歩く肉さんの映画レビュー・感想・評価

歩く肉

歩く肉

ドッグマン(2018年製作の映画)

4.3

狂犬VS「忠犬」
シリアスな不条理ドラマかと思いきや、もっと普遍的なテーマを抽象的に描いていた。犬は主従関係にとても敏感な生き物で、主だとみなした人間に対しては絶対的な忠誠を誓うが、飼い始め時にパワー
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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なんでこの映画をこんなにも多くのひとが絶賛しているのか一ミリも理解できなくてわたしは今後もう映画が好きですって公言しないようにしようと固く誓った。自分の中での映画の定義とはあまりにもかけ離れていたから>>続きを読む

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

4.2

以前何枚か作品を見たことがあり、撮られた背景もよく知らず作品群としても認識していなかったけど、不思議な温もりがとても印象的だった。こうしてちゃんと知れて良かった。ナン・ゴールディンの一貫としたスタイル>>続きを読む

黙秘(1995年製作の映画)

4.0

子供の頃にテレビで流れていたのを何気なしに観て何故かとても印象に残っていた映画。30年近く前に作られた映画なのに、いま改めて観ても色褪せない。Paris PalomaのLabour(2023)という曲>>続きを読む

砂丘(1970年製作の映画)

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アントニオーニ×ピンク・フロイドという情報くらいしかなかったので、いざ観てみたらアメリカンニューシネマ的で少し意外だった。やろうとすることはわからなくないが、露骨すぎて辟易する。ベトナム戦争の反動で若>>続きを読む

プリンス・オブ・エジプト(1998年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

題名をなぜ出エジプト記ではなく、プリンスオブエジプトにしたのか。明らかに題名によって観る層の入口を拡げてるのに、蓋を開けてみたらもろ旧約聖書の話。素晴らしい音楽と映像だけど、あくまでプロパガンダ映画で>>続きを読む

ほんとうのピノッキオ(2019年製作の映画)

4.0

評判が結構微妙だったから身構えて観てみたものの、意外にも原作に忠実で素直なアダプテーションだった。『五日物語』でも思ったけど、この監督は童話の本来の性質を尊重してると思う。過度な感傷を絡ませることもな>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

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まさかリアルタイムで新作を映画館で観れる日が来るとは思いもよらなくて、なんとも感慨深い。エリセはもう映画を撮るつもりがないんだと確信させるくらい、彼の映画人生の総決算に見えた。いままでの監督作を映画の>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

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美しい映画ではある。しかし例えば、本当に人生に絶望し、死ぬこと以外に救いを見出せなくなったときに、果たしてこの映画を観て少しでも思いとどまれるか。少なくとも、自分が思い詰めた時に本作を観たとしても、き>>続きを読む

炎のアンダルシア(1997年製作の映画)

3.5

エジプト映画を代表する名作だと言われているが、いざ観てみたら終始テレビ映画みたいな感じがあり、はじめはちょっと困惑したが、エジプトカルチャーを垣間見えた気がした。以前聞いた、エジプトのドラマはアラブ圏>>続きを読む

スターリンへの贈り物(2008年製作の映画)

4.0

本質的には『草原の実験』と同じなんだけれど、こちらのほうが個人的に断然と胸に響いてくるものがあった。カザフスタンのだだっ広い草原の中に人間の営みがあり、喜怒哀楽があり、ドラマがあり、それが一瞬で全てな>>続きを読む

プロスペローの本(1991年製作の映画)

3.8

再見。リマスターという割には画質がそこまで向上したとも思えなかった。改めて観ると冗漫でくどくも感じたが、ピーター・グリーナウェイにしか撮れない画があって、マイケル・ナイマンにしか作り出せない音がある。>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

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わたしのSF大作に対するリテラシーが低いからなのか、びっくりするほど何も入ってこなかった。たぶんここは感動的なシーンだろうな、とか、緊迫したシーンなんだろうな、というのがわかっても、自分の中でなんの感>>続きを読む

カラマリ・ユニオン(1985年製作の映画)

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青臭くてあざとくて、なんだかセンスのいい学生映画みたいだった。設定は面白いけど、コア部がすっからかんだから、ただ基本設定を遂行するためだけになっているようで勿体無い。時間配分も雑で、全体的に散漫さと粗>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.7

