うらぬすさんの映画レビュー・感想・評価 - 69ページ目

パターソン(2016年製作の映画)

4.2

言わば無劇の劇。主人公であるパターソン=詩人の目は静かに流れる日常のなかから玄奥な情趣を汲み取り、言葉を連ねてゆく。たとえ詩を書き留めた秘密のノートが犬に食い千切られても、その詩的な感性まで奪われるこ>>続きを読む

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

3.3

戯曲っぽいなと思ったら戯曲が原作だった。
絶妙な間のとり方、「目は口ほどに物を言う」的な演技、相当計算されてそう。
恋のマイアヒが流れるシーンでFLASH黄金時代の頃を思い出してちょっと集中が途切れた
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15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

3.8

賛否両論あるのかもしれないけど、実際の当事者らをキャスティングするというなかなかリスキーな手法を採りつつも、あくまで誠実に作品を作った監督の姿勢と覚悟には素直に敬意を表したい。
純粋に映画として観ても
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トレインスポッティング(1996年製作の映画)

2.9

自分にはあんまり響かなかったし、どちらかと言うと苦手なタイプの作品だった……。苦手の一言で拒絶したくはないから最後まで観たけど、たしかに鮮烈な脚本やら奇抜な演出やらユアン・マクレガーの演技は目を見張る>>続きを読む

ブルージャスミン(2013年製作の映画)

3.9

自尊心と過去の栄光に対する執着のあまり自ら破滅を呼び寄せる女。ケイト・ブランシェットの演技は凄みさえあって圧倒された……さすがアカデミー主演女優賞。サリー・ホーキンスもこのあいだ観たシェイプ・オブ・ウ>>続きを読む

ボーダーライン(2015年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

善悪の区別(ボーダーライン)が取り去られたメキシコ麻薬戦争を舞台に葛藤と良心の呵責に苦しむ主人公の内面を克明に描く……みたいな作品かと思いきや、まあ確かにそれは間違ってないんだけど、それよりもひとりの>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.4

人と人ならざるものの絆とか、種族を超えた愛とか、そういうモチーフに滅法弱いから当然評価も高くなる。
冒頭の水中に居るかのような演出とたゆたう水に似た3拍子の音楽でぐっと物語の世界に引き寄せられて、もう
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グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

3.0

素晴らしいミュージカル映画を作るんだという矜持があることがよく伝わってくる。衣裳も演出も音楽もたぶん相当高いレベルで揃えられているし、勢いと迫力で言えば右に出る作品はあんまりなさそう(ミュージカルをそ>>続きを読む

コロニア(2015年製作の映画)

3.8

実話に基づいてること、脱出劇がテーマ、高度に政治的な問題、と『アルゴ』に似た要素がかなりあって、ただこちらの方が脚色は多そう。まず脱出したのはカップルじゃないらしいし。
見事脱出に成功して終わり、とな
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モンスターズ・インク(2001年製作の映画)

4.1

キングダムハーツ3のトレーラーを観てたら急激に観たくなって。
小学生の頃数え切れないくらい繰り返し観て、たぶん人生で2番目に観た回数の多い作品だけど、映画を趣味にしてからは今日が初めて。
トイ・ストー
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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作の映画)

4.0

小気味良いテンポで話が進んでいくから、長めの上映時間も気にならず前のめりになって鑑賞した。
フランクの鮮やかで大胆な手口に驚かされるけれど、それだけじゃなくカールとの間に芽生える奇妙な友情とか、フラン
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.5

今更ながら、アメリカン・ニューシネマをそれと認識して観たはじめての映画(「カッコーの巣の上で」は知らぬまま観てた)。
文学で言うところの「失われた世代」と同じように、戦争によって既存の価値観に疑いの目
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ひつじ村の兄弟(2015年製作の映画)

3.4

カインとアベルっぽいなあと思ったけど(羊という動物も聖書的だし)、最終的に兄弟間の絆を取り戻す点ではまったく違う。羊はなにかのメタファーなんだろうけど、それがなにかと言うと……もう何回か観ないと考えが>>続きを読む

美女と野獣(2017年製作の映画)

3.6

ふつうに面白いんだけど、もっと面白いかと期待しすぎてた節はある。「何が何でもこの映画を成功させるぞ!」というディズニーの気合いを感じる……。
贅沢なロココ様式の建築と家具に目を惹かれ、豪華絢爛なミュー
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スローターハウス5(1972年製作の映画)

2.8

過去・現在・未来の区別が希薄になったとき、自由意志はどうなるのか、運命論がすべてなのか、ひいては人間とはなにかという問いに迫る。その点ではヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』に近い部分があると言えるかもし>>続きを読む

MERU/メルー(2014年製作の映画)

3.5

とあるクトゥルフ神話TRPGの動画で推されまくっていたので、予定を早めて急いでレンタルした。
ドキュメンタリーなのにどんなフィクションにも負けず劣らずドラマチック。
登山家の執念に圧倒されるけど、執念
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アーティスト(2011年製作の映画)

