イニョン(縁)のおかげで結ばれる出会いもあれば、阻まれる関係もある。そんなものはすべて幻か迷信なのかもしれないが、感覚としては誰の身にも覚えがあり、理解できるものだろう。人生は不思議なめぐり合わせの連>>続きを読む
リアルで観ているうちにだんだんと気が重くなってくる。冷たいモノクロームの映像が完全に作品世界とマッチしていた。原作者のカポーティのリサーチが元にあるにも関わらず、映画化するうえでもさらに入念なリサーチ>>続きを読む
物語的には思ったよりドライブしていかないけれど、形骸化したポリティカル・コレクトネスやステレオタイプな見方を風刺した内容は好みでなかなか楽しめた。アートやコンテンツを取り巻く今の社会の風潮が突きつけら>>続きを読む
タクシー車内での会話劇という極めてミニマルな装置でイラン社会の現実を鋭く描き出している。映画製作を禁じられたことを逆手に取り、「これは映画ではない」という理屈を用いて、「これぞ映画」というべき極めて映>>続きを読む
生理や信仰選択の問題など、男性として日本に生まれ育った人間には共感しづらい個別・具体的なトピックが多く描かれているにも関わらず、かなり楽しく観ることができた。沁みた。ユーモラスで可愛らしいタッチの中に>>続きを読む
さまざまな要素(ヴィクトリア朝時代やスチームパンクなど)をミックスして作り込まれた独創的なビジュアルとは裏腹に、内容自体は分かりやすく開かれている。すくなくともランティモスの過去作と比較すると。特に主>>続きを読む
純粋に楽しめる映画だった。記憶障害という重くなりかねない設定だが、ラブコメらしいノリで軽やかに描いている。ユーモアとペーソスのバランスが絶妙で、ちょっと笑えてちょっと泣けてちょっと考えさせられる。何よ>>続きを読む
(観てから二週間も経ってしまったけれど)
物語の力(ミステリーとサスペンス)でぐいぐい引っ張っていくような作品であることにまず驚かされる。今のエリセってこんな感じなのか。言葉数(会話劇)が多く、切り>>続きを読む
見知らぬ誰かや遠くの誰か、すれ違う人々、近くの友人、家族、同僚、クラスメートに思いを馳せ自分を見つめ直すきっかけになるような素晴らしい映画だった。
中心から外れざるを得ない、周縁に近い場所で生きる人>>続きを読む
父の病への不安と悲しみ、恋の喜び。悪い出来事と良い出来事が同時並行的に起こり、複数の役割を同時に担わなければならないのが人生というものだ。35ミリフィルムを用いて撮影された映像はそうした悲喜交々をナチ>>続きを読む
一見すると地味だが、観ているうちにじわじわとドラマが浮かび上がってくるようなスリリングな法廷劇だった。実際の裁判記録をほぼそのまま再現した法廷でのセリフは、複雑な事情を複雑なまま提示している。安易なジ>>続きを読む
オレゴン州ポートランドに住む芸術家の話というと特殊なようだが、日常の面倒なあれこれに翻弄されて思い通りにいかずもがく姿はリアルで普遍的だ。その様子をあくまで軽やかに、ユーモラスに描いているのが面白い。>>続きを読む
新旧含めここ最近観た日本映画の中で一番好き。撮影・編集・演技・脚本の構成など基本的な部分の質がずば抜けて高く、とても長編映画デビュー作とは思えない。劇伴も基本抑制的なのに、登場人物が浮かれているシーン>>続きを読む
前半の観察パートはなかなか楽しく観ていたのに、後半のどんでん返し&復讐パートで興ざめした。ありえないし、くだらないし、つまらない。他人に対する過剰な好奇心(詮索・干渉)や正義感の暴走を風刺している、と>>続きを読む
AI対人間の戦いを描いた作品では、AIという脅威に人類がどう立ち向かうかという視点に立つことが多い。本作も一見その流れを継いでいるように見えるが、物語が進み主人公ジョシュアの気持ちが動くのに合わせて、>>続きを読む
このシリーズの溌剌っぷりには毎度救われる思いがする。本作は脚本的な出来はあんまりという気もするが、映画としては中村錦之助の魅力が引き出されていてなかなか楽しめた。弱きを助け強きをくじくシンプルな勧善懲>>続きを読む
安楽死を扱った映画というとシリアスな「社会派」映画になりそうなものだが、本作のタッチはどこか軽快でユーモラス。それでいて理性的で、父から安楽死の手配を頼まれた娘のエマニュエルは、彼の気が変わることを望>>続きを読む
いつまでもバカみたいにじゃれ合っていたいが、やがて現実とも直面せざるを得なくなり、その摩擦の中でもがき始める思春期・青年期の男子たちの空気感をリアルに捉えている。リアルというより「ストレートに」と言っ>>続きを読む
最近観たどんなホラー映画やパニック映画よりもおそろしいのに、終始コメディタッチなのがヤバい。だが、元になった実話も含めてクマは被害者でしかないのだ。コカインを食べて死んでしまった哀れなクマのことを想う>>続きを読む
