アニマル泉さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

アニマル泉

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猫は逃げた(2021年製作の映画)

4.1

監督・今泉力哉×脚本・城定秀夫。
引きの画面が多いがサイズが緩すぎる。照明が全体に暗い。やりようがあるはずだ。
物語は題名どおり、後半から面白くなる。山本奈衣留と手島美優が素晴らしい。山本はいつも座っ
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アネット(2021年製作の映画)

4.2

カラックスの9年ぶりの新作。カラックスは痛々しい。ダークファンタジーと銘打たれた本作も痛々しかった。
①カラックスは「断片」の作家である。ミュージカルはとても相性が良い。ミュージカルも楽曲が断片化され
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上海から来た女(1947年製作の映画)

5.0

ウェルズのテーマは「罠」「騙す」だ。本作もエルザ(リタ・ヘイワース)バニスター(エヴェレット・スローン)ジョージ(グレン・アンダース)ブルーム(デッド・デ・コルシア)は全員が何か犯罪を犯しそうで怪しい>>続きを読む

カウンセラー(2021年製作の映画)

4.2

酒井善三監督の42分の作品。音が不気味さを煽る。雨音、ベース音などのSE効果音の音量が大きく設定されている。「水」の主題が強調される。雨、風呂、ボウルの水、破水、血。なかでもボウルのワカメから風呂に沈>>続きを読む

彼女はひとり(2018年製作の映画)

4.2

中川奈月の立教大学大学院修了製作作品。
飛び降り自殺が通奏低音になっている。当然「高さ」が主題になるのだが、本作は「高さ」を撮れていない。冒頭から橋に佇む澄子(福永朱梨)を俯瞰で人物ごしの川バックで撮
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テオレマ(1968年製作の映画)

5.0

パゾリーニ節が炸裂した濃密な作品だ。可笑しいのは男は必ず脱がされる。テレンス・スタンプもマッシモ・ジロッティも。ジロッティは駅で全裸になり、ラストは火山を全裸で歩かさられる始末だ。パゾリーニは大衆の顔>>続きを読む

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)

5.0

パゾリーニ節が炸裂した濃密な作品だ。可笑しいのは男は必ず脱がされる。テレンス・スタンプもマッシモ・ジロッティも。ジロッティは駅で全裸になり、ラストは火山を全裸で歩かさられる始末だ。パゾリーニは大衆の顔>>続きを読む

王女メディア(1969年製作の映画)

5.0

パゾリーニは強烈だ。圧巻の造形力と衣装はフェリーニのようだ。ギリシャ神話、人体切断、ケンタウロス、黄金の皮の山羊などが悪夢のようにごった煮になる。マリア・カラスがよく出演したと思う。パゾリーニの起用は>>続きを読む

麻希のいる世界(2022年製作の映画)

4.2

塩田明彦の最新作。少女二人のドッペルゲンガーの映画だ。前半はほとんどセリフがない視線劇である。風が印象的だ。長回しである。小屋のロングショットに由希(新谷ゆづみ)と麻希(日高麻鈴)の会話が延々と被り、>>続きを読む

変態テレフォン/Don’t let it bring you down(1993年製作の映画)

4.2

佐野和宏は「逃げ切れない」映画だ。本作は珍しく佐野と岸加奈子が夫婦役で冒頭から山中を走って逃げる。走る、逃げる、映画である。佐野は航空自衛隊で国家機密を持ち出している。劇中、何度も投げられるボールが挿>>続きを読む

都市とモードのビデオノート(1989年製作の映画)

4.2

ヴェンダースがポンピドゥセンターの依頼で制作した山本耀司のドキュメンタリー。
「複数」の映画である。画面は小型モニターが混在するメタ画面だ。そして35ミリカメラ(60秒しか撮影できない)とビデオカメラ
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都市とモードのビデオノート 4K レストア版(1989年製作の映画)

4.2

ヴェンダースがポンピドゥセンターの依頼で制作した山本耀司のドキュメンタリー。
「複数」の映画である。画面は小型モニターが混在するメタ画面だ。そして35ミリカメラ(60秒しか撮影できない)とビデオカメラ
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愛なのに(2021年製作の映画)

