うえびんさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

うえびん

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ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)

4.0

コックピットの中の孤独と恐怖

2013年 アメリカ作品

F1マシンのコックピットは「走る棺桶」とも言われるそう。ほぼ地面に対して水平、最低地上高6cmのすれすれのドライビングポジションで、時速30
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バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>(1987年製作の映画)

4.3

愁いを奏でる

1987年 西ドイツ作品

前に観たのは学生時代だっただろうか。テーマ曲の「コーリング・ユー」だけは鮮明に覚えていた。物語は全く覚えていなかった。今回は物語も心に響いた。

異国の僻地
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二十四の瞳(1954年製作の映画)

3.9

学びを起動させるもの

1954年 木下恵介監督作品

『昭和のエートス』(内田樹著)

▶『二十四の瞳』は高峰秀子演じる小豆島の分教場の大石先生と子どもたちの戦前戦中の心の交流を描いた佳作である。私
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鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

4.2

噛み合う歯車
嚙み合わない歯車

2013年 イタリア作品
英題:The best offer

『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』のジョゼッペ・トルナトーレ監督・脚本作品。全体のバ
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マイ・バッハ 不屈のピアニスト(2017年製作の映画)

3.7

稀代のピアニスト
自らの人生を弾き語る

2017年 ブラジル作品

ジョアン・カルロス・マルティンス(1940-)
「傷だらけの名演奏家」と呼ばれたピアニスト。成功と挫折、再起と苦悩、波乱万丈の人生
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土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)

3.9

タオの人

2022年 中江裕司監督作品

『タオー老子』(加島祥造著)

▶飯だけはたっぷり喰う

世間が
頭のいいやつを褒めるもんたから
ひとはみんな
利口になろうとあくせくする。
金や宝石なんか
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キャロル(2015年製作の映画)

3.7

年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず

2015年 アメリカ作品

1950年代のニューヨーク
セットも衣装も小道具も
一場面一場面
映像が美しい

ストーリーも音楽も
ゆったりして心地いい

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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.2

なんじゃこりゃ?

2022年 アメリカ作品

監督のやりたい放題。現実には起こり得ない世界の映像化は好きなんだけれど、それにしても…。

時間と空間の超え方が忙しくて目が回る。カンフー・アクションや
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her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

3.3

無分別の世界

2013年 アメリカ作品

妻と別居し、離婚調停中のセオドア(ホアキン・フェニックス)は、自分を責めて絶望の中にいた。そんな彼が、人工知能のサマンサ(声のみ:スカーレット・ヨハンソン)
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ロストケア(2023年製作の映画)

3.7

介護と悔悟

2023年 前田哲監督作品

殺人犯のシバ(松山ケンイチ)と検事のオオトモ(長澤まさみ)の事件を巡る攻防戦は見応えがあった。ずんのやすの演技、初めて見たけど気のいい人オーラがほとばしって
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別れる決心(2022年製作の映画)

3.4

昭和歌謡
のようなもの?

2022年 韓国作品

ストーリー展開も、現在と過去や夢が入り交じる映像も、カメラワークも、BGMの選曲も音のトーンも、演技もセリフも。

全てが、自分の感覚とズレて感じら
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金の糸(2019年製作の映画)

3.8

過去→現在→未来
未来→現在→過去
過去の超え方

2019年 ジョージア/フランス作品

かつて「グルジア」と呼ばれた国
ジョージア

「グルジア」はロシア語
「ジョージア」は英語

帝政ロシアから
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

魂をめぐる冒険

2023年 宮﨑駿監督作品

東京大空襲
猛火で最愛の母を喪い
東京から焼き出された
少年・眞人(まひと)

疎開先
父の経営する軍需工場
新しい母・ナツコ

多感な眞人
この世の新
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プリズナーズ(2013年製作の映画)

4.0

正義のための暴力の末

2013年 アメリカ作品

『灼熱の魂』『ボーダーライン』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品は、冒頭からグッと作品世界に惹き込まれ、ずっとひりひりとした緊迫感が続き、はらはらする
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プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)

4.1

旅は道連れ 世は情け

2021年 タイ作品

友情と恋愛、愛情のもつれやあれこれ。ウードとボスの二人が、旧いクラシックカーのカーステレオでカセットテープを聴きながら、タイの各地を巡る旅。

異国情緒
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戦争と女の顔(2019年製作の映画)

3.9

この世界から戦争を無くすこと

2019年 ロシア作品

1945年レニングラード
(現サンクトペテルブルク)

第二次世界大戦の独ソ戦の中心地
市民の死者は100万人以上
主な死因は餓死と言われてい
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ある男(2022年製作の映画)

4.0

“本当の自分”とは何か

2022年 石川慶監督作品

原作の著者・平野啓一郎さんは「分人主義」という概念を提唱しています。

「分人主義」公式サイトより

▶「分人dividual」とは、「個人in
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崖上のスパイ(2021年製作の映画)

3.6

明けない夜はない

2021年 中国作品

舞台は1934年、冬、満州国のハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた共産党スパイ・チームの男女4人が、極秘作戦「ウートラ計画」を実行するために現地に潜入する。目的
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.2

