『ある現代の女子学生』でも思ったが、知的で洗練された人でいたいと思うこととスノッブになってしまうことはどうしてこんなに紙一重なんだろう。
〈無〉の境地を獲得したいんだけど隣人の女の子が気になって本も読>>続きを読む
ジョージ・フロイドの窒息死の原因を作った警官が有罪になったのを知って、ずっとクリップしてたこの映画を見ようと思った。
ボールドウィンが話すところを見るのは初めてで、ふむこんな顔の人か、こんな声だった>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
ところどころで用意されていた要素(蛇が出る森とか焼却処分される雄のひよことか)からは、物語が持つ力——生の深く暗いところまで照射する力を感じて期待して見ていたけれど、どうもばらっとまとまりがなく終わっ>>続きを読む
序盤でファーンがノマドとは「ホームレスではなくハウスレス」なのだと言っていて、移動が話の中心にあるのかと思っていたら、思いのほか家庭(ホーム)がテーマだった。
この映画で描かれるノマドたちは、家族の喪>>続きを読む
本音/建前や事実/虚構についてコミュニケートするとき、いかに発話者の意図と離れて受容されるかというひとつの実験のよう。
コントロールしているようで逆に言葉に振り回される登場人物たち。
この映画はもうずっと日本公開の兆しがなくて半ば諦めかけていたのだけど、先日フィルマークスの通知が届いてまさかと本当に興奮した(どのくらい前から見たかったのかを思い出すためにTumblrのアーカイブを辿>>続きを読む
一番ぐっときたのはバーでミラー・ライト(誰かが労働者のビールだと呼んでいた)を飲みながら昔の戦場での話をするところ。人を殺すことが誉れになる戦場で、はたして本当に自分があいつを殺したかもしれないと苦し>>続きを読む
南国の猫と北国の猫の映画。
北海道の冬の早朝の牛舎が映って、これはいったい何の煙かと思っていたらば牛の呼吸だったときの衝撃……。腹の底まで響くような音と相まって迫力があった。そしてそれをまるで暖房のよ>>続きを読む
暗い、めっちゃ暗い。話も暗いが画面も暗い。それなのに笠原医院のおばさん医師がにやりと笑うときにきらりと光る金歯(銀歯かもしれない)の輝きが目に焼き付いている。
1980年代のもうすでに小津亡きあとの東京……。
洋画も洋楽も海外文学も好きだから、ああもっと英語を使いこなせたら、といつも思うけど、小津安二郎の映画を見るときはいつも日本語ネイティブでよかったと思わ>>続きを読む
わたしじゃない〈わたし〉がいるかもしれないことについて。
映画は神秘的でエロティックで、とてもいい時間を過ごしたのだけど、この映画で取り沙汰されているドッペルゲンガーのようなものは、SNSが発達したい>>続きを読む
この映画で学んだいくつかのこと
①フィンランド語で「ありがとう」は “Kiitos”
②素焼きの豚の貯金箱はユニバーサル
③バニラしかないアイス屋は売れない
ジュリエット・ビノシュとイーサン・ホークが演じる夫妻の間合いが気に入った、彼女がときどきジュリー・デルピーに見えたほど。
キーになる北ドイツのうす暗さと地中海の明るさの対比が明確で、リメイク版よりも物語が納得できる大人っぽい仕上がり。
楽曲がよくて、キース・ジャレットの “Country” なんかはさっそくプレイリストに>>続きを読む
取り残された〈地べた〉の人びとの周りではままならないことばかりだが、休憩中の同僚との会話がなんか噛み合ったとか、内緒で廃棄処分の商品を食べたら思いのほかおいしかったとか、そういう小さな、でも確かに幸福>>続きを読む
羊と疫病、仲違いした兄弟というスピリチュアリティ満載のアイスランド映画。
映画もとてもおもしろいんだけど、どこかアイスランドにはへんてこさがあるというか、どうでもいいところばかりが目についてしまう。>>続きを読む
真冬版『テルマ&ルイーズ』といいたくなるようなクライム・ムービー。
非正規雇用とかシングルマザーが抱える貧困や、人種/ジェンダー差別を乗り越えて〈子ども〉でつながる二人の母の話。