4.2

監督・城定秀夫×脚本・今泉力哉のコラボ企画。城定は引きのショットで勝負する。別れ話などの決定的なセリフはアップの切返しではなくツーショットで2人の関係で見せる。芝居は長回しが多い。瀬戸康史とさとうほな>>続きを読む

夜の人々(1948年製作の映画)

5.0

「今や映画とはニコラス・レイである」ゴダールが宣言したニックの美しい処女作。ボウイ&キーチを描く作品の系譜なのだが、ルイスの「拳銃魔」がフィルム・ノワールなのに対して本作はメロドラマだ。ニックは「ラブ>>続きを読む

ディア・エヴァン・ハンセン(2021年製作の映画)

3.8

東京国際映画祭クロージング作品。
歌で全てを説明するために映画的官能が皆無の退屈な作品である。学校の廊下がメインセットになっている。SNSと鬱病を題材に高校生のコミュニケーションと愛と友情を描くミュー
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13号待避線より その護送車を狙え(1960年製作の映画)

4.5

清順が監督になって4年目の1960年の作品。この年になんと5本も撮っていて、本作の次に「けものの眠り」「密航0ライン」と続く充実ぶりだ。縦構図がいい。冒頭のタイトルバックは夜の道の前進ショット、アルド>>続きを読む

次郎長三国志 甲州路殴り込み(1965年製作の映画)

5.0

東宝版の最終回。第3部から1年経っているので役替えが多くてビックリ。綱五郎が松方弘樹→曽根晴美、仙右衛門が津川雅彦→矢野圭二、お仲が丘さとみ→安城百合子、大熊が水島道太郎→山本麟一となり、大政は中村竹>>続きを読む

バット・オンリー・ラブ(2015年製作の映画)

4.1

佐野和宏が咽頭癌治療で声帯を亡くして約18年ぶりに監督・主演した復帰作。いつもの長回しよりは短いカットがシャッフルされる。ガスタンクが明滅して踏切信号の明滅に重なる、電車のワイプ越しの佐野、鶏肉を刻む>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

5.0

ウェス・アンダーソンの新作。シネフィルらしい映画愛で尋常ならざる趣向を凝らしている。冒頭にフレンチ・ディスパッチ社の全景が正面から捉えられてボーイが出前の飲み物を届けに階段を登っていく。このショットに>>続きを読む

なん・なんだ(2021年製作の映画)

4.1

寺脇研が制作、出演がピンク映画の二大男優の下元史朗と佐野和宏に烏丸せつこ、監督・山嵜晋平、黄昏の人生の愛とペーソスを描く。下元が歩き、走る映画だ。冒頭の下元が雪駄で走るショットがいい。山嵜は芝居を手持>>続きを読む

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

5.0

タル・ベーラの長いワンカットは映画の呼吸だ。ベーラが描くのは時間そのもの、空間そのものである。物語やアクションを求めてはいけない。物語やアクションに収斂されないもっと豊かな映画的体験がベーラの真骨頂だ>>続きを読む

月光の囁き(1999年製作の映画)

4.0

塩田明彦の処女作。水橋研二とつぐみの二人乗り自転車の走りと並走するトラックショットや雨中の水橋の自転車の激走がいい。縦道の歩きショットが頻出する。水橋研二が好演、つぐみは無理だった。女の魔性をつぐみで>>続きを読む

エッシャー通りの赤いポスト(2020年製作の映画)

4.0

園子温の最新作。主人公なき群像劇だ。出演者オーディションで映画を作る騒動を様々な人達の視点から描く。赤いポストへ書類審査の投函、オーディション、撮影本番、という大まかな流れが、それぞれの立場から何度も>>続きを読む

逆光(2021年製作の映画)

3.8

脚本・渡辺あや、主役の須崎蓮が初監督した。制作資金はクラウドファンドで集めたという。
残念ながら作品がひ弱い、監督が力不足だ。本作に必須なのはエロスと官能である。本作には、氷、たらいの水、海といた「水
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ニーチェの馬(2011年製作の映画)

