うえびんさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

うえびん

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スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.3

切なくも痛快な物語

戦争、国籍による分断
統治する側とされる側
同じ民族同士のイデオロギーの違いによる分断
自由(資本)主義と共産(社会)主義

国籍とイデオロギーの違いを超えるべく結成された
チー
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運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)

4.5

子どもは子どもだったころ

大人に怒られると怖かった
大人に褒められると嬉しかった
子ども同士で、すぐに仲良くなった
キラキラした物、カラフルな物に心が踊った
家に新しい電化製品が入るとワクワクした
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罪の声(2020年製作の映画)

3.2

1984年のグリコ・森永事件をモチーフにした作品。

未解決事件の一つの解釈としては面白かった。
実際の事件が起きた時期に小学生だったので、世間を揺るがしたショッキングな出来事として懐かしさを感じなが
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太陽に灼かれて(1994年製作の映画)

4.0

何かのために生きる

昨年は24カ国、71本の映画を観てレビューした。
今年も、古今東西、幅広い作品に出会いたい。
一本目は、1994年、 ロシア作品。
公開当時にフライヤーを見た記憶のあったもの。
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.9

1994年公開 オーストラリア制作
原題 The Piano

『ピアノレッスン』より、原題の方がいい。
もしくは、”私はピアノ”でもいいかな。
そんな歌があった気がする。

公開当時、劇場で鑑賞。今
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ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)

3.9

ファンタジックなお見送り

ビッグフィッシュが泳ぐ水面、人魚が泳ぐ水中、ロッキングチェア、一面の水仙の花畑…
幻想的な映像が心に残る

父、エドワードと息子のウィルは距離を置いている
ウィルは、エドワ
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三度目の殺人(2017年製作の映画)

4.2

藪の中の真実

役所広司の演技がスゴい。中盤に中空を仰ぎ見るシーンと、最後のアクリルボード越しの福山雅治との対話シーンが強く印象に残る。

被告人、三隅の話は揺れ惑う。焦点を定められない弁護人の重盛と
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マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

3.9

夫婦間の自由と平等

途中まで、これはDivorce story(離婚物語)じゃない?と思いながら観るが、最後、やっぱりMarriage storyだったんだと納得。

夫婦と親子、それぞれの心の揺れ
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ひとつの太陽(2019年製作の映画)

3.8

弟、兄、父、母
各人の苦悩と家族の再生の物語

カメラアングル、色のコントラスト、映像が美しい
音とBGMは抑え気味
登場人物のセリフも少なめで、表情から心情に想像力がはたらく
その一方、暴力の描写が
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永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)

3.5

永遠を平面に刻む

フィンセント・ファン・ゴッホ
1853-1890 オランダのポスト印象派の画家

奇才、天才、偉大な画家として没後130年経つ現代にも作品と名を残す。
その所以がよく解る。天才、天
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インターステラー(2014年製作の映画)

3.6

地球と人類を救う親子の物語

なぜか、ふと、食わず嫌いのSF映画が観たくなって本作を選択。

宇宙空間、ブラックホール、未知なる惑星…、初めて観る世界の映像は、新鮮で美しくリアリティが感じられた。宇宙
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海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年製作の映画)

3.9

めくるめく世界

大林宣彦監督の遺作、ということで心して鑑賞。
冒頭から、なんじゃこりゃ!?と面食らう。宇宙船の中、空間を漂う鯉…。考えてもしょうがない、感じてみよう!と、シンキングからフィーリングに
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桜桃の味(1997年製作の映画)

3.8

心象風景と目に見える景色の交錯

1997年 イラン映画

主人公バディは自殺を助けてくれる人を探している。一人で死にきれないことは、まだ生きる望みを残しているからだろうか?車で街や野山を走り回る。デ
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女神は二度微笑む(2012年製作の映画)

3.2

初 インドのサスペンス映画

コルカタの都市のビル群、きらびやかな夜景、それとは対照的に物騒な裏通り、恐らくは貧しい人々が暮らすバラック、祭りの狂騒にインドの様々な情緒を感じた。どのインド映画でもそう
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バジュランギおじさんと、小さな迷子(2015年製作の映画)

4.6

歌って踊って、旅するインド映画

列車やバスに揺られ、街を抜け、野を渡り、山を越え、谷を越え、二人でひたすらにある場所を探し歩く、走る。

パジュランギおじさんは、一本気で優しい力持ち。ひたすらカッコ
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彼岸花(1958年製作の映画)

4.0

1958年公開
小津安二郎監督、初のカラー作品

場面が切り替わる際のBGMに懐かしさを感じ、映像の色と構図の美しさにうっとりさせられる。物語は、市井の一家族のよくある話で、ドラマチックな展開は全くな
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.9

すばらしき作品

”素晴らしき”って、どんな時に使うんだろう?と考えると、期待を大きく上回った時に「素晴らしい!」って言葉が自然と出てくる。

書店で『身分帖』(この作品の原案)を目にしたとき、西川美
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世界で一番しあわせな食堂(2019年製作の映画)

4.0

フィンランド×中国

最近、国籍の違い、異文化の交流を描いた映画をよく観てる。
『ミナリ』韓国×アメリカ
『フェアウェル』中国×アメリカ
『あなたの名前を呼べたなら』インド×アメリカ

本作の特徴は、
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ノスタルジア(1983年製作の映画)