アメリカで河を渡ると>>続きを読む
佐々木はユージの背中を押したけど、ユージは佐々木の道化のお面を外せないのが悲しい映画。
青春と呼ぶようなナイーブな時代の区切りがあるとすれば、もしや26歳から27歳かもしれないと、いくつかの映画を見>>続きを読む
20代半ばの何者でもない三人の何にもない一日。
すでにバブルが弾けた90年代の、ゆるやかに暗くなっていく時代の雰囲気。
女と男が出会うまでの話。
いくつかの忘れがたい知的なハイライトがあるが、それだけといえばそれだけ。こんなどこか物足りない物語を見ていると、言いたいことがあっても焦らず丁寧に言葉を紡いでいく力ってなかな>>続きを読む
(2022/10/13追記)
二年ぶりに見ると、他人は思い通りにならないが、それでも思い通りにならない他人としか孤独を解消できないという話でもあると思った。
ホーソーンの“The Birthmark>>続きを読む
中州で開墾を試みる無知な老人と、軍人の興味の対象にされる無垢な少女がとうもろこしを育てる話。
無知と無垢に自然が育まれること(そして大きな反動があること)と、近代以降の機械を手にした軍人たちがそれらを>>続きを読む
ビル・マーレイパパがまだ幼い娘をひとりの個人として初めて認識した出来事を打ち明けるところがいい。
静かでへんてこなロードムービー。両親の供養のために訪れたアイスランドで起こるあらゆる出来事が、絶妙なユーモアとスピリチュアリティを含んでいてへんてこさに拍車をかけている。
でもめっちゃすきだ。レンタル>>続きを読む
アニメーションの表現の仕方を見せつけられた。アニメーションって、脳内の脈絡がない想像からいかに正確に実際に線が引けるか、のたたかいなんだ。
映画について、夏の一時滞在先に別れた妻を呼び寄せて、その夏>>続きを読む
そのカップル同士にしかわからない心の通じる瞬間があって、二人の間に危機が迫ったとき、その共通の記憶があればあるほど強固なシェルターになって二人を守ってくれるんだなと思った。
それが「好き」とか言いあっ>>続きを読む
孤独に向き合えなかった男の末路。
自分の生の重さを考えない人間が誰かと生を分かち合うことなんて不可能で、人間の内面を見ないようにうまい汁だけすすっていると、いずれ人生からしっぺ返しをくらうという話。>>続きを読む
(2023/11/05追記)
ビールはラインゴールド・エクストラドライ。聞いたことなくて調べたら、かつてアメリカで大きなシェア率を誇ったニューヨークの老舗ブルワリー。いまはもうない。飲んでみたい。>>続きを読む
“Vilification” “Syntax”はすき、ホッケーあたりから置いていかれた。この軽さについていけないとは、わたしもそれなりに人生に重みがついてきて、大人になってきたってことか(勉強不足なだ>>続きを読む
倦怠期の夫が「男というものは」「男だから」とか連呼してて、もううるさいな黙ってて、と言いたくなるけど、そんな貧困なクライテリアしか与えられない男性の情けなさをユーモラスに描くことで、マッチョな思考にす>>続きを読む
前田吟が倍賞千恵子に想いを告げるときの台詞回しが百万点。
笠智衆が「ばたー」と言いながら写真を撮られるところが二百万点。
ファストフードの消費者を極めた次は、その経営者になってみようという試み。
養鶏家の泣くに泣けない実態を暴いていて、先日読んだ酪農に新規参入した夫婦を紹介するコラムのことを思い出した。農協の提案で補助を>>続きを読む
片言の英語を話すイタリア男(ロベルト・ベニーニ)が言葉を書きためたノートを災厄みたいなもので失っていて、『パターソン』でもふたたび扱われるマテリアルなだけに気になった。調べると何かがわかるのかしら。>>続きを読む
前作と同じように愛する人の喪失とその後の回復を描くのだが、ちょっと詰め込みすぎている感が否めない。でもパリ同時多発テロなどを経て、どうしても詰め込まずにはいられなかった必死さみたいなものを感じた。テロ>>続きを読む