放浪を運命づけられた寅さん。私たちもさくらのように、その気ままさに憧れはするけれど、そこに飛び込むことは難しい。同じように、寅さんは赤々と明かりが点いた茶の間には座っていられないのだ。
「格好がつかない」。劇中で何度も聞かれる言葉だ。どうしようもない寅さんだけど、最後はしっかり自分で格好をつけるのが、周りから愛される理由だろうか。ラストシーン、夜風に揺れるカーテンと回る自転車の車輪を>>続きを読む
これまで数えきれないほどの人を銃で殺し、「チキン野郎」と罵ったであろう男が、行き着くところに行き着いたのか。何らかの境地に達したとしか思えない軽さが心地よかった。
悲しいくらい滑稽に描かれる寅さんだが、フーテンであることの美学、その生き方を選んだ意地が、彼の言動や姿から見え隠れしてすごく心に残った。