5.0

タル・ベーラ自ら最後と公言する作品。ベーラの作品に物語を追ってはいけない。物語や人物主義で見ると退屈極まりなくなってしまう。ベーラが描きたいのは物語や人物の行動ではないからだ。ベーラは「映画は世界との>>続きを読む

集団痴漢 人妻覗き/海鳴り 或いは波の数だけ抱きしめていられるか、アホンダラ!(1991年製作の映画)

4.5

現在のタイトルは「海鳴り」。監督脚本・佐野和宏。新東宝 国映 カラービスタ。
佐野はロングショットが撮れる監督だ。ここぞという時の長回しも素晴らしい。佐野監督の舞台挨拶によれば「本作に音楽はない。波と
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タンデム/痴漢電車人妻篇 奥様は痴女(1994年製作の映画)

4.0

現在のタイトルは「タンデム」監督・サトウトシキ。新東宝 カラービスタ。
偶然出会った二人の男、紀野真人と清水大敬の一晩の物語。それぞれ訳ありでだんだん事情がカットバックされていく。男二人が徹夜でバイク
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浮気妻 恥辱責め(1992年製作の映画)

4.2

現在のタイトルは「視線上のアリア」監督・佐藤寿保。新東宝 カラービスタ。
睡眠薬ハルシオンで眠らせた女性を買う眠室、ビデオ撮影、妄想、伊藤清美の姉の事故死が脈絡なく渾然一体となる。伊藤は監視カメラに怯
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次郎長三国志 第三部(1964年製作の映画)

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東宝版の第4部と第5部をまとめた祭と喧嘩の回である。大政が大木実から中村竹弥へ、追分三五郎が大村文武から品川隆二へ代わっている。マキノは場面転換を人の出入りで繋いで描くのが上手い。
冒頭は活気ある次郎
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奇跡(1954年製作の映画)

5.0

映画史における最高到達点である。ドライヤーが成し遂げた「映画の奇跡」だ。
トップカットから素晴らしい。夜明けの農場のロングショットで強風に奥の白い洗濯物が激しく翻える。厳格な構図に官能的な「風」、洗濯
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ニューヨーク1997(1981年製作の映画)

5.0

ジョン・カーペンターの代表作。「登る」「落ちる」という縦の運動と「突破する」「渡る」という横の運動がまさに縦横無尽に、美しく連続するアクション映画の傑作である。
冒頭から「高さ」だ。夜の海を逃げる脱獄
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影なき声(1958年製作の映画)

4.2

松本清張の短編を鈴木清順が映画化。清順はミステリーが不得意だと思う。論理立てて真相に迫っていくのが上手くない。編集が変なのだ。決め手となるカバンのくだりもいきなり少女がカバンを持って走るショットか挿入>>続きを読む

ゼイリブ(1988年製作の映画)

4.2

ジョン・カーペンターのSFアクション。いつの間にか地球はエイリアン=THEYに乗っ取られているという恐怖を描く。
「落下」や「高さ」が強調される。ナダ(ロディ・パイパー)がホリー(メグ・フォスター)の
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マルチプル・マニアックス(1970年製作の映画)

5.0

ウォーターズのように既成概念をはみ出した作品は、既成概念の言葉で語ることが不可能なので何を言っても不謹慎になってしまう。しかし敢えて言うならば、本作は映画を作る喜びに満ち溢れた瑞々しい傑作である。方向>>続きを読む

セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ(2000年製作の映画)

5.0

ジョン・ウォーターズの凄まじさ!恐るべし!ウォーターズによるハリウッドなど既成の映像産業への抗議表明であり、真摯な映画愛の告白である。
「テクニックは自信がない奴が使うんだ」
「魂を売り渡すな」ウォー
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続・次郎長三国志(1963年製作の映画)

5.0

東映版の第二作。東宝版の第三部を中心にリメイクしている。カラーシネスコ。
次郎長はシリーズ前半の股旅が面白い。富士山バックに次郎長一家が歩く、歌う、走る、喧嘩する!マキノの腕も冴えわたり、これぞ活劇だ
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