しゃびさんの映画レビュー・感想・評価

しゃび

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ある男(2022年製作の映画)

4.0

人には「背負わざるを得なかった宿命」と「背負いすぎてしまった宿命」があるのだと思う。

背負いすぎた宿命は、時に刃となって他者を傷つける。結果、さらに大きな宿命を背負うというループに陥る。

同感であ
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そばかす(2022年製作の映画)

3.0

分かり合ってるようで、
分かり合っていない。
人ってそんなもんだと思う。

だから、ほんの少しでも分かり合える点を探して、束の間の共感を味わうのだ。

言葉にらならいから楽器を奏で、
言葉にならないか
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裸足で鳴らしてみせろ(2021年製作の映画)

4.5

最高すぎるフェイクロードムービー。


彼らはなぜ、取っ組み合いのケンカをするのか?ただ触れ合うのではダメなのか?


本質的な人間関係が、そこにはある。


ぼくらは一緒に話したいと願う時、きまって
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オーファンズ・ブルース(2018年製作の映画)

3.5

映画の登場人物には、できるだけ「あっけらかん」としていてほしいと思う。

多くのことを背負っている人は、
背負っていることを隠そうとするものだ。
人生経験豊かな銀座のバーのママさんが努めて明るいのは、
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こちらあみ子(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

フランソワ・トリュフォーの『大人は分かってくれない』によく似たラストシーン。

アントワーヌは海辺へ行くあてもなく走るが、あみ子はスキップだ。なぜなら、あみ子はアントワーヌほど、置かれた状況に自覚的じ
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恋は光(2022年製作の映画)

3.5

共感性のなさが人を救う映画だ。


みんなで話をしている時、会社で会議をしている時、「空気を読む」ことがある。


空気を読んで、反論をしない。
空気を読んで、面白くないけどとりあえず笑っておく。
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.0

ウルトラマンどころか、特撮ものを全く観たことがないのだけど、せっかくだから観てみた。

なんというか。

ウルトラマンの動きってなんかそそられる。

例えば『マトリックス』とか、
例えば『ミッションイ
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

2.0

「子は鎹(かすがい)」という言葉がある。

子は夫婦だけでなく、社会の鎹なのだと思う。

子供は助けがないと生きていけない。
周りが助けざるを得ない。

そして多くの人間は、助けざるを得ない存在を前に
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バーバリアン(2022年製作の映画)

3.5

ホラー映画はほどよく適当な方がいい。

適当さの加減がちょうどいいのが、いいホラー映画の条件だとすら思う。煮込み具合が大事なカレーと一緒だ。

厳密であるのがよしとされるミステリーとは、そこが違う。
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.5

なんとものんびりとした電車ではないか。

過去作であれほど陰鬱で孤独なイメージだった電車は、ピクニックに行くかのような能天気なものに変わった。


何を目的にした旅なのか?

なぜ、坂道を登ってくる男
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そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)

3.5

こういう人っているよね。
こういうことってあるよね。
ありがちなキャラ設定を逆手に取った作りをしていて、観てて小気味良かった。

ただストーリーの面白い作品なだけに、キャストのミスマッチ感が気になった
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キャラクター(2021年製作の映画)

3.5

シリアルキラーものは、対峙する側の負担が大きい。

『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスの伝説的な名演は、ジョディ・フォスターの「受け」あってのものだ。

なぜ、負担が大きいか。
シリアルキラーは
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天気の子(2019年製作の映画)

4.0

深海監督作品は恋愛ものが多いけれど、実際は恋愛を描いていない気がする。

「本来、1つだったものがバラバラになってしまった」

恋する2人に見えるけど、実は個人の表と裏。それが、欠けてバラバラになって
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死刑にいたる病(2022年製作の映画)

3.5

どうってことのない話だ。
物語の争点になっている部分も、
まぁ、そうだろうなというオチで意外性はない。

でも、なんだかずっと見ていたくなる。
出てくるキャラクターに、興味を引かれるからだ。

白石監
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

5.0

ぼくにとって映画の原体験はこれだと思う。


高校生の頃観て、とにかくレクターという人間にゾクゾクした。当時はまだ、映画体験が足りていなかったこともあって、ゾクゾクの正体を言語化できなかった。


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恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)

5.0

学生時代に初めて観た時、
恋する惑星気分に浸り続けていたいと、『California Dreamin’』をどうしようもなく聴きたくなった。

サブスクですぐに音楽を聴ける時代じゃない。

付き合いたて
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アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

4.5

これは是非多くの方に観てほしい。

生きていると「しょうがない」ことがいっぱいある。物語の世界では、大きな夢が叶ったりするけれど、実際そんなことは滅多に起きない。

多くのどうにもならないことを抱えて
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愛なのに(2021年製作の映画)

3.5

本を読んだり、映画を観たり、
いろんな物語やライフハックを吸収したところで、根本的に自分を変えるのは難しい。

経験を積もうとしたところで、
積む経験の選択は自分がするわけで、結局なかなか変われない。
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怒り(2016年製作の映画)