3.9

耽美的、唯美的、神秘的

主人公のアンドレイが作中で語る言葉のとおり、詩的な本作は翻訳しきれない。
「詩は翻訳できるものではない。すべての芸術も」
見る者の審美眼が試されている気がする。

学生時代に
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ショート・ターム(2013年製作の映画)

4.2

心理描写が素晴らしい。

ショート・タームで保護される子どもたちは、心に深い傷を負っている。多感な時期に負った傷は、容易く癒えない。意識化、言葉にして客観的に捉えなおすことも自分の力でやるには幼すぎる
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ONCE ダブリンの街角で(2007年製作の映画)

3.7

ミュージックビデオの“つづれ織り”

監督と出演者の音楽愛がひしひしと伝わってくる。曲と、それに合わせた情景描写は、MVそのもの。それが作中に織り込まれていても不自然じゃなく新鮮だった。

昔、アイリ
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モリのいる場所(2018年製作の映画)

3.8

アリの棲む場所
魚の棲む場所
鳥の住む場所
石ころのある場所
モリ(守一)のいる場所

超俗、脱俗、世間を離れた画家と妻、その周りの人・生物・無生物が、人の目・虫の目・鳥の目で描かれる。日常をスケッチ
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フェアウェル(2019年製作の映画)

3.5

中国×アメリカ+ちょっと日本

中国に暮らす、おばあちゃんのナイナイ。
アメリカに暮らすナイナイの次男夫婦とその娘ビリー。
日本に暮らすナイナイの長男夫婦とその息子。

ナイナイが末期がんの診断を受け
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ミナリ(2020年製作の映画)

4.0

ミナリ、ミナリ
ワンダフル、ワンダフル...

祖母と孫の歌声が心に残る

ふと、過去の場面を思い出す。
大人になってから、知り合いの家で夕食をよばれた際、その家のおばあさんが、近くからセリを取ってき
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息子のまなざし(2002年製作の映画)

3.8

視線の先にあるもの

アップショットの多用
オリヴィエの背中越し、肩越し、後頭部越しのカメラアングル
忙しないカメラワーク

窮屈感と落ち着かなさを感じながら
何を見せられているんだろう?と考える
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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016年製作の映画)

4.5

色とりどり

カナダ、マーシャルタウンの美しい街並み
カラフルな家屋の色
空の色、雲の色、海の色、木々の色…
季節と共に変わりゆく自然の色

夢中で絵を描くモード
夢中で働くエベレット
二人は、次第に
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シークレット・サンシャイン(2007年製作の映画)

4.8

感情的真実

イ・チャンドン監督の『オアシス』のレビューにこんなことを書いた。


”今朝新聞で読んだ作家カズオ・イシグロ氏の言葉が浮かんだ。
「いまの世界では、科学的真実と感情的真実という二つの真実
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あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)

4.6

とってもよかった。

導入部、農村から都市(ムンバイ)に向かう場面、主人公ラトナの表情やインドのエキゾチックな景色に、すぐに物語の世界に惹き込まれた。

そこからも、メイドとしてのラトナと、雇い主であ
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わたしを離さないで(2010年製作の映画)

2.8

カズオイシグロの小説を読みたいと思いつつも、本の厚みと翻訳ものの苦手感から手に付かず。映画で観てみようと鑑賞。

希望のない物語の中のわずかな希望と、カズオイシグロ作品に通底するテーマ「記憶」を頼りに
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はちどり(2018年製作の映画)

3.5

少女の目に映る世界

不思議、不可解、不条理、理不尽...。
中学生の多感な時期って、世界を手探りで、自分の手触りで感じながら理解してゆく。そんな時期だったなぁと思い出す。本作のストーリーを理解しよう
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ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)

3.3

奇々怪々
シュール

現代、過去、夢...
街、寝室、診察室、教会、廃墟...
時間も場所もぼんやりとしか分からない空間が、フィックスされた映像により、絵画のフレームのように感じられる。その中で動く人
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マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

3.4

情景と情動

心に深い傷を負った叔父と甥の物語。マンチェスター・バイ・ザ・シーの海や街並みが美しい。情景が、季節の移り変わりと共に繰り返し静かに描写されることで、主人公リーの心情に想像がはたらく。
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鈴木家の嘘(2018年製作の映画)

4.0

家族というパズル

自ら死を選んだ長男、いなくなった人を遺された家族それぞれの在りようから描き出す手法が面白かった。シリアスな場面からコミカルに、再びシリアスに展開してゆく流れもとてもいい。

鈴木“
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野のなななのか(2014年製作の映画)

3.7

"一つの、小さな、人の死の物語。"

鈴木光男氏が92年の生涯に幕を閉じてからの、49日、七七日(なななのか)の物語。
個人の物語の背景に、虚実がない交じって大小さまざまな物語が語られる。家族の物語、
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ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

4.9

子供は、子供だった頃〜のリフレインが、20数年前に本作を観て以来、頭から離れなかった。再び、思い出し、その後に続く詩情がさらに深く心に響く。

子供は 子供だった頃
いつも不思議だった
なぜ 僕は僕で
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善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)

4.0

イデオロギーvs美

若者にイデオロギーを刷り込むために教鞭も振るい、体制に反する者に容赦の無い共産主義者ヴィースラー大尉。自らの感性に従った自由な表現を求めながら、社会情勢から才能を封印されている劇
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