ロシアとの戦争終結後の世界に想像をめぐらせ、ワンシーン・ワンショットの長回しによってスケッチ的にとらえられた映像は、どこを取っても静と動のダイナミズムに溢れた力強いショットばかりで引き込まれる。PTS>>続きを読む
物語的なカタルシスはほとんどないし、娯楽性も薄く、場面もほとんどリムジンの中だが、結構いろんなことが起きてくれるので、頭の悪い自分のような人間でも楽しめた。
映像的にも鮮烈なところはほとんどないが、>>続きを読む
デブラ・グラニクの前作『ウィンターズ・ボーン』と同様に決定的な盛り上がりのようなものはないし、深く描けそうなところにもあえて踏み込まない。それだけに余韻が素晴らしくて、静かにじわじわと胸を打たれる。>>続きを読む
シャンタル・アケルマンの映画は1970年代の作品しか観たことがなかったので、2000年に公開された本作では、きちんとカットを割ったり切り返しのショットを使ったりしていて"普通の映画"の撮影手法に近づい>>続きを読む
予想より遥かにスリリングな映画だった。乾いたタッチのサスペンスで非常に好み。映画らしく説明は少ないけれど、アメリカのヒルビリー事情や文化もよく分かる。「貧困から抜け出すためにまだ17歳の少女が軍隊に入>>続きを読む
自分がアキ・カウリスマキの映画に惹かれるのは、深刻な社会状況を見つめつつもユーモアと人情を忘れず、常に人間の営みを大げさでなくゆるやかに肯定しているから。その多くの登場人物たちと比較して自分の生活や環>>続きを読む
人間同士の交流はあるのに、そこにあるはずの会話を極限まで削ぎ落とすことによって、都市に生きる若者たちの孤独と虚しさを浮かび上がらせることに成功している。
本作が公開されたのは1994年だが、2022>>続きを読む
いたって普通のダブル不倫の話なので物語的・内容的な引きは強くないが、軽妙なタッチと削ぎ落とされたストーリーテリングが心地良い。ガレルのインタビューによると男女の立場や扱い方にかなり気を配っているようだ>>続きを読む
ファスト映画や倍速視聴が当たり前になってしまった時代に、シャンタル・アケルマンの映画は「本当に豊かな時間との向き合い方とは何か」を教えてくれる。映画のプロモーションのためにヨーロッパを回る主人公は、道>>続きを読む
だらしなく砂糖をむさぼりたい、邪魔な衣服は脱ぎ捨てたい、激しく身体を重ね合わせたい、という生身の女性の姿と欲望を映画は曝け出す。暴力的なまでに。
大まかに分けると映画は三つのパートで構成されており、>>続きを読む
やっぱりディズニーすごいなと思った。セリフは少なく、ミニマルかつ表現力豊かなアニメーションの力で最初から最後までしっかり心をとらえて離さない。ダンボもとにかく可愛い。
周りから気色悪がられ欠点とされ>>続きを読む
三峡ダム建設により、今まさに沈みゆく古都・奉節で暮らす人々の営みを捉えたスケッチのような作品。でありながら、あくまでケレン味たっぷりなところにジャ・ジャンクーの劇映画やアートへの強い信頼を感じる。生活>>続きを読む
話自体は、ゲイの少年が保守的な父親との軋轢に悩まされるというよくあるものだが、単純には語ることのできない人間の複雑性を表現している脚本が巧いと思った。主人公ザックの家族・兄弟を中心に、人物像が多面的に>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
観終わった後も何だか余韻で夢見心地。ポール・トーマス・アンダーソンが今こんなにポップでスウィートな映画を撮るとは。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以前の作品群と比べても最も甘くみずみずしい青春映画。>>続きを読む
前作を観てからだいぶ時間が経ってしまったので忘れているところもあるが、ドライで虚無感に満ちていた前作に比べて、こちらはもう少しウェット。その分、物語的な吸引力は強い。子供の頃は純粋で優しかった紋次郎の>>続きを読む
オリジナル版のアニメ「ククルス・ドアンの島」の回は未見だが、本作を観るとサブプロット回とはいえ「捨て回」のような扱いになっていたのが不思議なくらい良いエピソードだった(オリジナルからはストーリーや設定>>続きを読む
いわゆる「バックステージもの」だが、すごい奇妙な映画。90年代のアサイヤスのオルタナティヴな衝動で溢れている。洗練と前衛の間にある芸術。特にラストのラッシュのシーンで公開される映像は衝撃的。基本的に色>>続きを読む