3.4

ぜんぜん悪くはないんだけど、話の骨子に関しては「とくに目新しいところのないメロドラマ」という印象がとうとう拭えないままエンディングを迎えてしまった……。
無声映画からトーキーへの移行に伴う栄華と凋落、
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トイ・ストーリー3(2010年製作の映画)

4.1

シリーズ3作目にしてシリーズでいちばん面白かった。それって本当にすごいことだと思う。
おもちゃと人間の関係とその遷移にフォーカスする今作は大人の鑑賞にも堪える、というか大人のほうがむしろ心動かされそう
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バッファロー’66(1998年製作の映画)

3.6

粗暴で自己中で見栄っ張りだけど、根は優しく繊細、みたいな描き方をされても正直「は? まずは粗暴であることをやめろや」って思うから主人公の男にはまったく共感できないし、そんな主人公に惹かれるヒロインも理>>続きを読む

バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年製作の映画)

3.7

シリーズ通してそこそこ面白かったけど、純粋な少年の心を持っていた頃に観ていれば一層楽しめたのにと思う。

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年製作の映画)

3.7

面白いんだけど1の方が好き。こんな終わり方されちゃPART3も観なきゃならない……

デトロイト(2017年製作の映画)

3.9

心に重い打撃を受けた。観終わって地下鉄に乗って帰路についてる今もなお黒々とした感情が胸に渦巻いている……。ナルニア国物語といい今作といい、ウィル・ポールターは胸糞悪い人間を演じるのが神がかり的に上手い>>続きを読む

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.6

入り組んだ筋と人間関係が目まぐるしく変化していく。善悪や聖邪なんて区別はこの作品には無くて、ただ皆が何かに駆られるように次々と行動を起こしていく。
鑑賞前はメッセージ性の強い映画なのかなと思ってたけど
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去年の冬、きみと別れ(2018年製作の映画)

3.8

試写会にて。
話の構造は既視感のあるものだったかもしれないけど、叙述トリック的な手法と巧みな時間軸の操作で一度ならず驚かされたし、心地よい緊張感でつねに飽きるということがなかった。
主題歌が合ってない
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アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)

4.2

典型的なアメリカの家族の崩壊を描いているのにこのタイトル……なるほど強烈な皮肉を利かせた映画なのかと思ってたけど、意外とド直球でアメリカの美を説いた作品だった。冒頭で「何かを失った」と嘆いているレスタ>>続きを読む

トイ・ストーリー2(1999年製作の映画)

3.6

ピクサー作品は吹き替えで観たくなる。唐沢寿明ふつうに声優としても上手だよなあ。
バスター(犬)がフローリングでつるつる滑りながら走る動きがリアルですごい。

死霊の盆踊り(1965年製作の映画)

1.0

退屈を通り越してもはや苦痛で、途中から観ることを半ば放棄した。あまりに苦痛だから、たぶん拷問用に作られた映画なんじゃないかと疑ってる。

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

4.0

試写会にて。
性と食って実はものすごく近い位置にあるというか、親和性の高いテーマなんだなあとしみじみ思……う余裕はあんまりなくて、直視できないシーンの連続でしんどかった。ただ観てる最中に感じた嫌な予感
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いまを生きる(1989年製作の映画)

4.0

人を人たらしめるのは規律ではなく、自由と情熱。詩を、ひいては文学を学ぶことの意味を力強く教えてくれる。

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

4.5

破天荒なB級作品の皮をかぶったとんでもない怪作だった。こんな映画いまだかつて観たことがない。芥川/直木で作家を分類するのももはやナンセンスだけど、綿矢りさが原作なんだよなこれと何度も首を傾げたくなるく>>続きを読む

怪物はささやく(2016年製作の映画)

3.7

人の心の複雑さや矛盾を寓話の形を借りて描き出す。パンズ・ラビリンスと作風が似ていて、ただ自分の中では僅差であちらに軍配が上がった。
オープニングとか三つの物語の水彩画っぽい演出がとても綺麗で目を引かれ
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ドリーム(2016年製作の映画)

4.1

知性を武器に奮闘する女性はこうも逞しく恰好良い。理不尽への対処の仕方もみな知的かつスマートで、自らの能力で逆境を乗り越えていく姿は素直に見習うべきもの。
主人公格のキャサリンは実際は黒人ではなく混血ら
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蜜のあわれ(2016年製作の映画)

3.3

他の役者もぜんぜん悪くないけれど、何と言っても二階堂ふみの魅力に支えられている。無邪気さのなかに潜む底知れぬ憂い。
もっと耽美的で退廃的なものを期待していたら、思いの外シュール路線でちょっぴり肩透かし
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バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年製作の映画)

3.9

タイムリープ系の話はすでに散々摂取してるから、もしかして楽しめないんじゃないかという不安があったけど、まったくの杞憂だった。友情・恋愛・コメディ・スリル等々の要素をすべて兼ね備えたエンターテインメント>>続きを読む