言葉だけで表現しようとしたらほとんどこぼれ落ちてしまうような繊細な感覚を見事にとらえている。特に、セリフで語られることのない心の機微や感情を"まなざし"から想像させる演出・演技の妙には感服した。
自>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
全体的にかなり出来のいい映画なだけに、ラストの謎解きのようなシークエンスで少々鼻白んでしまった。主人公オリヴァーの策略なんてものは最後にまとめて振り返って回収しなくても全体を通して仄めかし続けるか、い>>続きを読む
力の抜けたモキュメンタリー・スタイルのコメディ映画でなんだか癒された。キャンプ存続の危機という苦境にあっても映画は終始ユーモラスな空気で満ちている。LGBTQの人たちが当たり前に尊重されるサマーキャン>>続きを読む
出来のいいミニマルなホラー映画という感じでなかなか楽しめた。劇中の"降霊"は明らかにドラッグのメタファーになっており、精神的な問題から危険なドラッグに頼ってしまうことや、遊び半分で手を出してしまうこと>>続きを読む
人生とは"喪失"の連続である。人は多くを失い続けながら生きていかねばならない。つまり「生きる」とはそのまま「喪失以後を生きる」ということでもあるから、"喪失"はあらゆる創作物・芸術作品の重要なテーマに>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
終始不安で不穏な映像に揺さぶられる。"ポスト"アポカリプスではない。終末世界へと移行する真っ只中の不安と不穏だ。サイバー攻撃によって引き起こされる危機的状況は現代社会の抱えるリアルな恐怖だが、ところど>>続きを読む
アキ・カウリスマキらしい古めかしい様式美を湛えたシンプルでミニマルなラブストーリー。引退を撤回してまで80分間の「ただの小さな恋の物語」を撮るというところにカウリスマキの強い意思を感じる。劇中、ラジオ>>続きを読む
「憧れのチアリーダーとお近づきになるために冴えないレズビアンの女子高生が学校でファイト・クラブを立ち上げる」という、思いついたとしても普通は作らないような突き抜けた映画でかなり笑えた。基本的に男性目線>>続きを読む
前作もクオリティが高く素晴らしい出来だったが、あらゆる面でそれを超えてくるとは。めちゃめちゃ面白い。より笑えてよりスリリングなスペクタクル満載のアクションコメディになっている。前作との対比や反復を意図>>続きを読む
非血縁家族の絆万歳(そもそも種すら違う)。「被災難民」という社会的なテーマをしのばせつつ、大人も子供も楽しめるちょうどよく都合のよいファミリー向けコメディ映画として出色の出来。基本スラップスティックな>>続きを読む
人間関係の「ほつれ」をリアルに描いていて、観ていてどことなく居心地の悪くなるような映画だった。誰も極悪人ではないが、みんな少しずつ間違っている。私たちの身近で起こる問題(ほつれ)の原因も大方そんなとこ>>続きを読む
『サマーフィーリング』『アマンダと僕』に続き「"喪失"を抱えた人間の物語」というテーマを継承しながら、本作では同時代から80年代のパリにまで時代を遡り想像力の幅を広げている。80年代パリを舞台に選んだ>>続きを読む
グロテスクでばかばかしくて、思っていた以上におもろかった。知的なばかばかしさ。真面目に観ているといろいろな部分でひっかかるのもあえてやっているのだろうな。ある面では女性たちをエンパワーし、ある面ではス>>続きを読む
揺れる手持ちカメラを用いた臨場感あふれるアクションシーンやテンポの良い編集など前作の手法を踏襲しつつ、さらに完成度を増している。相変わらずセリフも少なく、映像(アクション)で見せる姿勢も一貫している。>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
開幕、追っ手によりボーンの恋人マリーが殺害され復讐と贖罪の物語が始まる。「ラブロマンスに割く時間は一切ない」といきなり本作のストイックな姿勢が突きつけられる。前作『ボーン・アイデンティティ』でのジェイ>>続きを読む
ロメールの映像快楽の極みのような作品で最高だった。若い美男子(メルヴィル・プポー)が主人公だったり、その主人公が冒頭10分間ほとんど言葉を発さずないまま移動とアクションがとらえられていたり、『海辺のポ>>続きを読む
『モード家の一夜』を観た時にも思ったけれど、冬のロメールも結構好きなんだよな。夏のバカンスや陽光のイメージがあるだけにかえって映えるものがある。プロットも『モード家の一夜』と似ており、二十年越しに韻を>>続きを読む