らさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ら

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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.2

群像劇としての複雑さはあるものの、ロメールやウディ・アレンを彷彿とさせる軽やかなラブコメディの趣も感じられてめちゃくちゃ面白かった。特に後半は超笑えます。『牯嶺街少年殺人事件』の直後に公開された作品で>>続きを読む

ガメラ2 レギオン襲来(1996年製作の映画)

3.7

ものすごい迫力の特撮と作り込み。平成ガメラ前作より映像の質は数段グレードアップしている。しかもさらに大人向けな内容になっていて、終始画面も暗くダークな魅力がある。「レギオンは繁殖過程で大量の酸素を発生>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.8

無邪気に面白いと言いづらい感じはあるものの、リューベン・オストルンドの作品はやっぱり面白い。その意地の悪さも含めて。前二作に比べると良くも悪くも「わかりやすさ」と「エンタメ性」が前傾化している印象はあ>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

3.6

相変わらず変な映画。ジャック・リヴェットの街撮り移動シーン好きとしては、ロケ撮影でパリの街をひたすら巡るこの映画の映像は眼福だらけだった。パラノイア全開の登場人物が謎の陰謀に巻き込まれていく感じはちょ>>続きを読む

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

3.6

ガメラもギャオスも好きだったことを思い出して。上映時間95分の中にぎっしり詰まった脚本とリアル路線の政治・防衛描写、自然光を用いた特撮は今見ても見ごたえがある。ギャオスが人間を喰う描写のおそろしさ、夕>>続きを読む

デュエル(1976年製作の映画)

3.4

物語は、太陽の女王(ヴィヴァ)と月の女王(レニ)が石をめぐって争っているということ以外ほぼ分からなかった。でもきっと、それだけ分かっていれば充分。フィルムノワール×ファンタジーな感じがかなり独特な映画>>続きを読む

殺しのドレス(1980年製作の映画)

3.7

スリリングでなかなか面白かった。潔いくらいのヒッチコックオマージュ(主に『サイコ』)に、ケレン味たっぷりの濃厚なデ・パルマテイスト。ケバケバしいエロティシズム。美術館内のシーンの流麗な撮影は『めまい』>>続きを読む

対峙(2021年製作の映画)

3.7

「銃乱射事件の被害者側家族と加害者側家族による対話」というと具体性も個別性も低くはないテーマであるかもしれないが、より普遍的な「痛みや憎しみとの向き合い方」や「赦しと人間同士の相互理解」について描いた>>続きを読む

東京公園(2011年製作の映画)

3.7

だいぶ奇妙な映画で良かった。全体的にポップでチャーミングなだけに余計不思議だ。タイトル通り東京の公園を巡るような物語になっているのも純粋に視覚的に楽しい。"見る"("撮る")と"見られる"("撮られる>>続きを読む

カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)

3.7

思ったよりはるかに激しくてスリリングなアクション映画だった。はちゃめちゃなファンタジー展開の中に、人間・社会の現実的な問題や哲学的な問いがバランスよく取り込まれているのも良い。セリフ抜きにアニメーショ>>続きを読む

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(2022年製作の映画)

3.9

ジェームズ・グレイの幼少期(1980年のニューヨーク市クイーンズ区が舞台)をもとにした自伝的作品ながら安易なノスタルジーには浸らず、自身の経験した厳しい不条理と不公平を生々しく描き出している。そこには>>続きを読む

凱里ブルース(2015年製作の映画)

3.7

この映画の印象を一言で表すならば"自然"。寝れます。おそらく完璧に演技と撮影のプランを練って撮られたアクロバティックな長回しも、理屈と時間を飛び越えたマジックリアリズム的展開も、幻想的で詩のような映像>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

3.7

とにかくスタイリッシュで美しい撮影に冒頭から魅了された。明暗の使い分けも、こだわりぬかれた色彩設計も構図もすべてこの映画には必然(それ以外ではありえないこと)のように思える。つまり、"映画"に奉仕して>>続きを読む

渚のシンドバッド(1995年製作の映画)

3.8

瑞々しいというよりむしろ生々しい青春群像劇になっていて、橋口亮輔らしいなと思った。とても良かった。観ているとこちらが恥ずかしくなったり、気持ち悪くなったりしてしまうことも多々あるが、それだけ映像に気持>>続きを読む

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)

2.9

自分にはこの映画の魅力がよく分からなかったけれど、一貫して現実みが薄く登場人物もみんなどこか作品世界から浮いているような感じがするところは面白いと思った。可愛く魅力的に撮れているカネコアヤノの出演シー>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.7

冒頭を観て真っ先に感じたのは、紛れもなく「ジブリの映画だ」ということ。ジブリアニメのトーン&マナーから外れることなく、宮崎駿の半生と脳内をまるごと投影したジブリ史上最高に「わからない」異色のファンタジ>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

3.8

クソみたいな日常を明るく乗り切るアホみたいな映画でとても楽しめた。主人公の二人の女の子、ヤンチャが過ぎるけどめちゃくちゃ仲良いのが可愛い。自分はやっぱりガールズムービーやシスターフッドものに弱いなと再>>続きを読む

ダークグラス(2021年製作の映画)

3.6

久しぶりにダリオ・アルジェントの映画なんて観た。90年代以降の彼の作品を一作も観たことがないし、前作も10年前だから、現役の監督であるという認識すらもう薄れてしまっていた。本作はいい意味で力が抜けてい>>続きを読む