おもてなし

2014年 ドイツ/イギリス作品

カラフルで統一された色合い、計算された構図、印象的な小道具、この独特な世界観は大好きです。鑑賞のひと時を異世界に誘われた感じです。

ストーリーもじっ
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椿の庭(2020年製作の映画)

3.4

眼に、耳に触れ
心に去来するもの

2020年 上田義彦監督作品

藤、椿、つつじ、紫陽花、牡丹、松、笹、すすき…

春夏秋冬、四季折々の花たち

金魚、蜂、カマキリ、蛙、蜘蛛、蝶、蝉、ヤモリ…

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マンディンゴ(1975年製作の映画)

3.6

自由の国で自由を奪われた人びと

1975年 アメリカ作品

マンディンゴとは、南北戦争前のアメリカ南部で、白人たちが最高の黒人奴隷としていた種族、“血統”のこと。舞台は、南部ルイジアナ州の“人間牧場
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

静かに燃える

2019年 フランス作品

18世紀末の女性画家と
伯爵夫人となる運命の女性の物語

一場面一場面が絵画のようで美しい

絵のフレームのような
美しい構図

絵を描くときのように
研ぎ
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羅生門(1950年製作の映画)

3.6

生きる

1950年 黒澤明監督作品

『怪物』(是枝裕和監督)のレビューに「羅生門スタイル」という言葉が散見されたので気になって鑑賞。一つの事件を複数の関係者が語る手法は、現在では『怪物』でも世界中
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ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.0

境を越える

2015年 アメリカ作品

麻薬カルテルを潰すために、FBIの常識を捨て、超法規的措置の世界に足を踏み入れた女性捜査官ケイト。その心中の葛藤とアメリカとメキシコとの国境で繰り広げられる抗
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英雄の証明(2021年製作の映画)

3.8

火のない所に煙は立たぬ

2021年 フランス/イラン作品

ソーシャルメディアによって、平凡な一般人が一夜にして英雄に祀り上げられ、それを証明しようと奮闘した結果、一夜にしてペテン師に落ちてしまうと
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さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について(2021年製作の映画)

3.6

祖国愛

2021年 ドイツ作品

エーリッヒ・ケストナー(1899-1974)
『飛ぶ教室』などの児童文学で有名な詩人・作家の成人向け文学が原作。

1931年のベルリンが舞台。第一次世界大戦で敗戦
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42〜世界を変えた男〜(2013年製作の映画)

3.7

ヒーロー

2013年 アメリカ作品

3ヵ月前、神宮球場でヤクルト対広島の開幕カードを観戦した。WBCでの侍ジャパンの優勝の余韻が残る中、村上選手など、間近で観るプロの選手たちの真剣なプレーに胸が踊
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.2

面白さは寄生する

2020年 韓国作品

前半のコメディタッチ、後半のサスペンスタッチ、物語の背景に描かれる社会問題、一つの作品の中にこれだけ多くの要素がバランスよく盛り込まれた作品はめずらしい。
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フォロウィング(1998年製作の映画)

3.7

事実は小説よりも奇なり

1998年 イギリス作品

小説のアイデア探しのため
見知らぬ人を尾行する
作家を目指す男 ビル

ある日、彼に尾行され
それに気づいた男 コッブ

尾行が趣味のビル
空き巣
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青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)

3.5

変わらぬ自然の営み
変わりゆく人の営み

1993年 フランス/ベトナム作品

1951年ベトナム、サイゴン市
奉公人として雇われた10歳の少女ムイ

リリリリリリ…(鈴虫の音)
チュンチュン…(鳥の
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花よりもなほ(2006年製作の映画)

3.8

絶対善と絶対悪

2006年 是枝裕和監督作品

是枝監督のオリジナル脚本、岡田准一主演で描く人情時代劇。

元禄15年、刃傷松の廊下の事件の翌年。仇討ちに藩が賞金を出していた時代に、田舎侍の宗左衛門
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アナとオットー(1998年製作の映画)

3.4

一寸先の光と闇

1998年 スペイン作品

アナ(ANA)とオットー(OTTO)
上から読んでも、下から読んでも
アナとオットー

「逆さ言葉の名前は幸運の印」

少女期に最愛の父を失ったアナ
青年
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母性(2022年製作の映画)

3.2

女獣戯画

2022年 廣木隆一監督作品

原作(湊かなえ)は未読。母の語る物語と娘の語る物語、元が小説だからか、朗読劇のようなテイストだった。

女三代の物語。戸田恵梨香(母)、永野芽郁(娘)、大地
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秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

3.4

もりのなか

2021年 フランス作品

娘が生まれて、僕が最初に買って読み聞かせた絵本は『もりのなか』(マリー・ホール・エッツ)でした。少年が紙の帽子をかぶって、新しいラッパを持って、森へ散歩に出か
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川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

4.2

あわいを生きる

2021年 荻上直子監督作品

どこかの川、どこかの駅
そこに下り立つ誰か
冒頭のシーンがとてもよいです

川っぺりのゴミ捨て場
長屋のような旧い集合住宅
野路の野菜畑…
懐かしさを
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砂漠でサーモン・フィッシング(2011年製作の映画)

3.3

渇いた土地に潤いを

2011年 イギリス作品

イギリスでベストセラーとなった小説を『サイダー・ハウス・ルール』のラッセ・ハルストレム監督が映画化したヒューマンドラマ。

イエメンの大富豪から、砂漠
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