もっと長くても全然観ていられると思うくらい面白かった。話がどう転がっていくのかも全然分からないし、登場人物が物語にどう関わってくるのかも分からず、改めて今泉力哉監督の脚本力の高さを感じた。今泉力哉の映>>続きを読む
ホン・サンスの映画はまだまだ未見がたくさんあるけれど、これは新境地なのではないかと思った。ロメールのような一見何でもない会話劇で緩やかに人とその関係性の機微を浮かび上がらせてゆくものかと思いきや、「主>>続きを読む
上映時間66分。行間たっぷりの三章構成。映画内で経過している時間は決して短いものではなく、上映時間はいくらでも長くできそうなのに、あえて"描かない"ことで鑑賞者に想像を喚起させる作り。『あなたの顔の前>>続きを読む
初フィリップ・ガレル。フィリップ・ガレルの父モーリスの人生をモチーフにした脚本(共同脚本はガレルの妻キャロリーヌ・ドリュアス)に加え、出演者にも実の息子や娘を起用したパーソナルな映画ながら、人類の永遠>>続きを読む
いくらでも感動的なヒューマンドラマにできそうなのに、ジョン・F・ケネディ暗殺後の国葬を前にしたわずか数日間のジャッキー(ジャクリーン・ケネディ)の混乱と懊悩と執念だけを徹底して描き出そうとしている。一>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
場合によっては、単なる象徴的なファム・ファタールにも見られそうなフロリアーヌのキャラクター性が個人的に一番面白いと思った。自身の持つ魅力を利用してしたたかに生きているが、魅惑的すぎるがゆえに性的に男性>>続きを読む
冒頭、あまりに映画的な映像に引き込まれる。全体としてもちょっと入り込みづらいくらいに映画的な映画で見応えがあった(映画的な映像とか映画的な映画って何の説明にもなっていないのどうしたらいいのだろう)。説>>続きを読む
ダイアナの心理的な不安を基底とした、エレガントでスタイリッシュすぎる映像に惚れ惚れとした。どうしてこんなに素晴らしい撮影と演出ができるのだろう、と思うほど。そこにしつこく絡み合うジョニー・グリーンウッ>>続きを読む
久々に観返してみた。「地味な映画だった」と記憶していたが全然地味ではなく、スリリングで面白い。ただ、今観ると本格的なサイコ・スリラーというよりはB級然としていて、カルト的な人気を博すのは分かるけれど、>>続きを読む
映画版の『マイアミ・バイス』は昔から良くない評判ばかり聞いていたのもあったので、期待せずに観たところ結構楽しめた。幸いにして(?)ドラマ版も観たことがないし。でも同時に「イマイチ」と言いたくなる気持ち>>続きを読む
マイケル・マンはやっぱりコスチューム劇とかじゃない方がいいなぁと思いながら観ていたが、活劇のシーンなどはやはりさすがだし、結局画面の力にどんどん引き込まれていった。ラストで白人の息子ホークアイでなく、>>続きを読む
今年日本公開されていて今年観た映画の中では『TITANE/チタン』が最も奇妙な映画だと思っていたが、こちらもまた違った方向性で負けず劣らず変な映画。観る人をおちょくったような〈自己検閲版〉の修正(監督>>続きを読む
今年観た中で最も奇妙な映像作品。そして強烈。まるで二つの映画を一つにくっつけたようなプロットも予測不能で風変わりで良い。
デヴィッド・クローネンバーグのボディ・ホラーの作品群や『鉄男』や90年代あた>>続きを読む
W・G・ゼーバルトの『アウステルリッツ』は個人的に最も好きな長編小説の一つである。このドキュメンタリー映画はその同名小説に着想を得て制作されたもの。ベルリン郊外にあるザクセンハウゼン強制収容所跡地を舞>>続きを読む
あらゆる設定がゆるいものの、さすがジョナサン・デミ(とタク・フジモト)と言うべきか、画面設計や撮影がとにかく良くてとても好き。正統派ポリティカル・スリラーというよりどちらかというとSF色が強いけれど、>>続きを読む
真っ当なノワールかと思いきや、まるで夢や亡霊のような演出。多用されるフラッシュバック。ジョン・ブアマンは奇妙な映画ばかりで時々観たくなる。
演出も撮影も良くて面白かった。ジョン・ガーフィールド演じる犯人の、何かが欠落していて憎めない感じがいい。己の間抜けさと臆病さと運の悪さでますます状況は悪くなるばかり。悪意はないとは言えないけれど(悪意>>続きを読む
まず冒頭のタイトルが出るまでの11分間のスリリングな長回しに「凄まじいフックだ」と圧倒される。が、実はその後も全編にわたってこの超ハイレベルな長回しの映像が続いてしまうのだ。まさに息をつく暇もない。そ>>続きを読む