3つの鍵(2021年製作の映画)

3.8

思った以上にスリリングで面白くて引きこまれた。人間が許し合おうとする姿にも純粋に胸を打たれる。歳を重ねていろいろな経験を重ねるごとに、どんどん家族のゴタゴタ劇が刺さるようになってきている気がする。本作>>続きを読む

素晴らしき、きのこの世界(2019年製作の映画)

3.3

半分くらいきのこの幻覚成分(と変性意識)の話。その他も「菌類がいかに人類に役立つか」の話が大半で、純粋にきのこの生態に興味があった自分の期待した内容とはちょっと違ったけれど、なかなか興味深かった。タイ>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

3.8

ちょっとすごかったな。何がすごいのか分かんないんだけど。というか、ホン・サンスが分からない。ラストの余韻とかもう本当に素晴らしくて、周りのお客さんも圧倒されているのが伝わってきた。キム・ミニの役者とし>>続きを読む

日本侠客伝 関東篇(1965年製作の映画)

3.7

すごい面白かった。鶴田浩二も高倉健もけっしてゴリゴリじゃない感じが魅力的。二人が並んで写った時の画面の力よ。

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.4

今年一番の衝撃。超優れた娯楽作品であると同時に、完全に140分間のポップアート、コラージュアートだった。まずアバンタイトルの時点でぶっ飛んでしまったのだけど、そのまま最後まで同じレベルの画面(絵)の精>>続きを読む

氷の微笑(1992年製作の映画)

3.7

センセーショナルな描写ばかりが語られがちだけれど、エロティックなムードを湛えた演出自体が巧みで素晴らしいと思った。サスペンスと結びつくことで跳ね上がる官能。今観るとヴァーホーヴェンの作家性が見えてまた>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.7

一見すると久しぶりに会った父親カラムと娘ソフィのひと夏のトルコ旅行の思い出を描いているだけの映画なのだが、行間を豊富に含んだ丁寧な演出や緻密に設計されたショットの断片から次第に繊細な事情があらわになっ>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

3.6

舞台となる17世紀イタリアの小さな町の修道院は、現代に通ずる社会全体のシステムのアナロジーとしてもとらえられる。その権力構造をかき乱し、ゆるがす存在としてのベネデッタ。彼女が抑圧からの開放だけでなく、>>続きを読む

私の20世紀(1989年製作の映画)

3.5

イルディコー・エニェディ、これが長編デビュー作というのはいろんな意味ですごい。まるでサイレント映画の名作のようなルックに夢のような物語展開で『心と体と』や『ストーリー・オブ・マイワイフ』と比べてももっ>>続きを読む

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)

3.6

サスペンスの快楽よりも歴史の重みを感じる。普段は非情なほど無関心で保身に走りがちな傍観者タイプのくせに、好奇心と執着心はやたら強くて深みにハマっていってしまう主人公がまるで自分のようだと思った(ただし>>続きを読む

リトル・チルドレン(2006年製作の映画)

3.9

『TAR/ター』に劣らずものすごい映画だった。『マグノリア』や『アメリカン・ビューティー』を連想するほど滑稽でシニカルな群像劇。観ながら心底「人間社会が嫌」だし「自分が人間に生まれたこと自体も嫌」と思>>続きを読む

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

繊細で荒々しい"愛と喪失"のモチーフが詰まった熱い映画だった。上映時間は少々長いけれど、三話すべて観ると相応のカタルシスがある。最近観たジェームズ・グレイの『リトル・オデッサ』と並び、監督デビュー作と>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

3.8

大した筋も無くて、完全に映像と音響の芸術だった。純粋な映画的映画。『TAR /ター』と同日に観たからすごい日になってしまった。ロバの目を通して描かれる人間の営みには、もちろん風刺の意味が込められている>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.1

観終わってからしばらくは何の言葉も出てこなかった。観ている最中も「自分は今何を観ているのか分からないが、何かものすごいものを観ている」という感覚が常にあって、約2時間半の間ひきこまれ続けた。まるでホラ>>続きを読む

アド・アストラ(2019年製作の映画)

3.7

『2001年宇宙の旅』を思わせる静謐な映像世界に哲学的な趣まで継承しているが、本作はもっとパーソナルな父と子をめぐる物語。壮大なSF大作映画でありながら、ジェームズ・グレイの関心はあくまで"人間"にあ>>続きを読む

血煙高田の馬場(1937年製作の映画)

3.8

カラッとしていて湿っぽくない、めちゃめちゃ好きなタイプの時代劇映画。ラストの殺陣とか本当に素晴らしい。『ピーター・パン&ウェンディ』を観た後だからか、余計にそう思う。安兵衛が高田の馬場まで走るシーンの>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.7

アメリカ映画らしい「お仕事映画」の快作。根回しや説得のような地味な会話の描写も丹念かつテンポよく積み上げていき、その先に成功への跳躍とカタルシスが待っている。"普通におもしろい"映画を観た喜びがあった>>続きを読む

ピーター・パン&ウェンディ(2023年製作の映画)

3.5

酷評も多いが、割と何でも楽しめてしまうガバガバ人間的には結構楽しめた。ポリコレがどうこうとかより一番気になったのは、ピーター・パン役の子のアクションで、他のキャストと比べても全然動けていなかったように>>続きを読む