3.0

信じた人
信じられた人
信じられない人
信じてもらえない人

何も信じられなくなった時、
人は漠然とした「怒り」を抱えて生きていくことになるのだろう。

交差しない3つの物語が「信じる」にまつわるグラ
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流浪の月(2022年製作の映画)

4.5

映画は説明しないメディアだ。
いや、説明できないメディアだ。

たとえば、小説や漫画などが原作になっている映画の場合、その全てを描こうとしたら10倍以上の尺が必要だろう。

「伝える」とは「何を説明し
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

5.0

初めて観たのは大学生の頃。
ふと観たくなって、たまに観返す。

ゴダールの訃報を聞き「ふと」ではなく、観ないでは居られなくなった。

初見では面白いと感じなかった記憶がある。2度目観て大好きになった。
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くれなずめ(2021年製作の映画)

3.5

いわゆる「群像劇」は、登場人物個々のストーリーが互いに交差していく様を描くことが多い。

しかし、この映画は個々ではなく、あくまで「一塊の群れ」として描かれていて、キャラクター個別のストーリーはほとん
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ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画(2013年製作の映画)

3.5

「近視眼的」という言葉は、とかく悪い意味で使われる。

でも、人間は目先を見て行動するのが関の山で、大局的に世の中を捉えて行動するなんて、ほぼほぼできないのだと思う。

大きなことを考えられるのは、自
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

5.0

人生ってこういうものじゃない?

そのように語りかけられてる気がした。


時代の変化は早いけれど、
人生はこの映画のように、のっそりと進んでいくのだろう。


何が正しいのか。
誰が正しいのか。
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

4.0

ロードムービーは移動する中での出会いが醍醐味だと思っていたのだけど、ケリー・ライカートは違う。


『リバー・オブ・グラス』のあまりにも近場の逃避行。
『オールド・ジョイ』の出会いのない旅。

『ウェ
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.0

なんて森の描き方だ…
さすが、ケリー・ライカート。

映画において、森ほど存在感のあるロケーションはない。

『ブンミおじさんの森』で息子が変な生き物になり変わって登場しても違和感がないのは、ひとえに
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前科者(2022年製作の映画)

4.0

聖人君主なんてそうそういるもんじゃないし、悪党だってそう。

映画に出てくるヒーローも悪役も、
どこを切り取って描いているかの問題で切り取り方を変えれば立場は逆転する。


人生はちょっとしたことの繰
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

4.5

いろいろな映画の評価をみていると、
「よくできている」という表現をよく見かける。

多くの場合、
クリストファー・ノーランの映画のように、緻密に練り上げられた作品に対する評であることが多い。

そのよ
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

5.0

マイノリティを題材にした映画が、しばしば陥りがちなのは、人間を個人ではなく社会の側面から描いてしまうことだ。

しかし社会が抱える課題や問題点は、
あくまで人の生き様の背後にあるものであって、生き様そ
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.0

映画において「時間を遡る」構造は、
なんて事のない出来事を、エモーショナルに見せる魅力的なやり口だ。

ノーランの出世作『メメント』も、時間を順列に戻したらなんて事のない話だったように、この映画も順列
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ラストレター(2020年製作の映画)

4.0

珍しい群像劇だ。

構造としては、
「人物の不在による周囲のどよめきを描く」という意味で『桐島、部活やめるってよ』にも似ている。

ただ、珍しさはそこではない。
人間関係がほとんど描かれていないのだ。
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映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

3.0

ぼくは90分の映画が好きだ。
映画の適正な尺は90〜100分だと思ってる。

ハリウッド映画によくある、中途半端に2時間を超える映画はあまり好きじゃない。

インド映画はまた別物だと思う。


「伝え
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俳優 亀岡拓次(2016年製作の映画)

3.0

『いとみち』は、方言が強く多くの言葉が聞き取れない。そして、本作は核心に触れることをほとんど言わない。

横浜聡子は、とにかく言葉で伝えることを避けたいようだ。

ダイレクトに伝わらないと、見るものは
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さがす(2022年製作の映画)

2.5

この映画って、
ジャンルで言うなら何なんだろうって考えながら観てた。


例えば、
サスペンスと考えたなら。

主人公の境遇、犯人との接点、選択
犯人の人柄、行動様式

とにかく変数が多い。

極端な
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彼女が好きなものは(2021年製作の映画)

1.5

学校は「但し摩擦は0とする」に満ち溢れている。
あいつはああだからこういうやつ。
そう決めることで世界を簡単にしている。


言ってることには共感する。
学校に限らず、社会はそのようにできている。
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うみべの女の子(2021年製作の映画)

2.0

描かれた時間と物語の時間の差をどう埋めるのかという問題。映画の上では100分でも、物語上は1年以上の月日が流れている。

ぼくはこの2人に時間経過を感じなかった。

付き合うでもなく離れる訳でもない、
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