ作品

夫婦のいがみ合いからの始まり。『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック監督。こちらの作品も『マリッジ~』同様、夫婦の離婚劇とそれに巻き込まれる子ども
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ノマドランド(2020年製作の映画)

3.9

また逢う日まで

2020年 アメリカ作品

今日の朝刊に「GDP 独に抜かれて4位、インドも迫る」との見出し。記事には、“国際通貨基金(IMF)の予測で、2023年の日本の名目GDPは前年比0.2%
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MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

4.3

野生の眼差し

2019年 コロンビア作品

何だか
とてつもないものを観てしまった
いや、魅せられてしまった

猿(モノス)と呼ばれた
8人の若き兵士たちの物語

桃源郷のような山岳地帯
密林や河
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アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台(2020年製作の映画)

3.9

演じるということ

2020年 フランス作品

人生崖っ淵で、何もかも上手くいかない俳優のエチエンヌ。彼にめぐってきた大仕事は、塀の中の受刑者たちに演技を教えて更生させること。サミュエル・ベケットの『
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近松物語(1954年製作の映画)

4.0

色褪せないもの
失われてしまったもの

1954年 溝口健二監督作品

今から70年前の作品
脚本は近松門左衛門の『大経師昔暦』
井原西鶴の『好色五人女』の一部
二つを合体させたもの

舞台は江戸時代
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由宇子の天秤(2020年製作の映画)

3.9

真実を伝える

2020年 春本雄二郎監督作品

ドキュメンタリータッチの作風に、最初から最後まで惹き込まれました。事件の遺族への撮影やインタビューの場面、家族の団らんの場面、テレビ局の会議の場面…、
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薔薇の名前(1986年製作の映画)

3.7

ふしぎなキリスト教

1986年 フランス、イタリア、西ドイツ作品

娘が高校の倫理の先生からのおススメで借りてきた作品。おどろおどろしい洋画が苦手だから、代わりに観て感想を聞かせてほしい、と。初めて
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フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

3.8

走る、走る
語る、語る
アメリカ

1994年 アメリカ作品

公開当時以来の鑑賞。自分自身が若く無知だったこと、その目にはアメリカ社会がとても華やかに映っていたことが思い出された。それから約30年、
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.0

狂信・盲信?

2022年 アリ・アッバシ監督作品

2000年から2001年にかけて、イランの聖地マシュハドで、実在の殺人鬼“スパイダー・キラー”(サイード・ハナイ)によって起こされた娼婦連続殺人事
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彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

4.0

◯の受容

2021年 フランス作品

母・クラリス(ヴィッキー・クリープス)
少ないセリフ
抑えた演出の中
微細な感情表現に魅せられる

喪失感
絶望感
虚無感
寂寥感…

現在と過去
こちらの世界
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オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)

3.3

生理的な嫌悪感

2000年 チェコ作品

不妊に悩むホラーク夫妻
赤ん坊の形に削られた切り株

いのちを持った切り株は
オラークと名付けられ…

いのちをつなぐ
食物・植物・動物

全てが何だか気持
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息もできない(2008年製作の映画)

4.3


怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
哀哀哀


2008年 韓国作品

最初から最後まで激しく感情が揺さぶられる。暴力に始まり暴力に終わる。怒りと哀しみの嵐、喜びや楽しみはほんの少し。サンフン(ヤン・イクチュ
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ホテル ビーナス(2004年製作の映画)

3.0

汚れちまった悲しみに

2004年 タカハタ秀太監督作品

〇〇っぽい映画
〇〇に入る言葉が出てこない

心に傷を負った人たちの群像劇

心の傷を
外側から描くのか
内側から浮かび上がらせるのか
どっ
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アバウト・タイム 愛おしい時間について(2013年製作の映画)

3.9

日々是好日

2013年 イギリス作品

“タイムトラベル”という能力を手にした青年・ティムが、時間を何度も遡って、本当の愛や幸せとは何かに気づいていく成長譚。

人生のやり直し。前半のティムのタイム
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浮き雲(1996年製作の映画)

3.7

感情の炙り出し

1996年 フィンランド作品

1シーン1シーンの短さ
しっかりめの暗転
いろんなBGM
少ないセリフ
表情に乏しい演技

初めてのアキ・カウリスマキ監督作品

独特な作風は
最初は
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ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)

4.0

自分の身は自分で護る

2013年 アメリカ作品

想像していたより重いテーマの社会派の作品で見応えがありました。

1980年代後半にHIV陽性患者として余命宣告を受けたロン・ウッドルーフの半生を元
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

3.9

支配と従属

2021年 アメリカ/イギリス作品

重厚で見応えのある作品だった。1つの事件を3人の視点から描き出す3部構成は、黒澤明監督の『羅生門』が踏襲されている。

舞台は14世紀のフランス、英
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うなぎ(1997年製作の映画)

3.8

水に流す

1997年 今村昌平監督作品

不倫した妻を殺し、人間不信になってしまった山下(役所広司)。服役後、小さな床屋を営む彼は、ペットとして飼っているウナギにだけ心を開く。そこへ舞い込んだ桂子(
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.4

私たちは何に隷属しているのか

2022年 スウェーデン作品

北欧の映画独特の間と皮肉がとても面白かった。前情報を何も知らずに観ていたら、どこかで見たことがある雰囲気だと感じて監督の作品を調べると『
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君だけが知らない(2021年製作の映画)

3.5

殺し合い、救い合う

2021年 韓国作品

全般、静かなトーン。シリアスな内容の割に心地いい。現在から未来、そして過去が少しずつ蘇ってくるという展開。最初は強引に感じられたものの、最後に全ての謎が解
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インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)

3.5

東スラブ人の還る場所

2021年 ロシア作品

2004年ロシア
1974年ソビエト

インフルエンザの流行
現実と妄想

主人公ペトロフ
飛び乗ったバスに誘われ
めくるめく世界へ

「統治を中心に
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スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

4.1

被害者にも加害者にもならないために

2015年 アメリカ作品

2002年1月に、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の一面に全米を震撼させる記事が掲載される。地元ボストンの数十人もの神父が児童
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オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)

3.7

繰り返す

1994年 イラン作品

『友だちのうちはどこ?』
『そして人生はつづく』
アッバス・キアロスタミ監督
ジグザグ道三部作の三作目

前二作に通じる
飾り気もない映像
繰り返されるカット
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