シンプルで良い。カウリスマキを観ると、どんな人間でも愛されるべき存在なんだ、と肯定された気分になるから、勇気づけられる。

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

人間を人間として足らしめるものとは。『アフターヤン』の中での「誰しもが人間になりたいとは思うのは傲慢だ」という台詞を思い出さずにはいられなかった。

物事は終わりに近づくにつれてスピードアップをするも
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X エックス(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

意外にもアート志向で、テイストは違うのにどことなくグァダニーノ版のサスペリアを彷彿させる。多分どちらもジャッロやB級ホラーを下敷きにしているけど、それを真面目かつアート性を強くしているからかも知れない>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

4.2

オーソドックスな作りで展開が読めるし、プロット自体には新鮮味をさほど感じないにも関わらず、全く飽きがこないのは、作り手のセンスとミア・ゴスの存在感なんだろう。ミアゴスも脚本に携わっているからか、もはや>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

3.0

精神的に不安定な女性がカルト村の祭祀に参加することによって、恋人への依存を断ち切り、内面的に自立する話かなと思っていたけど、かなり違っていた。おそらくこの映画は観た人によって受ける印象が違ってくるんだ>>続きを読む

ドラゴンへの道(1972年製作の映画)

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はじめてブルース・リーを観たけど、有名な怪鳥音は個人的に興奮した猿の鳴き声にしか聞こえなくて、真剣に闘っている最中にこんなんずっと聞かされたら、それだけでも戦意喪失しかねないと思ってしまった。たまに「>>続きを読む

スーパーバッド 童貞ウォーズ(2007年製作の映画)

3.6

セス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグのファーストネームがそのまま主人公たちの名前になっているので、きっと実体験を投射した映画なんだろう。いくつになっても男の子同士で馬鹿みたいに戯れあいたい感じはち>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

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ポスト・アピチャポン。A thick nowという当初のタイトルも、NowとHereは本質的に同じ意味だという考え方も素敵。提示してくれた世界の捉え方がとても心地好かった。日々の生活の中で、ミクロな視>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

引退宣言をして復帰する監督や俳優が多く、カウリスマキもかよって思ったのを白状します。ごめんなさい。
カウリスマキが映画をもう一度撮ろうと決めた理由が、この映画を観て分かったような気がする。

社会情勢
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キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(2020年製作の映画)

5.0

とても苦しくなる映画。言いたいことは山ほどあるが、それ以上に圧倒的な無力感に襲われた。力を行使でき、かつ武器の所持を許可されている人間の偏見と不理解は何よりも恐ろしい。人種問題だけではなく、偏見と不理>>続きを読む

カラーパープル(2023年製作の映画)

3.5

ジャパンプレミアにて。

結論から言うと、85年版のほうが好き。
こちらの新作は、オリジナル版より更に「赦し」や「贖罪」に重きを置いていて、宗教色がかなり全面的に出てきちゃっている。神への讃歌から始ま
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カラーパープル(1985年製作の映画)

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ミュージカル版に備えて今更鑑賞。原作は未読だが、どの人物も多面的に描いているのはスピルバーグらしいなと思った。ただ、良くも悪くもテンポが良すぎるので、表面をさらっと上滑りしていく軽やかさがあって、個人>>続きを読む

ヨーロッパ(1991年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

幻想に死す。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版(1984年製作の映画)

5.0

こんなに巧みに「意識の流れ」を体現した語り口は、いままでに見たことなかったかもしれない。場面の繋ぎ方のうまさにゾクゾクさせられたし、セルジオ・レオーネの手腕に嫉妬すら覚えた。重厚な小説を一冊読んだよう>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.5

とても繊細で温かく、大切な存在を喪うということについて静かに思いを巡らせる映画だった。接木、中国茶、蝶々について交わされる会話が特に好き。東洋思想をストーリーの中に自然と織り込まれている感じがとても好>>続きを読む

ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)

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「アイディート将軍がいなくなれば、俺たちが武器を置くと本気で思うか?」って言っていた民兵の言葉がとても印象的だった。自国のイデオロギーこそがいちばんの正義だと考えるアメリカの傲慢さと独善こそが、人道の>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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新年早々の一本。吉と出るか凶と出るかドキドキしながら観に行ったが、残念ながら自分にとって凶と出た。観ている最中、泣きたくなった。悪い意味で。

まず、清貧とはなんだろうと改めて考えさせられた。平山は貧
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